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2024.04.21
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『宮本常一 伝書鳩のように』という本を、手にしたのです。
エッセイ集となっているが、宮本さんなら文化的センスに富んだエッセイとなっているのではないか、ということでチョイスしたのです。
そういえば・・・熱血ポンちゃんの勇ましいエッセイを読んだなあ。




宮本 常一著、平凡社、2019年刊

<出版社>より
日本各地を歩き、漂泊民や被差別民、歴史の表舞台に姿を現さなかった無名の人々の営みや知恵に光を当てた「野の学者」宮本常一。膨大な著作のエッセンスを一冊に集成。

<読む前の大使寸評>
エッセイ集となっているが、宮本さんなら文化的センスに富んだエッセイとなっているのではないか、ということでチョイスしたのです。

rakuten 宮本常一 伝書鳩のように


どこから読んでもいいのだが、食べ物が語られているあたりを、見てみましょう。
p57~59
<すばらしい食べ方より>
■田楽
 昔の人たちはどのような食生活をしたのであろうか。飯に副食物をそえてたべるのが一般の食法のように思っているが、昭和10年すぎから全国の農山漁村をあるきまわるようになって、民家へとめてもらうと、どうも主食と副食物をたべる生活は平野の米作地帯ならいざ知らず、意外なほど少なかったのではないかと思っている。

 奈良県王塔村篠原というところで世話になった家では、はじめての食事はお客様だというので、白いご飯を炊き、漆塗の膳椀でもてなされたのであるが、家族同様にしてほしいというと、その次からは食事は簡単になった。

 たとえばサトイモを大きな鍋いっぱいにゆで、それを串刺しにしてイロリの火のほとりにつきさしてあぶり、皮がほんのりとこげるくらいになると、串をとってイモを一つずつぬき、皮をむいて塩をつけながらたべる。そして茶をすする。それでおなかを大きくするのである。あるときはまた、アズキのまだサヤの青いのをとって来て、これも大きな鍋いっぱいに炊き、サヤを歯でしごきながら中の実を食べるのである。
 茶を飲むことはイモを食べるときと同然である。鍋いっぱいのアズキは容易になくならないだろうと思っていたが、話しながら食べているといつの間にかなくなってしまう。

 そして私などそういう経験のないものは食べてしまったあとで食べすぎていることに気付く。一回一回の食事がこうしてみなちがっているが、一回ごとに一つのものを食べるのである。こういう食事法は考えてみると日本には古くからあったもので、ソバ、ウドンなどはすべて単食であったといっていいし、近頃のラーメンもそれである。そしてそのような食法はもとは山間や海岸地域に存在していたものではないかと思う。

 高知県の山中に寺川というところがある。吉野川の水源付近にあって、もとは高知県ではもっとも不便なところとされ、18世紀半ばのころこの地に在番した高知藩の武士の書いた『寺川郷談』という書物が世人の関心をよんで不便ではあるがその名を知られたところである。私はここを二度ほど訪れた。そしてその食生活をこまかにしらべたことがある。宿をしてくれた山中さんの一家は実に親切で、名前を知っただけでは役に立たぬ、食べてみなければといって、話の中へ出て来る食物をいちいち作って出して下さった。

 滞在中に食べることができなかったものの一つにシレエモチがある。シレエというのは曼殊沙華のことである。彼岸の頃に咲くのでヒガンバナともいっている。飢饉の年にはその根を掘ってとり、ゆでて川でよくさらす。ラッキョのような根があるのだが、その根には毒素があって、そのまま食べれば血をはいて死ぬという。そこで、ゆでたものを1週間も流水の中にさらしておくと毒がぬけてしまう。それを臼に入れて搗いて餅にする。うまいものではありませんと寺川の人たちは入っていたが、しかし是非食べてもらいたいと話していた。高知の山中にはこのヒガンバナがきわめて多い。飢饉にそなえて植えさせたものであろうか。


『宮本常一 伝書鳩のように』1 :塩の道





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Last updated  2024.04.21 00:29:26
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