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♪ 鶯のドラマティコなる美しい声を聴きゆく朝のウォークドラマティコ=音楽用語として声楽の声質名として用いられ、重厚で劇的な表現力を持つ声質 未明の4時半ごろ、発情期を迎えた野良猫の鳴き声が響きわたっていた。アランが反応して飛び出していったようだった。すわ、喧嘩になるかと思ったがそんなこともなく、直ぐに静かになった。アランも何事もなかったように部屋に戻っていた。 5時頃起きて少し体を動かし、10分後にウォーキングへ。5時の日の出には間に合わなかったが、前日の雨に洗われた早朝の風景はことのほか気持ちがいい。いつもながらの秋葉神社の境内から、昇って来た太陽の中の景色。 朝日に輝いて美しかった。ほぼ快晴の空だったが、ここだけは雲がスタンバイしていい、具合に情趣を添えてくれていた。もう30分早ければもっとよかったが、そのためには4時半には家を出なければならない。 次回は、目覚ましを掛けて寝ることにしよう。溜池や里山のぞむ住宅地大葦切の鋭(と)き声のなか草むらに太くて高き声ひびき離れて雉の頭が二つまず春に始まるドラマつぎつぎとわれが主役の幕が上がりゆく5人連れそれぞれ違う犬を連れ違うことこそ自慢の一団いろいろな朝の挨拶する人を二十五数えて清々しけり新しき家の住人おしなべて夜勤のあるを知る五月かな調律師のお隣さんに来るらん妻がショパンを弾いていた時寺本駅 パークロードを歩いていて、ふと目に入った。枯れ木に穴が空いている。自然に空いたものではなく、明らかに掘ったものだ。こんなところに穴を空けるのはケラ類(キツツキ)ぐらいなもの。 下を見ると穿った時に出る木屑がたくさん落ちているので間違いない。 右の画像は拡大できます。 これは多分「コゲラ」のものだろう。この辺りにいるキツツキと言ったらコゲラぐらいなものだろう。家の近くで何度も見ているし、造成される前の隣家の柿の木にも来ていた。 しかし何でまたこんな人通りの多い通路のすぐそばで、それも高さが1.2mほどのところだ。いくら何でも危険すぎる。抱卵して子育てなんて出来るはずがない。 我が家の巣箱に営巣した四十雀は結局、諦めて来なくなってしまったし・・。自然界の野鳥たちが生息する場所が減ってしまって、止む終えずこういうことになっているのだとしたら、あまりにも可哀そうだ。安心して子育てができないなんて、少子化の原因でもあるし・・
2024.05.02
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♪ みかんにはあきて桜花のみつをすう目白のいないけさのえさ台みかんには鵯だけがやって来てピィーョピィーョと鳴いて啄むやっかみて鳴くスズメらを警戒し犬のぬけ毛をはこぶ四十雀玄関のとびらにじっと蝸牛雨が嫌いと知る人はなしかまきりの卵が消える不思議あり何が何して消えたか知らず雀蜂、小足長蜂、四十雀、わが自然派の家に巣を成す一年ずつ空き地が消えてゆくたびに草葉も消えて虫も消えゆく我が歌を提出してもだれ一人意見を言ってくれない歌会ささやかな楽しみなれど一首とてままならざらりし人の年月馬場あきこの七つ歳下「ちゃん」付けで呼ばれていたとリーダーの言うわが庭はふたたび白い花ばかりそに紫の花のまじらんオオイヌノフグリにあらぬ花群れるベロニカオックスフォードブルーのプランターに猫のウンチのつぎつぎとふかふか好きのアランの所業(しわざ)
2024.04.05
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♪ おもむろにエアポケットに入りゆき虚無と怠惰の浮き草となるいつもより遠回りして歩きゆく白寿の翁にほめられるために春がすみのモノクロの野辺歩くとき「行」というならいくらでもゆくほろほろと夜はふけゆき契りなく別れしひとの鎖骨の白さ池の面にきらめき光るさざなみの逆光にきゆあいとはしらず
2024.03.24
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♪ 文学をカフェの卓子の染みほどに知りてゆっくりスプーンを回す 今年、令和6年の歌会始のお題は「和」でした。いつものごとく、入選歌の考察を私なりにしてみたいと思います。歳を取れば必ずしも上達するというわけでもない。余分な知識が邪魔をして、却って茶の木畠に入り込むようなことも無きにしも非ずです。 年齢を男女色分けしてみましたが、7:3で女性が圧倒的に多かったのは意外でした。 己が手で漉きたる和紙の証書手に六年生は卒業となる 栃木県(88) 栃木県は古くから和紙の産地として知られていました。技術継承として子供たちにも習う。その自分で漉いた和紙で作った卒業証書を受け取る様子が彷彿としてきます。作者は長年その和紙制作に携わって来た人なのでしょうか。或いは祖父か。少子、過疎化が山村の伝統産業に陰りを見せているなか、未来を託している子供たちが卒業していく。ハレとケと、矜持と不安とが綯い交ぜとなって重く伝わってくる。 かの日々に移り来し人等耕しし大和(ヤマト)と呼ぶ里アマンドの花 アメリカ(81) 大和とくれば直ぐに思い浮かぶ、古事記に倭健命が詠んだ歌として人口に膾炙している『大和は国のまほろば ただなづく青垣 山籠れる 大和しうるわし』。そんな古代の人々の拓いてきた土地に、アマンドの花を見つけたのでしょうか。ちょっと解釈の難しい歌ですね。アマンドの花は八重咲きのガーベラのことらしく、白いもこもことした花は清楚で気品があると感激したのでしょう。大和との取り合わせに新鮮味がある。 大和の歌は他にも、前川佐美雄の代表歌「春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ」がある。 呼びに来てくれたる人を追ひ越して電話に急ぎし昭和の夜道 神奈川県(75) 私と同年歳の作者。戦後何年かたって一部の家に電話が入り、その家の電話番号に掛けて、電話口に呼んでもらうことになっていた。そのために電話は玄関先に設置してあった。電話料金が高かったこともあり、急いで電話に出る必要があり、走って、呼んでくれた人を追い越したというシーン。 よほどのことが無ければ電話など掛かってこない。良くない知らせだったのでしょう。街灯もなく真っ暗な道を不安にかられながら走っている姿が浮かんでくる。それらのことが過不足なく詠まれていて、昭和という時代の表情をよく捉えていて秀逸だと思います。 和菓子屋をなりはひとして五十年寒紅梅に蕊をさす朝 香川県(72) 季節を先取りして作られる和菓子。特に練り切りの上生菓子などはその美しさは海外にも知られています。和菓子職人が自然の風物などを自分の感性で感じとり、和菓子に表現するのですから、つくられる和菓子は、つくり手の個性と感性が込められています。50年来の手わざによる「寒紅梅」は、最後に蕊を入れて完成となるのですね。 季節ものですから当然、寒い時期のもの。暗いうちから作業を始め、ようやくその自慢の一品が生まれようとしている。しののめのうす紅と吐く息の白さ、寒紅梅のやわらかな赤とその芯にさす黄色の取り合わせじつに美しい。意味のある、言葉一つ一つに無駄がなくすべてが語り尽くされている。 和だんすは母のぬくもり大島に袖をとほせば晩年に似る 埼玉県(71) 初句から二句で母を大きくとらえ、着物をこよなく愛し慈しんできた家柄であることが伝わってくる。母の思い出とともに、箪笥に納められている様々な着物。折々の行事や何気ない日々の中で交わされた言葉、その手触りや衣擦れの音が、積み重ねられている時間の中に満ち溢れている。 母は偉大であり、自分もそんな母の様にありたいと思う。母が最も好きだった大島紬に袖を通してみると、そんな母に少しは近づけたかとの思いがしみじみと湧き上がってくる。そして最初の、「和だんすは母のぬくもり」に戻っていく。 風琴の和音のやうに柔らかに多言語混じりあへる教室 福岡県(61) オルガンかあるいはアコーディオンか。風が起こしているその音色は、打弦楽器とは違って自己主張をしない。周りの多くの要素をを取り込んで、天然染料で染められた布の様に暖かみがある。そして、風はことだまを運んでくる。そんな風がそよいでいるような、柔らかに多言語が混じりあっている教室なんて、なんと素敵な場所なんでしょう。 風通しが良くて明るい、自然そのものが溢れている空間。そこにあるすべてが共存し繋がり合っていて、それぞれがお互いを必要としている。まるで地中で繋がっている、森の木々の根っこのように。世界平和へのメッセージでもあり、人間の根源的なものへの憧憬でもある。 見逃した小さな小さな違和感の粒で自分が作られていく 千葉県(61) 今まで歌会始では、こういうタイプの歌は選ばれてこなかったような気がします。決して新しい視点の歌でもないし奇をてらったものでもない。普遍的なものが歌われていて、私はこの歌が一番好きです。何よりも初句の「見逃した」から始まるのがいい。違和感を感じることは結構あることですが、気づかなかった違和感の方により重要なものが隠されているという。そんな小さな小さな粒々に飲み込まれていって、自分が自分で無くなっていく。一体どんな違和感なのか。 誰も言わない触れようともしなものが、実は計り知れない大きな問題を孕んでいると、作者は気づいたのです。全ての事柄には裏がある。よくよく注意していれば気づくそのパラレルワールド。それを知ってしまった以上、自分が今までの自分ではいられなくなった。社会風刺と、人間の不条理を詠ったものとして、歌会始の歌の白眉だと思います。 花散里が一番好きと笑みし友和服の似合ふ母となりぬる 石川県(32) 花散里(はなちるさと)は『源氏物語』の巻名のひとつ。文系女子の日常風景を軽やかに詠んだ。源氏物語と着物の取り合わせは、あまりに着き過ぎな感じがぬぐえません。なぜこの歌が選ばれたのか。結句の「和服の似合ふ母となりぬる」が時代に反して、今の日本に対するアンチテーゼの色合いをもって詠まれているということでしょうか。 そして、NHK大河ドラマ「光る君へ」を踏まえているのは見え見えでしょう。宮中においても、忘れられては困りますよという声が聞こえてきそうで、忖度したのでしょう。宮中主催のものですから、そういうことはあって当然です。 32歳という年齢にも意味があって、これ以上高齢でも若すぎても選ばれなかったかもしれません。 目を瞑り一分間を祈るとき皆が小さき平和像なり 京都府(21) 黙祷をささげる場面。自然災害などではなく戦争で亡くなった人を慰霊する式典でしょうか。広島や長崎の原爆投下記念日か、或いは終戦記念日の戦没者追悼式かも知れません。「皆が小さき平和像」ととらえたところが新鮮です。なかなかこういう風には詠めないものです。侵略、覇権、統治に、宗教やイデオロギー、民族紛争やジェノサイド。様々な側面を持つ紛争という名の殺し合い。他の生物とは違って、知恵があるはずの人間がそれを止めることができない。 ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナなど、遠い場所で起きている戦争の生々しい映像が食卓に映し出されて、嫌でも目に入って来る。しかし、平和の有難さは祈ることでしか表すことができない。「それいいね」付和雷同の私でもこの恋だけは自己主張する 新潟県(17) 初句に「それいいね」と明るい口語で引き付けて、言葉巧みにそれを逆転させていく手法が見事に決まっていて、若者らしいとてもいい歌になっています。SNSにとっぷり浸かり、自己をどこかに置き忘れてしまっている現代の若者や一部の社会人。表面的なことだけを見て判断する癖が付き、物事を深く考えようとしない。周りに合わせることで個を抑え込みながら、自己の内面の問題を外に逸らそうとする。その風潮に気づいている作者は、恋だけは別なんだよと声を上げる。 この歌は、今の若者たちが抱えている問題を詠んで客観性とすぐれた自己洞察の歌として、人口に膾炙して多くいくのじゃないでしょうか。 ☆ 2017年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2018年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2019年(平成最後)歌会始入選歌の考察 ☆ 2020年 入選歌(この年は応募せず、考察はしていない) ☆ 2021年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2022年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2023年 歌会始入選歌の考察
2024.02.28
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♪ 雨と風邪に時を失うこと六日メジロに貢ぐみかんを切らす♪ 肺炎の苦痛を知りしカミさんが自己判断を咎めて喚く♪ 体重が2キロ減りしも腹囲にはなんら変りのなき病み上がり♪ 南岸を冷気引き込むワルがゆく梅に白雪きとけぶりゆく♪ エサ台に現われたるは尉鶲 山雀と同じ櫨の実を好く
2024.02.25
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♪ 百二十四時間絶えて助けられぬ能登の昭和の偉人九十代
2024.01.07
