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2023.10.15
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『カラス屋、カラスを食べる』という新書を、手にしたのです。
マッドサイエンシストとは言わぬまでも・・・かなりの入れ込み具合ではあるなあ♪




松原始著、幻冬舎、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
カラス屋の朝は早い。日が昇る前に動き出し、カラスの朝飯(=新宿歌舞伎町の生ゴミ)を観察する。気づけば半径10mに19羽ものカラス。餌を投げれば一斉に頭をこちらに向ける。俺はまるでカラス使いだ。学会でハンガリーに行っても頭の中はカラス一色。「地方のカフェにワタリガラス(世界一大きく稀少)の標本がいる」と聞けば、道も店の名も聞かずに飛び出していく。餓死したカラスの冷凍肉を研究室で食らい、もっと旨く食うにはと調理法を考える。生物学者のクレイジーな日常から、動物たちの愛らしい生き方が見えてくる!

<読む前の大使寸評>
マッドサイエンシストとは言わぬまでも・・・かなりの入れ込み具合ではあるなあ♪
rakuten カラス屋、カラスを食べる


「第3章 味覚生物学のススメ」で、タイトルと同じ個所を見てみましょう。
p59~61
<カラス屋、カラスを食べる>
 こんな具合で、大学の研究室というところは、ちょいちょい、妙なものを食える。
 ある日、私たちは一乗寺の平野の部屋に集合した。テーマは「ちょっと変わったものを食べてみる夕べ」。食べるのは、ハシボソガラスとハクビシンである。

 参加者は私、そしてハクビシンの研究者である秋山。こういう時は忘れず顔を出すクボ、家主の平野。そして秋山の研究室に入った子で、カラスをやってみようかな? というミドリちゃん。ただし彼女はごく普通の女の子であって、この怪しい面子の中では浮き気味だ。ハギスの中におはぎが交じっているくらい、浮いている。
 ちなみにハギスというのは刻んだモツや肉を羊の胃袋に詰めて蒸すか煮るかした、スコットランドの名物料理だ。ミンチの詰まったソフトボール、あるいは肉々しい餅巾着と思えば、だいたい合っている。こう書くと相当気色悪いものに思えるが、先輩の土産を食った限り、別にまずいものではない。ただ、見た目は想像に忠実に、気色悪い。

 ハシボソガラスを持ち込んだのは私。こないだ調査地で死にたてほやほやの死骸を拾ったからである。かわいそうに明け方の冷え込みで死んだのか、死後硬直も始まっていないくらい新鮮だった。研究室に持ち帰って解剖してみたら、若い雄とわかった。生殖腺を探しても見当たらず、解剖に慣れた先生に見てもらってやっと見つけたのは、小指の爪の先ほどで白豆のような形をした、背骨の左右にへばりついている器官だった。春だというのに全く発達していない。繁殖していないということだ。

 この個体が誰なのかは、だいたいわかっている。前日の調査中に見かけた、3羽 の若い他所のうちの1羽と見て間違いないだろう。
 死骸を拾った日の前日、下鴨神社では、α、βと名付けた顔見知りのハシボソガラスのペアが怒りっぱなしだった。駐車場のハシボアペアも怒りっぱなしだった。馬場のハシボソペアも怒っていた。
 この3ペアの縄張りの中に、3羽 の若いハシボソガラスが下りて来たのである。どの縄張りの中に入っても追い立てられ、若造たちは縄張りの接する狭い隙間、直径10メートルほどの範囲に押し込められてしまった。

 日没になり、私が調査を終了するまで、若い3羽はそこにいた。多分、夜もそこにいたのだろう。前日の騒ぎで、彼らはほとんど餌を取れなかったはずだ。そして夜半から真冬に戻ったような寒さ。かわいそうだが、餌不足のまま凍える夜を過ごし、朝は迎えたがもはや限界だったのだろう。

 小鳥の中には、寒い夜には一晩で体重が10パーセントも減るものがいる。脂肪を燃やして体温を維持しているのだ。翌日の昼間にせっせと食べて減った体重を回復させなければ、夜の間に死ぬ。冬のスコットランドでの研究例では、セキレイが昆虫を捕まえるペースは秒単位だったという。何分に一匹なんて悠長なことをしていたら死ぬのである。
(中略)
 翌日、朝早くに来てみたら、βが低い枝に止まって、下を向いてガーガー鳴いていた。昨日の喧嘩がまだ継続中か、と思ったが、それにしては相手のカラスが見えない。地上に向かって威嚇しているというのも妙だ。よく見ると、草の間に黒いものが見える。はて、黒猫だろうか?
 覗き込むと、それは地面に転がるカラスの死骸だった。
 ペアの片割れが死んだのかと心配したが、見ていたらもう1羽のハシボソガラスがやって来た。これはどうやらα君だ。すると、あの死骸は? ああ、そうか。昨日の若い奴らの1羽か。

 社務所に断りを入れてから、カラスの死骸を拾い上げ、ビニール袋を二重にして収容した。デカいゴミ袋は常にデイパックの中に入っているのだ。何か拾った時とか、荷物を防水したい時とか、いろいろと役に立つ。

 この死骸は研究室に持ち帰り、各部を計測した後で解剖した。性別と胃内容を見たかったからだ。性別は若い雄。消化管は完全に空っぽだった。かわいそうに、本当に何も食えなかったのか。ついでに皮を少し剥いでみたが、脂肪は全くない。野生動物だということを考えに入れても、かなり痩せていると言えるだろう。空きっ腹で凍死、という推測を裏付ける状態だ。

 カラスも野生動物である以上、その生活は安全ではない。若いうちは特に、このように餌の取り合いに負けて餓死するものも多いはずだ。それ以外にも病気になったり、タカに襲われたり、防鳥ネットに絡まったり、路上の動物の死骸をつついているうちに自分も轢かれたり、いろいろなところで死ぬものである。

 さて、解剖して必要な情報は得られた。骨は動物系統学研究室の山崎君にあげるとして、この肉はどうしたものか。痩せてるとはいえ、胸肉とモモ肉はそれなりのボリュームある。肉質は鴨ロースのような、暗い色の赤身だ。今朝は冷蔵庫のように寒かったし、死後硬直していなかったくらいだから、死後大した時間も経っていない。これ、食ってみても大丈夫なんじゃね?もちろん火は十分に通すけれども。

 というわけで、食えそうなところを切り取ってみた。まずは胸肉を、さすがに病気や寄生虫をもらうのは嫌なので、焦げるくらい入念に焼いてみた。よし、いくらなんでも、もういいだろう。シンプルに、塩を振って試食してみる。

 ・・・鶏レバー? ハツ?
 なんというか、すごく内蔵っぽい。モツ系のねっとりした臭いがする。はっきり言えば、血の臭いだ。歯触りは硬い牛肉みたいだ。鶏肉のような、ほろほろした繊維質はあまり感じない。噛み締めてもジューシィとかいう感じはなく、ひたすら、ガシッと硬い。そして、噛んでも噛んでも血の味がする。それさえ嫌いでなければ、まあ食えない肉ではない。少なくとも、まずいとか臭いとかいうわけではない。





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Last updated  2023.10.15 00:05:48
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