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2016.07.28
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『介護民俗学へようこそ!』という本をゲットしたのです。
六車さんの前著『驚きの介護民俗学』も興味深い内容であったので、介護民俗学のその後を知りたいわけでおます♪


【介護民俗学へようこそ!】
六車

六車由実著、新潮社者、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
 ここは、静岡県沼津市のデイサービス施設「すまいるほーむ」。デイルームや入浴介助の場で、ふと語り出される鮮やかな記憶の数々。忘れえぬ思い出の味、意外な戦争体験、昭和の暮らし、切ない恋バナ。多彩な物語が笑いと涙を呼び、認知症の人もスタッフも生き生きとした感情を取り戻していく。
 豊饒な物語が問いかける「老いることの価値」とは。人が人として尊重される介護のありかたを切り拓く一冊。

<読む前の大使寸評>
六車さんの前著『驚きの介護民俗学』も興味深い内容であったので、介護民俗学のその後を知りたいわけでおます♪

<図書館予約:(7/09予約、7/23受取)>

rakuten 介護民俗学へようこそ!


「介護民俗学」の説明を、この本の冒頭で見てみましょう。
p8~11
<第1章 聞き書きの沃野へ>
 静岡県沼津市の旧東海道沿いにあるデイサービス、すまいるほーむ。ここが私の現在の仕事場である。すまいるほーむは民家を借りた、定員十名の小規模デイサービスで、登録している十五名のお年寄りたちが毎日かわるがわるやってきては、入浴や食事、リクリエーションなどのサービスを利用しながら1日をのんびりと過ごしている。

 年齢は75歳から98歳、出身地も北は北海道から南は熊本と全国各地に広がり、もちろん職歴も経験も、また病歴も様々である。認知症の方もいるし、脳梗塞による後遺症で片麻痺になった方もいれば、大腿部の骨折や間接リューマチにより歩行が困難な方もいる。介護保険の認定を受けた要介護度も、要支援1の軽度の方から要介護5の重度の方まで、実に多様な人たちが集まっている場所である。

 利用者さんたちの年齢や生活環境、病歴などが様々であるのと同じくらい、ここで働くスタッフたちも実に個性的な面々が集まっている。訪問介護の事業所で管理者をしてきたベテラン介護士から、自ら経営していたデザイン事務所を閉じて介護職に転身した男性、大学で演劇を学んだ末にすまいるほーむに就職した20代の最年少スタッフ、精神科病棟の看護師や訪問看護師をしてきた子育て世代の看護師たちなど、職歴も経験も才能も様々である。

 そして私自身も、民俗学を研究する大学教員を退職して、心機一転、介護の現場で働き始めた転職組の一人であり、大規模施設での3年半の勤務の末に、縁あってこのすまいるほーむに呼んでいただき、管理者兼生活相談員として働き始めた遍歴を持つ。

 そんな人たちが集うすまいるほーむは、不思議なことにそれぞれの個性が互いに対立することなく穏やかに調和していて、心地よいハーモニーを奏でているように私には感じられる。そして、私自身にとっても、ここは、人生で初めて得た「生きにくさ」を感じなくてもいられる貴重な居場所となっている。

 さて、本書『介護民俗学へようこそ!』では、「介護民俗学」という方法をよりどころにしながら、スタッフや利用者さんたちと共にすまいるほーむの日常風景に穏やかな彩りを添えていくプロセスを紹介していく。

 「介護民俗学」とは私の造語であり、まだまだ発展途上ではあるが、民俗学で培われてきたものの見方や聞き書きによって、介護現場のお年寄りたちの歩んできた人生に真摯に向き合うことで、人が生きることの意味や人間の営みの豊かさについて考えていくための方法だと言っていい。

 興味をもってくださる方は前著『驚きの介護民俗学』(医学書院)を手に取っていただければありがたいし、何よりも本書を読み進めるなかで、すまいるほーむの日常風景から、介護民俗学の実践の意味が少しずつでも読者に伝わればよいと思っている。そして、本書が、閉鎖的になりがちな介護やケアを、限りない可能性へと開いていくことにつながれば幸いである。


大使はつい最近まで母を介護施設でお世話していただいたので、介護やケアには関心と共感を覚えるのですが・・・・
母からは肝心の身の上話を聞くことができなかったことを悔やむのです。

六車さんが試みた聞き書きの一例を見てみましょう
p16~17
<思い出の味の再現>
 さて、そんなすまいるほーむで始めた聞き書きのもう一つの形として、今や欠かせない風景になっているのが「思い出の味の再現」である。「思い出の味の再現」とは、子供の頃の母親の味や子育てをしてきた頃の家庭料理など、利用者さんの思い出に残っている味について聞き書きをし、それをみんなで作って味わう、という試みである。

 一般的にデイサービスやグループホームなどの高齢者施設のなかには、季節ごと月ごとに行事を行い、そのなかで季節の料理やその地域の郷土料理などを、利用者さんたちと手作りして食べる、といったことをしているところは多い。それは、毎日繰り返される代わり映えのしない日常に季節感を取り入れて利用者さんたちの生活にメリハリをつけたり、調理という日常生活行為に関わってもらうことで認知症の進行を遅らせようという目的があったりする。

 すまいるほーむでの思い出の味の再現も、行事ごとにそれにちなんだ料理を利用者さんと一緒に作って楽しむものだが、特に大切にしているのは、「〇〇さんの思い出の味」という形で毎回一人の利用者さんを主役にして、その方の記憶に残る料理についてレシピや料理にまつわる思い出を聞き書きし、みんなで協力して具体的に作って食べてみる、ということである。そうやってみんなで思い出の味を再現して味わうことで、その利用者さんの思い出や思いが、味とともにみんなに共有されていくのである。



以前に読んだ『驚きの介護民俗学』を再掲します。

【驚きの介護民俗学】
介護

六車由実著、 医学書院、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
第1章 老人ホームは民俗学の宝庫(「テーマなき聞き書き」の喜び/老人ホームで出会った「忘れられた日本人」/女の生き方)/第2章 カラダの記憶(身体に刻み込まれた記憶/トイレ介助が面白い)/第3章 民俗学が認知症と出会う(とことんつきあい、とことん記録する/散りばめられた言葉を紡ぐ/同じ問いの繰り返し/幻覚と昔話)/第4章 語りの森へ(「回想法ではない」と言わなければいけない訳/人生のターミナルケアとしての聞き書き/生きた証を継承するー『想い出の記』/喪失の語りーそして私も語りの樹海に飲み込まれていく)/終章 「驚けない」現実と「驚き続ける」ことの意味(驚き続けること/驚きは利用者と対等に向き合うための始まりだ)

<大使寸評>
著者は大学准教授から特別養護老人ホームに介護職員として転職したそうで、かなり異色な民俗学的アプローチとも言えるわけです。
著者のサイト 驚きの「介護民俗学」の実践 「介護民俗学」へようこそ! で、著者の近影が見られます。

この本はブログ友のレビューを読んで、以下のとおり図書館に借出し予約したものです。<図書館予約:(12/23予約、12/28受取)>

rakuten 驚きの介護民俗学
驚きの介護民俗学 byドングリ







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Last updated  2016.07.28 02:39:43
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