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2019.09.10
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カテゴリ: アート
図書館で『100年後の民芸(美術手帖)』という本を、手にしたのです。
もう民芸でもないだろうとも思うが・・・「100年後の民芸」というノーテンキさがいいではないか♪





雑誌、美術出版社、2019年刊

<商品の説明>より
「民藝」という言葉が生み出されてから、間もなく100年が経とうとしている。
20世紀前半につくられた造語である「民藝」は、
それまで評価されることのなかった日用品や雑器を
「民衆的工藝=民藝」として価値づけ、そこに美を見出したことに始まる。
宗教哲学者の柳宗悦と、その思想に賛同した工芸家らによって推し進められた
「民藝運動」は、美術品に劣らない美が生活道具に宿っており、
ひいては生活のなかにこそ美があると提唱した。
その思想は時代の浮き沈みのなかで文化運動や芸術へも変化し、
矛盾をはらんだ活動と指摘されたこともあるいっぽうで、
私たちの現在の生活文化にも影響を与えている。

<読む前の大使寸評>
もう民芸でもないだろうとも思うが・・・「100年後の民芸」というノーテンキさがいいではないか♪

amazon 100年後の民芸(美術手帖)

山本鼎「ブルトンヌ」

「アウト・オブ・民芸」と題した対談を、見てみましょう。
デザイナー:軸原ヨウスケ×美術家:中村裕太
p58~62
こけしや玩具は、なぜ民芸の仲間に入れなかったのか?
柳宗悦が提唱した民芸運動の近くにありながらも、はぐれてしまった人や物。
周縁(アウト・オブ)を模索してみたら、もやっとしていた民芸の輪郭が見えてきた。
展覧会「アウト・オブ・民芸」を企画した2人が、民芸をとりまく相関図を描き出す。


 京都の書店・誠光社で昨年開催された展覧会と全5回のトークシリーズ「アウト・オブ・民芸」。民芸的な要素を持ちつつも民芸には含まれない、そんな絶妙な位置にある人や物に焦点を当てた。企画した軸原ヨウスケと中村裕太の対話からその全容に迫る。

中村: 「アウト・オブ」と言うと民芸に対する批判だととらえがちだけれども、そうではなく、柳の周辺にいた人の動きを並べてみようというのが始まり。様々な動向の中に柳がいたはずなのに、いまはなんでも民芸とひとくくりにしてしまう傾向があります。そこからはぐれたものを見てゆこうと。

軸原: 例えば、柳がこっぴどく批判した農民美術運動(1919~)。貧しい農民たちに美術教育を施し、手仕事の喜びを伝えるとともに、創作物を販売させることで農閑期の副業として成り立たせようとしたユートピア志向の運動です。この運動を興した山本鼎の功績はすごいものがあります。

中村: そもそも手仕事の喜びを唱えたのはウイリアム・モリス。山本も柳も影響を受けていました。

軸原: じゃあなんで方向性が違ったのか。海野弘「日本のアールヌーヴォー」(青土社、1978年)では見事に言い表しています。山本はロシア革命前夜のフォーク・アートを見て開眼し、これから農民美術をやればいいこと尽しだと考えた。それに対して柳は弾圧されていた朝鮮美術を守らなければと思ったのが始まり。ロシアと朝鮮という出発点の違いから、モリスの過去と未来への二重の志向が両極へと分裂したんだと。

<民芸が手を付けなかったこけしと玩具>
軸原: こけしや郷土玩具は民芸と近いところにあるにもかかわらずグレーゾーンであるというのはよく知られているところ。日本民藝館に収蔵されているこけしは、江戸末期につくられたと言われるまっ黒なものだけ。

 いったいなぜ、郷土玩具はグレーなのか。その答えを民芸運動の機関紙『工芸』51号に柳が寄稿している「民芸と農民美術」で見つけました。そこにはいずれは玩具もつくっていきたいが、用の美を優先することと、本物の郷土玩具を生み出すのは難しいから、いまは手を付けないという旨のことが書いてあり、妙に納得しましたね。

中村: 玩具をいろんな人がすでに語っていたから、ふれなかったというのもあると思います。

軸原: 玩具を初めて体系立てて集めたのは柳より一世代前の清水晴風。竹馬会、集古会、大供会と、みんなで諸国の玩具を持ち寄り食事をするような会にいくつも所属しており、玩具画集『うなゐの友』を出版しています。初めてこけしだけを取り上げた本を出した天江富弥や、各地の郷土玩具を集めて分類し、連絡先を掲載して、買えるカタログ化した武井武雄という人もいる。
(中略)

<生活のレクリエーション>
軸原: 柳の民芸って一点ものではなくて、たくさん無心でつくったなかに美が宿るという、手仕事の複製みたいなものを推奨している。言い換えればそれは複製芸術ではないかと思うんです。

 民芸より随分前(1904年)に、山本鼎を発端として始まったのが創作版画運動。それまで版画には絵描きがいて、彫り師がいて、摺師がいるという完全な分業制だったけど、山本はそれを全部自分でやった≪漁夫≫という作品を雑誌『明星』に掲載した。
 自画・自刻・自刷によって版画を表現として使うという新たな可能性に、ものすごくたくさんの人が影響を受けた。

中村: 芹沢はのちに民芸の雑誌『工芸』の装丁を担当しますが、型染めを始めたきっかけは農民美術の講習会だとか。

軸原: 柳も中心人物だった雑誌『白樺』には富本やリーチ、岸田劉生など民芸と名が付く以前の民芸的な作家が多数関わっています。「白と黒社」という出版社を立ち上げて版画誌『版芸術』という雑誌をつくった料治熊太も、民芸合流前の棟方志功や棟方が憧れていた川上澄生を取り上げている。

 「吾八」という趣味の店をつくり『これくしょん』を刊行した山内金三郎も、美しい本をつくることに情熱を注いだ人物。後に芹沢がつくっていた大部分の限定本は「吾八」から出ていました。

 民芸と民芸的なものの両方を扱った山内みたいな人は、民芸より広い視野で民芸を見ていたと言えるのではないでしょうか。





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Last updated  2019.09.10 07:22:20
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