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2015.09.23
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カテゴリ: アート
INAX BOOKLETシリーズのもう一冊としてこの本を選んだが、出版企画がよく練られていることが分かります。
INAX出版は製造業企業の余技というよりは、立派な出版社だったんですね♪

この本には、漆芸家、各方面のデザイナー、工業試験場研究員、塗師、乾漆師、芸工大教授など多彩なメンバーを集めた企画力が見えるのです。


【漆―進化する樹液】
漆

大西長利、他著、INAX出版、1995年刊

「MARC」データベースより
高価な工芸品というイメージのある漆。しかし、日常生活の場に引き戻し、現代のライフスタイルに合わせた製品を登場させるなどの試みもなされている。変貌を遂げようとしている漆の「現在」を紹介する。

<読む前の大使寸評>
INAX BOOKLETシリーズのもう一冊としてこの本を選んだが、出版企画がよく練られていることが分かります。
INAX出版は製造業企業の余技というよりは、立派な出版社だったんですね♪

この本には、漆芸家、各方面のデザイナー、工業試験場研究員、塗師、乾漆師、芸工大教授など多彩なメンバーを集めた企画力が見えるのです。
Amazon 漆―進化する樹液


NHKの朝ドラ『まれ』にも輪島塗が出てくるように・・・皆さん漆器には関心があるようですね。
この本で、漆器のプロたちのご意見を見てみましょう。
・大西長利:漆芸家
・三原昌平:インダストリアルデザイナー
・大藪泰:工業試験場主席研究員


<座談会:変容する漆>
大藪:僕は工業試験場にいるので産業側に近い立場でして、漆を精製している漆屋さんとの付き合いが多いんです。漆に関連する業界には閉鎖的な側面は確かにあると思います。
 たとえば良い材料が出てきて、それによって工程を少し変えるだけで良いものができるのに、今までのやり方に固執するところがあります。そういう業界ですから、僕はデザインに関しては素人ですが、漆を扱ったことのないデザイナーが漆に取り組んだほうが、今までにない面白いものができるだろうという期待はあったんです。ところが残念ながら、消費者の一人としてデパートの売り場などを見ても、欲しいと思うようなものがないんですね。用途が広くて、値段も手頃で、デザインも良いというものにはなかなか出くわせない。

 僕は売れる漆器というのは、極論すれば塗りだけのシンプルなものではないかと思っているんですが、加飾を施されたものが多すぎると思います。これはひとつには、漆が工芸品になってしまうと困るんです。だから外部のデザイナーが、シンプルでインパクトのあるものをつくってくれると大変ありがたいんですけどね。

大西:私もデザイナーに漆に取り組んでもらって、市場を通して、大衆の生活の中に漆との接点が広がることを望んでいます。漆は本来デザインのしにくいもので、デザインのもつ市場性と、漆のもつ作業性、素材性とがうまく噛み合わない。簡単にいえば、漆は手間がかかりすぎるわけです。初めから近代産業のシステムと折り合わないという大きな問題を孕んでいるなかで、三原さんはいろいろな角度から新しい試みをなさってきたわけで、それは歓迎すべきことだと思います。

 ただ私は漆芸家なので、漆そのものの価値と産業として成り立つかどうかは、別の問題として考えたいという立場なんです。漆はかけがえのない、世界に誇るべき素材であって、産業化されなくても恥ずべきことではないと思っています。

 それと三原さんがおっしゃった漆ブームについてですが、最近になってようやく、テレビや本を通じて漆の文化性の背景を探ろうという動きが見えてきたように思います。やっとそこまできたかと、嬉しく思えるんですが、それでもまだ神秘のベールに包まれた特別なもの、異質なものへの興味という域を出ていません。

大藪:いま、漆液の輸入量はここ数年間で300tから200tまで減っています。国内生産量は4tを切ってしまった。漆について語られる本やビデオは増えているのに、物は出回っていないという現状は、どう考えればいいんでしょうね。

三原:それは人手の問題でしょう。

大藪:いや、それ以上に漆器が売れてないからですよ。売れていないから人出が必要ないんです。漆を掻く人は不足してますけど。

三原:いまの日本を覆っている経済性、採算主義から考えると、漆は効率が悪いし合理化しにくい。つまり産業としての発展性が極端に低いんです。私は漆が高価な工芸品になってしまうのは、自然の帰結だと思います。産地の人だって普通の生活があるわけですから。そこを踏まえたうえで、漆にどんな発展が可能なのか、ということです。


