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2023.09.25
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カテゴリ: メディア
世界各地に覇権の競合関係が生まれている昨今であるが・・・
内田樹×姜尚中という組み合わせの対談を復刻して読み直してみようと思うのです。

*********************************************************
図書館に予約していた『アジア辺境論』という本を、待つこと3ヶ月でゲットしたのです。
日韓の両政府はともにナショナリズムを煽るので、日韓同盟が成立する気運は見えないのです。で、お二人の対談でバカな両国政府につける薬を模索しようではないか。



辺境

内田樹×姜尚中著、集英社、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
アメリカ、欧州で排外的な政治勢力が台頭する中、ロシア、中国の影響力が日増しに拡大している。米ソ対立の冷戦終結から四半世紀経ち、世界各地に複数の覇権の競合関係が生まれている。はたして、その狭間で日本が生き残るためには何が必要なのか?その鍵は日・台・韓の連帯にあり。アメリカとの一方的な従属関係を見直し、中国、ロシアなど、スーパーパワー間にある中小民主主義国家同士の協力関係の構築はいかにして可能か。世界史レベルの地殻変動と戦後の平和国家的な国のあり方を蹂躙する近年の日本の政策を目の前に、リベラルの重鎮ふたりがその理路を提示する。

<読む前の大使寸評>
日韓の両政府はともにナショナリズムを煽るので、日韓同盟が成立する気運は見えないのです。で、お二人の対談でバカな両国政府につける薬を模索しようではないか。

<図書館予約:(9/20予約、12/26受取)>

rakuten アジア辺境論


「第4章 不穏な日本の行く末」で“貧困な政治”が語られているので、見てみましょう。
p181~186
姜: 本来政治というのは、金儲けができない、身動きもできない、そういう弱い人たちでも、ちゃんとある程度安心した生活ができるようにしますよという、セイフティネットを敷く社会的な営みですが、今は逆にそういう人たちを締め出しにかかっている。2017年1月に発覚した小田原市の生活保護なめんなよという話も、ひどかったですね。市の職員が「保護なめんな」と書かれたジャケットを着ていた。Tシャツやボールペン、マグカップなどのグッズにも、その恫喝フレーズが書きこまれていて、保護受給者を威嚇していた。

内田: ひどい話ですよね。

<政治の消滅――公的資源の私物化>
姜: そういう締め出しが頻繁に起きていることが、政治が消滅して、私物化されている象徴だと思うのです。今おっしゃったように、ナショナリストが公的に物を言うときは、公的な資源をできる限り私的に利用しようという魂胆がある。そして、おためごなしの大義名分をふりかざして、金を出さずに儲けは自分のところにという腹なんですね。旧ソ連解体のときに、マフィアが公共財を全部持って行ってしまったでしょう。あれと同じです。

内田: 規制緩和という口実の下で今、日本の指導層がやっているのは、旧ソ連の解体過程で、目端の利いた連中が国家財産を私物化したのとそれほど違うわけではない。

姜: そうでしょう。

内田: 社会福祉を減らせとか、教育に金をかけるなとか、病気になるのは自己責任だとか、基本的人権など配慮するに及ばないなどと言う人間が言っているのは、要するに生産性の低い国民のためには金を使わない、それは強者、つまりオレたちのような生産性の高い人間たちに優先的に配分されるべきだ、それが国益増大につながるのだから、ということに尽きるわけでしょう。

 国民全員が何世代にもわたって積み立ててきた国民資源を、「オレが活用して、どかんと増やしてやるから、いいからオレに回せ」と言っているに過ぎない。それではあまりににべもないので、「オレたちのような強者に優先的に国民資源を配分すれば、それだけ国益が増大する。すべては国益のためだ」という、ナショナリスト的な言い訳を装飾的に利用しているだけです。

姜: うん、税金は取るだけ取って、再配分はしぶる。行くべきところに行かない。

内田: 社会的弱者が弱者であるのは自己責任なんだから、弱者救済に公的資金を投じる必用はないということを言い立てる人間が本当にたくさんいますけれど、それは要するに「社会的強者である自分にこそ公共的な財を優先的に分配しろ」ということです。

