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2023.06.04
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『語学の天才まで1億光年』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。
ノンフィクション作家の高野さんが学んだ言語は25以上ってか・・・すごいではないか♪




高野秀行著、集英社インターナショナル、2022年刊

<出版社>より
語学は魔法の剣!
学んだ言語は25以上!の辺境ノンフィクション作家による、超ド級・語学青春記。
自身の「言語体験」に基づき、「言語」を深く楽しく考察。自動翻訳時代の語学の意味を問う。
さらにネイティヴに習う、テキストを自作するなどユニークな学習法も披露。語学上達のためのヒントが満載。
そしてコンゴの怪獣やアマゾンの幻覚剤探し、アヘン栽培体験などの仰天エピソードにおける語学についても語られる。『幻獣ムベンベを追え』から『アヘン王国潜入記』まで、高野作品の舞台裏も次々と登場。

<読む前の大使寸評>
ノンフィクション作家の高野さんが学んだ言語は25以上ってか・・・すごいではないか♪

<図書館予約:(10/18予約、副本2、予約65)>

rakuten 語学の天才まで1億光年


「第五章 世界で最も不思議な“国”の言語(中国・ワ州編)」で中国語が語られているので、見てみましょう。
p231~236
<1 言語のノリと中国語の衝撃>
 二十代の後半、私は長い迷走期に入った。だが迷走している本人はなかなかそれに気づかないものらしく、当時の私も「俺は自由に生きている」と信じ込んでいた。
 チェンマイ大学で一年間日本語を教えると、私はあっさり大学講師を辞めた。学生たちはかわいかったし、日本語を教える仕事も気に入っていたが、それ以上に「誰も逝けないところへ行って誰にも書けない本を書かねば」という強い思いがあったからだ。しかし現実には思いばかりが先走り、具体的なことは何も進まなかった。「地道に物事に取り組むことができない」という私の最大の欠点が如実に顕れてしまっていた。
(中略)
■言語を話すときのノリ
 これはコンゴで始めた「物真似学習法」の延長線上にあるものだが、さまざまな言語は学んでいくと、どの言語にもその言語特有のノリとか癖とか何らかの傾向などがあることがわかる。それが語学で決定的に重要だということに気づかざるをえない。いろいろな言い方をすると混乱するので、本書では特に話し言葉に関しては「ノリ」という言葉で一括することにする。

 言語のノリには文法やことばの使い方のほか、発音、口調、話すときの態度、会話の進め方などが含まれると思う。
 例えば、タイ語は口を大きく開けて発音することがまず大事だ。それから音程は常に高め。タイ語のネイティヴの会話は鳥のさえずりに聞こえる。そして話し方は、ひたすら柔らかく優しい。タイ人ハマッチョを嫌い、上品な立ち振る舞いを好むから、女性はもちろん、男性もなよなよっとしている。だから繊細なガラス細工を扱うかのように優しくしゃべると、タイ語っぽくなる。私も、タイ語を話すときは思いっ切りなよなよする。

 ビルマ語の音程は全体的にもっと低く、もっと舌を口の中にべた~っとつける感じで発声する。さらに、しゃべるときはタイ人より堂々とした態度をとり、相手の目をしっかり見ながら、でも明るく優しく喋るとちょうどいい。

 ちなみに、英語ネイティヴによる英語のノリでは、喉の奥の方から声を出す。アクセントが強く、単語の途中のtの音は大半が消えるか日本語のラ行みたいな音に変化し、語尾の子音も消えがちだ。態度としては、相手の目を見て常に笑顔が基本である(と思う)。


高野さんは1990年代に中国に語学留学したそうで・・・そのあたりを見てみましょう。 
p241~245
<2 史上最高の語学教師、莫先生>
 1993年の9月から12月。語学留学としては中途半端なその4ヶ月は、いまだ私にとって「夢のような日々」として心に残っている。
 大連は青い空が広がり、汗かきの私がめったに汗をかかないほど空気が乾燥していて、まるで高原のように爽やかな土地だった。

 大連鉄道学院には私の他に留学生は一人もいなかった。日本人どころか他の外国人も皆無。留学生寮もなく、私は外国人教師用の宿舎をあてがわれた。居間、台所、寝室という2DKの居心地よいアパートだった。
 隣には日本語を教える年配の日本人の先生が住んでいたが、私はたまに顔を合わせて挨拶する低度しか交流をもたなかった。つまり、4ヶ月間、ほぼ中国人としか会わず、中国語しか話さなかった。語学には最適の環境だ。同時に、中国人の世界観や言語観も少しずつ学んでいった。

■「中国語」とは何か
 まず中国人の地理感覚というか世界観。
 中国は漢語圏と非漢語圏に分けられる。約14億人の総人口のうち、約92%が漢族、残りの8%が少数民族だ。多数派の漢族の人たちは自分たち漢族の住むエリアを南北二つに分ける。「北方」(黄河流域とその北部)と「南方」(長江流域とその南部)である。漢族の基本的な「中国」観はこの北方と南方から成り立っており、チベット自治区や新疆ウイグル自治区、内蒙古自治区などの少数民族エリアは外国のような感覚である。
 さらに言えば、中国人(漢族)はこれら少数民族エリアとその向こうにある本当の外国をさして区別していないように見えた。中央である北京や上海からグラデーションのように辺境へ向かっているというのが伝統的な中華世界観なのである。

