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2018.05.08
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カテゴリ: アート
図書館で『陽気なイエスタデイ』という本を、手にしたのです。
国立国会図書館に勤めていた阿刀田さんは、図書館の権威とも言える存在でもある。
・・・ということで図書館を活用するノウハウが見つかるかも♪





阿刀田高著、文藝春秋、2001年刊

<「BOOK」データベース>より
オクラから聖骸布まで…作家の好奇心は尽きない。日々の出来事をちょっと変わった視点から見つめ、紡ぎだしたエッセイ集。そこには新しい発見がある。

<読む前の大使寸評>
国立国会図書館に勤めていた阿刀田さんは、図書館の権威とも言える存在でもある。
・・・ということで図書館を活用するノウハウが見つかるかも♪

amazon 陽気なイエスタデイ


阿刀田さんの運命をかえた1冊とか・・・ブッキッシュなこの人の出会いを見てみましょう。
p100~103
<運命をかえた1冊の本>
 出会い、というものがある。
 ある日、あるとき、突然、出会うのである。その瞬間に、
 -これだ-

 と直感する。なにが、どうして、これなのか、そういうことは、おいおいわかる。おのときは、ただ閃くだけ、ほかに説明のしようがない。

 出会う対象は、神であったり、人であったり、一条の哲理であったり、風景であったり、音色であったり、さまざまだろう。大きな出会いもあれば、小さな出会いもある。一生にただ一度なにかに出会うことができればよいほうなのかもしれない。

 私の場合は、ささやかな出会いだった。1冊の本であった。
 ロアルド・ダール著<キス・キス>、早川書房刊・異色短篇作家集の中のい冊。開高健の訳であった。

 短篇集である。冒頭の作品<女主人>を読んで、
 -これだ-
 と思った。自分の進んで行く道がこのあたりにある、と感じた。夢中で次の作品、次の作品と読み進んだ。射光の注ぐ窓辺・・・。当時、私が仕事場にしていたベランダのデスクだった。

 ロアルド・ダールは文学史に載るような作家ではない。知る人ぞ知る名人、飛行気乗りで、シナリオ・ライターで、ハリウッド女優パトリシア・ニールの夫で・・・知識を得たのは、ずっと後のことだ。

 なによりも作品数の少ない作家だ。短篇を(童話を除くと)せいぜい50篇くらい。その中でも本当によいものは、私見を述べれば、十に満たない。
 だが、<女主人>は絶品だ。私の琴線に響く作品であった。

 舞台はイギリスの片田舎の町。夜遅く、りっぱなビジネスマンを夢みる17歳の青年が列車で着く。宿を捜し、引きつけられるように一つのドアに向かう。女主人が特上の笑顔で迎えてくれた。静謐な気配と鮮やかなエンディング。短篇集の冒頭がこの<女主人>でなかったらば、私の出会いはありえなかったかもしれない。

 翻って考えてみると、出会いは、そのとき急に起きたことのように見えるけれど、本当はそうではない。
 こちらのほうに相応の準備があって、そこで初めて出会うことができる。なにかを求めて・・・出会うべき対象を求めて、それがなんであるかもわからず、どう求めてよいかもわからず、あえぎ続けた結果、あるときヒョイと対象が姿を示す。そういう構造だ。

 私はと言えば、小説を書く必要に迫られ、不慣れな推理小説を書いてみたものの釈然としなかった。
 -おもしろくない。私の個性がどこにもない。こんなことじゃ長続きしない-

 なにかを模索していた。
 かつて療養生活を送っていたとき欧米の短篇小説をわんさと読んで、そこに日本の私小説的作品とはちがった創りものの気配を感じ取っていた。
 -あんなものを書いてみたい-
 と漠然と考えていた。

 その、あんなものが具体的になんなのか、私の求めるあんなものはどれなのか、模糊とした混沌の中から、固まったもの、掴まえられるものを捜していたのだろう。それがダールの<女主人>だった。

 私の短篇小説はダールの摸倣から始まった、と、これはおおむね正しい。が、より正確に言えば、背後にたくさんの欧米の短篇小説があって、そのたゆたいの中でダールに出会ったということ。この条件を抜きにしてダール一人に出会っても、それはきっと出会いにはならなかっただろう。

さんざん気を持たされた<女主人>であるが・・・だまされてもいいから、読んでみたいと思ってきたではないか。
ところで、ダールの絵本 『The ROALD DAHL Treasury』3 を先日、読んでいたのをすっかり忘れていたのです。(イカン イカン)
『陽気なイエスタデイ』1





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Last updated  2018.05.08 05:55:51
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