 人工透析を受けている人に向かって、自己責任なんだから死ねという暴言を吐いた人間を候補者に選定したのは、まさにそれが彼らの本音だからです。

姜: あれもすごかったですね。でも内心同調していた人も結構いるんじゃないのかな。オレたちの税金をそんなやつらに使うなって。

内田: 小田原も全部根っこは同じだと思います。議員であれ、市役所の職員であれ、公的な機関に属する人たちが、弱者支援をどうやったら「しないで済ませられるか」、その理屈を考えている。

 この社会ではフェアな競争が行なわれていて、その結果、高い格付けを獲得した人間には国民資源が分配され、格付けの低い人間は努力が足りなかったのだから、その不幸は自己責任であり、いかなる公的支援も請求すべきではない、そういうことをメディアやネットで発信する人間がたくさんいて、それこそがフェアネスだと信じている人間がどんどん増えている。

姜: それを彼らはトリクルダウンと言っているんです。今の日本に本来の意味のトリクルダウンなんかないですよ。

内田: 『仁義なき戦い』で金子信雄演じる山守組長が子分たちを指さして「こいつらが集めてくるこまかい銭をわしがどーんと張って、儲けてやっとるんです」という場面がありますけれど、まさにあれがトリクルダウンの論理ですね。

姜: 『仁義なき戦い』でもそうでしたか。そうすると、トリクルダウンは、「ザ・ヤクザ用語」ですね。

内田: とにかくオレのところに金を持って来い。オレがうまく運用して、儲けてやる。お前たちはいずれその恩沢に浴するんだからがたがた言わずに金を出せ、と。
 社会福祉とか、健康保険とか、公教育とかに「こまい銭」を使っていると、どかんと張るコマがなくなってしまうから、四の五の言わずにオレによこせ。山守の場合は他の組としのぎを削っているんだから、「まず組のため」というのが大義名分ですけれど、今の日本の場合は「お国のため」です。よそが「うちのシマ」を狙っているから。

姜: うん、北朝鮮とか韓国とか中国とか…。

内田: ロシアとか。潜在的には日本は常に仮想敵国に囲まれているということになっている。だから、お国のためを思ったら、オレのところに金を持って来い。そういうロジックです。そうしないと経済成長できない、そうしないと国際競争力が低下する。「欲しがりません、勝つまでは」ですよ。彼らの私腹を肥やすために「ナショナリズムのようなもの」が大義名分に掲げられている。
(中略)

姜: メディアがそうだから人々もそれに乗せられて、平気で弱者たたきをするような風潮になっていますよね。「生活保護なめんなよ」の話にしても、驚くべきことに、生活保護の不正受給率って、たったの0.5%なんですよ。ほかの99.5%は正当に受けとっている人たちなんです。その0.5%に向けて、職員がこぞって不正受給を阻止しろと気炎を上げるって、極端じゃないですか。多分、あの怒りは不正受給だけでなく、正当な受給者にも向けられているんでうしょね。

 僕がカフェでお茶を飲んでいたら、4、5人の女性客がしゃべっているのが聞こえてきたんですよ。「生活保護の不正受給って嫌だわね」「何であんな人たちにお金をあげるのよ」と、不正受給の話で盛り上がっていて。

内田: なんでそんな話で盛り上がるんでしょうね。

姜: 多分、その人たちは自分たちが話している不正受給者が0.5%という数字なんだということも、当然知らないでしょうね。なのに、メディアやネット情報でそういう話が持ち上がると、小さな遵法意識みたいなところで、天下の一大事のように話すわけです。これは抑圧移譲なのかどうかわかりませんが、為政者がわざわざ言わなくても、日本の土壌にはもうそういう状態がつくられているんです。

内田: そうなんです。一般市民が公務を代行して、正義の鉄槌を下している気分なんでしょうね。そういう人たちは、医療や教育を、車とか洋服とかと同じものだと思っている。それを手に入れて「いい思い」をするのは本人なんだから、受給者負担の原則を適用しろと本気で考えている。

ウーム 『仁義なき戦い』を俎上に乗せて、トリクルダウンやナショナリズムを解明するとは、卑近というか面白いでぇ。

『アジア辺境論』1 :独裁者
『アジア辺境論』2 :トランプのアメリカ
『アジア辺境論』3
『アジア辺境論』4 :韓国での漢字復活
『アジア辺境論』5 :日韓の対立
『アジア辺境論』6 :日韓のナショナリズム
『アジア辺境論』7 :国民国家の統合





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Last updated  2023.09.25 01:02:50
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