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2022.05.07
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『芸術新潮(2021年9月号)』という本を、手にしたのです。
表紙のコピーに見られるように、安野光雅さんの追悼特集とのことであり、興味深いのです。






雑誌、新潮社、2021年刊

<出版社>より
【追悼特集】はじめてであう安野光雅
・作品篇 :ふしぎな絵本の王国で遊ぶ、見つける、考える
・人生篇 :空想と独学に生きる
・安野さんとわたし

<読む前の大使寸評>
表紙のコピーに見られるように、安野光雅さんの追悼特集とのことであり、興味深いのです。

shinchosha 芸術新潮(2021年2月号)



「ドライブ・マイ・カー」が語られているので、見てみましょう。
p108~110
<赤いサーブと「声」のゆくえ>
■「あいだに」にこそ宿るもの
 『ドライブ・マイ・カー』は先般のカンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いた。日本映画初の快挙である。実際、精緻なせりふの組み立てに、随所で唸らされる。そればかりではない。「言葉」そのものを映画の構成要素として、繊細かつ大胆に扱う姿勢が素晴らしい。

 原作は村上春樹の短篇小説「ドライブ・マイ・カー」(『女のいない男たち』所収)。同書の他の短篇に想を得た部分もある。また中盤以降では、原作にちらりと出てくるチェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』の上演が重要な意味をもってくる。いうなれば、ハルキが見る見るうちにチェーホフに化け、さらにそれが未知の映画に化けていく。そんな興奮を味わわせてくれる作品なのだ。

 監督・濱口竜介は、数々のインディペンデント作品で声望を高めたのち、前作『寝ても覚めても』で満を持して商業映画に進出した。一貫して濱口作品の根幹にあるのは、「あいだ」を撮ることへの挑戦だ。

 有名俳優や人気スターを配し、できるだけ魅力的な表情をつなぎあわせてドラマを作り出す。それが商業映画のごく一般的なあり方だろう。だが濱口監督の目指すところは異なる。俳優と俳優、顔と顔の「あいだ」にこそ宿る大切な何かに、可能なかぎり注意深くあろうとするのだ。

 とはいえ、「あいだ」そのものは写すことができない。それをどうやって撮るのか。濱口作品における「言葉」の重要性、そして「声」の力の大きさはそこに由来する。
(中略)

 家福は俳優兼演出家である。車を運転しながら、妻・音に台本を吹き込んでもらったカセットテープを流してせりふのおさらいをするのが習慣になっていた。亡き妻の声は『ワーニャ伯父さん』の録音をとおして、彼の日常に随伴し続ける。

 音がベッドで語った話には、自分は「ヤツメウナギ」の生まれ変わりだなどという奇想天外なくだりも含まれていた。春樹作品にすでにあったそのディテールを、映画は拡大する。亡き妻は「ヤツメウナギ」のように家福に吸着し続けるのだ。

 その魅力=呪縛から、家福はどのようにして身を引き離し、過去にとらわれた自己の人生を一新できるのか。そこでせりあがってくるのが演劇の主題だ。家福は広島の国際演劇祭に招聘され、『ワーニャ伯父さん』の演出を担当する。

 オーディションに応募してきた一人が、若手人気俳優、高槻である。生前、音が浮気していたことを言え福はしっていた。高槻はその相手の一人ではなかったか?チェーホフ劇の稽古は、彼と高槻のひそかな心理戦を含むものになる。

 だが、死んだ女をめぐる男二人のつばぜり合いが鋭く迫って来るだけではない。日々の稽古が克明に描かれ、それ自体が映画の実質となる。家福は脚本の読み合わせの際、できるだけ感情をこめず棒読みにするやり方を強いる。記録映画『ジャン・ルノワールの演技指導』でのルノワールの方法を引き継いだ、濱口監督自身のメソッドとして知られるやり方だ。俳優たちは当初、困惑を禁じ得ない。

 しかも家福のプロジェクトの特徴は、アジアの数ヵ国の俳優たちを集めて、それぞれの母語でせりふを言わせる点にある。互いに理解できない言葉を話す俳優たちの「あいだ」に、いったい何が生まれるのか?

■赤いサーブの密室空間で
 興味津々の稽古場のドラマと並行して存在感を増していくのが、三浦透子の演じる専属ドライバー、みさきだ。家福は赤いサーブ900のサンルーフを自ら運転して広島までやってきた。
 だが万一の事故を恐れる主催者側の規則で、演劇祭の期間中、家福は若いみさきに運転を代行させなければならない。亡き妻の声で満たされた親密な空間に第三者が入ってくることで、家福の心のうちにも変化が生じ始める。

 そうしたなりゆきを丹念に描きながら、どの場面も決して平板にならない。そこにはつねに深みがあり、奥行きがある。目の前の現実が、心の底に隠された秘密や、無意識の動きをそっくり保ったまま映し出されているように感じられる。表と裏とのたえざる相互浸透が描かれているといってもいい。





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Last updated  2022.05.07 00:17:23
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