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♪ 一晩中われと一緒にい寝し猫餌とトイレに行ったか知らず ♪スランプに歌の詠めない日々の中おりおり猫がもたれかかり来 ♪昼も夜も寝ているばかりのアランなり不調不振の寝子の寝姿 ♪おちこちに低気圧生(あ)るながつきの夜をうれうる頭痛持つ人 ♪尻の上に痛みのありて飲んでいるアリナミンEXプラス ♪6時にはもう出勤の隣人は「少しメンタルやられてます」と ♪「一画を歌壇にしたい」と若主人 人工芝をさして吾に言う ♪段ボールの回転式銃作るとふ孫にググった型紙一式
2023.09.07
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♪ 異化をせず捻りずらしも比喩もなく練りに練るべし歌会始 1月18日に皇居・松の間で行われた「2023年歌会始の儀」。遅まきながら私なりの解釈で入選歌の考察をしてみます。 個人的な感想ですが、心で思うだけでなく文章にすることでより明確になったり発見があったりしますので、あえて書いておくことにしています。 お題は「友」でした。「温もりの残る手袋渡されて君は友より夫(をつと)となりぬ」 岡山県(73) 寒い日のワンシーン。何か二人にまつわることで言葉に出来ないわだかまりのようなものがあった。君がそっと、自分がはめていた手袋を渡してくれた。その温もりのある手袋によって、わだかまっていたものが取れた。若い日の回想シーンでしょうか。初句からの流れが自然で、その時の心境をサラッと表現出来たのは、その時間の流れのなせるものでしょうか。「卒論は梶井だつたね君だけが四十二歳(しじふにさい)のままなる友よ」 熊本県(63) 「卒論は梶井だつたね」から始る構図が功を奏して、思わず引き込まれていく。文学青年だった君は、饒舌でもないが淡白でもない。現代社会では失われてしまったおおらかさと湿り気を帯びた梶井基次郎の短編小説。懐かしい詩情が文章全体にただよっている。世代や個性の違う数多くの作家たちに支持された。そんな時代の空気をこよなく愛し、折々に彼の小説を熱く語った彼はもういない。若くして逝ってしまった友を、今でも梶井基次郎の小説とともに思い出す。 「キスゲ咲く尾瀬の木道友の背のリズムで歩くすこし離れて」 東京都(62) 山仲間とニッコウキスゲの咲く尾瀬をゆく。もう何度も一緒に山を楽しんできたことが窺える。結句の「すこし離れて」というところにリアリティが出ていて、木道や湿原が歩いている様子とともに目に浮かんでくる。「友の背のリズムで歩く」のテンポがよく、一緒に歩いている気分冴えわいてくる。「友だちはゐないんだよと言ふ君の瞳の中にわたしを探す」 新潟県(61) 還暦を過ぎて、友達をしみじみと思うことがある。淡交という間柄であってもずっとその気持ちは変わっていない。その友達がふと漏らした言葉に、年を経るあいだに微妙なずれが生まれてしまっていることに気づく。俺がいるじゃないかと目で語りつつ、彼の寂しさを思う。友達のあり方を思いながら、少し寂しい思いをしている。「つくるでもできるでもなくそこにゐたあなたをわたしは友とよんでる」 神奈川県(55) 作るものでも作られるものでもない、一緒にいられるだけで十分に友達なのだ。そう思っていられることの幸せを思う。国境も人種も言葉もその障害にはならない。無条件で受け入れられることこそが友情の礎。「なぜこの人を友と思うのか。そこには学校や職場での出会いなど、必ずしも自分が選んだわけではない偶然が作用している。友とはそうした縁が与えてくれるものだ」という感覚を詠んだ歌です。と作者本人が語っている。「ともだちを友人と呼ぶやうになり子は就活をほどなく終へる」 茨城県(50) こういう素直な歌が選ばれる。二句が五七の句またがりになっていて、流れてしまいがちな歌をうまくリズムに乗せて、親の子に対する気持ちがうまく出ている。何と言っても語順が成功している。一抹の寂しさと成長の喜びが交じり合った、微妙な心理がうまく詠まれている。「『母さんも友だちできた?』と小一の吾子(あこ)に問はれし仕事の初日」 島根県(40) いつも子供に言っていることを逆の立場になって言われている。子どもにとっては耳に残っている言葉を使ってみたに過ぎないのかもしれない。しかし、実際に言われてみると、照れくさいと同時にあなたに言われたくないという反発の気持ちもある。最初に子のセリフから始まって、その状況が後から分かる構図。仕事の初日の緊張感を、子の言葉によって引き出しているという構成がみごとに成功している。「友といふ言葉を知らぬ一歳が泣いてゐる子の頭を撫でる」 京都府(36) 何かが変わり始める一歳の、訳知りのような仕草がほほえましい。上の句と下の句のつながりが自然で、流れがとてもいい。語順も良くて、「一歳」と具体的な言葉をいれたところがいい。これが「幼子」では印象が微妙に違ってくる。日常の何気ないところに目を止め、歌に詠んでいく。とくに幼子を育てている人にしか詠めないものが、日常にあふれている。俵万智さんにも「たんぽぽの日々」という育児のときの歌集があります。「みづいろの絵の具ばかりを借りにきた友の見てゐた空を知りたい」 東京都(26) 思い出を詠んだものでしょうか。いきなり「みづいろの絵の具ばかり」と始まって、その水色の意味を読者と共に考える構図になっている。その友達の空は何を意味していたんだろうか。「みづいろの絵の具ばかりを借りにきた」を序詞と捉えることもできる。未来の象徴としての空なのか、あるいはその時の心境を表しているのだろうか。 純粋なこころに思い描いていた空が、今ではどんなものになっているのか。汚れてしまっているのか、きれいな水色のままなのだろうか。「友の呼ぶ僕のあだ名はわるくない他のやつには呼ばせないけど」 山梨県(14) 友との関係性をあだ名で表現して見せた。周りにはいろんなあだ名があって、いい意味のあだ名は案外少なく意地悪なものも多い。でも友達が自分に付けたあだ名は結構気に入っている。そのことで気ごころの知れた二人の関係が、誇らしいものであることがわかる。結句の最後が「けど」で終わっているのが今時の少年らしい。 昨今の短歌ブームについて、書評家の三宅香帆が「日々の合間にさらっと楽しめることのできる言葉の大喜利であり、疲れた読者を肯定するのが現代短歌の特性だ」と指摘する。その一方で、山田航(歌人)のように、「ささやかな癒しと微笑みをくれる言葉の集積という実用的なものとして受容されてしまうのは、作風の固定化をもたらす危険をはらむのではないか」と、危惧する人もいる。 ブームになんぞなると手垢で汚れてしまい、形も崩れていく。ブームとは恐ろしいものだ。ちょっとお洒落な趣味を持つ人たちのリクレーション的な娯楽とすれば、早晩飽きがくるに決まっている。面白がって弄び、類型的なものが巷に溢れ、新鮮さが失われれば興味も失せて、ポイと捨て去って忘れてしまうだろう。 でも、この日本語のすばらしさ、短歌の奥行きと多様性をもった表現のポテンシャルは、これからも日本人の心に根付いて受け継がれていくことも間違いないことでしょう。千年以上も続いていて、日本語が変化していくとともに歌の有様も変化していく。だからこそ続いて行くというもの。 短歌のあるべき姿は、まさに「不易流行」ではないでしょうか。
2023.08.29
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♪ サーッと降り濡れて嬉しきこともあるあの一言の忘れがたきよ 短歌を詠むに当って、次への飛躍の一歩がなかなか踏み出せないでいた。新聞短歌への投稿はしばらくご無沙汰していましたが、ある人から刺激を受けてその気になっています。 それで一時期やっていた新聞への投稿を再開し始めました。区切りの意味を込めて、今までに採っていただいた短歌を記しておこうと思います。「東海歌壇」朝日新聞 加藤治郎選 (2020年~2022年) 幼子が時どき言ってた「ばんばんち」半年たって「ばあちゃんち」と知る 「少年と犬」を読んでいる足元の猫は知らない泣いていること 奇っ怪な夢にうなされ目覚めれば胸に五キロの猫が寝ており いつからか吹かなくなりし口笛がマスクの下に蘇りくる 右奥が部分入れ歯となりしより好きな女優の名を忘れゆく 猪の頭部のごとき筍が「不作」のメモ添え玄関にあり おしゃべりでごめんなさいと言う人の顔暮れてゆく散歩の途中 ありがとうの手話を覚えてより楽し横断歩道をゆっくり歩く とんと乗りとんとんとんと胸の脇じわりと石になってゆく猫 ブログに載せたものはいい歌であっても応募できないし、応募するつもりで歌を詠んでこなかったので、平凡なものが多いようです。NHK全国短歌大会も応募してはいましたが、何となく他人事のような心持ちでいたようです。「NHK全国短歌大会」入選 群舞する赤き和蘭獅子頭アクアリウムにちとも休まず 棟梁が話し始めるガキの頃脚色あるを割り引いて聞く 日の当たるあの杉の木の天辺がぼくのこころのシェルターだった 団塊のわれら犇めきつつ生きぬ良い時代だったには違いなかった 顔ぶれが変わりてエサを替えてみるラードに残るくちばしの跡 庭の花を摘んで入れたる段ボール秤にそっと乗せて別れき 勉強が足りない。もう少し頑張ってみようと思います。公募で入選、入賞する人たちは皆さん結社に所属して切磋琢磨している人ばかり。そんな人々と競争すること自体無理なののかもしれない。 でも歌で身を立てようと思っているわけでもないし、楽しみとして詠って来たしこれからもそうしていくつもり。 NHK短歌8月号の「短歌のペイン・クリニック」コーナーで、こんな悩み相談が載っていました。 回答者の黒瀬珂瀾氏は、25年の歳月を短歌と共に生きてきて、500首以上の歌を詠んできたあなたはもう立派な歌人です。歌を忘れず、己の感情を言葉にすることを意識しつつ花鳥風月の美を喜び、この世の光や闇に思いを致し、他者のこころを慮ってきたこと。それは歌人の心そのものですと。 採用されるされないとか、駄作だとかは二の次の事として、これからも続けてほしいと。簡素なもので良いので、歌集を纏めてみることをすすめている。そこから見えてくるものがあるからと。 過去の一部の短歌を書き出してみる気になったのは、この文を読んだことも影響しているかもしれません。面白いから続けられるし、難しいからやりがいもある。 上達するためには幾つかの必須項目があるのでしょう。しかし師を持たず独立独歩が信条の私としては、自分で道を切り開いていくしかない。 時間はかかっても構わない。その方が長く続けられる。 才能が有るのに見切ってしまう人、挫折して離れてしまう人、周りの状況にかき回される人、注目されて自分を失ってしまう人、そんな人に私はなりたくはない。
2023.08.07
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♪ りことわこ〈たんかでさんぽ〉あえういお かけてはしってぱぺぷぴぽぺぽ NHK短歌8月号に掲載されて気を良くし、あちこちに投稿する気になっている。今年は前向きに取り組んでいきたいと思っていた矢先だったので、いい切っ掛けになった。 ブログにアップする前のものでないとダメなので、何かある度に新たに詠んで書き溜めている。 むかし投稿したことのある朝日新聞にも、先日久し振りに投稿してみた。葉書で1首のみの規定があり、採用されれば日曜日に掲載される。 毎週、全国から2、3000首送られてくるのを、4人の選者がすべてに目を通すらしい。スマホで動画が見られ、その選考スピードの早いこと。わずか2秒ほどで、つぎつぎと選んでいく。サーッと半分も読めば判断できるという。 上の句の表現・内容にピカッとするものがないと選ばれない。誰だったか歌人が、下の句で歌の良し悪しは決まると言っていたのとは大違いだ。新聞短歌は入選するのは難しいと言われるのは、そういう特別な事情からくるようだ。 4人の選者が相談することはなく、独自に選んでいるのに偶然同じものが選ばれて、共選の星印がつくことがある。この朝日歌壇に小学生の時から投稿してしょっちゅう選ばれていた、松田梨子(りこ)・わこ姉妹がいる。私が短歌を始めたのとほぼ同時期に登場したので、すごく関心があって歌をメモしたりしていた。 共選されることも多く、この朝日歌壇にはファンも多い。図らずもNHK短歌8月号に彼女たちと穂村弘氏の対談記事が載っている。 お母さんも短歌を詠み、家族の歌集「たんかでさんぽ(2011年)」を、2013年には第二歌集「リコピンがある」を出している。今年24歳、21歳になり、未だに投稿を続けている。歌を詠んでいる人たちは「りこ・わこ姉妹」をよく知っていて、この対談は短歌ファン待望のものだったようだ。3回に分けて掲載されるらしい。☆「朝日歌壇」に投稿するのは良いが購読は今月いっぱいまでで、今後1年間は中日新聞を取ることになった。「毎日歌壇」や「読売歌壇」にも投稿しようと思っているので、紙面はまとめて図書館で読むことになる。毎週1回、図書館に通うというのも悪くない。「投稿する、図書館に行く、ウォーキングする」これらが一体となり、雨さえ降らなければ “暑かろうが寒かろうが出かける” という必要十分条件がそろっている。 コロナ禍以降、材料費、燃料費などの高騰で朝倉駅周辺整備計画が振出しに戻っている。図書館が移転してくるのは令和8年ごろになるらしい。そうなれば歩いて数分と近くなる。都合がいいのか悪いのか分からなくなってきた。3年ぐらいはすぐにやって来る。☆ 家の前の宅地が売れたらしい。地面の高さの調査をしていたので想定はしていた。来年の8月ごろに入居予定とか。 宙ぶらりんだったがこれで環境が確定し、来年の今頃にはようやく落ち着いた日々を迎えられる。朝日の当たらなくなった庭を嘆くことになるだろうが、仕方がない。 向こう1年は工事の車が出入りして、アラン共々落ち着かない状態が続く。野鳥がやってくるようになるには、やはり5年や10年は掛かるかも知れない。
