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2023.11.20
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『ジンセイハ、オンガクデアル』という文庫本を、手にしたのです。
この本にはやたらクソ(SHIT)とかFUCKという言葉が飛び交っているのです。
著者の過激で過酷な時代のお話しなんでしょうね。




ブレイディみかこ著、筑摩書房、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
貧困層の子どもたちが集まるいわゆる「底辺託児所」保育士時代の珠玉のエッセイ。ゴシック文学的言葉を唱え人形を壊すレオ。「人生は一片のクソ」とつぶやくルーク。一言でわたしの心を蹴破ったアリス。貧窮、移民差別、DV。社会の歪みの中で育つ、破天荒で忘れがたい子どもたち。パンクスピリット溢れる初期作品。『アナキズム・イン・ザ・UK』の一部に大幅増補。映画・アルバム評、書評を収録。

<読む前の大使寸評>
この本にはやたらクソ(SHIT)とかFUCKという言葉が飛び交っているのです。
著者の過激で過酷な時代のお話しなんでしょうね。

<図書館予約:(2/10予約、副本1、予約15)>

rakuten ジンセイハ、オンガクデアル


「第1章「底辺託児所」シリーズ誕生」からもうひとつのエピソードをみてみましょう。
p48~50
<諦念のメアリー>
 底辺託児所の名物。ともいえるクソガキに、ジェイクという4歳児がいる。当該託児所で働こうという気になった人は、まず一度はガキどもに蹴られる、何物かをぶつけられる、髪の毛を引き抜かれるなどの覚悟をしておかねばならないが、ジェイクの場合はそれらの行為を絶え間なく行っている点で異彩を放っており、そのフィジカルな暴力の連続に慣れた頃、大人たちには次なる関門が待っている。
 Swear Wordsと呼ばれる卑語である。

 英語における卑語というと、FUCK(F言葉と称される、庶民の卑語)、CUNT(C言葉と称される、F言葉より品のない言葉)、BLOODY(前述ふたつに比べるとぐんと品格の高い、王室の方々もお使いになられる御卑語)などが一般的には有名であるが、英国の底辺周辺をうろついているとこれ以外にもさまざまの卑語があることに気づくのであり、英国に来て日の浅い外国人などは、自分が言われている言葉が卑語であることに気づかないでぼんやりしている。という哀しい状況に立たされていることが往々にしてあるが、4歳のジェイクの場合がまさに、この外国人にはよくわからない底辺言葉の卓越した使い手なのである。

しかも、彼の場合は人を選んでそれらの言葉を発している(つまり、外国人の前でばかり発している)知能犯なのであり、彼が最近ターゲットにして遊んでいるのが、ガーナ出身のメアリーである。

 メアリーは保育コースの学生で、母国では教師をしていたという。英国では、アダルト・スチューデントたちがパートタイムの保育コースを修了した後、大学に編入して小学校の教師になったり、ソーシャルワーク、児童心理学を学ぶ過程に進むことができるなど、いったん社会に出た大人向けの例外的な学問のルートがいろいろ用意されており、それだからこそいくつになってもいろんなことを勉強している人びとがけっこういるわけだが、メアリーのばあいは保育士の資格をスプリングボードにして英国でも教師の資格をとろうとしている。

 彼女はすでに英国在住20年であり、ブライトンでふたりの子どもを育て上げているが、おっとりした温厚なクリスチャンで、一貫してブライトンの貧民街で暮らしてきたにしては奇跡的なほど英国底辺階級に染まっていない。きっとジェイクが発するような下品きわまりない言葉を使う近所の人びととはあまり付き合わず、元教師の折り目正しい移民としてひっそり生きてきたに違いない。

 そんなメアリーに標的を定めたジェイクは、相手が優しいのをいいことに、最近では卑語だけではなく、「メアリー、なんでそんな黒い肌をしているの?」「メアリーは日焼け止めクリームとか塗る必要はないね。もう充分黒いから」等の問題発言をしはじめた。

「どうしてそんな黒い肌をしているの?」といった質問は、子どもらしい素朴な疑問だと主張するスタッフもいるが、それは問題を面倒臭くしたくないための詭弁だろう。ミドルクラスのぼんやりしたお坊ちゃまやお嬢ちゃまなら話は別だが、山あり谷あり社会福祉保険事務所あり家庭裁判所ありの、そこら辺の大人よりよっぽど豊富な人生体験を持っている底辺託児所のガキどもが、黒人の肌を見て、あらまあ、不思議ねー。と純朴に感心するなどという悠長な話があり得ようか。

 ジェイクの場合は間違いなく、人種差別的発言をしてはゲラゲラ笑い合っている貧民街の大人たちを見て、そういうジョークを飛ばせる人間はクールなのだと思い込み、コピーをしているのである。実際、人種差別的発言をするとインテリジェンスのない野蛮な人間だと思われる4みどるくらす以上の階級とは反対に、この国の底辺周辺では人種差別的発言をする人間は痛快なヒーローとして受け取られる節がある。英国という国では、上層と下層で“クール”の定義が違うのである。

 よって底辺幼児ジェイクは、ホワイト・トラッシュと呼ばれる近所の大人たちに近づこうと日々精進しており、メアリーへの人種差別的発言もだんだん悪質化しているのだが、当のメアリーはいつものようにジェイクに腹を立てるでも諫めるでもなく、にこにこ笑いながら彼のそばにいる。
(後略)
(初出:THE BRADY BLOG 2008年10月10日)


『ジンセイハ、オンガクデアル』1 :人が死ぬ





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Last updated  2023.11.20 11:27:24
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