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2021.10.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」』という本を、手にしたのです。
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪






陳舜臣著、集英社、2004年刊

<amazon>より
国際的な視野で文明を考える陳舜臣氏の対談。
世界史的な大きな流れの中で、一人一人の日本人は、いま現在をどう生きたらいいのだろうか? 陳舜臣氏が司馬遼太郎氏、桑原武夫氏、ドナルド・キーン氏、山折哲雄氏らと国際的視野で語る対談集。

<読む前の大使寸評>
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪

amazon 陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」




一神教と多神教について語られているあたりを、見てみましょう。対談者は山折哲雄さんです。
p165~169
<文明が出あうとき>
■北緯40度線上は文明の十字路
2001年、バーミヤンの石仏がタリバーンに破壊された。ユーラシア大陸を舞台に、さまざまな宗教が衝突や融合を繰り返してきたが、その悲劇的な象徴の一つだろう。
山折: 歴史を二千年さかのぼると、バーミヤンではガンダーラ芸術が栄えた。西からのギリシャ・ローマ文明、南からインドの仏教文明、東からの中国の文明が出あって、宗教的創造運動を引き起こした。そういう象徴的な地域が、今や争いの真っただ中にある。歴史の皮肉を考えざるを得ない。かつての文明の十字路が、文明の衝突の溶鉱炉になってしまったことを、じっくり考えなければならない。

陳: あの地域は、玄奘三蔵が通ったところでもある。そのころはバーミヤンの仏像は金彩色が施され、天上は飛天で、それを玄奘が拝んだ。そのころが、最盛期だったのではないか。

山折: バーミヤンは北緯35度の地点にあるが、さらに北上して北緯40度線上に遺跡が点々としている。トルファン、楼蘭、敦煌莫高窟、雲岡石窟・・・これらをシルクロードが文明の幹線道路として結んでいた。

 玄奘は北緯40度線をたどって、インドに入るが、その過程でさまざまなマイナーな宗教教団と出あっている。それらはその後、離合集散を繰り返した。ユーラシア全域にわたる文明の膨張と、それに伴うさまざまな政治運動、宗教運動の興亡の歴史を、これからもっと考えなくちゃいけない。

陳: わたしは、以前、13世紀にモンゴルのチンギス汗の孫フラグに滅ぼされたイスラム教の過激派の城、アラムートに行ったことがある。とても険しい尾根にあるのだが、すでに破壊し尽くされて、何もなかった。

 彼らアラムートの人びとは、アサシンと言われて、恐れられていた。英語の「アサシン=暗殺者」の語源ともなったその語の元の意味は「ハシシュ(大麻)を使う人」だと解されている。ところが、アサースというアラビア語は、ファンダメンタル(原理)ということ。つまり彼らは原理主義者だった。

山折: アサシンが暗殺者集団として活躍できたのは、死んで生まれ変わる、死ぬことによって法悦を得られると考えていたからだ。彼らがそのような宗教的観念を持つようになった理由の一つは、厳しい自然条件ではないかと思う。

陳: 風土の違いだけでなく、歴史的なものもある。特に歴史の古いイランの地域では、当時の支配者はイスラム教のスンニ派で、人びとはシーア派だった。そこでシーア派だったエジプト側に、アサシンがついたので民衆に支持された。つまりエジプトとイランの代理戦争だった。

山折: 原理主義は日本にもあった。中世の一向一揆だ。石山本願寺門徒が織田信長の軍団と戦った時、最後の消耗戦の段階では、門徒軍が「進者、往生極楽、退者、無間地獄」の幟を立てる。つまり「進んで戦って死ねば極楽浄土に行ける、逃げて退けば無間地獄に堕ちる」という脅しだ。

陳: 原理主義というのはしばしば外から名付けられるもので、本人たちは自覚しないことが多い。明治維新のころ、清朝時代の中国西北部の新疆にヤークーブ・ベクという将軍が侵攻した。彼はイスラム教徒だったので、イスラム教徒の多い新疆の人たちは当初は歓迎した。ところが人びとがもともとのイスラムの教えから離れ、生活に即してアレンジしているのはいかんと言い出した。これが原理主義だ。

 そして、人を鞭で殴ったり、女の人が外を歩くのは教義に反するからと、宗教警察を巡回させたりした。やがて人びとは「早く清国の官吏が来て統治してくれないかな」と思うようになった。それで、ヤークーブ・ベクは十年ぐらいで滅びた。

 マルコ・ポーロの時には、まだマニ教徒はいた。『東方見聞録』には、何を拝んでいるかわからない中国・福州の人びとのことが書かれている。彼らに「私たちは何者なんだ」と聞かれたマルコ・ポーロは、キリスト教の一種らしいな、と考えた。ところがどうもマニ教らしい。現に泉州あたりでは、マニの遺跡が発掘されている。

山折: マニ教というのは面白い宗教で、ゾロアスター教同様、善と悪の二元論だ。ゾロアスター教では、善が悪を滅ぼすという考え方をしているが。
陳: マニ教も二元論だが、善は善、悪は悪で交わらない。善悪どちらも勝たず、勝負にならない。中国ではマニ教のことを「ニ教」とも言っていた。マニ教が世界から消えた理由の一つは、ほかの宗教に似すぎていたことだと思う。キリスト教などから一種の近親憎悪が出てね、あんまり助けてもらえなかったんじゃないか。

 現在のイスラム原理主義の勢いやイスラエルとアラブの緊張関係を考えるとき、国際関係の上で、宗教的な寛容性がますます重要になっている。

陳: かつてイスラム教が支配していたイベリア半島にはそれがあった。ユダヤ、イスラム、キリスト教徒が仲良く、というかなんとなく暮らしていた。
山折: キリスト教徒が15世紀に半島全域を取り戻したレコンキスタ(国土回復運動)までは、三つの宗教は共存していた。

陳: むしろイスラム教の側は、ユダヤ教徒やキリスト教徒らがイスラムに改宗するのを止めた。改宗したら人頭税が取れないからだ。ところがレコンキスタによって、キリスト教徒以外は追い出された。その時、ユダヤ教徒は、イスラム教徒に付いて、イスラム国へ行った者が多い。トルコのイスタンブールにあるユダヤ人街には、そういうルーツがある。


ウーム 現在のアフガニスタンの暴力・混迷を見るにつけ、宗教的な寛容性がますます求められているようです。

『歴史に未来を観る』3 :神戸と孫文(with加藤徹)
『歴史に未来を観る』2 :日本人と国際化(with司馬遼太郎)
『歴史に未来を観る』1 :モンゴルの世界制覇(with奈良本達也)





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Last updated  2021.10.16 00:20:15
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