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2021.09.24
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カテゴリ: 自然・環境
図書館で『日本列島の自然と日本人』という本を、手にしたのです。
著者は東北大学応用化学科に学び、IHIに勤務した理系のひとであるが・・・
日本の自然と歴史と信仰を余すことなく綴っています。その真摯なスタンスがええでぇ♪




西野順也著、築地書館、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
緑豊かな国で、縄文の時代から現代まで、人々はさまざまな自然の恵みを活用し、時には痛めつけ、一方でその大いなる存在を敬い、畏れ、愛でてきた。万葉集に登場する数々の草花、戦や築城による森林破壊、江戸時代の園芸ブーム、信仰と自然の深いつながりが息づく年中行事など。日本人の自然観はどのように育まれていったのか。そしてそれは、どのような文化を生み出していったのか。日本人と自然の深い関わりを見つめ、これからの私たちが自然とどう向き合っていくべきかを問いかける。

<読む前の大使寸評>
著者は東北大学応用化学科に学び、IHIに勤務した理系のひとであるが・・・
日本の自然と歴史と信仰を余すことなく綴っています。その真摯なスタンスがええでぇ♪
amazon 日本列島の自然と日本人



『第6章』で森林と林業の関係を、見てみましょう。
p149~151
<『第6章 森林の破壊と再生』>
■7 森林と日本人
 このような豊かな自然が残っているのは、日本人が自然を愛し自然を愛し自然を大切にする国民だからという人がいる。しかし、過去における日本人と森林との関わりをみてみると、日本人は決して森林を大切にしてきたわけではない。自然の美を観賞して歌を詠み、自然を模した庭をつくって楽しんだのは貴族などごく一部の支配層だけで、大部分の庶民は自然の美を観賞するような余裕はなく、自然に対して非常に実務的だった。

 生活のために木を伐り、森林を開墾し、利用したのだ。また、自然を愛した支配層も、自らの顕示欲のためには惜しげもなく木を伐り倒した。日本の森林が崩壊せずに残ったのはいくつかの偶然が重なっただけである。

 まず大きかったのが、日本は温暖で湿潤な気候に恵まれ、森林の復元力が強かった点である。伐り倒しても、数十年すると木が生い茂り森林は復元した。そのうえ、スギ、ヒノキなどの高齢原生林が伐採されるとこれらの林地は広葉樹の多い混交林に変わる。広葉樹は建築材にはむかないが質の高い燃料や肥料を供給してくれる。広葉樹が多くなったことで社会の差し迫った需要を満たすことができるようになった。

 次に社会的な要因がある。飛鳥時代から平安時代中期にかけての略奪期は大型建造物と宮都の建設で畿内の高木林は藪に変わり、耕地に転用された。奈良や京都に近いほとんどの土地では激しい収奪にさらされて環境の変化と劣化が起こっていた。

 しかし、この時代の支配者は伐採活動を日本全体に広げるだけの力を持っていなかった。畿内とその周辺に蓄積されていた森林がひとたび消費されてしまうと、木材の消費を基盤とした活動はもっぱら地域内の森林の生産能力に規定されてしまうことになった。

 安土・、桃山時代から江戸時代初期の近世の略奪期には北海道以南のあらゆる森林が伐採の対象になった。その結果、広い範囲にわたって浸食と洪水が発生し、林地の利用権をめぐる争いがあちこちで頻発するようになった。日本全土の森林に限界を超えた圧力がかかり始め、破局が迫っていた。しかし、この時も森林の崩壊は起こらなかった。

 自給自足の社会が許容し得る最大限の生産能力と人口に達したのだ。日本は島国で外からの資源の供給は限られている。14・15世紀に始まった農業生産と手工業の発達は貨幣経済を進展させ人口成長を引き起こした。増えた人口を養うため積極的な新田開発と土地生産性の向上が図られた。

 当時の技術で農地に転用できるところhすべて農地となり、生産性は極限に達し、人口は18世紀中頃に飽和に達した。農村でも人が増え、農家は家畜を使うよりも家族の労働力に期待するようになり、労働集約的な農業へと変化していった。出産調整が行われるようになり、18世紀後半からたびたび飢饉が発生したこともあり、人口は明治維新までほぼ横ばいとなる。
 その結果、森林への需要も伸びずに低迷し、18世紀後半に広まった人口造林による供給能力の向上を待つだけの余裕ができたのだ。
(中略)

 明治時代以降、さまざまな産業が勃興し、同時に戦争による軍需と戦後の復興が重なり、日本中の木が伐られ、森林は破局寸前まで荒廃した。この時にもさまざまな造林製作がとられたが、最終的には海外からの木材の輸入が自由化されたことで救われた。

 さらには、限られた資源の中で最大限の活動を志向する日本人の習性がある。日本人はものがなくなると外部を侵略してでもそれを手に入れようとはしない。あるものをうまく活用して、自らをその環境に順応させようとする。島国でものが限られている中で生きてきた日本人の生活の知恵である。

 古代の略奪期でも、畿内の森林資源が枯渇すると、解体した建物の廃材を利用したり、建物の規模を縮小したりして対応した。近世でも、人が増え自給自足の社会が飽和すると、瀑布や藩、農民も無理に森林を伐り開こうとはせず、農民は家畜を手放し家族の労働力でまかなうようになり、出産調整をして環境に適応していったのだ。



『日本列島の自然と日本人』2 :日本的な価値観
『日本列島の自然と日本人』1 :日本の風土





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Last updated  2021.09.24 00:16:02
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