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2016.07.18
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カテゴリ: 中国
<『中国文学の愉しき世界』2>

少し読めば、平易な筆致が読みとれるのだが・・・
中国文学研究というマイナーな領域で、それを極める著者の根性がユニークではないだろうか♪



中国

井波律子著、岩波書店、2002年刊

<「BOOK」データベース>より
「竹林の七賢」をはじめとする奇人たちの奇妙キテレツな言動を支えるパトスとは?幻想と夢の物語宇宙の構造はいったいどんなもの?-練達の中国文学研究者が平易な筆致で描きだす、奇人・達人群像。自らの体験もまじえながら語る文学世界の面白さ・奥深さ。読書の快楽を堪能すること請け合いの好エッセイ集。

<読む前の大使寸評>
少し読めば、平易な筆致が読みとれるのだが・・・
中国文学研究というマイナーな領域で、それを極める著者の根性がユニークではないだろうか♪

rakuten 中国文学の愉しき世界


意外なことに著者は高橋和巳氏との交流があったそうだが、そのあたりを見てみましょう。
p207~209
<高橋さんのこと> より
 その後、お会いする機会もないまま、高橋さんは東京へ行かれた。その間、わたしは吉川先生の猛トレーニングに音をあげそうになりながら、それでもなんとか卒論を書きあげ、66年春、大学院の修士課程に進学した。翌67年の春、吉川先生は定年退官され、同年秋、高橋さんが後任の助教授として着任された。

 いまから思えば赤面のほかない幼稚な「円地文子論」を読んでいただいたこともあって、着任されてまもなく、高橋さんから同人雑誌『対話』に参加しないかと、お誘いをいただき、喜んで参加した。

 高橋さんの古くからのお知り合いと、新たに加わった若いメンバーの二層からなるこの『対話』の会に参加したことにより、わたしは高橋さんの中国文学者としての顔と作家としての顔の、両面をかいま見たような気がする。

 当時、高橋さんに「苦悩教の教祖」などというレッテルを貼るむきもあったが、その実、大阪人らしいユーモア感覚もたっぷり持ち合わせておられ、おもしろいことには敏感に反応され、しばしば文字とおり「呵呵大笑」された。わたしにはあの重く憂鬱な気分に浸された作品世界と、現実の楽しげに笑っておられる高橋さんの姿がどうしてもかさならず、首をかしげることもしばしばだった。

 ことのついでに言ってしまえば、わたしは、高橋さんの小説では、当時からいまにいたるまで、評判の高い『悲の器』や『憂鬱なる党派』よりも、吉本隆明がいみじくも「高度なインテリ向きの大衆小説」と評した『邪宗門』をいちばんおもしろく読み、ダイナミックですばらしい作品だと思っている。

 ただ、高橋さんには紛れもなく、戦争少年が戦後の転換期を生きて来たという風情が濃厚に残っていたように思う。たとえば、あるとき『対話』の会のあと、みんなで喫茶店に入ってお茶を飲んだときのこと、コカコーラを飲もうとしたら、憤然と「あんなテキセイのものを飲むのですか」と言われ、唖然としたこともあった。

 さらにまた、ギターをひくと言われるので、どんな曲をひかれるのですかと聞くと、あっさり「湯の町エレジー」と言われ、「ああ、あの近江八郎の流行歌ですね」と口走りながら、腰が抜けそうになったこともある。なにぶんわたしが中学生のころ、プレスリーのロックンロールが大流行し、以来、わたしはアメリカン・ロック狂いであり、ギターといえばロック・ギターしか頭に浮かばない状態だったからである。

 というふうに、大学で授業されながら小説や評論を書かれ、ときおり『対話』の会などで楽しく発散されていたあのころが、高橋さんにとって、もっとも穏やかな日々だったのかも知れない。


高橋氏が京大文学部で中国文学を教えていたとは、この下りを読んで初めて知ったのです。
それにしても、高橋氏や著者の尽くせぬほどの教養、趣味には驚いた次第です。


『中国文学の愉しき世界』1





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Last updated  2016.07.20 21:22:26
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