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2018.11.24
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カテゴリ: アート
図書館で『スパイだったスパイ小説家たち』という本を、手にしたのです。
ジョン・ル・カレやサマセット・モームが元スパイだったって・・・
これは読んでみるしかないようです。






アンソニー マスターズ著、新潮社、1990年刊

<「BOOK」データベース>より
ジョン・ル・カレ、イアン・フレミング、グレアム・グリーン、サマセット・モーム…。元スパイだった彼らの作品はいかなる状況のもとに生みだされたのか。作家の実人生と作品との関りあいを綿密に探る。

<読む前の大使寸評>
ジョン・ル・カレやサマセット・モームが元スパイだったって・・・
これは読んでみるしかないようです。

amazon スパイだったスパイ小説家たち



ロシアでの任務に関する部分を、見てみましょう。
p94~97
<「事実は・・・退屈なストーリー・テラーである」>
 モームのロシアにおける任務の重要性は、スイス時代のそれをはるかに上回っていた。「ハリントン氏の洗濯物」は、アシェンデンが旅に出発する場面で、モーム自身の心のありようを正確に描いている。
今回の任務はいままででいちばん重要であり、その重い責任感が彼には快かった。だれに命令されるわけでもなかったし、資金は潤沢だったし、人間業とも思えない難事をまかされていたにもかかわらず、ご本人はそうとは思わずに自信満々でこの任務に取りくもうとしていた。

 当然予想されたことだが、ロシアの冬はモームの肺の病気を悪化させ、帰国したときは熱があって、できるだけ早くサナトリウムに入ることを医者にすすめられた。しかし首相官邸のほうがそれ以上に切迫していて、政府高官にまじってほかならぬワイズマンも出席している緊急会議に彼を呼びだした。

 モームはこの会議に新たな報告書を提出した。彼にかわってワイズマンが出席者の前で報告書を読みあげたとき、モームは新しい任務(今度はルーマニア行き)の話を持ちだされて仰天した。依然として自分が信頼されているという驚きから立ちなおると、いまだにロシア行きの任務は完全な個人的失敗だったと思っていただけに、満更悪い気はしなかった。

 しかしすぐに自分の健康状態と医者の忠告を持ちだすと、委員会はこの話を引っこめて、かわりに療養につとめることをすすめた。モームはこの思いがけない心づかいにすっかり感激して首相官邸を辞した。

 モームは自伝的エッセイ『要約すると』のなかで、控え目なプライドとともに情報部時代の活動をふりかえっている。秘密会談のやりかたや、尾行のまきかたや、国境を越えて報告書を持ちだす方法などを教えられたことを述べている。いま思い返してみると、のころの自分はどんなことにでも(裏切りにさえ)慣れることができると感じていたと。しかしながら、彼が冒した多くの危険と同じように、戦争そのものも現実とは思えなかった。彼が読書家たちに遺した遺産はアシェンデン物語だった。

 第二次大戦中、モームハイギリス情報部の新しいアメリカ支部長、サー・ウィリアム・スティーブンソンのもとで、スパイ活動を再開していたらしい。スティーブンソンはテッド・モーガンあての手紙で、モームは自分の指揮下に属していたと述べたうえで、しかし彼をとくに役に立つ人間とは見ていなかったと断っている。

 モームについていうならば、彼はわれわれがBSC名簿から選んだ人材と一緒に仕事をするときに突き当たる問題の典型でした。ナチズムとの戦いに志願してきた多くの人間が、国家緊急のときだからこの仕事をしているのだといって、情報機関で働いていることを隠そうとしました。この仕事が好きだという人間はきわめてまれで、みなほかに選択の余地がないから情報機関に入ったという者ばかりでした。彼らの意志を尊重しないわけにはいきませんでした。

 スティーブンソンのもとではさまざまな友人や知人が働いていた。彼が自伝『』のなかで名前をあげた人々は、みな情報機関で働いていたことが世に知られても差し支えないと述べている。しかしモームの場合は彼らより寡黙だった。

 アシェンデンは最初のアンチ・ヒーロー・スパイであり、その後裔にレン・デイトンのハリー・パーマーやジョン・ル・カレのスマイリーがいる。モームと同じように、アシェンデンも不便を忍ぶことが嫌いである。神経質で、厭世的で、あちこち旅をし、享楽的傾向がある。おいしい料理と、読書と、列車の旅と、長湯が好きである。ジュネーヴでのアシェンデンは、モームと同じように逮捕され投獄される可能性を気にしながらも、熱いバスにつかって慰めを見いだす。『アシェンデン』中の一篇、「ミス・キング」のなかに、ホテルの浴槽に横たわりながら、満足そうに呟く場面がある。

 「実際、混沌とした原初の時代いまにいたるまで連綿と続いているこのばか騒ぎにも、なにほどかの意味があるように思える瞬間があるもんだな」アシェンデンは勇敢でもなければ敏腕でもなく、情報部のとりたてて重要な一員ですらない。事実彼の生活の大部分はモームのそれに劣らず単調で型にはまっている。


『スパイだったスパイ小説家たち』1 :生い立ちから情報部員への登用まで
『スパイだったスパイ小説家たち』2 :アシェンデン物語に関する部分

『アシェンデン』1 :第3章ミス・キング
『アシェンデン』2 :第6章 ギリシャ人のスパイ





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Last updated  2018.11.24 06:12:33
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