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2023.07.22
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カテゴリ: アート
図書館で『藤田嗣治パリを歩く』という本を、手にしたのです。
先日『パリの日々』という本を読んだところだが、その勢いでチョイスしたわけです。




清水敏男著、東京書籍、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
フジタの足跡をたどる「エコール・ド・パリ」15日間の旅ー。ピカソやモディリアニなどとともに時代のど真ん中で活躍した画家・藤田嗣治。藤田の足跡を追ってパリを追体験し、作品の背景や込められたさまざまな物語を読み解く。当時の面影が強く残るパリの美しい街並みの写真も多数掲載。パリへの慕情も募る、もう一歩深く楽しめるガイド。

<読む前の大使寸評>
先日『パリの日々』という本を読んだところだが、その勢いでチョイスしたわけです。


rakuten 藤田嗣治パリを歩く



パリのエトランジェが語られているので、見てみましょう。
p131~135
<第9日:カンパーニュ・プルミエール街23番地 14区>
 23番地の藤田のアトリエはカンパーニュ・プルミエール街から直角に延びるパッサージュ・ダンフェール(訳せば地獄の通り道)側にあったようだ。写真で見るとかなり広い。とくに天井が高いので最初からアーティスト用のつくりになっていたのだろう。藤田研究家の夏堀全弘の著書によると最初は借家だったが1952年に購入、住居とアトリエの壁をぶち抜いた、とある。

 住人ではないので入ることはできないが下から見上げると大きなガラス窓がはめ込まれたフロアが三層ある。1952年に藤田を訪れた阿部徹雄のスケッチによれば藤田が絵を描いていた机はカンパーニュ・プルミエール街側ではなくパッサージュ・ダンフェール側に面した大きなガラス窓の下に置かれていた。阿部の写真によればカンパーニュ・プルミエール街側は壁で、今はパリ市立近代美術館に収蔵されている『ジュイ布のある裸婦』が吹き抜けの壁の上の方に掛けられていた。
『ジュイ布のある裸婦』

 1950年代から60年代初めにかけての藤田の絵はそのアトリエで生まれた。
 この時期は藤田の生活も大きく変化した時期だ。年代を追ってみよう。
 1954年にユキと正式に離婚。修正の妻となった君代夫人と入籍した。翌1955年には夫婦でフランス国籍を得た。日本国籍は抹消、芸術院会員を自体。フランスに住むには名声だけでは足りない。まずは国籍を得なくてはならない。1957年にレジオン・ドヌール勲章を受章。1958年ベルギー王立アカデミー会員。1959年10月カトリックに改宗した。場所は歴代のフランス国王が洗礼を受けた地であるランスだ。藤田のフランス化の仕上げである。

 しかし藤田がパリのエトランジェ(異邦人)であることは変わらなかったのではないか。
 それには二重の意味がある。まず日本人である、ということ。日本人はフランス社会において永遠にフランス人になれない。説明は難しいがフランス人はフランス人でなくてはならない、とパリに住むとつくづく思う。アメリカ合衆国のように新しい移民たちが集団を作ってアメリカ人を名乗れるようにはいかない。

 そして藤田がアーティストであることだ。エトランジェであることはアーティストの宿命なのだ。いやそうであることが求められている。アーティストは宗教や国家が求心力を失ったこの世界で現実を超越した存在としての「芸術」を司るものであり、現実世界から離れた存在でなくてはならない。

 藤田はコスモポリタンである。つまり藤田は、国際的なアーティストとして地球規模に拡散した「芸術」という共同体に連なる存在ではあるが、芸術以外の如何なる共同体にも属さないというポジティブな意味でエトランジェなのだ。 


『藤田嗣治パリを歩く』3 :パリのエトランジェ
『藤田嗣治パリを歩く』2 :パリ国際大学都市
『藤田嗣治パリを歩く』1 :リュクサンブール公園





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Last updated  2023.07.22 07:45:56
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