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2019.02.12
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カテゴリ: 歴史
図書館で『サピエンス全史(上)』という本を、手にしたのです。
この本は市の図書館に予約し待っていたのだが、大学図書館で見つけて借りたわけです。(いわゆる、学生が本を読まなくなった余波である)
副題に「文明の構造」という言葉があるとおり・・・刺激的な切り口である。





ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
なぜホモ・サピエンスだけが繁栄したのか?国家、貨幣、企業…虚構が文明をもたらした!48ヶ国で刊行の世界的ベストセラー!

【目次】
第1部 認知革命(唯一生き延びた人類種/虚構が協力を可能にした/狩猟採集民の豊かな暮らし/史上最も危険な種)/第2部 農業革命(農耕がもたらした繁栄と悲劇/神話による社会の拡大/書記体系の発明/想像上のヒエラルキーと差別)/第3部 人類の統一(統一へ向かう世界/最強の征服者、貨幣/グローバル化を進める帝国のビジョン)

<読む前の大使寸評>
副題に「文明の構造」という概念があるとおり・・・刺激的な切り口である。

rakuten サピエンス全史(上)



第11章 「グローバル化を進める帝国のビジョン」で帝国の変遷を、見てみましょう。
p244~250
<「彼ら」が「私たち」になるとき>
 多数の小さな文化を融合させて少数の大きな文化にまとめる過程で、帝国は決定的な役割を果してきた。思想や人々、財、テクノロジーは、政治的に分裂した地方でよりも帝国の国境内でのほうが簡単に拡がった。

 帝国自体が意図的に思想や制度、習慣、規範を広めることも多かった。それは一つには、手間を省くためだった。小さな地区がそれぞれみな独自の法律や書記の方式、言語、貨幣を持っている帝国を支配するのは大変だ。標準化は皇帝たちにとって大きな恵みだったのだ。

 帝国が共通の文化を積極的に広めた第二の、そしてやはり重要な理由は、正当性を飽く得することだった。少なくともキュロス大王と始皇帝の時代以降、道路の建設であれ流血であれ、帝国は自国の行動は、征服者よりも被征服者のほうがなおさら大きな恩恵を受けるよう、優れた文化を広めるのに必要なこととして正当化してきた。

 その恩恵は、法の執行や都市計画、度量衡の標準化といった明らかに重要なものや、税、徴兵、皇帝崇拝といった、ときに怪しげなものもあった。だが、ほとんどの帝国のエリート層は、帝国の全住民の全般的な福祉のために働いていると、本気で信じていた。

 中国の支配階級は、近隣の人々や外国の臣民のことを、自らの帝国が文化の恩恵をもたらしてやらなければならない惨めな野蛮人たちとして扱った。天命が皇帝に授けられたのは、世界を搾取するためではなく、人類を教育するためだった。ローマ人も、野蛮人に平和と正義と洗練性を与えているのだと主張して、自らの支配を正当化した。

 未開のゲルマン人や身体に色を塗りたくったガリア人は、汚らしい無知な生活を送っていたが、そこへローマ人がやって来て、法で従順ににし、公衆浴場で清潔にし、哲学で進歩させたというのだ。

 紀元前三世紀のマウリヤ帝国は、ブッダの教えを無知な世界に広めることを使命とした。イスラム教国のカリフは、できれば平和裏に、必用ならば剣をもって、ムハンマドの教えを広めるという聖なる命を受けた。

 スペイン帝国とポルトガル帝国は、西インド諸島や南北アメリカ大陸で求めるのは富ではなく、真の信仰への改宗者だと公言した。自由主義と自由貿易の双子の福音を広めるイギリスの使命には、日が没することがなかった。

 ソヴィエト連邦は、資本主義から理想的な労働者階級独裁への止めようのない歴史の流れを促進する義務を負っていると感じていた。今日のアメリカ人の多くは、自国の政府には第三世界の諸国に民主主義と人権の恩恵をもたらす道義的義務があると主張する・・・たとえそれらの美徳が巡航ミサイルやF16戦闘機によってもたらされるのだとしても。

 帝国によって広められた文化の概念は。もっぱらエリート支配層が生み出したものであることはめったになかった。帝国のビジョンは普遍的で包括的な傾向を持つので、帝国のエリート層にとって、単一の偏屈な伝統に狂信的に固執するよりも、どこであれ見つかる場所から思想や規範や伝統を採用するほうが、どちらかといえば易しかった。

 自らの文化を純化し、自らの根源と見なすものへ戻ろうとする皇帝もいたが、帝国はたいがい、支配している諸民族から多くを吸収した混成文明を生み出した。ローマの帝国文化はローマ風であるのと同じぐらいギリシャ風でもあった。アッバース朝の帝国文化は、一部がペルシャ風、一部がギリシャ風、一部がアラビア風だった。モンゴル帝国の文化は中国文化の摸倣だった。アメリカ合衆国という帝国では、ケニア人の血を引く大統領がイタリア料理のピザを食べながら、お気に入りの映画『アラビアのロレンス』を観ることもありうる。

 ただし、このような文化のるつぼのおかげで、征服された側にとって文化的同化の過程が少しでも楽になったわけではない。帝国の文明は、征服したさまざまな民族による無数の貢献を吸収したかもしれないが、その産物である混成物は、大多数の人にとって依然として馴染みのないものだった。同化の過程は不快で、大きな心の痛手を残すことが多かった。馴染み深く、愛着のある地元の伝統を捨てるのは楽ではないし、新しい文化を理解し、採用するのは難しく、緊張を強いられる。

 支配されている民族が帝国の文化を首尾よく採用したときにさえ、帝国のエリート層に「私たち」の一部として受け容れられるまでには、何世紀とはいわないまでも何十年もあかりうるのだから、なお悪い。征服から受け容れまでの間の各世代は冷遇され続けた。彼らは愛する地元の文化をすでに失っているのに、帝国の世界には対等に参加できない。むしろ、採用した文化からは、野蛮人扱いされ続けるのだった。
(中略)

 中国では、帝国化の事業はさらに徹底した成功を収めた。最初は、野蛮人と呼ばれていた民族集団や文化集団がさまざまに入り乱れていたが、2000年以上の間にそれらが中国の帝国文化に首尾良く統合されて、漢民族となった。中国の帝国が成し遂げた究極の偉業は、この帝国が今なお元気そのものであることだ。ただし、チベットや新疆のような辺境以外では、帝国として見るのは難しい。中国の人口の9割以上が、自分は漢民族だと考えており、他者もそう思っているからだ。

サピエンス全史(上)3 :サピエンスの言語能力
サピエンス全史(上)2 :農耕がもたらした繁栄と悲劇(続き)
サピエンス全史(上)1 :農耕がもたらした繁栄と悲劇





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Last updated  2019.02.12 00:03:06
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