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2024.12.22
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『アジア発酵紀行』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。
「第1章 茶馬古道の味噌汁茶」には茶間古道の地図が載っているが・・・
中国雲南省のチベット族自治州のシャングリラ→大理市→プーアル市→タイ族自治州のシーサンパンナに至る茶間古道が秘境という感じでエキゾティックである。
あの高野秀行さんがこの冒険行を讃えるのもうなづけるのである♪




小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊

<出版社>より
アジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家)                       
自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)
発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。

<読む前の大使寸評>
「第1章 茶馬古道の味噌汁茶」には茶間古道の地図が載っているが・・・
中国雲南省のチベット族自治州のシャングリラ→大理市→プーアル市→タイ族自治州のシーサンパンナに至る茶間古道が秘境という感じでエキゾティックである。
あの高野秀行さんがこの冒険行を讃えるのもうなづけるのである♪

<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>

rakuten アジア発酵紀行


「第1章 茶馬古道の味噌汁茶」でディープ発酵文化の片鱗を、見てみましょう。
p30~35
<チベットの味噌汁茶>
 牧草地の周囲を見ると、ポツンポツンと民家が建っている。裏から見ると堅牢な石造り、表から見ると風情のある木造住宅という。これまで見たことがないような不思議な様式の家々。高地チベット族の伝統家屋だ。宮本さん(旅のコーディネーター)の紹介で、代々この土地に住む典型的な農家を見学する機会に恵まれた。

 家の敷地に入ってみると、まずその大きさに圧倒される。家というより小型の砦の風情だ。付近の家々はだいたい共通の2階建て。基本的な骨組みは分厚い石を積んでつくり、その石積み構造を付近の山々で伐りだしてきた、明治大正の立派な古民家でしかお目にかかれないような巨大な木製の梁で補強している。
 ファサードはこれまた古式ゆかしい日本家屋や神社仏閣でしか見られない繊細な彫り物が施された建具で覆われ、「なんと手間とお金がかかったお宅で・・・」と圧倒されてしまう。

 なお僕が伺ったこの家は新築らしく、ここチベット自治州の集落では今でもこの手間のかかった伝統住宅を再現する大工技術が受け継がれ、21世紀に至っても、地元民は現代風の建て売り住宅に目もくれず、家を建てるなら頑なにチベットスタイルにこだわるそうだ。

 敷地をキョロキョロ見回してみると、納屋では円錐形の不思議なかたちをしたバターらしきものが陰干しされていたり、家の前にこれまた見たこともない麦らしき穀物が敷き詰められていたりする。
 玄関をくぐると軽く3m以上ありそうな天井高のだだっ広いリビングに通された。真ん中には立派な薪ストーブ。そのまわりをイスやローテーブルが囲み、ご近所さんが数人世間話に興じている。ストーブの輻射熱で部屋はポカポカと暖かく、奥のソファに腰を下ろすと子猫がピョン!と僕の膝に乗ってきた。
「ぜひチベットのお茶を飲んでいってください」
 と一家の主の、赤く日に焼けた肌のおじさんがチベットスタイルのお茶の準備をし始めた。ご主人のチベット語を別の村人が中国語に翻訳し、それを宮本さんが日本語に通訳するかたちでインタビューが始まった。集まったご近所のおじさんおばさんはみんなシャイで、もの静か、でも温かい雰囲気だ。東北の農家のおうちに遊びに来た気分になる。

 しかしこの穏やかなチベットの人々。歴史を紐解いてみるとアジア屈指の戦闘民族の末裔なのである。中世の時代、チベットは吐蕃と呼ばれ、当時の中華帝国もうかつに手を出せない強国だった。この吐蕃と争いではない方法で関係性をつくるために、中国は雲南南部でとれる茶を送った。これが茶馬古道の起源の一つである。

 それでは雲南のディープ発酵文化の世界に入っていこう。
 僕の目の前には、ほかほかと湯気を立てるカプチーノ色のお茶がある。しかし香りは僕たちの知っている緑茶や紅茶とは全く違う。茶葉特有の爽やかさはなあく、どちらかというと香ばしくて食欲をそそるような匂いが引き立つ。
 一口ズズッと飲んでみると、まず感じるのはまろやかなうま味。これはまあわからないこともない。次に程よいしょっぱさ、そして舌に染み渡っていくコク・・・これは、バター? このチベット茶、ざっくり説明するならば、
<発酵した茶葉とヤクのバターを混ぜ、塩を加えて煮出したスープ>
 日本人がイメージする、嗜好品としてのお茶とは全く趣が異なる飲料なのだね。

 では要素を分解して順に説明する。このお茶の最大の特長はヤクのバター。チベット高地民の主たるタンパク源だ。作物の乏しい高地では、豊富に搾れるヤクの乳を様々な方法で発酵させて栄養価と保存性を高める。

 まず乳を搾ったら、煮出して沸騰させ、一晩乳酸発酵させる。発酵してドロッとした乳を攪拌し、固形状になったものを取り出して乾燥・熟成させてバター(実際は酸味があってチーズとバターの中間のような味)をつくる。このバターがヤクの乳の「一番搾り」。バターを取り出した後の粘度の低い乳脂肪分はもう一度発酵させてヨーグルトにする。これが「二番搾り」。

 最後に残ったサラサラの乳清(ホエー)は軒先に晒されていたハダカムギの粉と一緒に捏ねてパン状に発酵させて焼く。畑作がかぎりなく困難な高地において、主要なタンパク源はヤクの乳と肉、そしてカロリー源が、高地でも生育するタフな穀物、ハダカムギなのだ。

 では次へ。カロリーやタンパク質と並んで、人間の健康維持に欠かせないビタミン源。これを司るのがお茶だ。僕が振る舞ってもらったお茶は、日本で一般的に飲まれる爽やかな香りの緑茶と違い、ほぼ真っ黒に乾燥し熟成させた香りのものだ。
 これは茶葉をカビや乳酸菌などの微生物によって発酵させた「後発酵茶」というカテゴリーに属する。雲南名物のプーアル茶の系譜だ。もちろん大規模な畑作ができないチベットの高地で栽培されたものではなく、雲南の南部や貴州・四川などの温暖な平野部から遠路はるばる運ばれてきたものだ。

 最後に塩である。海から遠く離れてはいるが、ヒマラヤ山脈に位置するチベットには岩塩の伝統がある。チベットの名産品である岩塩は、自家消費はもちろん、海塩の取れない中国平野部やネパールに輸出された数少ない外貨獲得商品だったのである。
 つまり、茶馬古道の「上り(雲南→チベット)」はお茶が、「下り(チベット→雲南)」は塩が運ばれた。茶と塩は実は茶馬古道の始発と執着の両名物なのだ。

 茶馬古道の歴史的なエピソードがええでぇ♪

『アジア発酵紀行』2 :ディープ発酵文化の片鱗
『アジア発酵紀行』1 :まえがき





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Last updated  2024.12.22 00:06:30
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