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2016.04.25
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『英国一家 日本を食べる』という本を見っけ♪…
今ちょうど、この本をもとにしたNHK番組が放映されているので、興味が尽きないのです。



イギリス

マイケル・ブース著、亜紀書房、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
市場の食堂から隠れた超名店まで、ニッポンの味を無心に求めて―東京、横浜、札幌、京都、大阪、広島、福岡、沖縄を縦横に食べ歩いた100日間。

<読む前の大使寸評>
今ちょうど、この本をもとにしたNHK番組が放映されているので、興味が倍加するのです。

<図書館予約:カートで待機中に図書館で見っけ♪>

amazon 英国一家 日本を食べる


京阪神の料理が語られています。
p122~127
<町屋に泊まる>
 京都人は、世界一とは言わないまでも、日本一舌が肥えていると自負している。何といっても、京都は茶道発祥の地であり、洗練の極みを尽した京料理のふるさとだ。料亭や旅館の個室で日本庭園を眺めながら食べる、ぜいたくで高価なコースのごちそう。懐石料理だって京料理から発展した。この街には今も2000前後の寺や庭園があるが、1920年代に京都を訪れた経験があるアメリカ陸軍長官のヘンリー・L・スティムソンが、第二次世界大戦中に京都への原爆投下を阻止して文化財を守ったという話はよく知られていいる。

 スティムソンは、京都の文化的価値を充分に理解しており、もしも破壊してしまったら、反米感情が永久に消えなくなると考えた。

 京都の普段の食事は、豆腐や、豆腐の副産物である湯葉を中心とする「おばんざい」だ。湯葉は、沸騰させた豆乳の表面に浮いた膜で、そのままで、あるいは乾燥させて販売されるが、地球上のどんな食材よりもタンパク質の含有率が高い。京都には他にも、小麦のグルテンからできた生地のような、麩という興味深い食材がある。また、京都の人は東京の人ほどは外食をしない傾向があり、今も街の真ん中ににある錦市場を中心とする根強い市場文化が残っている。

 おばんざいは、すばらしくヘルシーな菜食の料理で、脂肪分と糖分がとても少なく、野菜がたっぷり使われている。近年は、ダイコン、ナス、ゴボウ、カボチャ、キュウリなど、伝統的な地場野菜が復活して、京野菜というブランドとなった。こうした希少価値のある野菜は、東京の食通の間でも見直されている・・・単に一時的な流行かもしれないが、京野菜は風味が豊かだということも理由のひとつだし、何より、日本人はもともと外来品恐怖症なのに加えて、中国産食材によって健康が脅かされていることも大きな理由だ。賀茂ナスなんて、東京では最高にシックな食材だ。

 京都と反対に、大阪は圧倒的なスケールの大都会で、巨大なオフィスタワーがそびえ、ショッピングモールが次から次へとつながり、道路や線路をひとまたぎするフライオーバー(陸橋)があちこちにあって、人々は仕事熱心で柔軟性があり、トレンドや需要に敏感だ。大阪は昔から商業の街で、常に改革を繰り返してきた。大阪人の考え方は現実的だと言われ、常に革新的なものを貪欲に求めるところがある・・・・大阪には30年以上昔のものはないと言ってもいいくらいだ。

 フランスのフィガロ紙で料理批評をしている重鎮、フランソワ・シモンから、大阪は世界一の食の街だと聞かされていたので、僕は日本へ来たら大阪で食べることを何よりも楽しみにしていた。

 大阪の食は、よく「食い倒れ」というひとつの言葉で言い表される。文字通り、「倒れるまで食べる」・・・肉体的にも・・・という意味だ。大阪人の食欲は旺盛で、油で焼いたファストフードが好きだ。そして、日本のなかでは珍しく、小麦粉を調理した食品をよく食べる。・・・なかでも有名なのは、たこ焼き、お好み焼き、きつねうどん、そして串カツだ。

 一方、神戸は、京都や大阪よりも国際的な街とされている。山と海に挟まれて細長く伸びる神戸市には、国内で有数の影響力を持つ外国人コミュニティもあり、100に及ぶ国籍の人が暮らすといわれる。神戸は古くから、日本のどこよりも海外との結びつきが強かった。1868~1911年には、横浜港と同じく神戸港でも、寄港する外国船に新鮮で質の良い湧水を販売した。今では、神戸市民は日本一多くワインを飲み、洋菓子のひとり当たりの消費量が他のどこの都市よりも多い。しかも、コウベビーフという世界中で喜ばれる偉大な食材もある・・・大きな誤解を生むネーミングであることは、僕も後から知る。

