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VAMPIREEYE97「武狼牙刀拳」 屍人の群れに囲まれる霄と吉良。吉良は即座に戦闘態勢に入るが霄は唯々見つめていた。 「霄お嬢様、油断はされぬように。あれは人であって人でないもの、既に人間ではありませぬ」 「でも……」 「生きる屍として苦痛を与えられ続けるよりも楽にしてやるべきです」 「本当にそうなのか?なにか治す方法があるのではないか?」 「……ならば四肢を使い物にならないようにしましょう。それで動けないはずです」 「GRUUUUAAAA!」 襲い掛かって来る屍人、吉良は関節蹴りを目の前の屍人四人に放ち地面に転がした。 「フン!」 後方から襲い掛かって来る屍人に転がった屍人を投げつけ転倒させる。倒れた屍人の足を踏み抜いて破壊する。 「お嬢様、貴女の爪で焼き切れば出血多量で死ぬことも無いでしょう。さぁ」 霄は目を閉じて両手から鋭いナイフ状の爪を伸ばす。そして真っ赤に熱を帯びてゆく。 「UGAAAAA!」 ひらりと軽い動きで屍人の動きを躱しながら爪で腕を切断。傷口は焼かれ瞬時に塞がる。それを確認した霄は次々と屍人の手足を切断して転がしてゆく。 「(霄お嬢様は優しすぎる。それが良い所なのだが白峰家当主を継ぐには向いてない……)」 吉良は屍人の腕を折り足を砕きながら霄に危険が及ばぬよう位置取りをする。 「(清く正しく優しく可憐。私的には霄様は完璧なお嬢様、ですが白峰家には合わない。先代の華月様のように苛烈である必要はないですが……雪名様のように時には割り切る非情さも必要。吹雪様は雪名様によく似ておられる。霞様は先々代の華奈様に似ていると父から聞いています)」 吉良は屍人を蹴り飛ばし投げつけ距離を詰めてくる群れを離す。 「(霄様の容姿は華月様によく似ている……華月様も元々は霄様にような性格だったのでは?純粋で優しいお方ほど苛烈で残酷になりやすい……正直私は霄様ではなく吹雪様か霞様に当主になっていただきたい)」 吉良が五人に対処する間に霄は三人、動きが鈍い。 「(この者達は完全に死している、だから魂も肉体に引きずられもはや人ならざる者)」 「KOROSHITEEEEEEEE……」 「!!」 霄の手が止まる。手足を失い倒れた屍人が呻く言葉に反応した。 「吉良……!!」 「先ほども言いましたが彼らは最早死んだ者なのです。術により無理やり魂を留められ苦痛を味わっている状態です。そして屍人を完全復活させる方法など存在しません……」 「こんな非道な術……」 「これが源藤高雅と仲間の所業です」 「…………」 「屍人の彼らの為にも終わらせましょう」 吉良は手足をワーウルフ化、背中に忍ばせていた刃付き合金トンファーで屍人の頭部を切断していく。 「後はお嬢様の代わりに私がやりましょう」吉良は次々と屍人を倒していく。 「こんな事があっていいのか……こんな死に方……遺族は残された者はどうなるんだ」 「このような死体は残さない方が良いでしょう、お嬢様の炎で灰にしてやって下さい」 「行方不明者として処理するつもりか?警察も無能じゃない」 「いえ、ここで亡くなった事は解るでしょう、しかし屍人の事は隠せます」 「そうか……」 「急ぎましょう、これ以上この者らのような犠牲者を増やさないように」 「ああ……」 霄は吉良が倒した屍人達を炎で包み込んだ。 「あっ!」 突如背後から伸びてきた鎖が霄の足を捕らえた。霄が爪で鎖切断を行う前に空中に引き上げ宙吊りにする。鎖は結界内から伸び生きた蛇のようにうねる。 「お嬢様!」 吉良が飛び掛かるよりも速く、鎖は霄を結界内に引きずり込む。吉良は霄を追いかけて結界内に飛び込むと両足に激しい痛みを感じた。 「グアッ……!」 銀の斧とナイフで作られたトラバサミを思わせる罠が吉良の足に食い込んでいる。立ち上がろうと体を起こした吉良に数十本のナイフが降り注ぐ。 「このっ……」 頭部と心臓を両腕で防御する吉良、無数のナイフが突き刺さる。 「吉良!!」 