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2023.03.14
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カテゴリ: メディア
朝日新聞の吉岡記者といえば、チャイナウォッチャーとして個人的に注目しているわけで・・・・その論調は骨太で、かつ生産的である。
中国経済がらみで好き勝手に吹きまくる経済評論家連中より、よっぽどしっかりしていると思うわけです。

吉岡


朝日のコラムに吉岡桂子記者の記事を見かけたので紹介します。
**************************************************************************

2023年2月20日 ((記者解説)中国経済へのジレンマ 依存しつつ安保で対立、リスクは習氏 より
・中国の力の源泉は米国に次ぐ世界2位の経済。その動向は内政、外交を決定づける
 ・米国は中国との経済関係の一部を切り離そうとしているが、相互の貿易額は過去最高
 ・中国経済の最大リスクは習近平(シーチンピン)氏への権力集中だ。判断が非合理的になる恐れがある

     ◇
 中国の2022年の経済成長率は前年比3.0%と、目標の「5.5%前後」に届かず、世界平均(3.4%)をも40年超ぶりに下回った。この経済情勢の悪化が「ゼロコロナ」政策の転換の大きな理由となった。

 経済活動の本格的な再開をねらう大転換は、世界経済にとって「福音」となった。国際通貨基金(IMF)は1月末に発表した世界経済見通しで、中国の23年の経済成長率について、昨年10月時点の4.4%から5.2%へ上方修正した。世界全体の成長率も0.2ポイント引き上げた。チーフエコノミストのピエールオリビエ・グランシャ氏は会見で、中国の成長率が1ポイント上がれば、他地域に0.3ポイントの波及効果があると指摘した。IMFによれば先進国経済は23年に急減速する。中国の世界経済成長への貢献度は全体の3割前後を占める見通しだ。

 中国の国内総生産(GDP)は過去20年ほどで約15倍に急伸した。22年には米国の約7割、日本の約4倍に達している。輸出と輸入を合わせた貿易総額では米国を抜いて世界トップだ。日本を含むアジアやアフリカなど多くの国にとって最大の貿易相手である。日本の貿易に占める中国の比率は約2割だが、中国に占める日本の比率は5.7%に過ぎない。

     *
 ふくらむ経済を源泉として中国は国際社会での発言力を強めている。米国が主導してきた安全保障の分野から、民主主義や人権といった価値観に至るまで、国際秩序とぶつかることが増えた。米国は秩序そのものの再編を図ろうとする相手だとみなすようになった。日本を含む先進国にとって中国経済は失速すると困るが、成長しても手放しで喜べない存在になっている。

 23年は急回復が見込まれる中国経済だが、過剰債務を抱える不動産業界は成長の牽引役から重荷に変わりつつある。人口減少は想定より早まり、社会保障費の増大もあって中長期的には成長の鈍化は必至だ。米国との対立は長期化が見込まれ、先進国からの高い技術の導入はかつてほど簡単ではない。中国に進出した外資系企業は、部品の供給網の見直しも迫られている。

     *
 米国は安全保障を理由に、中国との経済関係の切り離し(デカップリング)を強める。軍事技術につながる先端半導体などについて、サリバン米大統領補佐官が「小さな庭、高い柵を実行中」と表現したように、一部の製品を囲い込もうとしている。

 一方で、米商務省によれば22年時点での米中の貿易総額は6906億ドル(約90兆円)と4年ぶりに過去最高を更新した。バイデン政権の規制強化で先端半導体などハイテク分野の輸出は減ったが、中国へは大豆など穀物の輸出が、中国からはおもちゃなど日用品の輸入が増えた。米中の相互依存の幅広さを改めて示した。

 ジェトロ・アジア経済研究所のチームはデカップリングが世界経済に与える影響を調べた。米陣営(日欧など)と中ロ陣営、どちらの陣営にも加わらない中立国に分けて試算した。米国が中国に18~19年にかけて実施した関税率引き上げと同等の非関税障壁が25年以降も続く場合、30年の世界経済への影響はマイナス2.3%(約2.7兆ドル)に及ぶ。日米欧や中国もそれぞれ3.0~3.5%のマイナスとなる。

 両陣営と従来通り貿易ができる東南アジア諸国連合(ASEAN)や南米などはプラス0.3%と「漁夫の利」を得られる。チームは「対立が深まれば深まるほど、中立国にとってはどちらかの陣営に属するコストが高まるので、中立を維持する。このため、相手陣営をデカップリングによって世界全体から孤立させられない」としている。

     *
 日本は安全保障上は米国と協調しながらも、自国の経済構造に根ざした戦略が求められる。

 安全保障上の対立と経済の相互依存というジレンマを抱える国々にとって、経済活動を支える外交は死活的に重要だ。昨年10月に中国共産党大会で総書記3選を決めた習近平氏に真っ先に会いに行ったのは、ベトナム共産党首脳だった。南シナ海の領有権をめぐる争いに加えて、かつて戦火を交えた歴史からも対中感情はASEANで最悪とされる。それでも経済にも大きく関わる隣国との関係を重視した対応だ。今年最初に北京で習氏と会談したのは、ベトナムと同じく南シナ海での問題を抱えるフィリピンのマルコス大統領だ。米軍拠点の拡充など米国と関係を強めつつ、習氏にも配慮を欠かさない。

