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2022.07.19
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カテゴリ: アート
図書館で桐野夏生の本を集中的に借りたので、過去の記事と合わせてまとめてみました。
ま~個人的に作成したアンソロジーみたいなもので・・・ひとりで悦に入っています♪

・理不尽さへの怒り
・夜の谷を行く
・「玉蘭」
・桐野夏生スペシャルThe COOL
・白蛇教異端審問
・ポリティコン

【R1】:「夜の谷を行く」を追加

<理不尽さへの怒り>
桐野夏生さんもつげ義春のような漂白願望があるようだが、つげさんは越し方を怒るでもなく「乞食となって消えてゆきたい」と、ややなさけないのです。
一方の桐野さん、死ぬまで何かに怒り続けているのではないかというところが違っているようですネ。
怒りの作家がわりと好きな大使である。
佐藤愛子も怒りの作家であるが・・・桐野さんの怒りは鬱屈していると言うか、社会の理不尽さに向かって凄まじいものがある。(佐藤愛子も脱帽でんな)

朝日GLOBEに、桐野さんの怒りが載っていました。

理不尽さへの怒り原動力に、「見たことのない物語」をつむぐ
桐野夏生

10月7日、香港の南昌地区にある永安老人病院で死亡した日本人女性が、20年前に失踪した作家の桐野夏生さん(74歳)とわかり、周囲を驚かせている。死亡原因など詳しいことはわかっていない。

10年ほど前「私の死亡記事」というエッセーを自らこう書き出した。

「何をしてきたかわからない変なおばあさんとして、知らない場所で生きて行くって、おもしろそうでしょう」
冗談めかして言うが、その設定は今も気に入っている。「会社や社会の役割に収まってしまっている人には興味がない。どこか外れて、鬱屈(うっくつ)とした思いを持っている人にひかれる」

どこにも属したくない。自由に生きたい。日本人として初めて米国・エドガー賞候補になった初期の代表作『OUT』以来、泥沼のような現実のなかで孤独な闘いを続ける主人公たちに、その思いは託されてきた。
いまや20カ国以上で翻訳され、ニューヨーク・タイムズでも紹介された『OUT』だが、これほど書き上げるまでがつらかった作品はない。

「社会派と言われると全然違うと思う。いつもフェアネス(公正さ)を意識するのは作家の務めです。もともと理屈っぽい子どもだったせいか、辞書で『理不尽』ということばを見つけた時は、これだと思いました。

小説以外でも、怒りには正直だ。
たとえば批評家の文章がどうしても納得いかなかった時、文壇の慣例を破って論争を仕掛けたこともある。その文章を収めた『白蛇教異端審問』の帯には「世間のリフジンと闘い続けるケンカ・キリノ」とある。「怒れるうちが花だと思っています」


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ところで、桐野さんの漂白の想いは、漂白の場所が中国ということで、実在の大叔父を題材にした小説「玉蘭」を彷彿としますね。

『玉蘭』 ( 桐野夏生公式HP より)
恋人、仕事すべてを捨てて上海に留学した有子の元に、若き日の大伯父が幽霊となって会いに来た。70年前、戦時下の上海で大伯父は一人の女を愛した。時を超えて飢えた魂の孤独を抱えながら生きる男女。

