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2023.04.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『文学界 1月号』という本を、手にしたのです。
表紙にあるとおり、砂川文次の新連載というコピーに惹かれたわけです。
「小隊」という単行本を読んだところだが、この新連載「越境」は「小隊」に連なる世界とあるので、チョイスしたのです。




雑誌、文藝春秋、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
雑誌につきデータなし

<読む前の大使寸評>
表紙のコピーにあるとおり、砂川文次の新連載に惹かれたわけです。
「小隊」という単行本を読んだところだが、この新連載「越境」は「小隊」に連なる世界とのことで、チョイスしたのです。

rakuten 文学界 1月号


「越境」第一回の冒頭から、見てみましょう。
p10~12
<1 墜落>
 旧釧路空港エプロンの北側林内で眩しい光が、一瞬ひらめく。空港の周囲は大小の丘と木々に覆われていて、上空から見るとさながら陸地にのめり込んだ空母のようでもあった。

 十年前の紛争により、今は朽ち果て、かつて空港との境界をなしていたフェンスは赤茶けて錆び、あちこちで寸断している。空港から市外へと伸びる道路にも倒壊したターミナルにも弾道ミサイルによって穴だらけの滑走路にも、今は緑が点在していた。

 エプロンには、胴体が中ほどで割れ、ちょうど「へ」の字にその巨躯を折る旅客機が一機と、双発の輸送ヘリ(CH47)が四機、ローターの回転数を落として駐機している。いずれの機体も、後部ハッチを開け、パレットの上に乗った、山積みの段ボール(救援物資)を卸下(しゃか)していた。
 機体の周囲には、小銃を手に警戒に当たる陸自隊員と、受け取った物資を軽トラックやハイエースやダンプなどの種々雑多な車両に積み込む現地人がいた。

 閃光は、まさにその積み下ろしの最中に起きたのだった。
 一発の飛翔体が白い尾を引きながら、CHの吸い込まれていく。飛翔体は北側から発射され、その目標と思われる先頭のCHは、機首をまさにその北側に向けていたから、必然的に弾着は操縦士が搭乗する位置になる。

 入木2尉は、僚機の対戦車ヘリとともに警戒任務に従事していた。救援物資卸下地点を中心に低速で旋回をしているとき、林内での発光を目撃し、「あっ」と声を上げた時には、もう飛翔体はCHの体内に取り込まれてしまっていた。発射された飛翔体は、むしろCHのコックピットから伸びる見えない糸に引き寄せられているようようですらあった。

 着弾と同時に、CHの巨躯は一瞬身震いをする。オレンジ色の閃光。四散するプロペラや航空機の破片。機体の前方は大きく抉られ、炎を噴き上げる。その上部についていたローターの軸だけが回転していた。爆発の衝撃で、後ろ側の回転面が大きく前方に傾くと、自身のローターで機体の銅部を切り裂き始め直後に二回目の小爆発が機体後部のエンジン部から巻き起こる。
(中略)

 飛翔体の発射から二機の輸送ヘリが爆発する一連の惨劇は、多分一分にも満たない間に起きた。訓練を受けていようがいまいが、なすすべもない。秋晴れの空の下、蔦や雑草がたくましく伸びる荒廃した空港で起きる爆発でイリキが感じたことは、恐慌や怒りよりも、なぜだか寂寥感だった。こういう事態が起きたからこうしよう、というようなロジックが一切通用せず、航空機はただ破壊され、周囲にいた隊員は爆風で吹き飛ばされ、飛んでくる破片に身体を切り刻まれている。

 たぶん、個人携帯のロケットかミサイルによる攻撃だろう。そういった認識がふっとイリキの頭に浮かんだのと同時に、無線が堰を切ったように騒がしくなり混線した。

「退避しろ」、「負傷者を収容、遺体は可能な限り収容、できない場合は残置」、「あいつらを下げろ」、「けん制しろ」、「支援を出せ」、等々といった地上部隊の混乱がほとんど重なり合うように届いた。

 後続の二機は、幸いにして前方にいた二機の破壊に巻き込まれることはなかった。周囲に散らばる破片が、ローターによって生じる風圧で吹き飛ばされていく。エンジンカウリングと呼ばれる機体の隔壁や丸みを帯びたキャビンの窓、ローターの破片、誰かのヘルメットといったものが飛ばされていくのを見ると、どうやらCHは二機ともエンジンとローターの回転数を上げて離脱にかかっているらしい。地上でチカチカとオレンジ色の光が煌めく。隊員が、救援物資を取りに来ていた現地人に向けて発砲しているようだった。

 現地人は北海道方面で起きた紛争後すぐに釧路復興協議会というNPO法人を立ち上げて残留道民、難民ロシア人に向けた人道活動を行っていて、今空港にいるのもその一員だ。彼らが無辜の民でも希代の人道主義者でもないことをイリキも地上部隊も派遣任務前の事前教育で知っていた。内実は、反社会的勢力だ。
 困っている人を助けるのにAK(小銃)もスコーピオン(サブマシンガン)もいらない。この攻撃も、あるいは彼らが手引きをしたのかもしれない。イリキがそう考えたのが先か、あるいは地上部隊の交戦を見てもそういう考えが浮かび上がったのかは分からない。ただ、地上部隊の発砲で何人もの協議会職員が倒れ、そして協議会の側も応射して隊員にも損害が出ているのは事実だった。

 二機目のCHから、操縦士や整備員、物資投下をすべく乗りこんでいた隊員らが脱出して後方の機体へと駆けていくのが見える。砲撃で破壊されたわけではないので、キャビンは無事だったのだ。自機の風防を通して、地上がどういう混乱なのかは見て取れる。だが音は全て自機のエンジンとローターの爆音によってかき消されてしまうので、その分だけ現実感をそぎ落している気がした。


ウーム まるで2014年に生じたクリミヤ半島へのロシア侵攻を見ているような戦闘である。ロシアという国にはこのような帝国主義的な謀略教本があるのだろうか?・・・第二次大戦終戦時の圧倒的兵站を備えた効率的参戦を見てみるとそう思わざるを得ないのである。

ところで、四国の田舎に一時帰省することになったので、この日記を明日から1週間ほどお休みにするので・・・ご承知願います。





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Last updated  2023.04.27 01:11:20
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