2023.07.26
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♪ 大雨に猛暑が混じる文月の寝具に迷う老人未満 だらだらと文章を書くのはお休みして、今朝は近況を連作の形で歌にしてみました。こういう形で日記を書くというのもなかなかいいものです。♪ NHK短歌写真部よりメール掲載の名はsunsunhappy♪ 歌会の俎上に上げしわが歌を新聞投稿すすめるリーダー♪ 図書館への歩道に伸びる草と木の処置を求めて館長に会う♪ クリトリアのまだ小さきに青春のかがやきのごとき花をつけおり♪ 2センチのカマキリ一匹ばらの葉に獲物を待ちて頭をかしげおり♪ プランターの小松菜の葉に産卵のモンシロチョウは害虫となる♪ 蟷螂は益虫ですと教えやる売地の草刈る派遣の女性に♪ 近頃はドッチボールが好きという野球小僧の球の勢い♪ ふかふかのプランターこそ最高と猫のトイレの跡二つあり♪ 知らぬ間にキャットニップの食われおり西洋マタタビ猫の好物♪ ことのほかナーバスな猫さまざまな音に囲まれ気の休まらず
2023.07.06
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♪ 筋トレを脳にも使う術ありてまだ行けるぞと鏡の前で「NHK短歌」編集部が「写真+短歌」をツイッターで、投稿を募集している。テーマは「樹木」。自分で撮った写真に歌を添えて、ハッシュタグ「#短歌写真部」を付けて投稿する。 条件は、NHK短歌をフォローすること、ただそれだけ。ツイッターのアカウントがある人ならだれでも参加できる。5月19日締め切り。詳細は「NHK短歌」テキスト #短歌写真部 の参加要項へ 面白そうだったので2つほど投稿。そしたら病みつきになって、計8首も投稿しちまいました。ただ「つぶやき短歌」というイメージからは少し外れる感じなので、採用は無理かと思う。でも、発想の転換として楽しんでいる。写真を見ながらあれこれ発想を飛ばして、妄想を歌にする感じ。老化防止にも良いリクレーションになっている。 選者のカン・ハンナさんの好みそうな歌を詠むというのも、それはそれで勉強にはなるでしょう。 写真に加工するのもOKなので、例えばこんな写真を用意してみた。さてあなたならどうします? 31文字でつぶやいてみて。 「ハンコウノ トマラヌバカヲ オカアサン ユルシテクダサイ キョウカエリマス」☆ 使わないものは淘汰されていく。脳も、肉体も、心も使わなければどんどん衰えていく。体力に関わる筋肉などは目に見えるし、日々衰えを実感でき鍛え直すこともできる。しかし、頭や心の方はなかなかそうもいかない。 ただ海馬だけは、肉体が衰えても新しい細胞が作られ続けるらしい。海馬に餌を与える意味でも、記憶や情報にまつわる言葉を操ることは意義がある。大脳辺縁系MSDマニュアルより そして海馬を元気にさせるには、有酸素運動の特に「ランニング」が良いという。記憶力を維持するためには体を動かす必要があるということ。また、集中力は筋肉の量に比例するということも分かっている。 経年劣化に拍車を掛けるのが「使わない」こと。家でも車でも、人体も機能も何だって同じ。使わなければダメになる。この最低限のことが出来ないのが現代人。楽してばかりで、便利という毒牙にやられる。そのくせ長生きするようになって、どんどん辻褄があわなくなっていく。
2023.05.14
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♪ Fの音を残して後にする個室今朝は空砲3つで終わる♪ 同じもの食べるも滞在時間差が二人の汚穢(おわい)の量にあらわる♪ 甘党と辛党どっちも小食でちっとも肥えないコスパの夫婦♪ 無臭にて円を描いてゆく水の音もさやけき朝のルーチン♪ 嬉々として腸内フローラうごめくやストレスレスのミクロコスモス♪ 老いゆけばフローラさえも衰えて腸は動きを弱めおるらし♪ 1本のバナナごとく流れしをあの夏の日はもう戻らぬや
2023.04.13
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♪ しののめの野鳥の声に目覚めおりいい夢だったと目を閉じたまま すでにもう春眠の頃を過ぎてしまい、朝が眠くて起きられないということがない。とはいうものの、老人ともなればそんな悠長なことはかなり前からなくなっているが・・。 鳥の声で目覚めたのが5時と思うも、トイレに行ったのが5時でその時に鳥が鳴いていたのかもしれない。過ぎてしまえばもう曖昧になってしまう。それでも、いい夢を見ていた記憶はあって、内容は忘れかけているものの、いい気分は持続している。 毎晩のように夢は見るが、いい夢を見るのは久しぶりだったのでとてもいい気分でいる。☆ 浪花茨をテーマに詠んでみた。いつも説明的な歌ばかり詠んでいる気がしていて、もう少しましなものが詠めないものかと。上手くいっているかどうかあまり自信がない。♪ 横枝の片方にばかりつく莟未来は空にあるとばかりに♪ 旺盛な芽吹きに春の陽が注ぐこんな時代がわれにもあった ♪ 純白の花で窓辺を飾りたい白紙のノート広げるように♪ 新旧の代わりゆきたる隣保班再生託して茨を咲かす♪ つぎつぎと花を咲かせる白薔薇の夢に明日が記されてゆく やっぱり退屈な歌しか作れなかった。頭が短歌モードになれないまま、ただ言葉をひねくり回した結果がこれだ。どうしようもなく中身がない。ここは短歌の修練の場でもなく、日記としての位置づけなのでこういう情けないことも書いておく。 ご覧になった方がどう思われ、どう感じているかは、コメントなど一切ないので分からない。後から自分で読んでみると、それはそれでいい記録になっていると、自分では思う。私という一個の人間の〇年〇月〇日の精神状態とその行動が、間接的であってもまがいのない真実として記録されている。そのことの意味は小さくはないと思う。 唯一無二のこの日この時。いたずらに過ぎ去っていくだけの時間が、細胞の一部の様に繋がって息づいている。
2023.04.04
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♪ ゆくりなき鶯の声おもほえず隣家の空にひかり色づく 良く晴れた日曜日の午後、隣家の庭あたりでまだ拙いながら美しい鶯の声が聞こえてきた。しばらくの間、ケキョケキョばかりを繰り返している。 まさかこんなところで啼くなんて、思ってもみないこと。その澄んだ声が明るい空に響きわたって、何だか嬉しい心持ちになって来る。♪ あと少しの我慢を強いる「杉花粉だけががダメなの」マスクが動く♪ 造成の設計ミスの疑いに憮然と展べをる売り物件よ モデルハウスは値引きしたにもかかわらず、売れる気配もない。宅地4筆もまったくダメ。いっそのこと、安売り業者の様に、3軒分の宅地に建売り5軒並べて売り出した方が足が早かっただろう。 コロナ禍で狂った経済に翻弄される形になったようで気の毒だが、空き地のままでいてくれた方がこっちは有難い。♪ 白板症 経過観察必要とあっさり言わる非常勤女医に♪ この家も車が主役 玄関に美麗堅固な駐車場あり 4月30日まで工事期間が取ってあり、最後の外回りの工事に入っている。植栽が無いのは他の家と同じだし、土の部分もたぶんないのだろう。メーカーの指針通りなのか知らないが、どの家もみんな同じなのがつまらない。 手前のモデルハウスは車が3台停められるようになっている。それが標準でもあるかのように・・。この新しいお宅もどうやら3台置けるスペースの庭全部をコンクリートで固めてしまうようだ。♪ 控えおる地方選挙の依頼ありこちらにもある要望を出す♪ でっち上げて死刑に処する警察のせせら笑いの殺人遊戯 冤罪なんてものじゃない。この警察の証拠品捏造までして犯人に仕立て上げ、死刑に送る何てことは、普通の殺人よりも罪が重い。 袴田さんは57年間、良くもここまで頑張って来られた。普通の人なら耐え切れず、ウソの自白をしてしまうでしょう。
2023.03.14
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♪ 雲上の皇居、皇族、松の間に長鳴き鳥の歌ひびくなり 天皇、皇后両陛下と皇族方が出席されて行われた「歌会始の儀」が、18日午前10時、皇居・宮殿「松の間」で執り行われました。 お題は「友」で、一般応募の1万5005首(選考対象)の中から入選した10人の歌などが古式ゆかしい節回しで披露されました。「歌会始の儀」=18日午前10時40分、皇居・宮殿「松の間」(代表撮影)天皇陛下 コロナ禍に友と楽器を奏でうる喜び語る生徒らの笑み皇后陛下 皇室に君と歩みし半生を見守りくれし親しき友ら秋篠宮さま 彼方此方(をちこち)を友らと共に行巡(ゆきめぐ)り聞き初(そ)めしことに喜びありぬ秋篠宮妃紀子さま 春楡(はるにれ)の卓の木目を囲みつつ友らと語る旅の思ひ出敬宮(としのみや)愛子さま もみぢ葉の散り敷く道を歩みきて浮かぶ横顔友との家路秋篠宮家次女佳子さま 卒業式に友と撮りたる記念写真裏に書かれし想ひは今に常陸宮妃華子さま 友よりの封書に貼られし海外の風土の切手をルーペに見入る寬仁親王妃信子さま 老犬を悼(いた)む思ひが友からの賜(た)びし子犬の声(こゑ)に救はる三笠宮家彬子さま 器からこぼれてしまつた言の葉を静かにつむぐ友の横顔高円宮妃久子さま 紅葉(もみぢ)する木より聞こゆる鳥のこゑ黒姫の森を友と歩めば高円宮家長女承子さま 厳かに巫女の舞ひたる倭舞ひ外つ国の友と我ながめをり【召人】小島ゆかりさん 旧友のごとくなつかしあかねさす夕陽の丘に犬とゐる人【選者】三枝昂之(さいぐさたかゆき)さん 月蝕ののちの望月くまもなき地上にわれが友垣がゐる永田和宏さん 悪友と呼びたき友のいくたりを思ひ浮かべてゐる月の食今野寿美さん 「みづの上」につらつらしるす一葉の友といへるもなくとぞあるを内藤明さん 海越えて柔らかき声まだ逢はぬ友といつしか卓を囲まむ宮内庁庁舎=東京都千代田区(産経新聞)【入選者】(年齢順)岡山県 藤井正子さん(73) 温もりの残る手袋渡されて君は友より夫(をつと)となりぬ熊本県 三浦清美さん(63) 卒論は梶井だつたね君だけが四十二歳(しじふにさい)のままなる友よ東京都 久和(きゅうわ)鏡子さん(62) キスゲ咲く尾瀬の木道友の背のリズムで歩くすこし離れて新潟県 相川澄子さん(61) 友だちはゐないんだよと言ふ君の瞳の中にわたしを探す神奈川県 岩田真治さん(55) つくるでもできるでもなくそこにゐたあなたをわたしは友とよんでる茨城県 芳山三喜雄さん(50) ともだちを友人と呼ぶやうになり子は就活をほどなく終へる島根県 㯃(うるし)松友香さん(40) 「母さんも友だちできた?」と小一の吾子(あこ)に問はれし仕事の初日京都府 丹羽紗矢香さん(36) 友といふ言葉を知らぬ一歳が泣いてゐる子の頭を撫(な)でる東京都 吉田直子さん(26) みづいろの絵の具ばかりを借りにきた友の見てゐた空を知りたい山梨県 小宮山碧生(あおい)さん(14) 友の呼ぶ僕のあだ名はわるくない他のやつには呼ばせないけど 私ももちろん応募しました。毛筆で書くのが必須条件なので、年に一度、この為だけに筆をとるというのも良いものです。 また、あて先が、「〒100-8111 宮内庁」だけでいいというのも、何だか別の世界へ足を踏み入れる儀式の様で、厳粛な気持ちにもなります。 最近の若者の短歌愛好者が増えたわりには、古典的な和歌への反発もあってか、前応募数があまり増えていないのは残念です。口語体ではなく、旧仮名遣いで、となればそりゃあ縁遠いのでしょう。ましてや毛筆必須ともなれば、もう別世界過ぎて歯牙にも掛からない? そういう時代だと言ってしまえばそれまですが・・・。 後日に、入選歌の考察をしてみようと思っています。 来年の歌会始のお題は、「和(わ)」 応募は未発表の自作で1人1首。「和」の文字が入っていれば、「平和」「和服」のような熟語や、「和らぐ」「和む」のように訓読みで使っても差し支えない。 締め切りは9月30日(当日消印有効)。宛先は「〒100-8111 宮内庁」
2023.01.20
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♪ あさまだき目覚めて蝉の声を聞く飼いならしおる耳介の奥に 今朝は文章を書く気にならず、日常、世相など思いつくまま歌に詠んでみました。♪ 購わん 逃げ場を持たぬ妻のため10インチなる携帯テレビ♪ ルリタテハの幼虫二ひき庭にいて蛹で越冬するかは知らず♪ 花を付けず葉ばかり伸ばすわが射干(シャガ)は偏屈頑固を受け継いでおり♪ 直毛の寒がりアランが行動で気温を教えてくれる晩秋♪ 一人では寝ようとしない保護猫のアラン三歳甘えん坊なり♪ 電ノコで厚きブビンガを断裁す午後のしじまに大音響で♪ 知名人逝きたるニュースぎつぎつと流れ来たりぬ無惨なる歳末♪ 連日に人殺し合う映像を見せられながら食べている昼♪ 大量の難民生みしユーラシア民族移動の歴史とならん
2022.12.13