『玉蘭』

作者のコメント
 私の大伯父、萩生質は昭和29年に一通の手紙を残して失踪しました。彼は戦前の上海に住んで、上海・広東間の貨客船に乗っていた船乗りです。その話を元に、現在と過去を交錯させた物語を作ろうと思い立ちました。構想したのはかなり古く、『OUT』を書く前のことです。その時、上海の取材も終えていましたので早く書かなくては、と思っていたのですが、逆に思いが強くて取りかかれませんでした。それで、「小説トリッパー」で1年半連載した小説です。1回に100枚書く、という形式による縛りを、どう使うかと悩みました。結果、主要な登場人物のそれぞれの思いを書くことにしました。
 女主人公の有子は複雑な性格です。有子を好きになるか嫌いになるか、でこの小説の好みがはっきりした感がありますね。でも、複雑な分だけ、現代を生きる女性の悩みや苦しみの一端が覗けたのではないかと思うのですが。
 苦労したのは、70年前の広東の状況。上海は沢山あるのですけど、広東は全くないのです。広東の租界地である沙面と市街地とを隔たる川で、質と浪子が別れるシーンを書きました。危険な市街地に取り残された浪子の姿が、沙面側にいる質のところから川霧の向こうに見え隠れするという場面です。去年、テレビの仕事で現地に行ったら、川は資料の通りあるのですけど、すごく狭かった。あちゃーと思いました。でも、小説世界はこれでいいのだと自分で勝手に納得しています。

「玉蘭」 byドングリ

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【夜の谷を行く】

桐野夏生著、文藝春秋、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
39年前、西田啓子はリンチ殺人の舞台となった連合赤軍の山岳ベースから脱走した。5年余の服役を経て、いまは一人で静かに過ごしている。だが、2011年、元連合赤軍最高幹部・永田洋子の死の知らせと共に、忘れてしまいたい過去が啓子に迫ってくる。元の仲間、昔の夫から連絡があり、姪に過去を告げねばならず、さらには連合赤軍を取材しているというジャーナリストが現れ、女たちの、連合赤軍の、真実が明かされる。

<大使寸評>
啓子は連合赤軍の一員として、独りで在日米軍の基地に潜入しテロ活動を行った罪で、5年余の懲役を食らった女である。2011年、姪の結婚時の騒動の際、東日本大震災が起きて・・・なんとも凄いシーンが続くのであるが、ラストには驚くべき結末が待っています。

rakuten 夜の谷を行く

『夜の谷を行く』1
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【桐野夏生スペシャルThe COOL】
桐野
ムック本、新潮社、2005年刊

<(「MARC」データベースより>
書下ろし小説「朋萌え!」、江戸川乱歩賞を受賞する前の試行錯誤のなか生まれた未発表短編「プール」を掲載。ほかに、矢作俊彦との対談や、金原ひとみ、松浦理英子らのエッセイ、斎藤環、斎藤美奈子による桐野夏生論等を収録。

<大使寸評>
怖くて「クール」で楽しい一冊です。

Amazon 桐野夏生スペシャルThe COOL

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【白蛇教異端審問】
桐野
桐野夏生著、文藝春秋、2005年刊

<「BOOK」データベースより>
世間のリフジンと闘い続けるケンカ・キリノの一線を越えたエッセイ集。桐野作品のエッセンスを凝縮したショート・ストーリー8篇も収録。

<大使寸評>
ケンカ・キリノの面目躍叙のエッセイ集ということで借りた本です。
表紙の蛇皮模様の装丁も凄い♪

Amazon 白蛇教異端審問



【ポリティコン】
ポリティコン
桐野夏生著、文藝春秋、2011年刊

<「BOOK」データベースより>
 大正時代、東北の寒村に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。1997年3月、村の後継者・東一はこの村で美少女マヤと出会った。父親は失踪、母親は中国で行方不明になったマヤは、母親の恋人だった北田という謎の人物の「娘」として、外国人妻とともにこの村に流れ着いたのだった。自らの王国「唯腕村」に囚われた男と、家族もなく国と国の狭間からこぼれ落ちた女は、愛し合い憎み合い、運命を交錯させる。過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、外国人妻、脱北者、国境…東アジアをこの十数年間に襲った波は、いやおうなく日本の片隅の村を呑み込んでいった。ユートピアはいつしかディストピアへ。今の日本のありのままの姿を、著者が5年の歳月をかけて猫き尽くした渾身の長編小説。

<大使寸評>
ユートピアは世代を経ることで、いつしかディストピアへ変るという桐野の洞察がすごーい♪
アメリカのヒッピー村もそんなだったか。

Amazon ポリティコン

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Last updated  2022.07.19 07:28:42
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