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2018.09.18
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カテゴリ: 中国
図書館で『歴史・小説・人生』という本を、手にしたのです。
腰巻を見ると、「浅田次郎はじめての対談集」とのことで・・・
これは期待できそうでおます。






浅田次郎著、河出書房、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
中国・新選組・見栄っ張り東京人。自作・男気・愛国心…。浅田次郎はじめての対談集。名匠・浅田次郎のこれまでの人生、小説、そして歴史と世の中の動きを、大きく細かく掘り下げる、魅力のエッセンス。ファン待望の一冊ついに登場。

<読む前の大使寸評>
腰巻を見ると、「浅田次郎はじめての対談集」とのことで・・・
これは期待できそうでおます。

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『蒼穹の昴』に関する張競さんとの対談を、見てみましょう。
(張競:1953年、上海生まれ、明治大学助教授)
p62~66
<梁文秀と李春雲のモデルは>
張: 吉川英治の『三国志』、司馬遼太郎の『項羽と劉邦』をはじめとして、中国の歴史に材をとった日本の小説をいろいろと読んできましたが、この『蒼穹の昴』は私のような中国人にとっても違和感がなく楽しめる上に、他の作家が書いたものとはまったく違った面白さがありました。

浅田: ありがとうございます。

張: 戊戌(ぼじゅつ)の政変という歴史的な大事件を扱うのに、まったく別のところから物語が始まる。社会の頂点で起きた事件を上からたどるのではなくて、下から段々とたどっていく。こういう小説は私が読んだ限りでは、中国にも日本にも今までになかったものです。主人公の二人は同じ農村の出身ですが、梁文秀は士大夫階級で科挙の試験を経て上の世界に上り詰めていく。一方の李春雲(春児)は農村でも一番貧困に苦しんでいる生活から、宦官になって上の社会、宮廷に入っていく。まずうかがいますが、この二人にモデルはいるんですか。

浅田: 梁文秀についてはモデルはいません。梁啓超だと思っている人がいるかもしれませんが、そうではないんです。

張: 実はお会いする前に探してみたんです。戊戌六君子といわれた人たちがいて、その中に楊深秀という人がいます。それで「秀」はいるわけですが、「文」はいない。梁啓超も六君子には入っていないので、違うかなとは思っていましたが。
浅田: 李春雲は小徳張をちょっとイメージしています。

張: なるほど、小徳張ですか。

浅田: 時代的にも小徳張に当っていますよね。彼は西太后の時代最後の大総管になるわけですから。ただ、僕が調べたかぎりでははあまり」いい人じゃなかったみたいなので、ちょっと美化してということで(笑)。

張: 李蓮英(西太后治世時の大総管)は中国でもものすごく評判の悪い宦官ですけれど、小徳張はどちらでもないという感じです。

浅田: そうかもしれませんね。

張: 李春雲が宮廷の真ん中で事件を眺め、梁文秀が宮廷を外から支える官吏として眺める。さらに後半になると、もうひとつ外側の外国人ジャーナリストとしてトーマス・バートンと岡圭之介の視線も加わってきます。これがまたうまいなと思いました。物語を書く上で非常に効果的な構造ですし、読者にとっては意外な展開が連続する仕掛けになっています。こういう設定はやはり意図したものなんですか。

浅田: 意図したというより僕の小説の書き方が、いつもそういう感じなんじゃないでしょうか。大所高所からものを見るような小説があまり好きではなくて、やっぱり下から見上げていく形を大体とっていますから。新聞記者の目から見たりするのも、多角的にしないときちんとは書けないんじゃないかと思ったからで。この場合、全員の視線、スポットライトが当っているのは西太后ですが。

張: 主な時代背景は1886年から十数年という、歴史小説としては短い時間ですが、カスチリョーネ(イエズス会宣教師、宮廷画家)を加えることで、百年以上前の時代と行き来することになり、またヨーロッパから清王朝を眺めるという世界的な視線を持ち込んでいますね。

浅田: カスチリョーネはもともと宣教師として中国に入ってきあすが、これは列強の侵略のひとつのパターンですよね。日本に来たときもそうですが、どこへ行くにもまず宣教師が来る。彼らの目的はもちろん布教なんだけれども、実はその背後にはローマ教皇庁とつながったヨーロッパの王権があって、植民地政策がある。しかし彼は芸術家だから、芸術家として中国で生きることをまっとうしようとする。そういう人生を僕は書いたつもりです。そこのところは自分でも気に入っていますし、彼のエピソードによって、小説全体をロマンティックなイメージのものにすることができたと思っています。

張: カスチリョーネの話が加わったことによって、西太后時代の外国人記者たちの視点もより生きてくる感じがします。

浅田: たしかにそのとおりです。

張: 歴史小説というのは、中国では実は非常に弱い部分なんですね。短篇は魯迅の時代からありますが、長篇は最近ようやく出てきたというところで、それも日本の歴史小説とはだいぶ感じが違います。新しい中国、今の中国が成立してから書かれたものは偏りがあって、例えば李自成(明末の農民反乱指導者)の長篇がありますが、彼と戦った明や清側から描いたものはありません。書き方にしても上から1本線でダーッと、というのがほとんどです。

 その点、『蒼穹の昴』は非常に手が込んでいます。七つの章がそれぞれユニットとしてひとつの物語になっていて、さらにそのなかに小さな物語がはめ込まれている。離れ離れになっている物語がそのつど立体的につながっていって読者を退屈させず、しかも全体がひとつの構造体として成立している。清末という複雑な時代を描くのには、こういう複式物語でなければ語り尽せない。非常にうまくすべてが包み込まれています。

浅田: ありがとうございます。実に鋭い読み方をしていただいて、なんだか自分のおなかの中を見られたような感じです(笑)。


この本も 浅田次郎の世界R16 に収めておくものとします。





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Last updated  2018.09.18 00:10:26
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