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♪ ぐりとぐらくるりくらからきたたよりきのこのカレーのはなしをしましょう 今、たまたま借りてきて読んでいる本が短歌についての随筆集。 大学で本格的に勉強したわけでもなく、師事した先生も持たず何も知らないまま歌を詠んでいることにいささかの後ろめたさもあって、たまにこんな本を借りて読んでみたりしたくなる。 随筆が好きだということもあり、いろんな人が短い文章の中で、心の内を垣間見せてくれるのがいい。 ラインナップを見ると、その世界では一家言持つ著名人ばかり。この年になっていれば名前だけは知っている。それらの人が短歌をどう思っているか、どういう意見を持っているのか、どうしたって興味をそそられる。 のっけから塚本邦雄や藤井貞和話が出て来て、学術的というか専門的な話が進んでいくので、われわれ素人にはちょっと荷が重い感じがしないでもなかった。歌人が中心で小説家や文芸関係者がほとんどなのでもっと違う世界の人が入っているといいのにと思ったりもする。 目次(収録作品) 上田三四二 底荷 塚本邦雄 短歌考幻学 斎藤茂吉 写生 童馬山房夜話282 宮柊二 孤独派宣言 柳田國男 歌占人 藤井貞和 うた、かたり 非言語的空間 寺山修司 個への退行を断ち切る歌稿 一首の消し方 馬場あき子 古く新しき詩語の情念 高野公彦 動詞の数を考へる 大岡信 わが短歌今昔 湯川秀樹 短歌に求めるもの 一九四七年 諏訪優 怖い 仁平勝 松木トメの短歌 リズムのナショナリティ 近藤芳美 内奥・根源 金子兜太 自然の歌 吉本隆明 長塚節 山本健吉 短歌その器を充たすもの 迢空晩年の歌論 福島泰樹 寸秒の碧きひかりの去りたれば 宮沢賢治 中井英夫 三色旗の旗手 正岡子規 再び歌よみに与ふる書 北原白秋 桐の花とカステラ 三島由紀夫 古今集と新古今集 岡井隆 「こゑわざの悲しき」 秘抄覚え書 竹西寛子 遠島のうた 松田修 歌のありか、歌のおきて 言語の様式あるいは定型短詩 谷川俊太郎 七・五肉声の魔 金井美恵子 愛の歌 歌う声・歌う言葉 俵万智 歌が生命をもらうとき 唐木順三 自殺について 一~四 佐佐木幸綱 オノマトペの先進地〈俳句〉 内容についてはまだ読み終わっていないし、文章にまとめる時間がいる。“書くと頭に入る” が、読んだだけでは直ぐに右から左に抜けてしまう。この日記ブログも書いて頭に入れるのが目的の一部になっている。後日にその機会を設け、書いておきたいと思うのだが・・。 今日はこの歌人のことばを噛みしめてみようと思う。 玉のような感じで、まろやかに、ふうっと心に入ってくる歌。母音の響きとことばの繫がりのリズム、韻律。情景描写や情景説明をせず、意味性を必要最小限に抑え、ことばの持っているイメージと表現しうとするイメージがうまく融合したような歌ということになるのでしょう。 論理的な意味あいをもとめないかわりに、空中を浮遊することだまとふれあうような心持で詠む、というようなことかな。「上の句に風景、下の句に心情を詠む」のが一つのパターンとしてあり、その短歌のセオリーを踏まえて、言葉のもつ特徴を韻律にのせて、すっと心に流れ込んでくるような歌を詠む。理屈で分かっても、そう簡単に生まれるものではないでしょう。 斎藤茂吉はこのエッセイの中で、写生に主眼を置くべきだし、幽玄に見えるような歌でもそれは写生があってこそのものだという。自然と人生を対立せしめ、自然に親しんで人生を傍観する、人生に親しんで自然を傍観するのも、「写生」を実行する上の、その時々の態度の差に過ぎない、心構えの差に過ぎないという。平凡にみえる歌でも写生でなければ表現しえないものがあり、それが短歌の短歌たるべき姿だと。 これらの事を念頭に置きながら、秋の風情とこころもようをゆったりとしたリズムで詠んでみる。さまざまな要素を持った秋の日々を、ゆたかにゆっくりと過ごすのに、短歌好きにはたまらない。 * ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。
2022.10.10
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♪ 本当の脱皮がしたい回数は五回と決めて寿命も決めて 12日のブログのつづき。歌を詠むためにテーマを思いつくまま列挙して、それに即興で三十一文字を充てる試み。 試しにやってみたが、推敲しようとしてもうまくいかない。 これらをヒントに幾つかの別の歌を詠んで、それを推敲しているところ。今週中には何とかしたい。折角だから、その痕跡を記録としてアップしておく。友と旅行 ♪ パチンコと映画は一人がいいという友の選んだ常滑競艇友とジャズ ♪ ジャズ好きが周りにおらず仕方なく趣味が合わない友達といる友と亀 ♪ 友達はいないが仲間はうんといるアカミミガメの浮く大田川友と酒 ♪ スナックのカラオケ嫌いじっくりと話がしたい友達ならば友と猫 ♪ ギンちゃんはお師匠そして友達で何でも黙って聞いてくれます友と孤独 ♪ 孤独をば友達にして幾年を人と比べぬことのしあわせ友と病院 ♪ 同級の友がヘルニア患いて手術は避けろとネットにはあり友と入院 ♪ 胃を切りて入院の吾を見舞いたる友が落語のテープを置きゆく友と手紙 ♪ 洛北の友に手紙を書いている賀状に手術の報告ありて友と山 ♪ 梓川その冷たさの変わらぬを友が泳いだ五十年前の友と女 ♪ 悪友は女不在の恐怖症デートのさなかに次へ電話す 推敲すればするほど、脳が余分なことを考え始めてしまって理屈っぽく、説明的になっていく。そこから抜け出すには、脳をリフレッシュしてスタート地点に戻る必要がある。 説明的なものを排除して簡潔に。そして情感が伝わり、情景が浮かんでくるようなものを。テクニックは考えず素直にオーソドックスに。しかも、本来の短歌のもつ品格と韻律を損なわない普遍性のあるもの。頭で分かっていても実際にはかなり難しい。 簡単そうに見えるものほど奥が深い。それはどんな世界でも同じこと。そこに到達するために、蛇のように脱皮を繰り返すしかない。 3日に孫が置いて行ったモビール。「ガマの穂が乾いてくるとふくらんできて、最後は飛び散って大変。なので、袋をかぶせておくといいよ」と言っていた。 10日経ってかなり飛び出してきている。 最初とは違う姿になって、スプラッシュする。 歌もこんな風に変身して、見違えるようなものになってほしい。 ◆宮内庁 歌会始の詠進要領(令和5年) * ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。
2022.09.14
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♪ 締切の間際とならん古(いにしえ)のむらさき匂う歌会始 ずいぶん遅くなりましたが、2022年(令和4年)「歌会始の儀」の入選歌の考察をしてみます。お題は「窓」。30日の締め切りが迫っているこの時期に今更とは思いますが、自分の歌もまだなのでおさらいのつもりで。好調とは言えない脳状態ですが頑張ってみます。(敬称略とさせていただきます)富山県 西村忠(85) 剱岳三ノ窓より朝日さし富山平野に田植はじまる 山稜上の大きな切れ込みの事を越中では「窓」と呼ぶらしい。穂高連邦などではキレットと呼ぶもの。剣岳には「大窓」「小窓」「三ノ窓」があり、三ノ窓には雪渓があって日本の氷河の一つとか。雄大な景を捉えて、その切れ込みの間から朝日が射し平野を照らし始めている。平野には田植え。空間の移動から時の描写へと移り、地球のダイナミズムまでも感じさせる。端的に詠んでいて、二つの名刺が効いて情景がありありと浮かんでくる。福岡県 高木典子(84) 海を見るうしろ姿の絵のありて時をり共にその窓に立つ 絵の中に入り込んで、その描かれた人物と一緒になって窓の外を眺めている。劇中劇を見るような客観的視点で自分を眺めている。日常を一瞬離れ、別の世界に行くようでちょっとシュール。過去を彷徨うのか未来に思いを飛ばすのか、読み手を誘ってくる。「時をり」のことばによってリアルさが出ている。福岡県 田久保節子(81) 柿わかばきらめくまひる窓あけて天道虫を風に乗せやる 短歌の常道、時期と場所と動作を順序良く描きながら、窓からの展開がすばらしい。気持ちのいい初夏。緑色の風に乗って赤いテントウムシ飛んで行く。ア行の多い上の句が明るい雰囲気を醸し出し、響きとリズムが心地いい。色彩も鮮やか。。絵本を見ているようで、情景が駒落としのように展開してゆく。香川県 藤井哲夫(78) 出来た子もそれなりの子も働いて働きぬいて今日同窓会 主題が最後に持ってきたことで歌に奥行きが出た。年齢を重ねて、それぞれが様々な人生を歩んできたこと。子どもの頃の優劣なんて、長い年月の間に比較することすら意味がなくなっている。みんな頑張って生きてきたことが言動に現れていて、暗黙の裡にお互いを認め合っている。「それなりの子」に人柄が現れていて、明るい歌になっている。東京都 三浦宗美(68) 夫逝きて十年(ととせ)を過ぎし今もまだ窓のそとには灰皿のある 愛煙家だったのだろうか。そうでなくとも、煙草には男の匂いが付いて回る。息と口、呼吸そして紫煙。そんなタバコが嫌いではなかった。そうでなければ灰皿は捨てられているでしょう。窓辺で灰皿に目が行き、もう十年も経ったことを思う。灰皿によって歌に重みが出た。歌に流れがあって、時の経過がそれに乗っている感じ。青森県 高橋圭子(60) 斜陽館に少しゆがんだ窓ガラス津島修治も見てゐたはずの 津島修治は太宰治の本名で、「斜陽館」は太宰治記念館で、太宰の生家でもある。明治40年に建てられたものだけに、ガラスは貴重なもの。今では見られないゆがんだガラス。独特の魅力があり、斜陽館の名前と重なって目を惹かれたのでしょう。本名を詠み込むことでおやっと思わせ、「見てゐたはずの」の言いさし表現が、再び頭に戻る効果を生んでいる。高度な表現に感心する。東京都 川坂浩代(55) パソコンの小さき窓にそれぞれの日常ありて会は始まる コロナ禍でのリモートワーク。類似の歌は多いでしょうが、一つ画面に分割されて表示されるそれぞれを「小さき窓」と詠んだのがいい。それぞれに別の生活と日常があり、場所も環境も違う別個の存在。時間だけを共通するにして、窓に顔が並んで会が始まる。バーチャルの手軽さと心もとなさが同居している。現在の時代と社会を表していて秀逸。茨城県 芳山三喜雄(49) ベランダに鯉幟ゆれる窓を指し君は津波の高さ教へる 鯉のぼりという平和と生命力のシンボルが、津波の大きさを示すというアイロニー。また、鯉が津波の高さほどの滝を登ってゆくという意味にもとれて、力強さも感じることが出来る。日常の中に潜む恐ろしさと鯉のぼりとの対比が、「混乱」を思わせて、印象深い歌となっている。「君」をどう取るかで、意味合いがずいぶん変わって来る。それがいいことなのかどうか。東京都 伊藤奈々(41) 窓を拭く人現れてこの場所がほぼ空だつたことに気が付く 高層ビルで仕事をしている日々。何気ない風景の中に突然人の姿が現れて空間に遠近感が生まれ、急に生き生きとしてきた。自分が雲が流れる空の中にいるという新鮮な発見。鳥になったような気分でもあり、怖いことでもある。エレベーターに乗ってしまえば気づかない、高層ビルのという異常な空間。その窓を拭く仕事をする人のいることの驚きと、リスペクト。9.11をも思い起こさせる空が、いつまでも頭の中に広がっている。新潟県 難波來士(16) 窓の外見たつて答へはわからない少し心が自由になれる 試験の答案用紙を前に、難しい問題に対面している。ふと窓を見ると、窓がフィルターとなって答案用紙の呪縛を解いて、どうってことないよと思わせてくれる。三句で切れ、下の句への展開がとてもいい。「少し心が自由になれる」に余裕も感じられる。説明的な言葉を一切使わずに読んでいるところがいい。 選者 三枝昂之、永田和宏、今野寿美、内藤明 宮内庁ホームページには佳作の歌も掲載されています。★窓越しの日射しもなでて探りゐし点字が指に読め始めたり(岡山県武藤孝夫)★職引きて帰農せし夫は窓開けて空うかがふを慣ひとなせり(青森県 佐々木冴美)★一グラムに満たないやうな虫なのに落下の音を窓辺に残す(茨城県 園部啓子)★窓開けて老いた二人の「鬼は外」少し豆食みひと冬を越す(静岡県 久保田和子)★それぞれの窓それぞれのさやうなら汽車は静かにホームを離れる(石川県 早川晃治)★小窓より入り来る風の心地よさ今日は五月の名もなきいち日(福島県 信太政子)★西日受くる老人ホームの窓辺には見えぬがきつと母が手を振る(千葉県 西尾敬子)★君と見る窓の外には君がゐて君の隣の僕を見てゐる(東京都 田畑秀樹)★夫が刈る草のにほひに落ちつかず牛の啼くなり無双の窓に(徳島県 佐藤枝世)★夕暮れの窓に小さき影跳ねて微かに聞こゆなはとびの音(東京都久和鏡子)★鶴舞駅陽をうけ車窓はきららなる数多の傷が光をつかめり(愛知県 甲埜千尋)★雨続く教室の窓水滴が一つになつて加速して行く(新潟県 神保ひなた) ☆ 2017年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2018年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2019年歌会始入選歌の考察 ☆ 2020年 入選歌(この年は応募せず、考察もしていない) ☆ 2021年(令和3年)「歌会始」入選歌の考察 * ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。
