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2018.09.21
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カテゴリ: アート
図書館で『歴史・小説・人生』という本を、手にしたのです。
腰巻を見ると、「浅田次郎はじめての対談集」とのことで・・・
これは期待できそうでおます。






浅田次郎著、河出書房、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
中国・新選組・見栄っ張り東京人。自作・男気・愛国心…。浅田次郎はじめての対談集。名匠・浅田次郎のこれまでの人生、小説、そして歴史と世の中の動きを、大きく細かく掘り下げる、魅力のエッセンス。ファン待望の一冊ついに登場。

<読む前の大使寸評>
腰巻を見ると、「浅田次郎はじめての対談集」とのことで・・・
これは期待できそうでおます。

amazon 歴史・小説・人生

アロー戦争

陳舜臣さんとの対談を、見てみましょう。
p26~28
<アロー号事件の真相>
陳: 浅田さんの『蒼穹の昴』には本当に感心しました。近代中国を舞台にした作品をあれだけ書ける作家は、ほとんどいない。短篇は知りませんが、長篇では浅田さん以外にいないんじゃないでしょうか。

浅田: ありがとうございます。
 近代中国のものがないのは、わりと単純な理由だと思うんです。つまり資料が難しい。同じ出来事に関する複数の資料を読んでも、内容にとても矛盾が多くて、どの資料を信頼すべきかの見分けが容易につかないんですね。

陳: そうですね。オーソライズされた資料のほうが、かえって怪しかったりしますから、そこが難しい。

浅田: 知識のある方でも、史実と違うことを意外に平気で言うのが近代中国の歴史なんですね。そのくらいわからない。ですから『蒼穹の昴』を書く際には、僕は陳先生の本に非常に助けられました。

 香港問題にしても、たかだか百年前の話なのに、諸説が入り乱れてわからない部分が随分ある。例えば第二次アヘン戦争のきっかけになったアロー号事件。あの事件にも歴史のミステリーが含まれていますよね。陳先生の著作で読みましたが、アロー号は実はイギリス船籍ではなかったそうですね。
1839年、清朝がアヘンを禁輸にしたことが契機となってイギリスとの間で勃発したのが第一次アヘン戦争。清の敗北によって南京条約が結ばれ、香港島は割譲されてイギリス領になった。1865年には、イギリス国旗を掲げたアロー号に対して清の官憲が臨検を行なったことなどが引き金となり、清と英仏両国との間に第二次アヘン戦争(アロー戦争)が起こり、1860年に結ばれた北京条約によって、九龍南部もイギリス領となった。さらにイギリスは1898年、九龍の後背地である新界一帯を99年間租借する条約(展拓香港界祉専條)を結ぶ。その期限が今年、1997年6月30日をもって切れたことから、割譲した香港島を含め、一括して中国に返還されることになった。

陳: アロー号はアヘンの運搬船です。イギリス船籍なら本来、清は荷物を調べられないんですが、海賊が乗っているという訴えがあったために、臨検を行なった。これがイギリス側に戦端を開く口実を与えることになったんです。

 しかし実際はアロー号はイギリス船籍ではなかったんです。船籍は年に一度、更新することになっていたが、アロー号はその更新の期限が十日前に切れていた。しかも停泊していたのは明らかに清国の領域内。だから本当なら臨検されても文句は言えないんだが、イギリスはそれを隠し、清国側もそんな重要なことを見落としていた。イギリス公使のバウリングは本国に「神かけて絶対に中国に知らせるな」と報告しているんですよ。

浅田: これは大変なことですよね。どこの教科書を読んでも、そんなことは一言も書いていない。イギリスが清を攻撃したのは、当時の事情からみてある程度の正当性があったという歴史解釈が行なわれているわけですが、実際には、イギリスによるまったくの騙まし討ちだった。因縁をふっかけたようなもので、すごい悪いヤツということになる(笑)。

 僕はあれを読んだときに、ちょっと衝撃を受けたんです。アロー号事件と同じようなことが、実は歴史の中で頻繁に行なわれているのではないかと思えてきますよね。僕らが学校で学んだ歴史というのは、ある程度、欧米が正当化されるように書かれていますから。
陳: そうですね。勝者による、一方的な解釈が歴史上の事実とされていることは多いでしょう。