 京都駅に着いたのは、午前の遅い時間だった。かなり暑かった。9月の京都といえば、山に囲まれた地形のせいで、息が詰まりそうなほど蒸し暑いのが特徴で、札幌のようなすがすがしい気候とはまったく違う。
(中略)

 リスンがインターネットで予約しておいたの家の鍵を、オーナーの友人、ジュンコという人から受け取ることになっていた。ジュンコは市内の北東部にある京都市国際交流会館で講師をしている。僕らはタクシーに乗り、薄暗いたたずまいの町屋や巨大な鳥居のそばを通り抜けて国際交流会館に向かった。到着すると、ジュンコはまだ授業中で、外国人の生徒たちにたこ焼きの作り方を教えていた。

 「タコボール」すなわちたこ焼きは、味のついたドーナツみたいなもので、歯ごたえのあるタコの足のぶつ切りがなかに入っている。大阪では、屋台で作りたてを売っていて、厚紙で作った「」に8個入って、みりん、ウスターソース、ショウガ、ニンニク、砂糖、酒、そしておそらくだし汁で作ったとろりとしたソースがたっぷりとかかっている。削り節がかかっていることもあり、たこ焼きの熱でふわふわと揺れている。
(中略)

 ジュンコと一緒にまたタクシーに乗って京都の街を走り、木々に覆われてなかが見えない京都御苑のそばを通って、上京区というところで下りた。

 そこは、家がびっしりと立ち並ぶ一角だった。モダンで機能的に見える家もあれば、僕らが借りた家みたいに、古色蒼然としているものもある。道路に歩道はなく、道の際まで家の敷地があって、玄関と道の間の小さなスペースに、自転車やら鉢植えやらがところ狭しと並んでいる・・・狭い場所にぴったり収まるキャリーバッグみたいな小さな箱型の車が置いてある家もある。

 僕らが滞在する家は、日本の伝統的な建築スタイルで、100年以上前に建てられたものだとジュンコが教えてくれた。引き違い窓にはメッシュのカバーがついていて、重厚な木製のシャッターもある。窓を開けると、目の前の手が届きそうなところに隣の家の窓があった。まさに、僕らが期待していたような本物の京都だと思った・・・特に、扉に鍵がついていないところとか。


京都の料亭や懐石料理が語られています。それと、日本料理と欧米料理の違いなんかも。
p139~147
<世界一美しい食事>
 京都にある懐石の高級料亭は、どれもが世界有数のみごとな庭のある伝統的な木造の大邸宅で、そのほとんどが街の東側の寺の多い地区にある。畳の部屋には、値がつけられないほど高価な掛軸や焼き物が飾られ、料理が盛られる器や漆器は数百年も昔のもので、数百万円の価値がある。使われている食材もやはり一級品だ。辻静雄が『Japanese Cooking:A Simple Art』に書いているように、日本人がいう季節の素材とは、たとえばナマコの卵巣のように、1年のうちほんの2,3週間しか手に入らないものを指す場合が多い。

 ナマコは年に一度だけ卵を持ち、その卵巣が新鮮なうちに食べるのだ。こういう貴重な食材を、懐石の料理人はとても重んじる。そして、皿や鉢も季節に応じてさりげなく取り換えられる。

 懐石を解読するヒントは、汁物が入っている鉢は、おそらくもっと有名な鉢を倣った作品で、オリジナルの鉢と同じ季節を表現しているというところにある。

 僕は、絶対に懐石を食べたいとずっと思ってきた。だけど、京都の料亭はべらぼうに値段が高いうえに、「外国人お断り」という暗黙のポリシーがあるところが多く、日本人でさえ誰かの招待がなければ入れてもらえない店があるほどだ。でも、村田氏はそういう懐石の世界の名匠としては珍しく、テレビに出演したりして、長年日本の内外から注目を浴びてきた。しかも彼は、若い頃にフランスで修業を積んだうえで父上から菊乃井を継いでいて、肩の力を抜いて懐石の伝統と向き合っている。

