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2021.09.18
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『海を渡ったスキヤキ』という本を、手にしたのです。
おや アメリカ人はスキヤキみたいな汁ものも好きになるのか・・・
なんのなんの「だんご汁」まで載っているがな。






グレン・サリバン 著、中央公論新社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
一皿、一匙に歴史あり!なぜアメリカで愛されたのか? 驚愕され、注目され、嫌われて、大人気になった、アメリカの「和食」、波瀾万丈のものがたり。

<読む前の大使寸評>
おや アメリカ人はスキヤキみたいな汁ものも好きになるのか・・・
なんのなんの「だんご汁」まで載っているがな。

amazon 海を渡ったスキヤキ


先ず「はじめに」を、見てみましょう。
p1~4
<はじめに>
 時は1970年代。場所はハワイ州ホノルル。
 土曜の昼、テレビの前に張りついていた小学生の僕に、母から声がかかった。
「お昼、田上サイミンに行こうか?」
 ソファから立ち上がり、僕は「イエス」と即答した。

 田上サイミン。通称「タノウエーズ」。ハワイ流ラーメン「サイミン」の専門店だ。経営者は日系の一家で、ラーメン以外の品はみな日本料理である。
 自宅から車を走らせること10分足らずで、僕らは店に着いた。テーブル席に座ると、母は息子に尋ねた。

「前菜に寿司を頼もうね。何がいい?」
「いなり寿司」
「じゃ、あたしは太巻き」
 数分後、二枚の小皿がテーブルに置かれた。いなり寿司1個と、太巻き1切れ。

 いなり寿司の揚げの中には、柔らかめに炊かれた米がいっぱい詰まっている。一方の太巻きには、桜でんぶがたっぷり。合成着色料を使っているせいか、色は怪しげなピンクで、まるでお菓子のように甘い。前菜というより、デザートのような一品である。

 寿司のあとのメイン料理として、ふたりとも「照り焼きビーフ」を頼んだ。牛肉の上にとろみのあるタレがかかっていて、ライスといっしょに混ぜて食べた。
 日曜の夕方、出張から戻ってきた父は母に訊いた。
「ところで昨日は、何を食べたんだ」
 母はにっこり笑って応えた。
「グルメよ。ジャパニーズ・フード」

 それから20年後、日本で暮らしていた僕は、母の「グルメ」という言葉を思い出すたびに、笑いを禁じ得なかった。あんな素朴な料理をよくグルメと呼べたものだ。
 1990年代、当時の僕は東京郊外のベッドタウンに住んでいた。勤務先は出版社、趣味は和食店巡り。粋がって、自分のことを「美食家」と称していた。

 和食に目覚めたのは、仕事仲間に誘われて暖簾をくぐった寿司屋である。
「ウニの握り寿司だよ。だまされたと思って一貫、食べてごらんよ」
 先輩のひとりにすすめられ、
「いや、僕はちょっと・・・」
 と、小声で辞退した。「ウニ」という言葉が耳に入った瞬間、背筋が凍りついてしまったのだ。なぜかというと、この生き物はハワイ人にとって、なんとも恐ろしい天敵であるから。珊瑚礁に付いているウニをうっかり踏んでしまい、全治二週間の怪我を負ったサーファーは、ハワイでは珍しい存在ではない。

 けれど、強くすすめられて断り切れず、おそるおそる口に入れて噛んでみた。ウニの舌触りはまるでバターのようだった。ほんのりとした寿司飯の甘さが口の中に広がっていく。

 なんと味わい深い、優れた一品!
 寿司といえば、「いなり寿司」か「太巻き」だと思い込んでいた、それまでの自分の視野がいかに狭かったかを思い知った。よし、昨日までの僕に終止符を打とう。今夜から、日本料理に対して「通」になったやろう。そう決心したのだ。

 それ以来、日本全国各地で、珍味と言われるものを含めたいろいろな和食を次から次へと食べてみた。両親から「命取りになるぞ。ぜったいに食べるな」と警告されていたフグの刺身。酎ハイを飲みながら肴として食べたイナゴの佃煮。温泉旅館で初めて食べてやみつきになった、あん肝。アパートの近くの定食屋でいつも食べていたモツ煮。
 たくさんの店を食べ歩いた。けれど、僕が期待していた、心がふるえるゆな感動はなかった。あったのは自己満足だけだった。

 日本でさまざまな料理を食べれば食べるほど、子ども時代にハワイで食べた素朴な和食が思い出された。質素ながら、郷愁にも似た優しさを持ち、親近感を抱かせた、アメリカの和食・・・。日本に来て以来、長年蔑んできたその味を、僕は次第に再評価するようになった。
(中略)

「和食」はアメリカでも広く根を張ってきた。僕はそのことを再認識した。
 では、和食はいつごろアメリカに渡ってきたのか。アメリカで和食店をオープンし、成功に導いた料理人は、いったいどういう人物だったのか。僕は好奇心をくすぐられ、古い文献や資料(日本語には訳されていない)をあたって調べ始めた。その過程で、意外な事実がいくつも浮上してきた。

 まず、アメリカにおける和食の歴史は、文字通り、日米関係の最初期から始まっているということ。日本食を初めて口にしたアメリカの要人は、黒船で来日したペリー提督であった。

 それから三十数年後、アメリカ初の日本料理屋が、移住してきた日本人によって開かれた。そのあとには、寿司やすき焼き、鉄板焼きなど、さまざまな和食ブームが起きて、アメリカの食文化を大きく揺り動かすことになる。

 やがて、アメリカ人の味覚にフィットした「アメリカ流和食」という料理ジャンルが生まれ、全米に広がっていく。「アメリカ流和食」とは? たとえばそれはクリーム・チーズ入りの巻き寿司であり、ピーナッツバター入りの餅であり、まるでちゃんばら映画さながらの板前の包丁さばきなのである。

 本書では、そうした歴史を、さまざまなエピソードとともにたどっていく。
 いかがでしょうか。どうぞご賞味ください。
 ようこそ、アメリカの和食の世界へ。





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Last updated  2021.09.18 00:11:10
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