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2016.11.13
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カテゴリ: アート
大学図書館の新刊コーナーで『意匠の天才 小村雪岱』という本を手にしたのです。
おお 市図書館の予約カートで待機している本を、ここでみっけ♪

「とんぼの本」シリーズなので、カラー画像満載であり・・・これぞビジュアル本の真価というところか。



小村

原田治(イラストレーター), 平田雅樹著、新潮社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
大胆にして繊細。豪奢ながらもさりげない。懐かしき江戸の姿を描きつつ、極めてモダンー。大正から昭和初期にかけて、主に大衆文化の分野で活躍した意匠家・小村雪岱。独自のデザイン感覚に貫かれたその作品世界は、泉鏡花にも愛されました。彼が手がけた貴重な装幀本から、挿絵、舞台美術、日本画まで、珠玉の名品150余点を一挙掲載。新資料や味わい深い名随筆も特別所収し、永遠に古びることなき天才の全貌に迫ります。

<読む前の大使寸評>
市図書館の予約カートで待機していたが、大学図書館でみっけ♪
「とんぼの本」シリーズなので、カラー画像満載であり・・・これぞビジュアル本の真価というところか。

rakuten 意匠の天才 小村雪岱


雪岱の装丁本について、見てみましょう。
p46~47
<雪岱の装丁:平田雅樹>
 多色木版画による装丁本は、江戸の錦絵から続く伝統と西欧からの新しい感性が絶妙に呼応した工芸美である。

 しかし、この美しいオブジェが誕生し世界に類を見ない日本独特の書物文化が花開いたのは、明治も後期に入ってようやく洋装本という書物の形が我が国に根付いてから昭和初期に至りオフセット印刷が図版の主流となるまでの間、大正期を頂点とするわずか30年ほどに過ぎない。

 橋口五葉、鏑木清方、竹久夢二といった人々が数多くの美しい木版画装丁本を世に送り出したが、その中でも抜群に優れた仕事を残したのが小村雪岱である。

祇園祇園夜話

 一つ例を観よう。
 茶店が軒を連ねる祇園の街はすっかり雪に包まれている。その静かな情景を描いた函から本を取り出すと、場面は一変して、暖かな座敷に立つまだ表情に幼さの残る舞妓の姿が眼に飛び込む。表紙の木版画は50度摺りというだけあって、舞妓の細やかな指先や絢爛な衣装は息を呑むほど精巧で美しく、地には「・・・しろい蝋のやうな指がほの暗い光のなかでしなやかに働いて幾本となく小さな紙撚を・・・」と物語の断片が変体仮名交じりで摺り込まれる。耳の奥に「祇園恋しやだらりの帯よ」と小唄のひとつも聞えてくれば、心はすでにこの小説の世界へ引き込まれている・・・。

 大正4年(1915)4月、千章館から上梓された長田幹彦著『祇園夜話』は、雪岱の装丁本の中でも傑作のひとつである。私はこの本に「優れた装丁」の典型を見る思いがする。

 いったい何をもって「優れた」と言うのか。私にとって書物の装丁とは、単に豪華であったり目立つものであればいというわけではない。その書物の内容に似つかわしく、その世界を象徴するものであるべきだ。

 特に小説や詩集など文学書の装丁は、本を開く前から読者をその世界へと誘う装置として働く。読者の手のひらの上にあって、その心を一気に別世界へと引き込む、そんな装丁こそ、私にとっての「優れた装丁」なのである。その意味で、雪岱はあまたの優れた装丁本を残してくれた。

 江戸時代中期に商業的出版が広まってから明治初期に至るまで、我が国で「本」といえばいわゆる和本であり、版木に文字や絵を彫り、和紙に摺り、表紙を付けて糸で綴じたものが一般的であった。

 江戸後期には庶民にまで本を読む習慣が広まり、読本や草双紙そして艶本の挿絵・口絵や表紙絵として華麗な多色木版画が使われるようになる。その下絵は一枚摺り錦絵の人気浮世絵師たちの手になるものも多いが、それを版画の形に仕上げたのはもちろん多くの名もない彫師や摺師といった職人である。

 文化文政期から幕末にかけて、彼ら職人たちの技術は「超絶」と呼んでいいほどのレベルに達する。かつて西欧で百科事典の銅版挿絵制作に従事した職人たちは、暗い照明の下での緻密な作業で眼を潰した者も多かったというが、我が国の職人たちの仕事も恐らく同じように過酷なものだったに違いない。この時代の多色木版画をみると職人の執念のようなものさえ感じられる。しかし、版画技術が緻密さと洗練の頂点を極めようとする一方で、世の中は幕末の動乱から明治維新に向けて混沌としていく。

 明治に入ると書物の本文には徐々に活字が使われるようになり、簡素な和綴じ本やボール表紙本過渡的な形態を経て、明治30年代中頃から現在とほぼ同じ形の「洋装本」が定着する。

 「和本」の時代からわずか20数年、日本の書物の形は大きく変わった。この頃、浮世絵師や超絶的技術を持った職人たちは木版画口絵の制作というかたちで本と係わっていく。

明治の終りから大正へと時代が移る頃、維新以降の江戸否定と西欧模倣が一段落し、かえって逝きし日の江戸情緒を懐かしむ風潮が広がりをみせ始める。その一方で、西欧からは実用的技術ばかりでなく、文学や絵画・工芸といった芸術的分野の新たな刺激が次々と我が国に入ってきていた。

 そこに、雪岱が登場する。


装丁1

装丁2

装丁3





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Last updated  2016.11.13 10:53:18
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