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2015.09.20
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カテゴリ: 歴史
 半藤一利さんがインタビューで「戦争体験者減り、“軍隊からの安全”を意識しない国に」と説いているので、紹介します。
“軍隊からの安全”という意識か・・・まさに戦争体験者の発想ではないか。

半藤
(半藤一利さんへのインタビューを9/19デジタル朝日から転記しました)




Q:半藤さんのノンフィクション作品「日本のいちばん長い日」は衝撃的でした。たとえば、連合国に降伏するという政府の方針に反対して徹底抗戦を叫んだ軍人の存在です。一時は武力で皇居(宮城)を封鎖していたのですね。
A:ええ、 一種のクーデター でした。『ポツダム宣言を受諾して戦争を終結させるという今の政府の決断は間違っている。だから、自分たちの思うような政府に変えて政策をひっくり返さないといけない』。そう考えた一部の軍人たちが、暴力で国家をひっくり返そうとしたのです。軍隊は武装した組織です。どこの国でもクーデターを起こすのは軍人ですよね。

いま安全保障を考えるとき、『軍隊による安全』という視点ばかりが正面に出てきます。軍の存在が抑止力になる、といった議論ですね。でも本来は『軍隊からの安全』という視点も必要なはずです。日本人が憲法9条を受け入れてきた背景には、もう殺し合いをしたくないという思いだけではなく、軍隊からの安全を求める思いもあったのだと思います。

Q:3年前にインタビューさせていただいたときには、ご自身が1945年3月に体験した東京大空襲のお話が印象的でした。
A:15歳のとき、米軍機による焼夷弾攻撃に遭いました。自宅や近所の火を消そうとしていたために逃げ遅れ、命を落としかけました。

Q:しかし半藤さんは最近、戦争体験を語り継ぐ行為に懸念を感じ始めた、とも聞きます。
A:ええ。私が死にそうだったという話をすれば『悲惨だったんだな』と思ってくれる人々がいました。でも最近、勇気ある少年の『物語』として受け止められて、かえって危険を招くんじゃないかという気もしてきました。

 特攻隊の歴史を題材にした『永遠の0』がヒットしましたね。特攻を作戦化し命じた立場にありながら戦後ものうのうと生きのびた指揮官たちを私は実際に知っています。でもそういう本質的な構造の問題より、若い隊員の純真さとか勇気の方に焦点を当てて特攻が語られてしまう。歴史が物語になっていると感じました。

Q:そういう傾向は、なぜ表れているのでしょう。
A:時間がたち、社会の中で体験者が減ったことがあるでしょう。 50年を超えてしまうと戦争も、聞きやすい美談に回収されやすくなる。昭和が悪い時代のように言われ過ぎてきたので、訂正したいという民族としての誇りが表れてきた影響もあると思います。

Q:物語に回収されてしまわないような「戦争の歴史の語り方」はないのでしょうか。
A:当時の日本政府が国民に『焼夷弾はそれほど恐れるものではない』というメッセージを出していたのはなぜか。米国はなぜ、非人道的な無差別空襲という手段を採ったのか。空襲を指揮したカーチス・ルメイ氏に日本政府は戦後、なぜ叙勲したのか。事件や関係した人々について多角的・総合的に考えることで、学習していくことはできると思っています。

     ■     ■
Q:戦後70年の今年、安倍政権は新しい安保法制の整備に踏み出しました。使えないとされてきた 集団的自衛権 を使えるようにし、武力行使の制約が変わります。
A: 日本を危険な国に作り替えるものだと思います。ただ正直に言うと、国民が法案に相当に反対をしても安倍晋三首相からは関係ないものとして扱われるだろう、とも予測していました。今年4月、政権が米国政府との間で約束を交わしてしまったときからです。

Q:安倍首相が米国の議会で演説したり、日米の外務と防衛の担当閣僚が「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を改定したりしたときですね。
A:自衛隊は今後は集団的自衛権も行使しながら極東以外の地域でも米軍に協力します――そう約束する内容でした。憲法が骨抜きにされるだけでなく、極東を対象にする日米安保条約も骨抜きにされたと感じました。関連法案の審議が国会で始まる前に起きたことですよ。恐るべきは、こうした日本政府のやり口です。米国から協力を求められたときに断れる主体性があるとも思えません。

