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2017.06.18
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『日本を知る105章』という本を、手にしたのです。
全篇にわたって、英文、日本文、画像がセットになった構成であるが・・・
何と言っても、日本文の書き手が、荒俣宏、佐高信、橋本治、鶴見俊輔等、蒼々たるメンバーで、かなり読ませるわけです。英語力アップにつながれば、おつりのようなものでおます♪



105

コロナ・ブックス編集部、平凡社、2001年刊

<「MARC」データベース>より
生け花、法隆寺、わび・さび、能、マンガ、忠臣蔵など105のキーワードを、日本を代表する41人の作家・文化人が簡潔明瞭に解説。全文英語訳付。95年刊「日本を知る101章」に、新たに4章を加えたもの。

<読む前の大使寸評>
全篇にわたって、英文、日本文、画像がセットになった構成であるが・・・
何と言っても、日本文の書き手が、荒俣宏、佐高信、橋本治、鶴見俊輔等、蒼々たるメンバーで、かなり読ませるわけです。英語力アップにつながれば、おつりのようなものでおます♪

amazon 日本を知る105章



昨今は中国人団体客の急増で、日本の観光産業は彼らの振る舞いに往生こいているが・・・
19世紀の団体旅行を、見てみましょう。
p115
<団体旅行:鶴見俊輔>
 ヨーロッパの富は、19世紀に団体旅行の習慣をうみだした。これを商売として組織したのはイギリスのトマス・クックである。1841年6月5日、クックは彼の属している禁酒運動デモのために、人類の歴史上はじめて団体列車を予約することを思いつき、それまでの黒檀細工師から転じて、旅行代理店をひらき、1867年、パリの万国博覧会のときには代理店のチェーンをとおして2万人の見物人をおくりこんだ。この風俗は20世紀にはいって欧米大衆文化の特色の一つとなったとフラン人アンドレ・シーグフリードはいう。

 団体旅行は日本にも入ってきて、1960年代以後、日本が経済大国になってから国内だけでなく海外への団体旅行がさかんになった。1991年度の日本人海外旅行者は1100万人を超え、農協、国会議員、市会議員、近所の主婦たちなどさまざまのパック旅行が旅行代理店をとおして促進されている。

 それぞれの旅行グループは日本人だけからなり、日本語をはなしながら、日本の現代の常識をとおして風景を見る。いわば日本の国のカプセルの内部にあって、外を見ていることになる。

 大国日本のカプセルに入ったままの旅行ではなく、単独旅行者として海外を見た岐部ペトロ、ジョン万次郎、ジョセフ彦、河口慧海、牧逸馬とはちがう流儀の旅である。

 日本人の団体旅行には、トマス・クックの影響から自由な系譜がある。ひとつは、江戸時代の富士講、伊勢参りなどの講中の団体旅行である。もうひとつは明治なかばから、教育熱心な小学校、中学校の教師のはじめた遠足と修学旅行である。早くも1888年8月21日に、文部省は北海道の師範学校に1ヵ年60日以内として修学旅行をおこなうようにという訓令を出した。

 1924年5月15日から23日にかけて盛岡農学校のおこなった修学旅行は、故郷岩手の農村をよくするために北海道から何を学ぶことができるかという切実な問題をかかげてなされた。このことを書いた教師宮沢賢治の「修学旅行復命書」は、彼の全集の中でひとつの重要な位置を占める。

 1871年に右大臣岩倉具視を全権として欧米におくられた視察団は、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文をふくみ、政府首脳を半分に割るほどの重大かつ大規模の人材を海外におくったもので、新政府にとっての冒険だった。これほどの海外視察団派遣は、世界の歴史の中でも珍しいもので、ロシアのピョートル大帝一行の西欧視察団にわずかに類例を認めることができる。このことが貧しい新政府にひきおこした不協和音は、やがて西南戦争にまで尾をひく。

 しかし、こうした不協和音をうんだというものの、政府首脳がみずからを二つに分かち、残留部分に信頼を託したということは、十分にむくいられた。講中も修学旅行も岩倉視察団も、個々の事物を見て学ぶという古くから日本人のなれている考え方に由来する。





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Last updated  2017.06.18 22:46:12
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