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2016.01.10
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カテゴリ: 歴史
図書館で『京都の町家を再生する』という本を手にしたが・・・


朝日新聞でも、京都の古民家再生のコラムが続いていたな~・・・
ということで、借りた次第でおます。



京都

齋藤由紀×李建志著、関西学院大学出版会、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
【目次】
第1部 京都で「町家」に住むということ(商品住宅としての古民家/京町家とは何か/「町内会」とは何か ほか)/第2部 町家を手に入れるー町家に手を入れる(町家って何だろう/町家の魅力/家探し、初めの一歩 ほか)/第3部 二〇一〇町家に暮らしてみて(「京都じゃっかどふに」という名前の由来/「京都じゃっかどふに」のコンセプト/再生の素晴らしさ ほか)

<読む前の大使寸評>
減速中の我がニッポンで、再生とかシェアという生き方はトレンディである。
朝日新聞でも、京都の古民家再生のコラムが続いていたな~・・・
ということで、借りた次第でおます。

rakuten 京都の町家を再生する


京都市東山区の空き家率は20.3%とのことで、全国平均の13.1%を上回っているのが意外である。
大使思うに・・・
空襲を受けなかった大都市が、高齢化にさらされた結果、高い空き家率となるのではないだろうか?

京都のような歴史的な都市で、木造の民家群がごっそりと高齢化にさらされるというのは史上初のケースかもしれないのです。

朝日新聞でも『空き家と闘う』というコラムが14年11月から15年1月まで続いたので、スクラップして保存しているのだが・・・


この本は、大使のその思いに答えてくれるわけで・・・
まず、京町家の定義あたりを見てみましょう。
p23~26
<京町家とは何か>
 筆者は前章で、古民家ということばを使ってきた。そしてその古民家が究極の「触覚的なリアリティ」を持つ住宅であるとも述べた。では、京都の都市部にある古民家すなわち「京町家」と呼ばれているものは何か、ということが問題になる。

 ほんらい「町家」とは、街中にある建物で、これと対になる建物は「農家」である。だから本当は町家(ちょうか)と読むものなのだ。

 前出の裕成氏や山本氏は、都市の住宅を考える際に、この「農家」を持ち出すのだが、なぜこの「町家」を持ち出さないのだろうか。これは、多木浩二氏の記念碑的エッセー『生きられる家』でも同じだ。おそらくは、土間の配置や主の座る位置など、前近代的な秩序が比較的容易に見られるため、農家は議論に持ち出されやすいからではないか。

 それに対して「町家」は多少複雑だ。大きな商家なら使用人の住まう空間もあるが、農業と違って目に見えるかたちでの共同作業や秩序がそこにないため、農家のほうが前近代の家を語る際に、よりふさわしく思われてきたのではないか。高度経済成長期以前は農業をはじめとした第一次産業に従事する人が過半数であるため、前近代の家屋の典型として農家を取り上げやすいという側面もあるだろう。だが、それでは前近代にも都市があったということが見えにくくなってしまうではないか。

 現在、京都市が推進している公益財団法人京都市景観・まちづくりセンターでは、建築基準法施行以前に建てられた在来工法による木造家屋を「京町家」とよびならわしている。しかし、この「京町家」とは決して古いことばではない。すでに述べたように、町家とは農家の対概念で、それが京都にあるという意味で「京の町家」という言い方が70年代にいわれるようになったようだ。これはいわゆる日本における在来工法による一般家屋の研究が70年代に盛んになったことと無縁ではない。

 前章にて山本氏の議論で紹介したように、70年代は住宅の量的な問題は解決し、質的向上へと転換した時期である。それは、在来工法による建物が都市部で急速に失われ、マンションに建て替えられていくということでもある。

 とくに京都市は、戦争による被害がほかの大都市より少なかったためいわゆる在来工法による建物は比較的残っていたにもかかわらず、このような商品化住宅の普及とあいまって次々とつぶされていく時代でもある。いきおい、残り少なくなっていく在来工法の建物を惜しむ声も聞かれるようになり、研究する人も出てきたわけだ。

 では、どのような言説で京都の町家は描かれていくのだろうか。

【町家と長屋の区分は、戸建形式から知ることができる。一般的にいって、町家は軒を接していても独立住居であり、長屋は連続住居である。町家はたいてい表、または通とよばれる地区の主要な街路に面しているが、長屋はそのその裏道のような、図子、露地に面している。また町家は、元来商工業やサービス業などの併用住宅としてつくられたものであるが、長屋は専用住宅である。したがって、前者は職住混合型であるのに対し、後者は職住分離型である。しかしその区分は、現在では多少くずれてきている。(上田1976:19頁)】

 この上田篤氏の労作は、『京町家 コミュニティ研究』と題されているが、基本的に「京町家」ということばは、いくつかの例外を除くと出てこない。
(中略) 

