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2021.05.06
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カテゴリ: アート
本屋の店頭で『たちどまって考える』という新書を手にしたのです。
パラパラとめくってみると、ヤマザキマリの最新評論集のような本になっています。
これは図書館予約している場合ではないでえ・・・ということで、衝動買いしたわけでおます。





ヤマザキマリ著、中央公論新社、2020年刊

<「BOOK」データベース>より
パンデミックを前に動きを止めた社会。世界を駆ける漫画家・ヤマザキマリもこれほど長期間家に閉じこもり、自分や社会と向き合ったのは初めてだった。しかしその結果「たちどまることが実は必要だったのかもしれない」という想いにたどり着く。ペストからルネサンスが開花したようにまた何かが生まれる?混沌とした日々を生き抜くのに必要なものとは?自分の頭で考え、自分の足でボーダーを超えて。あなただけの人生を進め!

<読む前の大使寸評>
ヤマザキマリの最新評論集のような本になっています。
これは図書館予約している場合ではないでえ・・・ということで、衝動買いしたわけでおます。

rakuten たちどまって考える



出だしの松田聖子にはぶりっ子のような振る舞いが、やや鼻についたものであるが・・・彼女が歳を重ねてからは歌の上手さに惚れ直したものです。
ヤマザキマリがその松田聖子を語っているので、見てみましょう。
p150~153
<松田聖子は「アイドル界のカエサル」>
 パンデミックが起きて以来、自宅にいる時間が増えたおかげで、普段なら特別意識しないようなことまで考えるようになりました。たとえば「アイドル」についてです。

 母がヴィオラ奏者ということもあって、私にとって生れたときから音楽は常に身近にあるもので、なくてはならない存在です。現在も連載中の『プリニウス』(新潮社)の共著者であるとり・みきさんとのバンドではボーカルを担当し、ボサノバやジャズなどを歌ったりもしています。

 ただし音楽ばかり聴いていると、思考を働かせて「学習する」ことをなおざりにする傾向が強くなりがちです。30年以上前に安部公房が私的していた事実については先ほど触れましたが、人は特に苦境に置かれると、考えることを放棄して、言語化が不要のエンターテインメントという易きに流れる傾向がある。もちろん、エンタメは私たちのメンタリティにとって大事な栄養素ですからそれはとてもいいことなのですが、加減が必要ではないかとも思うわけです。

 そこで私のお勧めは、音楽を聴きながらの読書。または普段聴いたこともないようなジャンルの音楽を聴いてみる。適度な癒やしを得ながら、脳への刺激になるような気がします。

 なお、この機会にあまり聴いていないジャンルの音楽として私が選んだのが、松田聖子さんの楽曲でした。私は彼女のアイドル全盛期をリアルに体感していた世代ではありますが、今回の自粛期間中に何とはなしにあらためて聴いてみて、彼女の歌唱力にしみじみ感動したのでした。そして、彼女のカリスマ性があれだけのファンをつくり、女性たちに強い影響力を与えた、アイドルという社会的現象が気になり始めたのです。

 実は今に至るまで私は、アイドル、というものをもったことがありません。まわりの友だちが騒いでいたような男性の有名人にはまったく興味が湧かず、それは今に至ってもそうです。何がどうしたら、テレビの画面のなかにいる人に対して、心躍らされるような気持ちになれるのかがさっぱりわからない。

 人として何か重要な感情が欠落しているのではないかとすら思ったこともあります。こういうことは、パンデミックの自粛期間に考えるにはうってつけでしょう(笑)。

 たとえば今のアイドルたちは一様にグループ編成となっていますが、松田さんが連日テレビの歌番組に出演していた昭和のアイドルは、たった一人で人前に立ち、自分の歌唱力だけで歌うことが求められていた時代です。群棲のアイドルと単独のアイドルの精神性の違いや、ファンの思い入れの差異など、気になることはたくさんあります。

 単独アイドルである松田聖子さんは、ほかのアイドルと比べてどこか一歩成熟した意識をもっているように思えるのはなぜなのか。動画サイトを何度も見ながらわかってきたのは、彼女はファンの求める“像”に忠実でいながらも、自分がもって生れたルックスの影響力を客観的によくわかっていらっしゃるということ。

 往年のヒット曲「小麦色のマーメイド」における「ウィンク、ウィンク、ウィンク」という歌詞のくだりでの小さなウィンクは、あのつぶらでありながらも吸引力のある目でなければ成し遂げられないものです。外国人はよくウィンクをしますが、それとはまったく別物です。

 あのウィンクを含む彼女のアイドルとしての表現力、人心に強く訴求する政治力は相当なものです。時に頼りなげだったり、色気があったり、天真爛漫だったり、ころころ変わるあの表情と歌声は松田聖子という人の弁論力です。

 歴代、カリスマ性をもち多くの支持者を得ていた歌手たちは、おそらくみなそういった歌唱による弁論力を備えていたといえるかもしれません。自分の歌でローマ帝国を統治しようと考えていた皇帝ネロなんかが見たら、それはもう悔しがったことでしょう。

ウン バンドではボーカルを担当しているマリさんならではの、指摘でしたね。

『たちどまって考える』5 :日本人の教養p146~148
『たちどまって考える』4 :ニッポンのコロナ感染
『たちどまって考える』3 :ニッポンの世間体p204~206
『たちどまって考える』2
『たちどまって考える』1 :漫画家のくせにp195~197
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Last updated  2021.05.06 00:13:25
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