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2022.09.30

『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』3

カテゴリ：気になる本

図書館で『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』というビジュアルな本を、手にしたのです。
コロナ禍に慣れてきた昨今はウィズコロナの気分さえ湧くが、この冬はインフルエンザの流行が予想されるとのことで・・・気を引きしめなあかんな。
(なお、2018年刊行のこの本には新型コロナウイルスは出てきません)

河岡義裕×今井正樹著、ミネルヴァ書房、2018年刊

＜「BOOK」データベース＞より
人の命を奪う新型インフルエンザの正体は何か。ウイルスの仕組みからその対処法まで、すべて解き明かします。
【目次】
序章　パンデミックとはなにか／第１章　現代の感染爆発はウイルスが起こす／第２章　病原性ウイルスの素顔と特徴／第３章　体の中の戦い　免疫とワクチンと抗ウイルス薬／第４章　感染拡大を防ぐ社会的取り組み／第５章　感染を防ぐひとりひとりの防衛策

＜読む前の大使寸評＞
コロナ禍に慣れてきた昨今はウィズコロナの気分さえ湧くが、この冬はインフルエンザの流行が予想されるとのことで・・・気を引きしめなあかんな。

rakuten 猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか

かなりはしょりますが、「おわりに」を、見てみましょう。

p138～139
<人類はウイルスとどう向き合うか>
■無数に存在するウイルス
　1892年、ロシアのイワノフスキーがモザイク病のタバコの葉から細菌より小さい病原体の存在を発見し、さらに1898年オランダのベイエリンクが、同じ病原体(タバコモザイクウイルスのこと)の存在を実験で確認し、「ウイルス」と名づけました。人類がウイルスを発見してから100年以上が過ぎましたが、ウイルスの謎がすべて解明されたわけではありません。

　ウイルスは、私たちがよく知っている地球上の生物とはまるで違います。細菌も植物も昆虫も動物もすべて細胞をもつ生命体ですが、ウイルスは細胞をもたない特殊な生命体であり、これまで見てきたとおり、他の生物の細胞に感染し、増殖することでしか生き続けることができません。

　地球上の海、陸、地中のどこにでも、無数といっていいほどのウイルスが存在しています。それは生物の体の中、細菌からヒトまであらゆる生物の細胞の中にも、潜んでいるのです。
　こういう生命体と、いったい人類はどう向き合えばいいのでしょうか。

■ウイルスとどう戦うか　
　本書で扱ってきたのは、ヒトに対して「有害」なウイルス、病原体としてのウイルスでした。病原体と戦うということは、予防法と治療法を確立するということです。予防法はワクチンであり、治療法は抗ウイルス薬です。

　戦いの勝ち負けでいえば、人類がウイルスに勝った例は、天然痘ウイルスと家畜の感染症である牛疫ウイルスの2例しかありません。
　天然痘ウイルスはヒトへの感染者が一人もいなくなったことで、もはや自然界には存在せず、研究用として研究室にのみ厳重に管理されて存在しています。家畜に感染する牛疫ウイルスも同様です。

HIVウイルス

　エイズを起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に対しては、抗ウイルス薬の開発が大きな変化をもたらしました。エイズが致死的だったのは、HIVが免疫細胞に感染し、免疫システムを破壊させて人体が無防備状態になったところにさまざまな病原微生物が感染し、重篤な感染症を引き起こすためでした。抗ウイルス薬がHIVの増殖を阻害するために、感染者が長く生き延びられるようになったのです。

　以前は「小児麻痺」と呼ばれた麻痺症状を引き起こすポリオウイルスに対しては、ワクチン接種がその対策です。抗ウイルス薬はありません。WHOは「ポリオ根絶決議」を行い、全世界でワクチン接種を励行し実行しています。
　ポリオウイルスは、ヒトだけを宿主生物として感染します。ヒトに感染者がいなくなれば天然痘と同じように撲滅可能です。近い将来、実現するかもしれません。

■パンデミックへの対策は？
　パンデミックの危険性を伴うインフルエンザウイルスに対してはどうでしょうか。
　インフルエンザウイルスの怖さは、遺伝子変異が頻繁に起こるところです。鳥、ヒト、豚に複数のウイルスが感染し、遺伝子が混ざり合い(遺伝子再集合)、まったく新しい未知のウイルスが誕生する可能性が、つねにあるからです。

　未知のウイルスにワクチンはつくれません。そのため予防方法がきわめて難しいのです。できることは、ウイルスの感染状況の監視と、どんなウイルスが近い将来流行しそうなのかを予測し、そのウイルスの変異に合致するワクチンを製造することです。
　予測通りであればワクチンでパンデミックを未然に防げます。実際にこうした努力は世界中で続けられています。

『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』2 ：新型と季節性のインフルエンザの違い
『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』1 ：ウイルスの基本

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