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2023.11.04
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カテゴリ: メディア
このところイギリスについて拘っているのだが・・・・
その余勢で北アイルランドの歴史まで見てみようということで以下のとおり復刻してみました。

*********************************************************
図書館で『世界まちかど地政学』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると・・・地政学と名付けているだけあって、各パラグラフの目のつけどころがええでぇ♪




藻谷浩介著、毎日新聞出版、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
世界は行かなきゃわからない!毎日新聞「経済プレミア」好評連載の書籍化!地理と歴史で読み解く「世界経済がわかる旅行記」!
【目次】第1章 “ドイツの北方領土”カリーニングラードで考えた/第2章 求心力と遠心力が織り成す英国、その多様性と業/第3章 旧ソ連・コーカサス三カ国“世界史の十字路”の混沌と魅惑/藻谷さんに聞く「私の旅の極意」/第4章 スリランカとミャンマーを巻き込む、インド対中華の地政学/第5章 台湾・韓国・中国の高速鉄道乗り比べ/第6章 南北米州の隅っこから、二十一世紀の地球が見える

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると・・・地政学と名付けているだけあって、各パラグラフの目のつけどころがええでぇ♪

rakuten 世界まちかど地政学



「第2章」から紛争の地・北アイルランドを・・・見てみましょう。
p47~50
「第2章 求心力と遠心力が織り成す英国、その多様性と業」
■多数決に従うなら実現しないアイルランド再統一
 ケルト人(アングロサクソン族などのいわゆる「ゲルマン民族」が渡米する前の欧州の先住者)の血を濃く残すアイルランドは、1652年、清教徒革命でイングランドの独裁者になったオリバー・クロムウェルに侵略され併合されてしまう。

 その後の長き独立闘争を経て、第一次大戦後の1922年に自治権を回復したのだが、その際に英国政府は、多年の移民により英国系住民の多い北部6州と、他の20州を分けて、それぞれに自治政府を設立させるという手法を取った。

 北部の6州は翌日に自治権の放棄と英国への再統合を宣言(現在の北アイルランド)。残りの20州は1937年に独立を果たし(現在のアイルランド)、第二次大戦では中立を維持、1949年に英国女王を国家元首とする英連邦も脱退して共和国となったのである。

 共和国側に「北アイルランドを英国から取り戻したい」という要求があるのは当然だ。だが、北アイルランドの住民は過半数が英国残留に三世のまま、今日に至っているのである。ベルファストでいえば10対9くらいの僅差だが、英国民であり続けたい人の方が多い。つまり民主主義的に物事を決めるのであれば、アイルランドの再統一はそうそう進展しない。

 経済的な損得だけで言えば、北も英国などについていないで、アイルランドに戻った方が得策のようにも思う。だが人の心はそんなに簡単なものではない。ベルファストの住宅街に分け入っていくと、「どうにもこうにも、そうはいかないのだろうな」という現実に出くわした。

■残るテロの傷跡、ブレグジットに揺れる北アイルランド
 飲んだくれでにぎわうアイルランドの首都ダブリンから、人影の少ない北アイルランドの中心地・ベルファストへ。2時間少々の列車の旅は、EUの中での比較優位を生かして成長するアイルランド共和国と、製造業中心の古い産業構造を残す英国領北アイルランドの格差を際立たせるものだった。
 そこに降って湧いたブレグジット(英国のEU離脱)で、状況がさらにややこしくなりそうな悪い予感が・・・。

■21世紀に残る「壁」の語る深い傷跡

 ベルファストの都心から西へ、丘の上の住宅地に分け入っていくと、壁画で有名な地区が現れた。このあたり、英国残留を望む住民の多く住む区画と、アイルランドへの統合を望む住民の多く住む区画が入り込んんで隣接しており、随所にかつてのベルリンを思い出させるような壁が設けられていて、その壁画にいろいろ鮮やかな絵が描かれているのだ。

 多くは最近までテロ活動をつづけた非合法組織IRA(アイルランド共和軍)の闘士を記念するののようだが、中には、彼らのテロによって命を落とした数千人の市民の側を記念するものもあるのかもしれない。

 英国のアイルランド支配は過酷なものだった。特に19世紀半ばには、英国人大地主が輸出用農作物を搾取し続ける中で100万人の餓死者を出し、米国への移民が激増(ケネディ、レーガン両大統領はその子孫)、800万人いた島内の人口は半分近くまで減ってしまった。独立運動への血の弾圧で命を落とした者も数知れない。アイルランド側には、言葉に尽くせぬ恨みが沈殿しているだろう。


『世界まちかど地政学』3 :北アイルランド(つづき)
『世界まちかど地政学』2 :北アイルランド
『世界まちかど地政学』1 :カリーニングラード





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Last updated  2023.11.04 00:09:58
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