2022.09.11
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♪ 狭庭なるベストスペース萩の葉の日陰となるを逆手に取らん7月にもなれば萩がこんなに葉を茂らせる。♪ 清流の渦の流れにひと時のエクササイズを目高にさせる我が家流の水換え作業♪ 庭いじりしてる間は近寄れずミカンはしばしお預けとなる♪ 園芸家の訪問取材アイデアの満ちし狭庭の楽しからずやカーメン君ガーデンチャンネル(YouTube)♪ とりあえず目隠しフィルム貼ってみる春の日差しのまぶしき窓にカーテンをブラインドに換える予定。 * ウクライナ応援の思いを込めて、背景を国旗の色にしています。
2022.03.15
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♪ 偏執と妄想に見ゆプーチンの行状なべて病理なるべし この21世紀も21年を過ぎたグローバルなIT時代に、よもやこんなアナクロな大統領が大国を牛耳るだけでなく他国に攻撃・侵略するなんて。 冷戦時代の旧ソ連の姿を忘れられず、アメリカが勢いをなくしている今がチャンスとばかりに、あんな暴挙に出たのだろうか。 習近平に刺激されているのか、共産主義には独裁者が必要とばかりに歴史を逆戻りしていく。♪ 露にして杭を溶かして少しずつ領土広げるネイション破壊♪ 擬勢張りフェイクを流す為政者が偽情報を取り締まる怪♪ EUとNATOが憎い嫌われて入れてもらえぬお山の大将今の僕らにできること! より 東西冷戦時代に世界は、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国(いわゆる資本主義陣営)を「西側」諸国と呼ぶようになり、ワルシャワ条約機構(WTO)の加盟国(いわゆる共産主義陣営)を「東側」諸国と呼ぶようになった。♪ 日本はレッドゾーンに寄り添いて異端と言えば言えなくもない♪ 最悪の事態を思う乗組員 宇宙船地球号を死守せよ * ウクライナ支持の思いを込めて、国旗の色にしました。
2022.03.06
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♪ 指図とか指示とかはもう聞きたくないそんな顔して2月が終わる ♪ 条件を付けてやらせること増えて今とっぷりと反抗の時♪ ママが手を焼いていること思いつつ入り江に舫(もや)うロープを探す♪ おんどくの宿題ありてじーじーが代わりに読んで書く二重丸♪ 中間の反抗期とかがあるらしい聞かないしない守らないんです♪ からっぽにしておく暇ががない日々にときどきボーっとしているのがいい♪ この爺は今でもずっと反抗期 不遜不真面目不謹慎多分死ぬまで
2022.03.01
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♪ 日に数度「なんかあったの?」と聞いてくる義父逝きしことが記憶とならず♪ 百回も繰り返している義父の死の記憶は遠く空をさまよう♪ 押し入れは端材木など詰め込まれ趣味の大工の倉庫となれり♪ ロッキングチェアーに座りシベリアの凍土のことなど思いいたらん♪ 現金を娘に見られ慌てたる義父逝きし後も見つからぬまま♪ 脊柱を圧迫骨折せし義母の痛み薄れて米寿を生きる
2022.02.27
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♪ 肉体の進化を超えてつぎつぎとステップアップしてゆく不思議 2022年 2月4日に開幕した北京冬季オリンピック。悲喜こもごもの話題で賑わっていますね。場所が中国なだけに、2月20日 までの17日間の期間中に、想定外のことが起こる可能性を秘めている。 プレスセンターは、いつもよりピリピリしていることでしょうねぇ。♪ 百台のスノーガンにて雪を積み冬季五輪を為せる傲慢♪ スノボーに躍動魅せて若者は勝負を超えて絆を見せる♪ モロ脚で突っ込んでゆく女たち時速百三十キロのダウンヒル♪ 万が一の氷の溝に泣く弓弦 瞬時に想う四年後のこと拡大します♪ いつもとは違う検査の穴に落つ北京とあらばなお悲しけり
2022.02.11
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♪ 入口と出口に因果あるを知るよく噛めずして便秘となりぬ♪ 借りるのは閉架所蔵の本ばかり染みや折り目も味わって読む 今は純文学を読む人が少なく、流行りのミステリーやストーリー性の大衆文学ばかりがもてはやされているようだ。文句を言う筋合いはないが、そういう時代なんだから受け入れるしかない。 噛み応え無い口当たりのいいものばかり食べていると、噛み応えのあるものが食べられなくなる。それと同じことがこういうところにも及んでいるということでしょう。♪ 老体は凸凹の凸にいるらしき二重跳びなどしてみたくなる そうは思っても現実は、普通跳びががやっと700回くらい。中殿筋の衰えが原因らしくジャンプの力が入らない。それで独自に、片足ずつ真横に上げる運動をしていて、徐々に効果が出てきている気がする。近々、二重跳びもできるようになるだろうと思う。記憶力もかなり衰えているので、ランニングの代わりに縄跳びをするのもいいんじゃないかと思っている。 目の前の道路が縄跳びにはかっこうの場所になっているので、気が向けばいつでもできる。♪ 待ちきれずキムチ未満に手を付けぬ子供誘拐犯人のごと 二週間目なのでまだ酸味が出ておらず、全体的にもぼやっとして締まりがない。浅漬けが好きな人には丁度いいのかもしれないが、私には物足りない。 息子が(いつも熟成してから上げる)、酸味が出る前にほしいと言ってきた。すぐに酸っぱくなりすぎて困っていたらしい。それで、こんな早くに食べたことがないけど試食してみたら、 “食べられないことはないなぁ” と・・・。
2022.01.24
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♪ 神妙な顔して猫がしゃがみおる萩の散り葉が今朝の落とし場♪ 開け方の分からぬ金庫今日もまた開かざるままに次男を帰す♪ 小寒を過ぎてようやく漬ける気になりてキムチの材料をチェックす♪ 箱型に小さき窓を見せて立つ空の巣までの家なるべしや
2022.01.06
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♪ パソコンで個人認証するために必要だったそれだけだった♪ 初スマホ超節約モードよしとして六つばかりのアイコン光らす♪ スマホ様 時と思考を預けます理想の場所へ連れてっておくれ♪ 持ち運び電話もできる計算機代わりにトイレに行ってはくれぬか♪ お節介のおばさん一人入っています何から何まで知らせてくれて♪ 何もかも覗かれているグーグルに死に方までを導かれてゆく♪ 受動態が常態となり手も足も口も使わぬ人となりゆく♪ 「寒いね」に「寒いですね」とかえりくる齟齬を生まないベストフレンド
2021.11.25
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♪ 汽笛鳴るたびに列車の窓閉めきトンネル多き中央西線 秋は知らず知らずに物思いにふけって、昔のことを思い出したりする趣の強い季節ですね。恋愛の事、故郷の事、亡き両親の事など懐かしがったりして・・♪ ほろほろと赤米のごとこぼれゆく萩はしんしん夜をねむらず♪ 高まりし空をあおぎきてゅるきゅるとしじまの中を一番列車♪ いまはもう知己なき遠きふるさとの田んぼに今も蝗(いなご)の飛ぶや♪ 空さえて月うつくしと思えども今日は日の出の友となるらし10月3日 6時半
2021.10.04
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♪ キッチンの窓のあかりに守宮きて趾下薄板を孫と眺めおる 今年は歌会始になんとか応募しようと思い意気込んでいたが、劇的環境の変化に精神をかき混ぜられていたずらに時間が過ぎてしまった。お題の「窓」を詠むに当たって、孫といろいろなシチュエーションの窓を考えたりして楽しんだのが5月20日。この時はまだ先だと思っていたのに・・ 10首ほど作ってしばらく寝かせておいた方が良いだろう。それから推敲しようなんて思っていたのが間違いだった。山で採って来たもの。テイカカズラ? 窓下に植える植物をどんなものにしようか、なんか考えているうちに何時の間にやら9月になっていた。それで、慌てて寝かせてあった歌を推敲するものの気が入らず、ちっともまとまらない。5首まで絞ってなお読み返し、詠み直ししてみるもののなかなか納得するものにならない。生活感が出ていない、主観の部分が弱い、リアルなものになってないなど、つくづく才能が無いのが恨めしい。マルバルコウソウ 30日が締め切りなのでそれまでに何とかしないと。1週間前になって、最後は3首に絞りまだいじっては何度も読み返してみる。ええーい!決めた。これで行く。 ようやく踏ん切りをつけたのはいいけれど、最後の難関が待ち構えている。墨書というやつだ。毛筆で書くのが絶対条件なので、PCでプリントアウトするわけにはいかない。何せ、1年に一回のことなのでどうしようもない。この日のために書を練習するなんて気にはなれなくて、ヘタくそながら何とか恰好を点けなくてはいけない。 毛筆の上手い下手が考慮されるのかされないのか、そんなことはないだろうと勝手に解釈している自分が如何にも心もとない。萩の花もかなり散って・・ 締め切り3日前になって、ようやく毛筆の練習する気になった。半紙を二つ折りして右に短歌、左に住所氏名などを書く。しかし、それとてあまり身が入らずなんとも集中が続かない。歳のせい? 環境が変わったせい? 気が散る事柄が多すぎるせいか?あるいは猫のせい? カミさんのせい? あの総裁選のせいか? “それら全部が影響しているようだ” なーんて他人のせいにしてみるも、埒は開かないままだ。 前日の夜になんとか書き上げ、「〒100-8111『宮内庁』御中 詠進歌在中」と書いて、人気のない深夜、市役所前のポストに投函してきた。なんだか便秘が治った時のような気分。 宝くじを当てる様なものだし、歌を完全には納得しきれていないので期待はしていない。身も心も軽くなって、心に寄り添ってくる酒がいつもより美味かった。
2021.10.03
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♪ 植えっぱなしを条件とする花選び水やりさえもいとう猫好ききのうの夕方の空 環境が変わって気持ちが散漫になっていて、そわそわとして落ち着かない。何もかもが集中できずに中途半端になっている。40年慣れ親しんだ風景が一変した上に、住環境そのものが大きく変ったのだから当然のことだろう。自宅の改装も控えているし、それに伴ってやるべきことも幾つかある。 短歌にも集中できていないので、自分でもあまり出来が良くないとは思っている。惰性で続けてはいるけれど、これこそルーチンになっているので中断したくはない。この際、基本に戻ろうと思って借りてきた入門書「『ここからはじめる短歌入門』坂井修一」。これがなかなか中身が濃く単なる入門書なんかではなく、ベテランの歌詠みにとっても参考になる内容となっている。 今朝、たまたま古い「NHK短歌」(2011年9月号)を見ていたら、この本が紹介されているのに気づいた。当時はまったく目に入らなかった。 角川「短歌」に、2008年5月から2010年4月号まで掲載された文章をはじめ、「生きることは歌うこと」「短歌の技法」「短歌を作り続ける」「二十一世紀の若者のために」という章で構成されている。 東京大学・ 大学院情報理工学系研究科・ 電子情報学専攻 教授というコンピュータの泰斗なだけに、ITの世界に生きる立場を通して述べられる内容はただの入門書とはわけが違う。 この本の、重要な記述のところを抜き書きしておいた。 「ここからはじめる短歌入門」坂井修一 「一番大切なこと」 短歌をつくることの芯に何があるのか、ということ。これは歌をつくる人ひとりひとりで異なることです。しかし、何もないままでつくるのは、意味のない装飾品をつくることと同じで、空しいだけのことです(何もないままで作ることと何もないことを歌うことはちがいます)。「自分の小説家としての仕事を短くいうならば、言葉をみがくこと、みがいた言葉によって自分を表現することだ、と考えています。言葉のエラボレーション(骨折って作りあげること)ということが、私が生きる働き、labor の中心にあります。しかもそれは、社会、世界に背を向けてただ言葉をみがくだけの、オタク的な生き方とはまったく違ったものです。社会、世界に自分をつきつけることで、内面に根ざす表現の言葉を現実的なものに鍛えることなのです」(『「話して考える」と「書いて考える」』大江健三郎) この「小説家」ということばを「歌をつくる私」と置き換えてみればいかがでしょうか。 私たちが日々短歌をつくることは、日本を代表する作家の創作行為とはぜんぜんちがうことだ。大江健三郎がいうほど深刻なものであれば、自分にはとても手を出せることではなう。自分などは、もっと日常的な喜怒哀楽や花鳥風月を楽しく詠えばいいのであって、「社会、世界に自分をつきつけることで、内面に根ざす表現の言葉を現実的なものに鍛える」など、とてもできることではない。そういう感想もとうぜんあるでしょう。 いっぽうで、歌をつくろうという方々がかかえているさまざまな思いは、老若男女を問わず、それぞれに重く、激しく、深いものであることを、歌会や選歌を通じて、私などよく知っています。大江健三郎の文学には、人類の未来というような大きなテーマがあるわけですが、歌をつくる人もそうした大テーマにつながるかもしれない個々の課題をかかえもっておられる。小さな喜びや怒りや悲しみの表現の中に、「世界」への扉が見え隠れするのを私はしばしば感じます。そう感じるときに、テーマの大小とは別に、世界に自分をつきつけ、ことばを鍛えるということが見えてくる気がします。 歌の題材はいくらでもありそうに思うのに、「世界に自分をつきつけ、ことばを鍛えろ」と言われると構えてしまって手も足も出なくなりそうだ。師を持たないものの気楽さと、緊張感のないことの悲しさを感じている。今朝の空