<マカオと香料>
浅田: 今回の香港返還に関する膨大な量の報道のなかで、僕が非常に不思議だと感じるのは、欧米列強による中国侵略の歴史についての言及が極めて少ないということなんです。香港はどのような経緯でイギリス領になったのか、そのとき欧米は中国に対して何をしたか、そのあたりをもっと人は知るべきだと思うんですけどね。
陳: たしかに、なぜこうなったかということは、あまり問題にされていない感じですね。

浅田: 返還になった翌日から香港はどうなるのかといった話ばかり。それも、ほとんどが経済的な側面の関心ばかりだという気がします。しかし、なぜ返還しなければならなくなったかという問題は、実は過去のことではなく、非常に今日的な問題のはずなんですよ。

ウーム イギリスの開戦、戦後補償などのテクニックは帝国主義のお手本なんでしょうね。

更に読み進めます。
p31~33
<アヘンを流行らせた理由>
浅田: 日本にアヘンが入ってこなかった理由は何ですか。

陳: 必用がなかったからですよ。中国の南方では、アヘンは明代からデング熱とかいった風土病の薬として、少量、輸入していたんです。ところが、これを飲んだら気持ちいいぞというのは、イギリスが教えた。

 当時の貿易では、イギリスが一方的な輸入超過。お茶は大量に買うが、売るものがない。それで銀がどんどん中国に流れる。何か売れるものはないかというので、アヘンに目をつけた。
 日本の場合、そうした風土病とは無縁だった。だから薬としてのアヘンは必用がなかったんでしょうね。

浅田: 中国というのは地大物博の国で、輸出するものは何でもあり、完全に自給自足できる。だから貿易では絶対優位にあります。それで困ったイギリスが、貿易不均衡対策としてアヘンを売ったというのは、ものすごく今日的ですね。
 アヘンで言えば、取り締まりを命じられて徹底して職務を遂行した湖広総督の林則徐がいますね。アヘンの徹底取り締まりがイギリスとの関係を悪化させて、結果として香港割譲のきっかけを作ったわけですが、中国における彼の人物評価はどうなんですか。

陳: 非常に高いですね。いまでもアヘン戦争のときの英雄のままです、

浅田: 僕は林則徐という人は、中国の近代史の中では最高のヒーローだと思うんです。中国の役人というと、けっこう権謀術数で動くじゃないですか。ところが林は、そうではなかった。どおんな偉人でも、裏に回ると別の顔があるものですが、林に関してはそれがない。裏からの見方ができない人だと、僕は思うのです。

陳: 裏というのは、本当に林則徐にはないですね。林は命令を受けて、二万箱くらいの膨大なアヘンを回収した。証拠のアヘンを送るので見て下さいと北京に連絡したら、そんなものを送られてはかなわないので、現地で処分しろと北京が命令してきた。そのときの処分が、また徹底している。
 アヘンは焼いてもダメなんですね。

浅田: 焼いても、その地面からまたアヘンがとれますからね。
陳: 三割か四割、元がとれる。だから完全に処分するために、林は50メートル四方の池を二つ造り、それを板張りにして石灰と塩を入れた池水にアヘンを溶かして海に流した。流すときには、ちゃんと海の神様に「こういう毒物を流しますから」とお祭りしています。それで完全になくした。しかもその様子を公開するわけです。イギリス人は、自分のアヘンが処分されるところなど見たくないから来なかったが、アメリカ人のオリファントという人物が見学して、その様子を全部書いています。

 でも、普通の役人なら、ちょっとは横流しをして儲ける(笑)。林則徐は、そういうことはしない。

浅田: そうそう。中国人としては、そこでまず儲けを考えそうなところなんだが、そんな発想は林にはないんですね。正しいと信じたら徹底してそれをやる。あんな気持ちのいい人はいない。中国人では、他にいないんじゃないかと僕は思います


『歴史・小説・人生』3 :宮部みゆきさんとの対談
『歴史・小説・人生』2 :岩井志麻子さんとの対談
『歴史・小説・人生』1





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Last updated  2018.09.21 07:42:15
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