体を起こし鎖に手を伸ばす霄、四方から鎖が伸び両手両足に絡みついた。 「ああっ……!!」 鎖が引かれ霄は無理やり四方に両手両足を伸ばされる形となった。 「ク~ッハッハッハ!マヌケめ!!」 物陰から現れたのはボロボロの教会(エクレシア)のコートを纏った源藤高雅。 「源藤高雅!!」 「あの日の続きといこうじゃあないか白峰霄!ふん、目つきの悪い木城のガキはこっちにはこなかったか。まあいい、皀とやりあって生き残ったとしても後で始末してやる。その前に……邪魔な狼男を狩るか」 斧と鎖を手に吉良に視線を向ける源藤高雅。 「良ーく見とけよ白峰霄、あの日の俺とは一味も二味も違うぜ?」 小さなデリンジャーのような銃を取り出して上に構える。 『シルバーグレイパワー』 銀灰色の煙が銃から飛び出し源藤高雅を包み込む。煙は源藤高雅に吸収され徐々に姿があらわになっていく。 「クックック……」 銀灰色の毛むくじゃらの体に西洋風鎧を身に着けた姿となった。 「『あの灰色女』は気に入らねえが良いものを寄こしてくれた。先払いの報酬って奴だ」 「あの灰色女だと?誰の事だ?」吉良はナイフを抜き、罠を破壊して立ち上がる。 「クックック!まだ知らなかったのか!お前たちは完全にあの女に先手を打たれ後手に回っている勝ち目はない。一週間後この街は滅び、二週間後には世界の文明は破壊される!」 「なんだと……!?」 「何も知らないのか滑稽だな!俺はこの力で好きに生きる、お前たち化け物を狩って狩って狩り尽くしてやる」 「そんな事をして生き延びられるわけがない!」 「ああいいさ、狩りこそ生きがい。その最中に死ねるのなら本望だ。だからこそ俺はこの街が滅ぶ前にこの国最強の吸血鬼一家を狩ることにしたのさ、教会(エクレシア)の指示を無視してなぁっ!!」 源藤高雅の銀灰色の鎧の足裏、ふくらはぎ、背中から煙を爆発的噴射。一気に間合いをつめ斧で斬りかかる。 「ぐっ!」 刃付き合金トンファーで受け止める吉良。 「退屈だったんだ、白峰華月がやりすぎたせいで!酒呑童子が人間社会で力を付けてきたせいでな!!しばらくは東京で狩りをしていたが教会(エクレシア)の任務が減り始めてなぁ!!」 斧を連続で叩き込む源藤高雅、吉良は何とか受け流す。 「くだらねぇ調査や捜索、追跡や監視何てのは俺向きじゃあない。俺が必要としているのは狩りだ!!闇の住人(ナイトストーカー)狩りだ!!」 源藤高雅の横スイングの一撃で吉良は吹き飛ぶ。 「20年前は良かった……この街にも闇の住人の組織がいくつもあった。薄汚いサイバネギャングやヤクザと組んでる連中も少なくなかった。毎日どこかで聞こえてくるパトカーのサイレン、爆発、悲鳴。ニュースでは毎日事件の報道だ。そんな時代だからこそ教会(エクレシア)は任務で溢れていた、退屈なんてする暇もなかった」 拘束されている霄の鎖を引き絞る源藤高雅。 「うぐっ……」 「白峰家も酒呑童子率いる妖怪連合も全て教会(エクレシア)が潰す。代表の二人葛野忍、長門顕彰は最初からそのつもりだったんだぜ?制御の効かないやりすぎる白峰華月。人間に成りすまし他の闇の住人にもそれを勧め力をつけている酒呑童子。邪魔でしかないんだよ、適当なところでお互い小競り合いを続けていれば良かったものを」 立ち上がる吉良に斧を振り下ろす源藤高雅。吉良はトンファーで受け止める。 「白峰華月の討伐は入念な準備がされた。白峰家に関わる家を崩壊させ疑心暗鬼に陥らせ白峰雪名の弱みである家族を盾にこちら側に付く事が正しいと思わせた。後は封印していた九尾を解放し華月とぶつけて消耗させたのだ」 「何故今更そんな事を?自分は華月様の代から仕えている者、その事は既に知っている」 「フン、そこの聖鎖で動けねぇ小娘もか?ま、知ってても不思議じゃねえなこの話は俺自身が狂人の類ではないという証明の為でもある。俺は化け物狩りが生きがいなんだ、善良な市民様は対象外。だが今の状態はどうだ?闇の住人が善良な市民様になり切ってやがる、たまの任務もくだらねぇ捕獲だ。しかも三流の雑魚共だ。