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2018.11.24
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カテゴリ: アート
図書館で『スパイだったスパイ小説家たち』という本を、手にしたのです。
ジョン・ル・カレやサマセット・モームが元スパイだったって・・・
これは読んでみるしかないようです。






アンソニー マスターズ著、新潮社、1990年刊

<「BOOK」データベース>より
ジョン・ル・カレ、イアン・フレミング、グレアム・グリーン、サマセット・モーム…。元スパイだった彼らの作品はいかなる状況のもとに生みだされたのか。作家の実人生と作品との関りあいを綿密に探る。

<読む前の大使寸評>
ジョン・ル・カレやサマセット・モームが元スパイだったって・・・
これは読んでみるしかないようです。

amazon スパイだったスパイ小説家たち



アシェンデン物語に関する部分を、見てみましょう。
p76~78
<「事実は・・・退屈なストーリー・テラーである」>
 ジェラルド・ケリーはスペインで活動する情報部員だった。モームの友人だった彼は、有名な肖像画『道化師』で彼を描いているし、アシェンデン物語のうち少なくとも二篇、「毛のないメキシコ人」と「黒髪の女」は、ケリーの生活で実際に起きた事件にもとづいている。しかしながら、アシェンデン物語の諸篇の大部分は、1915年から16年にかけてのモーム自身の経験にきわめて近い・・・たとえそれがどれほど退屈な経験であったとしても。

 モームは、ほかにも未発表のアシェンデンものを持っていたが、その原稿を読んだウィンストン・チャーチルから、公職守秘法違反のおそれがあると警告されたために原稿を焼き捨てなければならなかった。しかし残った作品群からも、モームのスパイ活動の実態をうかがい知ることができる。

 たとえばアシェンデンがジュネーヴのホテルの部屋でスイス警察の尋問を受ける場面で、スイスにおける活動の説明を求められて、彼は戯曲を執筆していると答える。なぜジュネーヴで執筆するのかという問いに対しては、イギリスは目下戦乱のさなかにあって、執筆の場所にふさわしくないと答える。またバーゼルでは、モームが味方のスパイとの間で悶着を起こしたように、アシェンデンも同様の問題に直面する。バーゼルに配置されてスパイの一人がドイツに情報を売っていて、もう一人が報酬を上げてくれなければアシェンデンの正体をスイス警察にばらすと脅迫する。

 アシェンデンの役割は、味方のスパイたちを訪問し、情報を送り、イギリスからの指示を待つという点で、モームのそれと同じである。アシェンデンはまた、決して読まれることがないとわかっている報告書を書くことに飽きて、あるときそのなかにジョークをまぎれこませたために、悪ふざけがすぎるといって直属の上司に叱られる・・・モームにもこれとそっくり同じ経験があった。

 さらにまた、モームと同じように、アシェンデンもイギリス人の裏切者とそのドイツ人妻を見張るためにルチェルンへ行かされるが、自分はその裏切者をイギリスへ帰らせるための囮だったことに気づく。

 ほかの事件も含めて、これらはみな部分的にモーム自身が経験したことだが、アシェンデンの描写に当ってはかなり誇張されている。チャーチルの要請で何篇かが焼き捨てられたにもかかわらず、残った作品が充分に真実を伝えている。

 ジョン・ル・カレは自作について、モームの伝記作者につぎのように語っている。「アシェンデン物語からはたしかに影響を受けた・・・おそらくモームは、幻滅と、ほとんど散文的といってもよい現実のムードでスパイ活動を描いた最初の作家だろう」また1928年4月12日号の《タイムズ文芸付録》は、「反諜活動が潔癖な人間や良心的な人間には不向きな、道徳的見地からは弁護の余地のない仕事から成り立っていることを、かくも明白に示した作品は空前絶後である」と評している。

 アシェンデンとモームの相似は彼らの経験だけに限られているのではない。アシェンデンはモームの性格的特徴の多くを反映している。彼もブリッジをやるし、中年で、髪の毛が薄くなり、禿げることを恐れている。人間の弱さに寛大で、客観的になれるし、内気ではあるが、彼にとっては素材であるがゆえに退屈な人々と話もする。だがモームが最も恐れていた二つのもの、湾曲足と吃りはアシェンデンにはない。たぶんそれらはあまりにも苦痛が大きかったのだろう。


『スパイだったスパイ小説家たち』1
『アシェンデン』1 :第3章ミス・キング
『アシェンデン』2 :第6章 ギリシャ人のスパイ





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Last updated  2018.11.24 06:20:25
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