2021.09.07
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♪ 山小屋に目覚めしごときすずしさにタオルケットをまさぐっていた‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 毛穴を広げるのを厭わない生活をしているお陰で、夏バテも食欲減退もなく元気に過ごしている。夜はぐっしょり汗をかいて、起きた時に風に当たたりすれば涼しい~と思えたりする。 そんな日々の中で、昨夜は台風の余波で一晩中家の中を風が抜けていって涼しかったこと。朝方には寒くて、今夏初めてタオルケットを掛けたくらい。♪ 涼しさの先に待ちおるもの知れば詐欺に遭いたる心地してくる10日の気温 朝は27℃でそんなに低くはなかったのに、あんなに涼しかったのが意外な気がした。発汗したところへ風が当たって、すぐに気化したためなのだろう。 そして、今日の最高気温が34℃となっていて、この高さにもオイオイと言いたくなる。こんなことなら知らない方が良かった。♪ さらさらの汗にまみれて飯食ったあの夏らしいの日々はいずこへ♪ てらてらと汗を光らす馬となり少年夏を駆けぬけてゆけ♪ クーラーと猛暑が人を狂わせるマラソン選手のけだし馬なり 若いころはサラサラしていて乾きやすい汗だったのが、加齢や運動不足などによってベタベタの汗になってゆく。汗腺の機能が弱ってうまく発汗できなくなると、水分だけでなく、血液中にふくまれるナトリウム(塩分)などのミネラルが一緒に排出されてしまい、ベタベタの汗になってしまうという。ミネラルをふくむ汗は乾きにくいため、いつまでもベタベタし不快で、汗臭く感じるらしい。 ミネラルは心臓の働きを調整したり、血液や骨、筋肉をつくったり、免疫機能・運動機能・生殖機能を助けるといった、重要な代謝機能を数多く受け持っている。そのためミネラルが不足すると、からだのあちこちがエネルギー不足状態になってうまく機能しなくなり、夏バテするんだとか。 ふつうの汗には、ナトリウムが0.65%程度ふくまれている。ところが、発汗機能が落ちた運動不足の人が急に動いて大汗をかいたりすると、ナトリウム濃度が急上昇してしまう。汗腺には、汗にふくまれるナトリウムなどのミネラルを再吸収する機能が備わっていて、一度に大量の汗をかくと、ミネラルの再吸収が追いつかず、一緒に排出されてしまう。いわゆるベタベタした「悪い汗」といわれるもの。 それだけでなく、大汗をかくと血液がドロドロ状態になり、めまいを起こしたり、倦怠感を感じたり、ときには脳卒中や心筋梗塞などをまねくことにもなりかねないというから、ご用心。 因みに、毛穴から発汗して体温を下げているのは「人間と馬」ぐらいだとか。馬の汗は泡立つもので、この泡立ちは馬の汗のなかに「ラセリン」という石鹸の成分に似た成分が含まれているから起こるのだそうです。
2021.08.10
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♪ 早朝をせき鳴くせくせみの声きけば乾坤じわりと猛暑きざしぬ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ いよいよ舗装工事の前日、整地、地均し・地固めをやっていた。何事も下地が大事なのは同じのようで、固めては均し、砂利を入れては固めるを繰り返していた。かなり入念な作業の様で丸1日かかっていた。♪ 転圧と敷き詰め数度くり返し道路が私のものとなりゆく♪ リビングを揺るがし響く重低音 猫と耐えおるロードローラー♪ アスファルト乳剤塗られ黒々と地面が道路の顔になりゆくプライムコートという防水のための乳剤を塗布している。 ── ここから舗装の本番 ──♪ 吐き出さる土瀝青(どれきせい)とふ燃える土ナウマンゾウがいま甦る♪ 黒々と敷き詰めらるるアスファルト猛暑の中を百数十度♪ 湯気の立つ舗装に汗のしたたるを見て口ずさむ山谷ブルース♪ 有終の美となる道路 半年の定点観測が終わってしまう
2021.08.05
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♪ おずおずと赤き聖火の灯されて五輪の花がコロナ禍に咲く‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥♪ 朝顔に似つかわしざる一輪が三日ずれたる海の日に咲く♪ 中空を漂うごとくふわふわと開会式が進行してゆく♪ 競技場は観客の居るように見ゆこの日を知っていたかのごとく♪ ゴタゴタの末の簡素なセレモニー理想の形となりて嬉しむ♪ アトランタのモハメド・アリを想いつつO・N・Mの聖火を観ており♪ 8号が狙いを定め追い打ちを掛けにくるらん菅政権に 拡大します
2021.07.24
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♪ インパール作戦再び。責任を誰も取らずに済む策を練る‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥♪ 横車を押して軋みの音響くブレーキなんぞ初めから無く♪ 絡み合い回らぬ五つの輪がやがて離れていってばらばらになる♪ たった0.33%の損失で済む何をかいわんや♪ 増水が土手を越え行く様を見る回路固定の永田町界隈♪ 死体から逃げだしてゆく虱らの次に血を吸う人を求めて
2021.07.03
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♪ 数千キロの故国をはなれ変りゆく景色の中を飛ぶ燕たち‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今日6月10日は、日本で初めて時計(「漏刻」と呼ばれる水時計)による時の知らせが行われたことを記念して制定された時の記念日です。 遅まきながら例年のように、令和3年「歌会始」の入選歌の考察を、私なりに感じたまま書いてみようと思います。例年なら1月10日前後に行われる儀式ですので、本来の日程からすれば丁度半年後という事になりますね。お題は「実」でした。「大学の実験室は旧兵舎窓辺に寄りて目盛を読みぬ」秋田県(80) 作者は生まれが昭和16年ごろ。終戦の影のまだ残っている学校生活を振り返っている。「窓辺に寄りて」に動きを伴った臨場感がよく出ていて、薄暗い旧兵舎での実験の様子が鮮やかに浮かび上がってくる。LEDの明るい空間に慣れ、夜も明るい生活の中にいる今、いっそうその時代の暗さが浮かび上がって来る。「見合ひ終へあなたの母から門前でゆすらの紅実(あかみ)てのひらにうく」福井県(77) 見合いの相手に好感をもち、結婚したいと思ったからこその「あなたの母」。帰りがけにもらった「ゆすらの紅実」が「赤い糸」を連想させて、一幅の絵を見ているような美しさがある。「見合ひ結婚」も案外良いものなんだよというメッセージが含まれている気がします。「此処よりは世界遺産と言ふ森の土やはらかし橅の実落ちて」三重県(71) 白神山地でしょうか。「此処よりは」という出だしによって「世界遺産と言ふ森」が何か特別なものを強調して提示される。回りとは違って土が柔らかいという表現に、そこが神聖場所であることを感じさせる。四句切れのあと、「橅の実落ちて」の連用形で終わっている結句によって、読み手もそこに誘われているような心持ちがしてくる。「台風の進路予測を聴きながらまだ少し若い梨の実も穫る」埼玉県(68) ここには悲壮感はなく、自然と共存する姿がある。果樹栽培を楽しんでいる様子が、若い梨の実の青い色のすがすがしさと相まって浮かび上がって来てくる。台風にやられて後悔をしないために身に付けた大らかな諦観と達観。梨への愛情も感じられ、台風はきっと逸れたんじゃないかと思えて来る。「実践に臨む瞳のあどけなさロボットはわが言葉聴きをり」神奈川県(58) AIロボットの進化は目覚ましい。開発者はその出来栄えを疑わず、愛おしい眼差しで言葉の指示を与えている。女性ならではのものでしょうか、わが子を見るような様子が「瞳のあどけなさ」によく現れている。学習する能力を備えているだろうロボットが、指示を注意深く聞いているかのようだ。「今日からは臨床実習の冬の朝少し足早に聖橋渡る」東京都(56) 五九五八八音と字余りを多用することでリズムが滞り、如何にも寒い冬の朝が表現されています。医者という命を扱う困難な道を目指す学生を指導する教官。初日は身が引き締まる思いで家を出るのでしょう。結句の「足早に聖橋渡る」がよく効いていて、白い息まで見えるようです。「シールドの向かうの客に釣り渡す架空のやうな現実にゐる」広島県(53) コロナ禍の見慣れない日常が信じられない。見えない敵と曖昧な政府の態度など、そのやるせなさと無力感がじんわりと浮かび上がって来る。郵便局で感染対策をしながらの窓口業務で、シールドを隔てて展開される虚無感の様なものが表現さている。 「空白に史実のピース集めても想ひつかめぬ歴史のパズル」東京都(24) 歴史には空白があることでその本当のところは謎に包まれたままにある。いくら史実を積み重ねたところで、そこに生きていた人の想いは知ることができない。歴史小説には時に新説が生まれ、新たな人物像が描かれたりする。そこが面白いと作者は思っているのかも知れない。 「せんせいと子らから呼ばれ振り返り実習生は先生となる」長野県(24) 教育実習の学生が「せんせい」と呼ばれて戸惑いながらも嬉しそうな表情を見せる。「呼ばれ振り返り」の動きに、若さの気が満ちた教室の情景が浮かび上がって来る。同じ経験をした若い担任が教室の後ろで、“いい先生になれよ” という思いで眺めている。ついこの前の自分の姿を重ねながら・・・「七限の書道の授業は『実』の文字最後の払ひに力を込める」新潟県(17) お題の言葉をそのまま歌にしたところに、素直な若者の気持ちが出ている。結句の「最後の払ひに力を込める」が秀逸。書道に託して、学校生活の充実ぶりと意気込みが詠み込まれ、若さを表現して余りある。 選ばれた歌はいずれも丁寧に詠まれていて、生活感のある外連味のないものばかり。元々の「和歌」的なものから離れ、今は、個人的な身近な体験や思いを表わす「短歌」的なものになった。ありのままを詠まれた歌が好まれる。淡白な感じがしないでもないけれど、生活者の日常を描いていて好感が持てる。メタファーは短歌の真髄ではあるものの、歌会始の様な天皇(皇族)と庶民の唯一の文化的な儀式において、それを強調するのはそぐわないとされているようです。異化する表現も同様に避けられている。 全体に年齢層のバランスは取られているものの、30代40代がおらず応募者が少なかったことをうかがわせる。その傾向は毎年の事で短歌にはあまり縁がない世代なのかも知れません。 ☆ 2017年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2018年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2019年(平成最後)歌会始入選歌の考察 ☆ 2020年 入選歌(この年は応募せず、考察もしていない) ☆ 2021年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2022年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2023年 歌会始入選歌の考察 ☆ 2024年 歌会始入選歌の講評
2021.06.10
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♪ 飛ぶために身を軽くして鳥たちは一生腹を空かせて生きる‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 梅雨もこういう風に時どき晴れててくれると嬉しいですね。今朝も先日のように5時起きで、ウォーキングに出かけてきました。 野鳥の声が耳に沁み込んでいて、歌にしておかないともったいないと思い、幾つか詠んでみました。♪ うぐいすのそこここに鳴く里山にひとり聞きおる風雅(フーガ)のしらべ♪ こじゅけいの高き長鳴きうぐいすの声に絡んでリズムが狂う♪ 田園にハイファイステレオ聞く朝 大葦切(オオヨシキリ)と鳧(ケリ)の競演♪ 突然に狂騒曲の始まりぬギョッシッギョギョシ、ケケケケケケケ
2021.06.07
