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2023.07.08
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『不謹慎な旅』という本を、手にしたのです。
副題が「負の記憶を巡る「ダークツーリズム」」となっているのだが・・・ぱらぱらとめくると、戦中から戦後にかけての不幸なエピソードが並んでいて、ついチョイスしたのです。




木村聡著、弦書房、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
そこを訪ねてみなければわからないことがある。忘れてはならない戦跡や被災地、公害・差別・事故現場で耳を澄ませる。現地の人々の声を写真とともに伝える渾身のルポ!!

<読む前の大使寸評>
副題が「負の記憶を巡る「ダークツーリズム」」となっているのだが・・・ぱらぱらとめくると、戦中から戦後にかけての不幸なエピソードが並んでいて、ついチョイスしたのです。

rakuten 不謹慎な旅



戦前の川柳家・鶴彬が語られているので、見てみましょう。

<葬れなかった一七音>
■川柳家・鶴彬
 そこには旧日本陸軍の軍人を専門に収容する監獄があった。場所は大阪城公園の南側。訪れても往時の「大阪衛戍監獄」(後に「大坂陸軍刑務所」と改称)の痕跡はなにひとつ見当たらない。代わって、その獄につながれていた青年の句が、大きな菰野石に刻まれ置かれている。
 〈暁をいだいて闇にゐる蕾〉
 世に発表されたのは監獄から出た後だが、服従しているとき作られ、作者が獄中での自身の姿を投影した句とされる。
 彼の罪は制定されて(1925年)からまだ間もない「治安維持法」の違反。1年8ヵ月に渡る孤独な牢獄生活の“闇”の中で、22歳の青年、鶴彬が抱き続けた“暁”とはいったいどんなものだったのだろう。

■反骨を吐く川柳家
「理不尽なものへの正義感。なにか強い光だったんでしょうなぁ」
 話すのは、鶴彬を慕う大阪の川柳人らでつくる「あかつき川柳会」会長の岩佐ダン吉さんだ。会の名称はもちろん鶴の句からとったもの。大阪城公園に建つ句碑「鶴彬顕彰碑」も彼らの手による。

 石川県高松町(現かほく市)で鶴が生まれたのは1908年末とされる。29歳で彼が没するまでの日本は、満州事変を経て日中戦争、太平洋戦争へと向かう時代だった。後世の人たちは鶴彬を「反戦川柳家」と呼ぶ。ほかでもない、それは彼が吐いた数々の句による。
〈高粱の実りへ戦車と靴の鋲〉
〈ざん壕で読む妹を売る手紙〉
〈手と足をもいだ丸太にしてかへし〉

 鶴の句の魅力について岩佐さんは言う。
「(自衛隊が派遣された)スーダンなんて、“手と足をもいだ”になってもおかしくなかった。彼の句は昔話じゃない。だから風化しない」

 鶴は21歳のときに徴兵される。直後に非合法書物の所持で軍法会議にかけられ、金沢の連隊から大阪衛戍監獄へ収監される。景気を終え、除隊した後に上京。川柳界に復帰することになるのだが、
「ここから鶴彬が真の鶴彬に変容していきます。彼は権力に押しつぶされる人のため力を尽くした。川柳で主張し続けた。『反戦』だけにすると価値が半分です」
 そう評したのは、鶴の著作もある川柳家の尾藤川柳さん。尾藤さんは特徴的だとする鶴の句をひとつ挙げてくれた。
〈弾丸の来ぬところで
 〇〇の
 詩が出来た〉

 このころになって突如、鶴は旧来の形式を破った三行詩を書き始めていた。表現方法の革新に目を向けたのも、「定型」という権威、権力に対しての反逆だったのではないかと尾藤さんは考える。
〈蟻食ひの糞殺された蟻ばかり〉
〈貞操を為替に組んでふるさとへ〉
〈胎内の動きを知るころ骨がつき〉

 文芸表現の先鋭化とともに、内容も思想的過激さを増す。鶴の句は時局からいっそう葬りたい存在になっていった。28歳、再び治安維持法違反で検挙となり、東京の野方警察署(中野区)に留置される。翌年、拘留中に赤痢に罹り病院へ移されるも、ベッドの上で体を縄で縛られたまま帰らぬ人となった。

■弱者の中で磨かれた川柳
〈エノケンの笑ひにつづく暗い明日〉
 鶴が世を去る前年(1937年)の句だ。この4年後、東京の本法寺(台東区)には「はなし塚」が建てられた。酒や廓、間男などが登場する落語53席が時局にそぐわないと禁演になり、それらを葬る塚だった。「笑ひにつづく」先に鶴が予見した「暗い明日」とは、すぐ目前の未来だったのである。


『不謹慎な旅』2 :麻薬大国ニッポン
『不謹慎な旅』1 :吉野川の防災資源





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Last updated  2023.07.08 00:06:23
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