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2020.12.17
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カテゴリ: アート
図書館で『短編小説のレシピ』という新書を、手にしたのです。
阿刀田さんが選んだ10人の作家がそれぞれいいのだが、太子一押しといえば・・・
ロアルド・ダールとなるわけでおます。





阿刀田高著、集英社、2002年刊

<「BOOK」データベース>より
八百編もの短編小説を生み出してきたマエストロがみずから解説・案内する、短編小説の醍醐味。短いだけに、あらゆる技法を駆使した作品は、おもしろさも多彩。小説作りの源泉と技をも教えてくれる。向田邦子、芥川龍之介、松本清張、中島敦、新田次郎、志賀直哉、夏目漱石、ロアルド・ダール、エドガー・アラン・ポーなど十人の作家の、名作やユニークな作品を具体例として選んで特徴を解説し、短編の構造と技法に迫る。短編小説をより楽しく読むためにも、また書くためにも役立つヒントが満載。

<読む前の大使寸評>
阿刀田さんが選んだ10人の作家がそれぞれいいのだが、太子一押しといえば・・・
ロアルド・ダールとなるわけでおます。

rakuten 短編小説のレシピ


「第2章 向田邦子<鮒>」で短編ハウツウを、見てみましょう。
p38~42
■映画からストーリーを学んだ
 向田邦子は昭和4年(1929)に東京で生まれた。長女(第1子)であった。小説家の仕事をながめるとき、いつごろ生まれて、どんな時代を生き抜いたか、この知識は大切だ。そういう事情とほとんど無縁な作家もいないではないが、生きた時代を知れば見えてくるものがあるのが一般である。

 私小説の書き手なら当然のことだし、向田邦子は私小説の書き手ではなかったけれど、私的な事情が作品の中に、作品の背景に色濃く宿っているタイプの作家である。

 太平洋戦争が始まったときに12歳、終わったときが16歳、多少のずれがあるにせよ、おおむね戦時中は旧制の女学校に在学している。敗戦直後のあわただしさの中で実践女子専門学校に入学し昭和25年に国語科を卒業、今でこそ女性の高等教育など珍しくもないけれど、往時の社会情勢を考えれば、かなりの知的エリートである。
 国語の先生がやれるくらいの教養、といえば当らずとも遠からず。が、向田はその道へは進まず、細かい心情は知るよしもないが、映画雑誌の記者となった。

 昭和20年代、映画はもっとも輝かしい娯楽であり、文化であった。とりわけ堰を切ったように輸入・公開された欧米映画は、多くの大衆に今までしらなかった世界を伝えるほとんど唯一の存在であり、憧れの的であった。まったくの話、今日に繋がる日本人の文化・娯楽・風俗は伝統的なものを除けば、ほとんどがここから始まった、と言っていいだろう。みんなが映画を観て、熱心に感想を語りあっていた。恋愛のやりかただって、

…ふーん、こんなふうにするものなのか…
 少なからずスクリーンからまなんでいた。
…キスって目を閉じてするものなのか…
 と、実技についても思いを馳せていたはずである。向田邦子が、この時期に映画雑誌の記者であったという事実は、彼女の資質に大きな影響を与えたにちがいない。

 新しい時代の考え方、生き方…。しかし向田の代表的なエッセイ<父の詫び状>などを読めばおのずと見えてくるように、彼女の育った家は、家父長制の強い、戦前戦中のしつけを守っていたようだ。出来のよい長女は、自由な気配に触れても軽薄なまで“飛ぶ”ことにはけっして与しなかった。そのせいかどうか向田の作品には今では少し旧弊となった倫理観が見え隠れしている。

 が、むしろここで特筆すべきは、向田が映画雑誌の記者という仕事を通して、数々の日常的なストーリーに触れたということではあるまいか。閉塞した社会とちがって自由な社会にはいろいろなストーリーがある。映画を仕事として考え、娯楽として楽しむうちに、いつしかそのノウハウを感知し、
…このくらいなら書けるかしら…
 能力が培われ、開花へとむかったのではなかろうか。

■シナリオ・ライターから小説家へ
 まずシナリオの執筆から入った。後年に向田自身が書いたエッセイ<わたしと職業>によれば、

 学校を出てから、私は、ある出版社に勤め、映画雑誌の編集の仕事をしていたが、なんとも月給が安いのである。当時、私はスキーに凝っていた。冬になると、お小遣いが足りなくなる。そんなときに、
「テレビの脚本を1本書くと1日スキーにゆけるよ」
 と、番組を紹介されたのである。
 スキーにゆきたさに見よう見真似で書いた1本が、多分、脚本がなかったのだろう、採用されたのだ。生まれて始めて頂いた原稿料で、私は蔵王に出かけた。帰ってきてもう1本書いて白馬へ…。

 私は、至って現実的な人間で、高邁な理想より何より、毎日が面白くなくては嫌なタチである。勤めはじめて7年目。ぼつぼつ仕事に馴れてあきて、スキーでうさばrしをしていたのだが、その資金かせぎで始めたアルバイトが段々と面白くなってしまったのだ。

 結局、ミイラ取りがミイラになる形で、3年間の兼業ののち会社をやめて、ペン1本で食べることにしたわけである。
(中略)
 途中、週刊誌のルポライターやラジオなど、寄り道もしたが、8年前からテレビだけに切りかえて、かれこれ500本に近いドラマを書いてきた。


 と、シナリオ執筆の動機をあかしている。多少の韜晦はあるにせよ、ほとんど事実と信じてよいだろう。折りしもテレビの全盛期を迎え、向田は間もなく第一線のシナリオ・ライターとなったが、この国においてシナリオ・ライターのステータスはけっして高いとは言えない。ほとんどが使い捨ての状態である。ここではその弊を説くゆとりはないが、向田の中に、
…小説を書こうかしら…
 という思いが募り、それを勧める声も高まって、いよいよ本格的に小説の執筆に乗り出す。

 すなわち、<小説新潮>誌に昭和55年2月号から始まった連作短篇<思い出トランプ>であった。このシリーズは翌56年の2月号まで13作を数え、一書となって向田邦子の代表作となっているのは大方がご存知のことだろう。

 連載が始まって5ヵ月ほどたったころ、まだシリーズの途中であるにもかかわらず、そのときまでに発表されていた3編<花の名前><かわうそ><犬小屋>が直木賞の候補となり、第83回の受賞を勝ちとる。選考委員の評価は充分に高いものであった。


『短編小説のレシピ』2 :長編と短編の違い
『短編小説のレシピ』1 :第8章 R・ダール

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Last updated  2020.12.17 05:56:19
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