 先進国ではドイツのショルツ首相が昨年11月、主要7ヵ国(G7)の先頭を切って経済界を引き連れて訪中した。ドイツは新疆ウイグル自治区など人権や安全保障の問題から、かつてより距離をとるようになっている。首相の訪中直後にも中国系企業による自国の半導体関連企業の買収を阻止したが、対立点があるからこそ影響を最小限に抑えるために対話に臨んだ。

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2020年1月25日 (多事奏論)新型肺炎「忖度」はウィルスを広げる より
少し老けたが見覚えのある顔だ。
 中国で呼吸器疾病で有名な医師、鍾南山(チョンナンシャン)さん(84)である。感染が世界に拡大する新型コロナウイルスの調査に武漢市へ赴いた専門家チームのリーダーに就いていた。


 「ヒトからヒトへの感染が認められる」。習近平国家主席自らが封じ込めを指示した20日、国営放送の取材に対して当局が認めてこなかった懸念を初めて明言した。

 新型肺炎SARSと呼ばれていた重症急性呼吸器症候群が中国で蔓延した17年前。鍾さんは広州市の病院で治療にあたり、英雄視された。病診の正しさだけではない。実態を隠して幕引きを急ぐ政府に対して「医学的には抑え込んだとは言えない」と喝破した。地方政府などによるごまかしの手法も暴いた。「多くの同僚が倒れているのに、ウソはつけなかった」そうだ。

 当時、新米特派員として上海へ赴任したばかり。何が事実かわからない状況で取材していた私にも、印象深い人だった。
     *
 その鍾さんは、10年前の新型インフルエンザ騒動で再び登場した。各地を視察後、言った。「死者数の発表は信じられない。ごまかしている地域がある」「情報の透明性と公正さが感染拡大を防ぐ大前提」。彼は共産党員である。反体制というよりも、一人の医師、人としてのモラルを感じた。

 「なぜまた鍾南山なのか」――。
 前国家主席胡錦濤氏の出身母体でもある中国共産主義青年団の機関紙中国青年報がこんな見出しの論説を載せていた。「(公式発表を)疑い、監視し、追及し、自分の意見を持って判断しなければならない」。地方政府の情報隠しに手を焼く中央政府の嘆きが浮かび上がるようだ。

 そして、今回もまた、鍾さんだった。習政権は、人々に情報を信じてもらい、部下や地方政府にウソをつかせぬように彼の信用を使ったのだろう。過去の行動に裏打ちされた言葉だから人々に届く。習氏のお墨付きに安心したのか、この日を境に地方政府から発表される患者数が急増した。

 信用は人に宿る。権威や機械だけではつくれない。スマホの決済や位置情報から顔認証システムまで、感染経路を追う技術は格段に進化した。だが、どんなデータを集めようと結局は扱う人に左右される。
     *
 危機は政治を試す。胡・前政権の発足と重なったSARSは、伝染そのもの以上に情報隠しが強い反発を招いた。権力闘争が絡んで、政治的にも危機に直面した胡氏は実態を隠した幹部らを更迭し、鍾さんら良心的な医師や独自の情報を発信するメディアを評価してみせることで乗り切った。

 これをひとつのきっかけとして、普及期にあったインターネットが官製メディアを超えて新しい情報源として世論をより動かすようになった。ネットでつながった人々が当局とは距離を保ち、環境や教育などの市民活動に取り組む芽もでてきた。権威主義的な中国社会で、何かが変わるのではないか。そんな期待が生まれた時期である。

 だが、 習政権のもとで逆回転 している。言論の統制は強まり、ネットは監視の道具と化した。政治闘争を兼ねた腐敗退治は効果をあげたが、 異論封じが体制内で過剰な忖度を招いている。国際社会における中国の影響力は、17年前の比ではない。情報の開示と共有はもちろん、独裁政権のトップが事態を誤認しないことの重要度は高まっている。 習政権になって伝染病に限らず、何人の新しい鍾さんが生まれただろうか。

 自らの専門や担当する分野において、権力におもねらず自らの考えを述べることを積み重ねて信用を得た人の声は、いざというときに説得力を持って響く。 逆に言えば、こうした人々の存在は、国家や組織の統治の危機管理としても必要なのだ。トップが目を背けたくなる事実を遠慮なく提示できる専門家は、社会の力だと思う。なにも、中国だけの話ではないけれど。 (編集委員)

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<吉岡桂子記者の渾身記事33>:2019年12月21日
<吉岡桂子記者の渾身記事32>:2019年11月23日

多事奏論一覧 に吉岡記者の中国論が載っています。





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Last updated  2023.03.14 00:01:31
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