こんな退屈な仕事をするために血反吐ぶちまけて鍛えてきたんじゃねぇ。平和を望む奴ばかり、平和の中では生きられない奴もいるのさ!」 「教会(エクレシア)は白峰家の殺しは禁止している。そんな事をすれば知った雪名様を教会(エクレシア)は止めることが出来ない」 「それは葛野忍、長門顕彰の都合だ。俺と灰色女にとってはどうもいい事。どうせ二週間で世界は変わるその後奴らと手組む理由なんざない。神名の連中と手を組むさ」 「神名?あの巨大企業のか?」 「巨大企業か……その程度の認識だろうな、関りが無い連中はな!」 斧を押し付けながら吉良の腕を掴み後方に投げ捨てる源藤高雅。 「来いよ狼男、俺のこのシルバーグレイパワーは真神、つまりニホンオオカミの神獣の力を具現化したもの。災厄を退ける聖なる狼、真神。教会(エクレシア)の執行人の俺にふさわしい力だ!!」 「お前の正義は歪んでいる!!」 全身をワーウルフに変身させる吉良。 「化け物を滅ぼす事が俺の正義!それだけだ!!それ以外の事は関心ねぇ!!」 「あんなに大勢の人が屍人になってもか!!」 「知るか!灰色女の手下がやることなんざ興味ねぇ!!善良な市民様がどうなろうがどうでもいい事だ!!」 「お前だって執行人だろうに!!」 「それがどうした!執行人は弱者のお守り役じゃねえぞ!ハンターだ!!」 源藤高雅の激しい斧の連続攻撃をトンファーで防御する吉良。攻撃を受ける度に体が痺れてくるのを感じていた 「クククク……効き始めてきたか。この結界内では貴様ら闇の住人が動くほど不利になる。当然、人間であり聖狼の俺には影響は無い……つまりお前ら闇の住人には勝ち目は無い!」 吉良は斧を少ない動作で避けトンファーを源藤高雅の腕に叩き込んだ。ダメージを受けている様子はない。反撃の斧を下がって躱す。 「俺にとって厄介な相手は物理でゴリ押してくる奴だ。白峰家の人造人間男がそうだ。まぁ奴が来ても対処する方法はあるがな」 斧を変形させ銃に変える源藤高雅。 「要はそんな奴は接近させなければ良いそれだけの事だ」 銃のトリガーを引く源藤高雅。吉良は三連射される光弾をトンファーで受け止めた。 「グゥ……」 「効くだろう?丹田で練り上げた気を弾丸として発射、衝撃を波紋のように浸透させ全身にダメージを与える。発勁弾、元々は雑魚処理用の技だったがシルバーグレイパワーを得た今、コレは必殺の武器になりえるのさ。例えあの人造人間でも効くぜ?」 連射を浴びせる源藤高雅、吉良は回避を試みるもすぐに体が痺れ弾丸をガードせざるを得ない状態に。全身に強烈な打撃を受けたようなダメージが駆け巡る。 「狼男、お前とまともな状態でやりあったら俺もただでは済まない特級クラスの闇の住人だろうよ。悔しいか?」 「……」 吉良は弾丸を耐えながら少しだけ笑みを浮かべた。 「何がおかしい?」 「これは思い出し笑い。こんな風に昔鍛えられた事を思い出しましてね」 吉良は両手を前に構え源藤高雅の放つ発勁弾を迎え撃つ。発勁弾の一発一発の速度は実銃より遅いとはいえ常人で見切る事は実質不可能。それを吉良は空手の受けのように弾丸を捌いて流して後方に逸らしていく。結界内での激しい動きは吉良の体に負担をかけ痺れ、痛みが襲い掛かる。 「なんだと!?」源藤高雅は睨みつける。 吉良は今は亡き父との訓練を思い出していた。代々白峰家に仕える吉良家、その長男である吉良伝左衛門は幼少の頃より文武両道であれと厳しく鍛え上げられてきた。吉良の父は武道を徹底的に伝左衛門に叩き込んだ。源藤高雅の発勁弾は吉良の父の打撃に比べると軽い物であった。 「クソが!ならばこれでどうだ!!」 分銅の付いた鎖を放つ源藤高雅、蛇のようにうねり吉良に襲い掛かる。吉良は冷静に分銅を見切り鎖を掴んで止めた。 「くらえ!直で味わうシルバーグレイパワーを!!」 力を鎖に込める源藤高雅、吉良の腕の皮膚が裂け鮮血が噴き出す。 「なに!?」 鎖を離さない吉良。両手で掴み一気に引いて源藤高雅を引き寄せる。そして熊手掌底当身を顔面に打ち込んだ。 「ぬぐぁ……!!」 源藤高雅の体内に斬撃にも似た衝撃が走る。 