漆の塗面の「しっとり感」が科学的に説明されています♪

<漆を科学する:永瀬喜助>p24
■漆の美しさは「ふっくら感」「しっとり感」「深み感」
・私は漆の美しさとは「ふっくら感」「しっとり感」「深み感」という三つの感性にあると思っています。ふっくら感とは、漆の表面張力の大きさと凝集力によるもので、凸面になっていれば光線の接触角が大きくなり、漆塗膜は丸くふっくらとして人の目に映るわけです。

・しっとり感は、水分の有無に関わってきます。漆の木から採取した漆液には30%の水分が含まれており、これを漆の精製器で混練し加熱しながら攪拌して、水分が3%くらいになるまで脱水したあと濾過します。これを上塗りなどに使うわけですが、この乾燥塗膜を常温で3年間保存して水分を測定したところ、2.4%が残っていました。つまり漆の塗膜には保湿性があり、この保湿力が漆をいつまでもみずみずしくしっとりとさせているのです。

・深み感についてはどうか。これも漆の表面張力の大きさと関係があります。凸面になっていれば光が入って戻ってくる屈折率が大きくなるわけですね。この屈折率の大きさが見る人に深み感を与える所以です。

■酵素で固まる漆は、元祖バイオテクノロジー
・漆液の成分中60~65%は、ウルシオールという炭素と水素と酸素の化合物で、水に溶けない油のようなものと理解していただければよいでしょう。これが塗膜をつくるときの主たる構成要素になります。このウルシオールの中に、ラッカーゼという酵素が親水性コロイドの多糖成分であるゴム質と一緒に水に溶け、水球となって分散しています。すなわち漆液は油の中に水が混入し乳化している状態、つまり油中水球型のエマルジョンであると考えてください。

・このような漆液に適度な温度と湿度を与えますと、酵素が活発に働きはじめ、空気中の水分から酸素を取り出してはウルシオールに与えるという酸化重合反応を起こさせます。この反応によってウルシオールは次第に高分子化し、複雑な化合物となって丈夫な塗膜になるわけです。

・合成樹脂などの塗料は乾燥させるために熱や圧力といったエネルギーを必用とします。また石油・化学製品である溶剤を使うために地球環境を汚染します。しかし漆は酵素の働きで固まる生体反応ですから、地球環境に負荷をかけることはありません。漆はまさに古来から人間が活用してきたバイオテクノロジーなのです。




wikipedia 漆器 より
<概要>
 漆はウルシノキ等から採取した樹液を加工した、ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料である。ウルシノキから樹液をとることを「漆掻き」「漆を掻く」という。現在では、国産の漆の生産量はごく僅かで、大半を中国から輸入している。

 製造工程は漆の精製から素地の加工、下地工程、塗り工程などに大きく分けられるが、細かな工程を挙げると30から40もあり複雑である。工程の違いにより、漆塗にもさまざまな種類がある。漆の工芸品は中国、インドシナなど東アジアで広く見られる。

 英語で、磁器をchinaと呼ぶのに対して漆器をjapanと呼ぶことからも判るように、欧米では日本の特産品と考えられている。 漆器という区分より漆塗の範疇として中国や欧米では捉えられている。

 漆を塗る下地は木(木地)に加えて、合成樹脂や木の粉を樹脂で固めたものもある。

<産地による分類>
・青森県:津軽漆器
・秋田県:能代春慶、川連漆器
・岩手県:秀衡塗、浄法寺塗、正法寺塗
・宮城県:鳴子漆器
・新潟県:村上木彫堆朱、新潟漆器
・福島県:喜多方漆器(北方地方)、会津漆器
・茨城県:粟野春慶
・栃木県:日光彫
・東京都:江戸漆器
・神奈川県:芝山漆器、鎌倉彫、小田原漆器
・静岡県:静岡漆器
・長野県:木曽漆器
・岐阜県:飛騨春慶
・石川県:輪島塗、金沢漆器、山中漆器
・富山県:高岡漆器
・福井県:越前漆器、若狭塗
・滋賀県:日野椀
・京都府:京漆器
・奈良県:奈良漆器
・和歌山県:紀州漆器(根来塗、黒江漆器)
・岡山県:郷原漆器
・島根県:八雲塗、出雲漆器
・山口県:大内塗
・香川県:香川漆器
・愛媛県:桜井漆器 (今治市)
・福岡県:久留米籃胎漆器
・宮崎県:宮崎漆器
・沖縄県:琉球漆器







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Last updated  2015.09.23 08:28:48
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