 これだけ抑えておくと、中国の話はすごくしやすくなる。
 次に肝心の中国語。
 中国語を習い始めてすごく意外だったのは、中国に「中国語」という単語がなかったことだ。それどころっか、日本語の「中国語」に一致する言葉もない。状況に応じて「中支」「漢語」「普通話」「中国語」などとさまざまな言い方が用いられている。実際、中国語とは何かを正確に言おうとすると、ひじょうに難しい。

 そこで私はざっくりと「狭い意味での中国語」と「広い意味での中国語」の二つに分けて考えたい。そうすると、わかりやすいと思う。
 前者は日本人が「中国語、話せる?」とか「私、大学で中国語を習ってるの」などというときの中国語。日本では「北京語」という言い方もされる。英語の「チャイニーズ」もこれに相当する。

 これは清朝以前から全国各地の官庁で使用されていた「官話」(英語では「マンダリン」)をもとに中国の北方の各方言から語彙を集めて作った標準語で、中国では「普通話」と呼ばれる。中国の国営放送のアナウンサーが話すのも、学校の国語教育で使用されるのも基本的にこの普通話である。とはいうものの、各地では官話に由来するさまざまな方言が使われている。それらはひっくるめて北方方言と呼ばれる。
 名前は北方だが、実際は東南アジアに国境を接する南方の雲南省や貴州省などでも用いられている。それらの地域はわりと最近(数百年前)、北方の漢族が、先住民である少数民族を南や山岳部に追いやる形で移り住んでいったからである。

 北方方言は文字通り方言であり、ネイティヴの人たちは互いにだいたいコミュニケーションをとれるとされている。大連の人が雲南省へ行っても(少なくとも都市部なら)困ることはない。

 いっぽう、「広い意味での中国語」とは上海語、広東語、台湾語など南方方言を含む言い方だ。実際にはこれら南方方言は発音も語彙も差異が大きく、それぞれ別言語とも言える言語群である。でも、どの言語も漢字で表記されるから漢語、すなわち中国語だとも考えられる。何より、「これらの広い意味での中国語を話す人=漢族」なのである。
 中国もまた「言語=民族集団」となっているのだ。

■鉄道部という「単位」
 大連鉄道学院で中国語を習うというのは、私にとって大きな意味があった。まず、大連の言葉は普通話に近いから、授業で習う言葉と大連人の会話のギャップに戸惑わずに済んだ。
 もう一つは鉄道学院である。王先生に紹介されて行っただけだが、この選択は大きかった。

 1993年当時、中国人にとって「単位」が生活と人生の全てだった。単位とは所属組織のことである。すべての人が何らかの単位に属する。鉄道部の人は家族ともども全員が単位住居に住み、夫婦とも鉄道部の職場に勤め、子供は鉄道部の学校へ行く。子供は成長すると、これまた鉄道部の仕事に就く。結婚相手もたいがいは同じ鉄道部といった具合だ。

 ただし鉄道部といっても組織は巨大だ。北は内蒙古から南は東南アジアの近く、西はチベットや新疆ウイグル自治区まで、つまり鉄道があるかぎり全国どこでも鉄道部は存在する。鉄道部の中には学校も病院も飲食事業も建設事業もあり、福祉や冠婚葬祭の対応も行われる。所属する人の人口は数千万人に及ぶだろうから、一つの国家みたいなものである。

 したがって、鉄道学院にいる人は教職員・学生とも、すべて鉄道部の人だ。学生は将来、鉄道に関する技術者になる人が多かった。彼らも第二外国語学習を義務づけられており、なかには日本語を学ぶ人もいた。日本語を教える教員は莫先生で、この先生が私に中国語を教えてくれることになった。

 莫先生は風変わりにして型破りな人だった。もう50歳近いのに、十月の肌寒い時期になっても半袖に短パン。暇があれば海で泳いでいるため、はち切れそうな筋肉に、日に焼けた赤銅色の肌、髪は短くて、目はギョロッとしていた。力士のような筋肉質のお腹がポコッと出ている。私は一目見て「半魚人!」と思った。

 初めて事務室で面会したとき、莫先生はむっつりとした顔でタバコを吹かし、「こんなおっかない人が先生なのか」と腰が引けた。私がたどたどしい片言の中国語で挨拶すると、煙をぷわーっと吐き出しながら「問題不大(まあ、大丈夫だろう)」と言った。
 もっとも、私の方も向こうから見たら怪しかっただろう。年齢はすでに26歳、髪と髭をぼうぼうに伸ばしていたうえ、東南アジアの太陽で日焼けしており、とても普通の留学生には見えなかったはずだ。


『語学の天才まで1億光年』2 :フランス文学専修
『語学の天才まで1億光年』1 :インドでの英会話





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Last updated  2023.06.04 00:11:49
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