【武狼牙刀拳】 吉良家に伝わる拳法。元々は人型では無かった吉良家の先祖が編み出したもの。牙や爪が通らない鎧の敵、軟体で引き裂けない敵を相手にするために開発された。 「父の武狼牙刀拳に比べればお前のパワーなど……」 連打を叩き込む吉良、源藤高雅はたまらず斧を振り吉良を下がらせる。 「クソが……内部に浸透する斬撃だと……」 「お前のパワーと私の武狼牙刀拳、どちらが先に倒れるかだな」 「アホが!俺は狩るのが好きなんだ、そんなものに乗ってたまるか!!」 背中から魔導書を取り出す源藤高雅、ページがめくれ紙片が吉良目掛け飛んで行く。 「目くらましか!」 次に源藤高雅は懐中時計を取り出す。 「あれは!!」 それを見た霄が叫ぶ。源藤高雅の懐中時計に動きを停止させられ苦しめられたトンネルでの戦闘がフラッシュバックする。 「終わりだ!!」源藤高雅は懐中時計を開きスイッチに指をかける。 「させない!!」霄の両眼から熱線が発射される。懐中時計に命中、破片を飛び散らせて地面を転がっていった。 「なんだと!?俺の懐中時計が……!!」 源藤高雅は空中で拘束されている霄に視線を向ける。 「邪魔しやがって……お前は後で徹底的に嬲り殺しにしてやるおとなしくしてろ!!」 ナイフを投擲。「うぐっ……」霄の腹に突き刺さった。 霄に気を取られた一瞬に間合いを詰める吉良。 「しまっ……」 肩、脇腹、喉と連撃を打ち込む吉良、浸透する斬撃は源藤高雅の体の中心に集まり内から引き裂いていく。 【武狼牙刀拳・集裂牙】 最後に胸の中心に打撃を叩き込む吉良。源藤高雅の兜のスキマから血が漏れ出る。 「ごはぁ……」 続く
Apr 25, 2021
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VAMPIREEYE96「皀八太襲撃」 ―華月の配下の佐久間が運転する車は霄、蓮也、吉良合わせて四名を乗せ、京都府宇治市小倉町に向かって走っている。 「源藤高雅って吸血鬼ハンターなんだってな。俺たちにとってはやりにくい相手だ」 佐久間は煙の出ない電子タバコを咥えて言った。 「当然罠を仕掛けてるだろう。だからこっちも徹底的にやる」 窓の外を飛ぶ烏の数が増えていく。 「何て数のカラス……佐久間さんが?」蓮也が言った。 「ああ、戦いに数の有利は大きい。カラスだけじゃないこの周辺全ての鳥獣たちが俺たちの味方さ源藤高雅とやらは絶対に探し出す、そして逃がさない」 車を駅近くのパーキングに停め四人は反応のあった方向に歩き出す。 「気を付けてください、奴(源藤高雅)の匂いが残っています」 吉良は匂いそのものに加え魔力を匂いとしても認識できる。 「流石は人狼、お前さんの鼻と俺の仲間たちの目と耳があればすぐだな」 「その電信柱より先、人の気配が全くしない。人払いの術を使ったかあるいは……」 佐久間の言葉に全員が警戒態勢を取る。 「結界ですね……匂いは先に続いています。どうしますか?」 「恐らく魔力封じの結界。以前私が仕掛けられたものと同じだろう」 霄は指先に出現させた火の玉を投げ込む。電信柱を過ぎた所で消滅した。 「この結界の柱を破壊して術を解除するか?」と、佐久間。 「それも敵は想定済みのはず、何か仕掛けて来るでしょう。それならば二手に別れて行動したほうがいいのでは」吉良はメガネを上げて言った。 「索敵範囲が広い俺と吉良さんは別れた方が効率がいい、蓮也は俺と来い」「分かりました」 「ではこちらは自分と霄さまで」「ああ」 「何かトラブルがあった場合すぐに合流する事にする。出来ない時は合図をする事」 佐久間はカバンから信号拳銃を取り出し一つを吉良に渡し一つは腰のベルトに挟んだ。 「お前さんなら使い方解るだろう?」「問題ありません」 佐久間と蓮也は西に、吉良と霄は東に別れて結界を辿り基礎となる柱の探索を始めた。 住宅街を西に進む佐久間と蓮也。外から見る結界の中には動くものが見えない。ゴーストタウンを思わせるほど静かであった。 「まるで撮影用に作られたセットみたいだな」佐久間は鳥獣からの声を聞きながら言った。