 たとえば、彼は懐石の料理人としては初めてフードプロセッサーを使ったが、そのようなやり方は、下ごしらえは手を抜かずに手作業でするという懐石の本質から外れると考える人が今もいる。また、懐石の流儀をあくまで忠実に守る料理人とは一線を画し、村田氏はカモやフォアグラなどの肉料理も作る。彼は、料亭は「大人のアミューズメントパーク」だと言っている。

 日本人のなかには、外国人が懐石を正しく理解するのは無理だと言う人がいる。象徴主義的なところ、摸倣の摸倣、あそび心、季節をめでる機微、ひと皿の量の少なさなどは、確かに理解が難しい。でも、それでも僕は懐石をもっと知りたかったから、村田氏の料理を食べられるのならば、それは自分にとって最大のチャンスだった。
(中略)

 凝ったつくりの広い木造の建物に着くと、オーストラリア人の女性が、店の雰囲気に呑まれてしまったからか、案内の人が靴を脱いでくださいと言ったのを誤解して、ひざまづいてなかに入ろうとした。それを見た店の人は大慌てで彼女に近寄り、手を貸して立ち上がらせようとした。ひとつ間違えば自分がこうなっていたと、僕はひそかに思った。懐石といえば、儀式張っていて作法にうるさいという恐ろしいイメージが強く、きっと僕も食事が終わるまでには何かやらかすに違いないという気がした。

 案内されたのは広い畳の部屋で、梁は木製、天井にも木が精巧に組んであり、壁はベージュ色の土だった。部屋の奥には、赤い朱塗りの低いテーブルがひとつだけあって、座椅子・・・背もたれと座面だけで脚はついていない・・・がひとつ置いてあった。僕はひとりきりで食事をすることになりそうだ。
(中略)

 懐石の最初の料理は先付で、村田氏によれば、一番重要な料理だ。「お客さんにひと息ついていただくもの」と彼は著書に書いている。その日僕が食べた先付は、クルミの豆腐にデラウェアのブドウを添え、小さなシソの花があしらわれて、だし汁のジュレ・・・葛の根でとろみがつけてある・・・がかかっていた。冷たく清涼感のある豆腐のなかのカリカリした食感が気持ちよく、生わさびのあそび心のある辛みが効いている。心地よくて刺激的な味わいは、すべてあっという間に消えてなくなった。
(中略)

 僕は村田氏の数十年後に同じような排外主義を経験した。友人のトシのことを思った。フランスと日本で修行を積んだ村田氏は、このふたつの国の料理をどう比較しているのだろうか?「僕は、日本とフランスの料理の違いはこういうことやと思います。日本料理では、僕らは食材は神様からの贈り物やと思うて、手を加えすぎんようにします。たとえば大根は、ありのままの姿形が最高やと考えるんです。僕に言わせれば、フランスのシェフは往々にして素材を変えてしまいたいと思っている。素材に自分ならではの個性を与えようとしています」言い方を換えれば、日本の料理人は神様からいただいたものを調理師、フランスのシェフは自分が神様だと思っているということか。

 村田氏は、これと同じことを本にも書いている。「若いときは、あらゆる食材に『味をつける』ことが僕の仕事やと思うていました。でも今では、そのアプローチはおこがましいんやないかとわかってきました。『食材が本来持っている味を引き出す』のが僕らの本当の仕事じゃないかと考えるようになりました」

 村田氏は、別の表現もした。僕の聞いた限りでは、そこには日本と欧米の料理の基本的な違いがにじみ出ていた。「オートキュイジーヌでは、異なる素材の風味を込み入ったやり方で加えたり重ねたりします。けど日本では、とりわけ京都では、主に野菜を中心に料理しますが、その目的は、それぞれの素材の、たとえば苦味とか、あまり好まれない風味を抑えるようにして、素材の本質的な味を引き出すことにあります。日本料理は、引き算の料理なんです」


著者マイケル・ブースは、このあとドンドンと日本料理の深みに踏み込んでいくわけですが・・・日本人もびっくりポンのこだわりが見て取れるのです。
関西の味への理解度が、ええでぇ♪





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Last updated  2016.04.25 09:19:38
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