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♪ 不在時を狙うがごとく友の来ぬ時の割れ目に落ちた心地す‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥♪ 会場への5キロを歩く楽しみが齢をかさねて片道となり♪ 老人とはもはや呼べない二人連れ茶房に今日の歩数を語る♪ 前だけを見て歩きゆくTシャツの絵柄に意気が触れ合いにくる♪ 常連の明るき声がドアを開け急に華やぎだす喫茶店♪ 「死ぬときは死ぬがよろしい」コロナ禍に無駄に長生きせぬを語らう
2021.05.13
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♪ 白と黒に振り分けられる心地にてモノクロ週間始まっており‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥朝日新聞(2月5日) G20諸国は、2020年4月から2021年6月まで、最貧国に一時的な債務返済の猶予を認める債務支払猶予イニシアチブ(DSSI)に合意しましたが、参加したのは対象国の3カ国に1カ国のみでした。これまで本イニシアティブは、参加した46カ国の保健医療および社会保護への支出の維持に役立ってきました。しかし、教育費は過去1年間ですでに縮小し、負債のある国では、子どもの保護、栄養、水と衛生サービスへの支出が削減されたと報告されています。大和総研(2月24日)♪ 二週間の緊急事態宣言は尾身に短く総理に長し♪ 使わずに放ってあった安倍マスク コロナ遺産として取っておく♪ 始発から密でスタートして今日も団塊列車は満員のまま♪ 取り込まれてDNAになるまでの歴史を今さら知ったところで♪ ITやテクノロジーは進歩して砂漠ばかりが広がってゆく 国際宇宙ステーション(ISS)に約5カ月半滞在した野口聡一さん(56)ら4人が乗る米民間宇宙船クルードラゴン運用初号機が、2日午後4時(日本時間)ごろ、米フロリダ州沖のメキシコ湾に着水し、地球に無事帰還した。「クルードラゴン」は米宇宙企業スペースXが開発した再利用可能なカプセル型宇宙船。星出さんら乗員を乗せてISSに到着し、野口さんと入れ替わって宇宙から帰還する。昨年8月の試験機以来2回目となる。機体は整備した上で、年内にも打ち上げられる民間人4人による地球周回飛行に用いられる予定。♪ もう半年遅らせたかった野口さん変異株待つ地に帰還せり地球帰還を前に宇宙服の最終チェックを終えた野口聡一さん(右)と、笑顔で握手する星出彰彦さん=日本時間2日午前(NASAテレビより)クルードラゴンの地球帰還(JIJI.comより)
2021.05.03
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♪ つぶやきを日記のように認めしみそひともじのこころ親しも‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 俵万智(58)がこの度、前作『オレがマリオ』以来7年ぶりの第6歌集「未来のサイズ」が4月19日、第55回迢空(ちょうくう)賞(角川文化振興財団主催)に選ばれた。同歌集は3月に発表された第36回詩歌文学館賞(日本現代詩歌文学館振興会など主催)も受賞している。 表紙は菊地信義さんによる装丁で、虚飾を一切省き、表と裏に堂々と歌を見せるという大胆不敵なもの。 1987年の「サラダ記念日」で一世を風靡したあとも第二歌集『かぜのてのひら』、第三歌集『チョコレート革命』、第四歌集『プーさんの鼻』、『たんぽぽの日々 俵万智の子育て歌集』、『生まれてバンザイ』、『あれから 俵万智3・11短歌集』、第五歌集『オレがマリオ』と、その類まれなセンスを31文字に凝縮させて、短歌ファンを唸らせてきた。 社会と一個人の綾なす生なる機微を切り取って、絶妙な言葉選びのうちに普遍的な心模様を具現化して見せる。分かり易い表現に徹して外連味がない万智節は衰えを知らない。 前作からの7年間、沖縄の石垣島から九州の宮崎に住まいを移し、小学生だった息子は高校2年生になったという。歌集のタイトルは「制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている」からとられたようだ。 3部構成で、コロナ禍のなかで作られた2020年の歌から始まり、第2章は、13年から16年春まで石垣島で詠んだ歌が並ぶ。11年の東日本大震災直後、仙台から石垣島に住まいを移した2年後の歌だ。最終章には、息子の中学進学を機に宮崎に移り住んだ16年春から19年にかけて詠んだ歌の数々。 本が手元にないので、2020年11月11日に朝日新聞「好書好日」に掲載されたものと、カスタマーレビューに載っていた歌から掲載させていただきました。順不同です。 歌集は当然、構成を考えて歌を並べるわけですが、連作は別として一首一首それぞれが独立して詠まれているものです。順序を無視して、ランダムに読むとその歌の重みが違って来るように思う。●朝ごとの検温をして二週間前の自分を確かめている●手伝ってくれる息子がいることの幸せ包む餃子の時間●カギカッコはずしてやれば日が暮れてあの街この街みんな夜の街●「前向きな疎開」を検討するという人よ田舎は心が密だよ●第二波の予感の中に暮らせどもサーフボードを持たぬ人類●なにすんねんまだ咲いとるわというように小さなトゲを立てる一輪●島らっきょうの泥落としつつ考えるネギ科の女、イモ科の男●海の香を焦がさぬように半日の時間煮つめて作る佃煮●「群(むり)か星(ぶし)」耳にやさしき八重山の音韻で聞く星の伝説●夕焼けと青空せめぎあう時を「明う(アコー)暗う(クロー)」と呼ぶ島のひと●あたりまえのことしか書いていないなと憲法読めり十代の夏●ベランダに朝顔青しサンディエゴの夏の中なる息子を思う●君の死を知らせるメールそれを見る前の自分が思い出せない●じゅん子来て進次郎来て一太来て「魅力ある島」と訴えている●誰よりも知っているのにああ君をネットで検索する夜がある●風邪ひけば葛根湯を飲む我のこの習慣は亡き人ゆずり●我のため今朝色づける赤イチゴ蟻に食われる前にもぎとる●人参を抜いて尻もちつく真昼 絵本のような畑に一人●三月の資源ごみの日きっちりと束ねられたる参考書あり●地頭鶏(じとっこ)のモモ焼き噛めば心までいぶされて飲む芋のお湯割り●世界まだ知らぬ息子が暗記するアンデス山脈バチカン市国●シチューよし、高菜漬けよし、週末は五合の米を炊いて子を待つ●日に四度電話をかけてくる日あり息子の声を嗅ぐように聴く●理系文系迷う息子が半日を「星の王子さま」読んでおり●子の髪に焚火の匂い新調のダウンジャケット焦がして戻る●シャーペンをくるくる回す子の右手「短所」の欄のいまだ埋まらず●ふいうちの「好き」を投げればストライク「ずるい」と言われることにも慣れて●ひとことで私を夏に変えるひと白のブラウスほめられている●「死ぬまでの待合室」と父が言う老人ホーム見学に行く●あの世には持っていけない金のため未来を汚す未来を殺す●何一つ答えず答えたふりをする答弁という名の詭弁見つ●『失われた時を求めて』未読なり縄文杉への道未踏なり●別れ来し男たちとの人生の『もし』どれもよし我が『ラ・ラ・ランド』●生きながら死につつもある人間は勝ちながら負け、負けながら勝つ●五十肩の両腕そろりと上げゆけば中年われのファイティングポーズ●レシピ通りの恋愛なんてつまらないぐつぐつ煮えるエビのアヒージョ●自己責任、非正規雇用、生産性 寅さんだったら何て言うかな●テンポよく刻むリズムの危うさのナショナリズムやコマーシャリズム●ふいうちでくる涙あり小学生下校の群れとすれ違うとき●ほめかたが進化しており「カフェ飯か! オレにはもったいないレベルだな」●最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て 「どのように詠めば大衆に受け入れられ、識者の評価を得られるかが計算しつくされている俵の視点と技巧があざとい」という意見もある様ですが、これはもう資質という宿命的な才能でしょう。それが個性というものですし、その才能が妬ましいという感情を誘発したりもする。 好きも嫌いも両方あって当然ですし、日当たりが良ければそれだけ影が強くなるのは仕方のないこと。 決してどれもがスラスラと詠んだ歌ではないと思うし、慎重に言葉を選び、誤読もされないように細心の配慮がなされているでしょう。また、それらの行為そのものが作歌の醍醐味でもあり、簡単ではないゆえの面白さでもあります。「万智(まち)節」の完成度の高さが認められての「迢空賞」なのでしょうが、俵万智は釈迢空とは最も遠いところにいる歌人と思っていた私は、ちょっと意外な感じがしました。認識不足ですね。 釈 迢空(しゃく ちょうくう)1887(明治20)年2月〜1953(昭和28)年9月大阪生まれ。國學院大學卒業。歌人、詩人、古代学・民俗学者。國學院大學教授、慶應義塾大学教授。文学博士。本名・折口信夫(おりくち しのぶ)。國學院の学生時代から、子規庵の根岸短歌会に加わり、さらに「アララギ」に拠って歌を詠んだが、1925年には超結社誌「日光」に参加。翌26年、第一歌集『海やまのあひだ』を刊行。大学卒業後、柳田国男に出会い、以後民俗学においては柳田を師とした。國學院、慶應義塾で教鞭をとり、その間に、『国文学史の発生』『古代研究・民俗学編』『古代研究・国文学編』『万葉集研究』などを発表。歌集に、『春のことぶれ』『水の上』『遠やまひこ』『倭をぐな』があり、詩集に『古代感愛集』、小説『死者の書』がある。その生涯における著作は、『折口信夫全集』(全31巻、別巻1。1954〜59年)としてまとめられ、また『日本文学史ノート』『日本芸能史ノート』等を含む『折口信夫全集 ノート編』(全18巻、別巻1。1970〜74年)が刊行されている(いずれも中央公論社刊。その後数次の全集刊行あり)。「サラダ記念日」から34年。短歌は大きく変わって、万葉風の歌を詠む人などごく少数になったし、口語の歌が主流となり口当たりの良い歌、分かり易い歌がもてはやされる今、もう絶対に無視できない存在になったという事でしょうか。 難しいことはITがやってくれる時代、人間の思考はどんどん単純になっていく。言葉の重みもどんどん目減りして行って、本来の意味など無視して使われる。国を司る者が率先してそれを実行しているのですから、何をかいわんやです。 空前の俳句ブームで、猫も杓子も俳句をひねっているのは良いことには違いないですが、俳句で国語力が上がるとは思えない。短縮形を好む今の社会に合っているだけの事で、私なんかは返って弊害が出るんじゃないかとさえ思ったりもします。 文章力の落ちていることが危惧されているさ中、せめて<31文字を使う短歌>にこそ慣れ親しんでほしいものですが・・・。
2021.04.23
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♪ 独活の字が好き天ぷらはさらに好き新芽求めて田園をゆく‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥♪ 満満の花のトンネル抜けてゆく犬と笑顔と子どもの声と♪ 初物の筍貰いし昼下がりわれに初鳴き鶯の声♪ うらうらと弥生つごもり五月晴れ歩き戻れば万歩を越えおり♪ 初つばめ枝に啼きおる昼下がり黄砂にかすむ里しずかなり
2021.04.01
