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2021.12.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館に予約していた『生命海流』という本を、待つこと4ヵ月ほどでゲットしたのです。
折しも朝日新聞が「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を連載している今、福岡先生のガラパゴス航海記を読んでみようではないか。





福岡伸一著、朝日出版社、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
福岡伸一、ガラパゴス諸島へ。ダーウィン進化論を問い、“本来の生命のあり方”を精密に描き出す。旅のリアルと思索が行き来する、まさしく「動的平衡」なガラパゴス航海記。

<読む前の大使寸評>
折しも朝日新聞が「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を連載している今、福岡先生のガラパゴス航海記を読んでみようではないか。

<図書館予約:(7/24予約、副本1、予約16)>
rakuten 生命海流


マーベル号の出航あたりを、見てみましょう。
p75~78
<2020年3月4日 出航>
 マーベル号の出航は午前1時と決まった。なぜこんな真夜中過ぎの時間になったのか。それは、私の身勝手な希望と、めぐる島々の予定と、船の速度とを勘案した結果、マーベル号船長のヴィゴが、逆算して出した日程だったからである。

 私の身勝手な希望とは、1835年、ここがガラパゴス諸島を訪問した進化論の祖、チャールズ・ダーウィンの乗ったイギリス船ビーグル号のたどった航路を、できるだけ忠実にたどりたい、そしてダーウィンが見たであろう光景と同じように眺めてみたい、という贅沢かつ欲張りなものだった。ビーグル号は1ヶ月あまりをかけてガラパゴスの主要な島をめぐり、重要な海峡をくぐり抜け、十分な調査、測量を行った。それをほんの1週間ほどで追体験しようというのだ。

 そもそもビーグル号の正式名称は、H.M.S.Beagle,Her Majesty's Ship、すなわち女王陛下の船である。イギリス海軍軍人を中心に乗員74娜、大砲6門を搭載する立派な軍艦だった。表向きは調査・測量が任務だったが、真の目的は、大英帝国の海外進出のための地政学的拠点を確保することだった。

 このビーグル号の航路を全部トレースするには、通常のガラパゴスの観光クルーズや定期航路では無理である。なので独自に船をチャーターしなければならない。これが贅沢ということのいわれである。船を1週間借り切るには、操船のための船長、副船長、船員、それから料理人すべてを雇いあげ、燃料、水、食材を積み込まなくてはならない。ヴィゴ船長、グァーポ副船長、船員のフリオ、料理人のジョージの4人が船乗りメンバーである。

 それからガラパゴスはそのほとんどが国立公園となっており、自然保護のための規制があり、立ち入れる場所と立ち入れない場所が厳密に決められている。そして、チャーター船であったとしても、そこに必ず指定のネイチャー・ガイドを同行させ、ガイドの管理の下、視察や行動をしなければならない決まりになっている。そのため、私たちは、ガラパゴス国立公園管理局に勤めていたチャピさんに来てもらった。

 船員もガイドもみなガラパゴスの人で会話はスペイン語である。なので、通訳兼今回の旅行の下準備をしてもらったエクアドル在住の日本人、ミッチさんに来てもらった。彼は両親が日本人で、日本語・スペイン語のバイリンガルだが、エクアドル生まれ、エクアドル育ち、奥さんもエクアドルの人、という生粋のエクアドル人である。小さいころからサッカーとサルサで育った。南米の少年がモテるためには、第一にサッカーがうまいこと、第二にサルサがうまいこと、だそうな。ああ、南米に生まれなくてよかった(といっても、日本でもモテたわけではないが)。

 ミッチさんがいなかったら、南米の荒くれ男(つまり船員たち)と渡り合っていくのはまず不可能で、にっちもさっちも行かなかった。南米ではまずはアミーゴにならないことには何ごとも動かず、アミーゴになるためにはまずは言葉の機微がわからないことには何ごとも始まらないからである。

 日本からは、私、福岡ハカセの他、映像記録担当兼お目付け役として、自然派フォトグラファーの阿部雄介さんが同行してくれた。お目付け役、というのは、福岡ハカセが調子に乗って、採集禁止の昆虫を持ち出したり、ゾウガメの甲羅に触ったり、貝や骨をお土産にしないように、という意味である。

 ガラパゴスの自然物は、生物であれ無生物であれ、どれも島外への持ち出しは厳禁で、島から島への移動も禁じられている。なので靴やズボンについた砂はきれいに落とさなくてはならず、サンプルも顕微鏡視察や撮影をしたのちは、すべて元の場所に戻すことが義務付けられた。

「こそっと持ち出したらどうなりますか」とミッチさんに聞いてみた。
「空港で、手荷物検査があり、トランクもⅩ線装置を通しますので、見つかったら大変です。貝がらくらいだったら、没収の上、始末書、それから今後一切ガラパゴスへの訪問を禁じられますね。もし、もっと重要なものを持ち出そうとしたら、逮捕されて牢屋ですね。南米の牢屋に入ると生命の危険があります」
 うわわわ。それこそ南米の荒くれ男たちにシャワー室の隅などに追い詰められてしまうのだ。看守もグルなので見て見ぬ振り。恐ろしい・・・。
「実際、そんなことがありましたか」

「ええ。かなり前ですが、爬虫類マニアが、トランクに生きたイグアナを入れて持ち出そうとして見つかりました。当然、刑務所送りです。それから、これはエクアドル本土内のことですが、ごく最近、日本人の昆虫オタクが採集標本を無許可で持ち出そうとして摘発され、大使館を巻き込んで大騒動になりました。しかも数が異常だったんです。300点以上です。エクアドルの東側はアマゾンの密林ですから、ヘラクレスみたいなカブトムシがとれるんです。その日本人は泣いて謝ったそうですが、ときすでに遅し。実刑を受けたはずです」
 くわばらくわばら。

『生命海流』3 :まえがき(続き)
『生命海流』2 :まえがき(続き)
『生命海流』1 :まえがき





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Last updated  2021.12.02 07:21:35
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