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2017.01.10
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カテゴリ: 歴史
図書館で『民家造』という本を手にしたのです。
パラパラとめくると、カラー写真やモノクロ写真が多く、大使の好きなビジュアル本となっています。



民家

安藤邦広著、 学芸出版社、2009年刊

<みんなのレビュー>より
カラー写真や白黒の写真が思った以上に豊富。前半は「素材を生かす技」ということで民家に使われる素材(材木の使い方など)について、後半は「暮らしを映すかたち」というテーマで、暮らし方などが見えてくる内容になっています。

<読む前の大使寸評>
パラパラとめくると、カラー写真やモノクロ写真が多く、大使の好きなビジュアル本となっています。

rakuten 民家造


仏国寺の松仏国寺の松

朝鮮半島と日本の松文化を見てみましょう。
p52~55
<松文化の成立>
 古代朝鮮に栄えた新羅の国(4~10世紀)の古都慶州は、日本の奈良に相当する歴史的都市である。市内に残された多くの古墳は古墳公園として保存され、往時の繁栄を偲ぶことができる。高麗芝で覆われた古墳は緑の丘で、樹木はない。古墳のまわりは整備されたマツ林で、マツの落ち葉で赤く染まった地面と芝生の緑の対比が美しい。
(中略)

 マツは陽樹で痩せ地に強く成長も早い。多くのマツ林は山火事や人為的に森林が破壊された跡に生じた二次林であり、そのまま放置すると、広葉樹林に遷移していく。しかし定期的に伐採するとマツ林は維持され、薪炭や肥料を採集する里山として農村の生活を支えてきた。また海岸の防風林としてあるいは街道の並木としてマツの特性が生かされ、生活に密着して親しまれてきた。

 マツが日本人の生活にとっていかに重要な木であったかは、絵画や文学の題材として最も頻度の高い木がマツであることに表れている。また松竹梅といわれるように、縁起の良いものの筆頭として、正月を象徴する木として、樹木の第一位を占めてきた。

 日本列島より農耕と仏教の伝来および製鉄と製陶の普及も早かった朝鮮半島では、寒冷な気候に加えて度重なる戦火も相まって二次林としてのマツ林への変化も早かった。その結果、朝鮮半島の木造建築はほとんどすべてがマツ材でつくられているといっても過言ではない。

 柱梁から床板や建具、家具に至るまでマツが使われてきた。それはマツ以外に選択の余地がないというほどの徹底ふりである。朝鮮半島は日本列島に先駆けて成立した松文化の先進地といえる。慶州の古墳公園の芝生と松林の風景は、このような朝鮮半島の松文化を象徴するものなのである。

 このようなマツが日本人の暮らしに根づいたのはいつ頃からであろうか。近年の環境考古学の成果によれば、地中に堆積した花粉を分析するとおよそ1500年前からマツの花粉が急激な増加を見せ始め、この頃から日本にマツ林の風景が広がったと考えられている。この頃は古墳時代にあたり、森林を切り開いて稲作農耕が日本各地に広がる時期と重なる。
 北九州に伝来した稲作が4世紀にすでに関東地方に達していた。また6世紀の仏教の伝来により壮大な寺院建築の建造も活発になる。そのために日本の原生林は後退し、その二次林としてマツ林が出現したのであろう。このマツ林の拡大に拍車をかけたのが、たたら製鉄と製陶であった。その燃料としての大量のマツの薪炭が必要とされたのである。

 農耕文化の普及によってマツ林が広がったといっても、温暖で森林資源に恵まれた日本列島では、原生林の後退が比較的穏やかであったことは、古代から中世の社寺や寝殿の建築用材にヒノキやケヤキが主として用いられていることに表れている。この時代にはマツの使用は主に小屋梁にとどまっていた。

 日本でマツが建築の主役を占めるのは室町時代から戦国時代にかけての頃である。この時代に庶民の住まいとしての民家が成立する。度重なる戦乱に加えて、庶民が本格的な住宅を求めるという建築生産の急増に応えたのがマツであった。室町時代末に日本列島で朝鮮半島と同様な松文化が成立したのである。


『民家造』1





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Last updated  2017.01.10 00:07:19
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