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♪ 拝謁の千載にして一遇の夢ならんかと詠進をせむ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 新型コロナの影響により延期となっていた令和3年の「歌会始」は、26日に皇居でフェイスシールドとアクリル板が使用されて行われた。入選者の一部はオンラインで参加。今年のお題は「実」で、日本国内と海外(13の国と地域)からあわせて1万3657首が寄せられ、17歳から80歳までの10人が入選を果たした。 天皇陛下 「人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る」皇后さま 「感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし」秋篠宮さま 「夏の日に咲き広ごれる稲の花実りの秋へと明るみてくる」秋篠宮妃紀子さま 「竹籠に熟るる黄色の花梨の実あまき香りは身に沁みとほる」秋篠宮家長女眞子さま 「烏瓜その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に」秋篠宮家次女佳子さま 「鈴懸の木から落ちにし実を割りてふはふは綿毛を空へと飛ばす」常陸宮妃華子さま 「野鳥くる実のなる木々に植ゑかへて君は若かる庭師と語る」寛仁親王妃信子さま 「実りある日のくるためにながさるる汗は力となるを信ずる」寛仁親王長女彬子さま 「地図帳にあの日見つけし茶畑の不思議な点は茶の実のかたち」高円宮妃久子さま 「戸隠の森にはびこる蔓柾(つるまさき)赤き実を食むは眉茶鶫(まみちやじない)か」高円宮家長女承子さま 「自室より画面越しにて繫がりて旅せぬ集ひも実現したる」▽召人(敬称略)加賀乙彦 「千年を生きむ樟の木が実在し巡りて子らは駈けつこをする」▽選者(敬称略)篠弘 「野に棲めば己がからだは実たされて銀杏黄葉を両手に掬ふ」三枝昂之 「軒下の甲州百目まろやかにこのあめつちの実り明るむ」永田和宏 「若き日の実験ノートに残されて芙蓉のごとき歌の断片(きれはし)」今野寿美 「写実派が鳥の巣ゑがきその底のたまごふたつの聖なる斑(まだら)」内藤明 「いましばし眠りて待たむ茂り合ふ生命の樹に実の色づくを」▽入選者(敬称略)秋田県 柴田勇(80) 「大学の実験室は旧兵舎窓辺に寄りて目盛を読みぬ」福井県 杉崎康代(77) 「見合ひ終へあなたの母から門前でゆすらの紅実(あかみ)てのひらにうく」三重県 加藤京子(71) 「此処よりは世界遺産と言ふ森の土やはらかし橅の実落ちて」埼玉県 渡辺照夫(68) 「台風の進路予測を聴きながらまだ少し若い梨の実も穫る」神奈川県 松山紀子(58) 「実践に臨む瞳のあどけなさロボットはわが言葉聴きをり」東京都 石井豊彦(56) 「今日からは臨床実習の冬の朝少し足早に聖橋渡る」広島県 山本美和(53) 「シールドの向かうの客に釣り渡す架空のやうな現実にゐる」東京都 吉田直子(24) 「空白に史実のピース集めても想ひつかめぬ歴史のパズル」長野県 木下玲奈(24) 「せんせいと子らから呼ばれ振り返り実習生は先生となる」新潟県 藤井大豊(17) 「七限の書道の授業は「実」の文字最後の払ひに力を込める」 今回も一応応募はしたもののあまりいい出来ではなかったので入選は当然あり得ないと静観していました。歌会始の儀そのものがどうなるかも分からないままでしたが、なんとか伝統が途絶えることなく開催された事を喜ばしく思います。 あの長鳴鶏(ながなきとり)のように語尾を長ーく伸ばして、自分の歌を読まれるのはどんな気分なのでしょうか。皇居の宮殿松の間に招かれることそのものが異次元の体験でしょうから、そこに足を踏み入れた段階でもう尋常な心持ちではないでしょう。その雅やかな空間にいることを夢見心地に浸っている自分を、客観的に眺めるような余裕は無いでしょうねぇ。 翌日は、お言葉を掛けられて何と答えたか思い出せないような、夢だったのかと疑いたくなるような気分で目が覚めるのでしょうか。 それにしても、全員がマスクをしての松の間の儀式は無粋そのものですね。雅やかなものと生々しい疫病との対比があって、1200年の短歌の歴史を語る教科書に写真が載るかも知れない。 後日、いつもの様に入選歌の考察をしてみたいと思います。 ■ 2017年「歌会始」入選歌の考察 ● 2018年「歌会始」入選歌の考察 ● 2019年の歌会始入選歌を考察してみる 〇 2020年入選歌 この年は応募しなかったので考察はしていない。 来年のお題は「窓」ということです。締め切り間際に慌てて作歌するような事のないよう、「今年は早めに準備をしなければなぁ」な~んて思っています・・・。
2021.03.29
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♪ 寒暖のあらましき日の続きおりひよどりだけが餌を食みに来る‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ♪ 駅前に予想通りの花水木 葉を散り敷きし欅のあとに♪ 四種類の目高の泳ぐ瓶並べ弥生の空が輝いている♪ あるじなき屋敷に花の咲き初めて朝日の中にただ美しき
2021.03.22
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♪ 十年間 時間を止めて問いつづく犠牲の意味は海より深し‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 東日本大震災から10年が経ち、追悼の報道とともに当時を振り返って様々な見地からの検証がなされています。10年を「データから検証」しているものもあります。10年の時が止まったままの人も多いようですし、決して忘れることが出来ないものとしてこれからも語り継がれていくでしょう。 遠く離れた地で、関わることなく傍観者として過ぎてしまった10年を、私なりに振り返って歌を詠もうと思いましたが所詮無理なことでした。せめて5首だけでも・・。♪ 雑食の人に喰われるための牛 飯舘村に餓死せしという♪ SNSの「#明けない夜はない」が支えSOSの通じない夜♪ 幼虫の変態のごと小4が二十歳になるほどの年月♪ 層をなし「今」が沈殿する瓶に乱れて黒き断層のあり♪ 十年前 地震の四日ほど前の日記に語句ありメルトダウンの ☆ ♪がたがたと自己崩壊の様を見るフェイスブックの流行らぬ国で 民主党が自己崩壊してゆく様を「メルトダウンの様相」と題してブログを書いていました(2011年3月7日)。 鎮魂と忘れないための記録と再確認の意味を込めて、当時のブログを再掲しておくことにします。歌(多い日は7首ほど)と共に、当時の自分なりに感じたことを綴っています。☆3月12日 ♪まつりごつふがいなき長(おさ)諫めらむガイアの怒りが大地揺すれり☆3月13日 ♪一瞬に消え去りゆきし来し方の青山(せいざん)にして他力に縋らむ☆3月14日 ♪ホッとするつかのま波の高まりて身を奪われし故郷(くに)のはらから☆3月16日 ♪空撮の家はあまりに小さくて寄せ来し波のあまりに高し☆3月17日 ♪辛うじて抑え込んでるウィルスと同列ならむ核分裂は☆3月18日 ♪空前は絶後に有らず万全の手を打つことの能わずを知り☆3月19日 ♪亡骸の眠るがれきの上に降る鎮魂の雪ただただ白し☆3月20日 ♪何が出来る? 何もできない不甲斐なさに心ばかりの募金に応ふ☆3月22日 ♪戻らざる避難もありぬいたずらに人惑いたる放射能禍に☆3月24日 ♪卒業式の答辞に込めて復興へ、意気込み見せむ。「前へ、前へ、前へ」と☆3月25日 ♪春雨に、名残りの梅の散り敷きぬ。ゆら ゆら ゆらととぶもんきちょう☆3月26日 ♪渺渺(びょうびょう)たる荒地となりしみちのくはグーグルアースに在りし日留めり☆3月28日 ♪「ただちに」を否定に使いかへらばに疑心暗鬼を呼びしなりしも☆3月30日 ♪純愛と人情話、江戸の火事今を重ねて被災地の春
2021.03.11
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♪ 身ぐるみを剥がされてゆく心地せり家のめぐりを重機が均すく‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ♪ 星霜の染み込む大地掘られおり土 黒々と息を吐き出す ♪ 往年の海辺の広き別荘地 老舗の呉服店主が建てぬ ♪ 今はなき海の名残のまっさらな砂が重機に掘り出されゆく ♪ 両の手がレバーを揺するバスケットスケルトンに土砂を濾すとき ♪ 軽々と取り除かるる「ごんぼ積み」舟に乗り来し木曽川の石 「ごんぼ積み」とは石垣の積み方が「ごぼう」を積み上げた断面に似ているから。♪ ねんごろにわが境界の石積が取り除かれてすべてが消えた
2021.02.25
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♪ 温度差のありて夫婦の気が乱れ今 前線が発生したり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3月の様な陽気で14日(日)15(月)は17℃まで上がるらしく、戸惑ってしまう。しかし、このまま春が来るのかと思いたくなるところだけれど、そうは問屋が卸さない。来週の17日(水)18日(木)は一桁(6-7℃)まで下がる見込みとか。三寒四温の時期とはいえ、10℃以上の温度差があるのでは着るものを考えないと調子を崩してしまう。 今日の歌は、夫婦の有様をこの移り気な気候に重ねて詠んだでみました。全くズバリ気候とおんなじだなあと感じてもらえれば幸いです。 ♪ デリカシーに逆らう風の吹き抜けてゲリラ豪雨を降らせたあの日♪ 蛇行するジェット気流のごとくして平穏崩す冷気忍びく♪ 発生の場所の違いしもの同士 森と海との差を埋められず♪ ジェンダーの言葉むなしくなる時はただに言葉を失っており♪ 喧嘩して気まずい空気吸わぬためいっそ越えたいブラキストン線
2021.02.13
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♪ 群れながら鳴いてうるさい雀らの数羽となれば声も立てざり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 昨年まではスズメがうるさいほど鳴いてエサを催促していたけど、今年はヤマガラの勢いに押されて、小さくなっている。用心深くて気が小さいスズメが寄って来るようになれば、他の野鳥も来るようになるという鳥寄せの指標みたいな鳥。 それでも、朝エサをやって真っ先にメジロと一緒に来るのが数羽いる。雀の数そのものが減っている昨近だけど・・・ ♪ 目白なる小さき勇者まぎれおる雀は蚤のハートをかこつ♪ エサ台にメジロが乗るを見てすぐに続くすずめはバンカラなるらん♪ 食性の違う野鳥の集うなり 順を繰りつつそれぞれの朝♪ ヤマガラが来ても平気でエサを食む早いもん勝ち慣れたもん勝ち ♪ 四十雀の営巣の邪魔をしていた雀の群れの今はなかりき♪ ちらちらと霰降り初むうら寒き空を見上げる三羽のすずめ
2021.02.03
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♪ きびきびと蜜柑を食べに来るめじろ元気でいるかと眼を輝かす‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 目白(メジロ)は「繍眼児」とも表記され、刺繡されたような目が特徴(シールを貼ったようにも見える)で、キョロキョロと周りを警戒する姿が愛らしい。日本には留鳥と漂鳥がいて、留鳥のメジロは一年中つがいで生活しているものが多く、縄張りをもって一定の地域内で暮らしている。一方、季節移動する漂鳥のメジロは、冬には小さな群れをつくる。アジアの鳥で欧米にはいない。 今年は、10月の初めごろに、集団がわが家の近くにやって来ていて、賑やかに囀っているのですぐに気づいた。「雄は顔の前面と、下尾筒と呼ばれる尾の部分の黄色みが強く、お腹の中央に黄色の線が入る。胸から脇腹は淡褐色で、お腹は白くこの白がくっきり見えて、淡褐色部分が濃い色をしているのが雄」と言われても、よほど注意して観察しないと分からない。♪ おしゃべりの群れにぎやかに移動する木の間に見えぬすがたを探す♪ 白き腹にみかんの色を映しつつ目はキョロキョロと休むことなし♪ 小さくも気は強くして山雀と追い合いをする朝のえさ台♪ 飼い猫がめじろを銜えもどりきてよくやったねと褒める人あり♪ おちこちに蜜柑の輪切りそれぞれが目白を愛するものを信じて
2021.01.28
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♪ ハモニカも口笛さえも吹かざればマスクを厭う理由なかりき‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ この辺りで一度新型コロナにまつわる歌を詠んでおこうと思う。日記にコビッド関連の内容を書く時にはその都度詠んではいたものの、それに絞っての連作はまだだ。1年経ったこともあるし、最初の月(睦月)でもあり(明日は大寒ということは関係ないか)この機会に・・・。♪ ツギツギト サイタサイタノ ニュースナリ コロナカンセン センノナカラン♪ いつの世も官尊民卑変わりなし黙って引っ込んでろと言うなり♪ 責任をいかに負わずに済むのかと巡らすうちに第三波かな♪ 毎日の感染者数聞くほどに数字の意味が目減りしてゆく♪ 補佐役のいかに呑気な立場かと今にし思う菅の新年♪ 誰もかも素顔を見せぬ世となりて尚口ほどに眼がモノを言う♪ サイトカインストーム多くなる男コロナが老化に追い打ちをかけ♪ コロナ禍に仕事奪われDBが増えゆく先に逃げ場さえなく♪ 自粛飽き政府へ不満募らせてやってられない若きが増えぬ♪ 時短拒否過料最大五十万蚊帳の中からドスをチラつかす♪ 大寒や大雪警報家籠り封鎖閉店自粛廃業♪ 最後っ屁放ちて訴追されてなお顎を突き出すキングのカード♪ 狂信者が嘘にフェイクを掛け算しトランプ教が広げたCOVID-19(コロナ)
2021.01.19
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♪ 暮れ初めてじっと無言の尉鶲 三船敏郎佇むごとし‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今年中に消えてなくなってしまう、我が家周辺の庭木。その庭木を頼ってやって来て、我が家のえさ台にも来てくれる鳥たち。その鳥たちのことを歌に残しておこうと思います。 周辺の変化も同時に歌に詠んでおきたい。題材としては面白いけれど、無くなってしまう最高の環境の惜別の意味を込めて、さてどんな歌が生まれますやら。♪ 寒中に孤をまとい来る尉鶲 緊急事態宣言再び ♪ ゆくりなく直線飛来の尉鶲えさ台の櫨の実を咥えゆく♪ 孤独など飼い慣らせよと言う人の好きであるらんこの尉鶲♪ はるばると伊勢湾目指し来し鳥のこのさ庭辺を縄張りとせり♪ 初氷はりたる朝のえさ台にパジャマのままに櫨の実を置く
2021.01.08
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