日本が米国の戦争責任にどう向き合ってきたかという歴史の問題と、いま安倍首相が見せている米国追従の姿勢の間には、つながりがあると思っています。

Q:先ほどの「軍隊からの安全」という視点からは、どんな問題点が挙げられるでしょう。
A:懸念しているのは、共産党が明るみに出した防衛省の内部資料の問題です。制服組トップの統合幕僚長が米軍幹部との間で今後の日米両軍の共同作戦のあり方を決めたり、統合幕僚監部が法案成立後の自衛隊の運用のあり方を決めたりしていた。文官ではなく武官の側が前面に出てきている傾向が見えます。

 しかも国民が知らされないところで。 外交防衛政策を軍によって規定される――それがいかに国を危うくするかは戦争の昭和史が教えるところです。

Q:今の日本は「軍隊からの安全」に関する意識が薄いと?
A:薄いのではなく、無いのだと思います。70年もたっているから仕方ない面もありますが。

     ■     ■
Q:半藤さんは保守的とされる「文芸春秋」のご出身ですが、9条については護憲の立場であり脱原発に賛同してもいます。ご自身を保守派とお考えですか。
A:いえ。 現実主義者 でしょうね。保守派の中でも国家主義的な人とか、革新派の中の党派的な人には、違和感がありました。

Q:安保法制への批判も、イデオロギーからではなく現実主義の視点からしていると?
A: 中東へ自衛隊の精鋭部隊を送ったら日本列島の守りは薄くなります。それをカバーするための軍事費の膨張は、経済や財政の現状に照らして可能なのか。そういう議論をすべきだと思います。

Q:2011年に起きた「3・11」のあと、原発に批判的な発言をしています。いつから原発に対して懐疑的になったのですか。
A:初めからですね。1950年代に核の『平和利用』が言われ始めた時期から、原子力という技術は人間の理性で制御できるものではない、と思っていました。

 地政学的に海岸線が長い日本には、もともと敵からの攻撃を防ぎにくい弱みがあります。だから近代に入って日本は国土の『外』で国を守る戦略を採り、朝鮮半島や中国大陸に軍を送ったけれど、結果は悲惨な敗戦でした。今はもっと守りにくい状況です。海岸線に40基以上も原発がある。それを攻められたらお手上げです。

 武力だけで守ろうとしても守れない、貿易と外交力を軸にしたほうがいい。理想主義だと批判されますが、それが現実だし、本気で検討すべきだと思います。

Q:中国が台頭してきたことで「アジアで一番の国」という近代日本の自己イメージは揺らいでいるように見えます。戦時中の半藤さんにも「アジアで一番の国」というイメージがあったのですか。
A:ありましたね。近所には台湾や朝鮮半島出身の子供もいましたが、『大和民族の方が上だ』と上から見ていました。戦争自体も『アジアのための戦争だ』と。

Q:この先、日本は「一番」を目指すべきでしょうか。
A: 目指すも何も、単純に『不可能』でしょう。こんなに自給自足ができない国、借金が1千兆円もある国が『大国』になれるわけがない。それが現実です。

Q:憲法9条を守ろう、という運動を手がけていますね。
A:はい。 ノンフィクション作家の保阪正康君と二人で、憲法を100年守ろうと言い合っています。100年もてばそれが国の意思になるし、海外の人々の戦争観にも影響を与える。 いま約70年ですから、あと30年ですね。

Q:いつから9条を支持するようになったのですか。
A:憲法が誕生したときからですよ。こんなに良いものができたのかと、非常に喜びました。おやじからは『お前はバカじゃないか』と批判されましたけどね。『人類が始まって以来、戦争がなかったためしがあるか。日本も日清戦争とか日露戦争とか、あれこれ頻繁にやってきたじゃないか』と。

 おやじは戦後、1950年に亡くなっています。もし会えるのなら、『あのときおやじが言ったこと、間違ってたじゃないか』と言ってやりたいですね。

     *
半藤一利:1930年生まれ。文芸春秋社で「文芸春秋」編集長などを務めた。著書に「昭和史」「『昭和天皇実録』にみる開戦と終戦」など。

<取材を終えて>
 自分は憲法も原発もそれらが生まれたときから見てきた、と半藤さんは語った。聞いていると、自分の中にある「日本」のイメージが少し変わってくる気がした。「軍隊からの安全」という視点は、安保法制を今後点検していく際にも必要なものと思えた。(編集委員・塩倉裕)


歴史に学ぶ 半藤一利2015.9.19


この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップ に収めておきます。





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Last updated  2015.09.20 00:34:46
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