 引用部分に注意してみると、その当時にはもうくずれてきているとはいえ、「京町家」には大きく分けてふたつの種類があることが見てとれる。大路に面した町家と、図子や露地に面した長屋がある。

 「露地」は「路地」とも書かれるが、基本的に通り抜けができない路であり、袋小路になっていることが多い。それに対して「図子」は「辻子」とも書かれるが、通り抜けできる小路のことを指す。これらは大きな路から一歩入った路で、完全に生活者の通り路である。当然店などがあることはまれであった。それに対して大きな路には、職人であれ商人であれ、大きさの大小こそあれど、店は多くあった。もちろん、かつては店であったものの、いまはたたんでいる状態もある。それが「仕舞た屋」だ。京都ではこの仕舞た屋がけっこうあって、もともと店だった空間をガレージとして利用する人も多い。

 話がずいぶんまわり道になったが、このように京都の町家を「京町家」とよぶのは、かなり新しい方法で、むしろ研究者などの発言者からつくられていったことば、すなわち「博多や東京の町家ではなく、あの京都の町家」という意味でつくられていったことばだといえよう。


著者は、住宅の減価償却や「時間の堆積性」に言及しているが・・・
心ならずも鉄骨系の商品化住宅を建てた大使としても、同感するわけです♪
p77~79
<京都の町家の構造と力>
 大学院を出ても就職のない時代だといわれるが、筆者は幸いにも大学に職を得られた。最初の任地となった京都ノートルダム女子大で、いまの妻(斉藤由紀)に出合った。それから長い時間をかけ、さまざまな困難を乗り越えて、ふたりはいま、京都に住んでいる。筆者が唯一家族だといえる人と出会ったところ。ここで筆者は生きようと決めた。この地で死のうと決めた。

 そんななか、町家とよばれる建物が目に入った。そこに住まう人びとは、いかにも無防備に見えた。いつでも近所の人が入ってこられるよう、玄関が開いている世界。筆者の家の前の持ち主も、裏は鍵をかけなくていいというほどに隣近所を信頼しきった生活。筆者は無意識のうちに、このような生活が可能な「人間関係」すなわちご町内の「つきあい」の網の目に入ってみたいと思った。きっとそれが中年男のぶざまではかない夢にすぎないとしても、いちどは飛び込んでみる価値があると、そう筆者は思ったのだ。

 こういうと、筆者が「昔の生活に戻るべきだ」といっているのではないかと誤解する向きもあるかもしれない。だから、念のためいい添えておこう。例えば京都で古い町家を取得するとしても、その生活は現代生活そのものとなる。

 台所は当然システムキッチンだし、トイレも水洗だ。だから、古い町家に住むといっても、それは畢竟和モダン住宅にしかならない。だから古い家に意味がないというのではない。多少逆説的ないい方になるが、だからこそ時代が流れるにつれ少しずつ変わっていく「つきあい」のなかで生きるという気持ちを大切にすることが「町家に住む」ことの意味になると思うのだ。

 ここが古い建物であり、しかも単なる「和モダン」とでもいうべき近代的改築をほどこした家だからこそ、建物に残っている柱の傷や生活のにおいそのものをとりまく環境をすべて引き継いでいこうと、筆者は思う。ましてやこの家は、100年以上前の無垢の木でできているのだから、そのような「いい家」を大事にしようと考えたい。それは現代の新築の家にはない、「時間の堆積」とでもいうべきものがしみついた、極めて魅力的な建物ではないか。

【住宅の商品化のひとつの帰結として、住宅というモノが耐久消費財と同じように使い捨ての対象、すなわちスクラップ・ビルドの対象となったという問題がある。これは「時間の堆積性」という論点とかかわる重要な問題である。減価償却という考え方に典型的に示されているように、住宅というモノは、新築時点を頂点にその価値は減退していくと考えられている。こうした考え方は、建物の劣化や地震などの要素を考え合わせるとある程度仕方ない側面もある。ただ、時を経ることがもたらすモノへの影響を、経年劣化という観点からのみとらえる思考は、モノをとらえるうえでかなり一面的な見方であるといえよう。(山本2014:220頁)】

 山本氏はこのあとで、同潤会や住宅公団初期の分譲住宅について、「半世紀の時を経て、およそ新築の住宅では醸し出すことのできない雰囲気と年輪を感じさせるものに変化して」いることを例にとり、これらの魅力を「時間の堆積性」という観点から見直すことを提案している。たしかに古いアパートには新しいものにない味がある。筆者が古い町家に感じた魅力も、このような見方にとても似ているといえよう。

 ただし、筆者の場合は「無垢の木の家」というものへのあこがれであり、同潤会アパートに感じるものとは少し違うが。


阪神・淡路大震災さえ無ければ、大使は在来工法による「無垢の木の家」を志向したと思うわけで・・・
著者のあこがれがよく分かるのです。






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Last updated  2016.01.10 00:16:54
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