鳥獣からの反応もこれと言って有用なものは無い。 「外からでは分からないようになってるのではないですか?」 「その可能性は大いにある。だが敢えて罠に嵌ってやる必要はない。地雷原だと解っているのに足を踏み入れたくない」 「この結界の大きさはどのくらいですか?」 「カラスらの報告から推測すると……直径500m程」 「おーいアンタら」 郵便ポストの横から犬を連れた老人が話しかけてきた。 「何か用かな?」「どうしました?」 「そこで何をしてるんだね?この先に何かあるのかね?それとも何か探しているのか?」 結界内を指さす老人。 「儂はこの辺の者だから詳しいんよ。何でも聞いてくれ……ああ、今時こんなジジイ珍しいか?でも大丈夫この番犬ポチがおるからね。こう見えて防犯ドロイド犬でね、若いサイバネのあんちゃんが何かしてきても腕くらいなら噛みちぎってしまうよ」 「人の趣味にとやかく言うつもりはないがお前さんどうして老人の振りをしてるんだい?好々爺を演じて近づく者をそのロボット犬で襲うのが手口か?」 「フフフッ……」 老人が笑みを浮かべると突如ロボット犬がミサイルめいて飛び掛かってきた。佐久間は咄嗟に持っていたカバンを突き出して噛みつかせる。 「悪いがお前さんに構ってる暇はないんでね」そう言いながら佐久間はロボット犬の喉を掴んで締め上げる。そして老人に投げ返した。 投げ返されたロボット犬を片手で受け止める老人、「そういうなよ」とつぶやきカツラと髭と取り去った。 「来いよ……この結界の中にな。来れないか?いいぜそれでも、住民を全て喰らうだけの話だ」大きく口を開ける男。鋭い犬歯が見えた。 「俺たちは正義の味方じゃない」「佐久間さん!?」 「ほう?」 「ここへは任務で来た。お前が目的に通じる者なら口を割らせる必要があるな、そのためには……痛めつける必要があるって事だ」 「お前にできるか?この儂を??」 「正直言ってなめている。結界の中でしかイキれないクソ野郎だってな」 「……たかが吸血鬼がデカい口叩くじゃないか。その言葉すぐに後悔する事になるぞ」 『ダブグレイパワー』 男の全身から青紫灰色の煙が発生。佐久間と蓮也は顔を覆い後ろに下がる。 煙は男を中心に吸い込まれていく。 「さぁ始めようか」 現れたのは全身青紫灰色の闘犬を思わせる頭部のフォルム。筋骨隆々の肉体、鋭い手足の爪の人型化け犬。 「グルアアアアアアアッ!!」 咆哮を上げる化け犬。佐久間と蓮也は一瞬体が硬直した。 「俺はダブグレイパワーの皀(くり)八太。覚えて死ね」 佐久間と蓮也はカランビットナイフと刀を抜く。肩甲骨から体をゆする独特の動きで様子見する佐久間。蓮也は刀身に炎を宿らせ右上段の構え。 先に仕掛けたのは皀、大きく口を開け蓮也に襲い掛かる。対する蓮也は炎の刀身を開いた口目掛けて斬りかかる。 「グルルルルル!」 皀は刀身に噛みついて受け止め炎をかき消した。そのまま首を振って蓮也から刀を奪いにかかる。蓮也は片手を離し掌から火炎放射、皀の頭部が炎に包まれた。 「うめぇうめぇ!」 大きく口を開け炎を飲み込む皀。その隙に蓮也は刀を引いて皀から間合いを取る。 「もっとやれよ、やってみせろよ」牙を剥いて言い放つ。対して蓮也は平正眼の構え。 「……」 横から踏み込む佐久間、ミスデレクションの応用で死角から音もなく接近。カランビットナイフでのジャブを放つ。皀の脇腹に2発、鋭い刃が突き刺さった。 「チッ!」 皀は苦痛の表情は見せずに右手の爪で佐久間の首を狙う。佐久間はスウェイで避けながら左手のカランビットナイフでひっかけて腕を取り脇と首筋を右手のカランビットナイフで撫で切り。そして足を掛けた投げで地面に叩きつけた。 「チッ、やるな!」後転ヘッドスプリングで飛び起きる皀。 「お前もな(今のCQCでまるでダメージが入ってないだと)」 「これほど喰いごたえのありそうな奴は久しぶりだ……」 口の中から灰色の山刀を取り出す皀。斧のような重みと包丁のような鋭さを感じさせる。 「この山刀は今まで喰ってきた連中を材料に俺が体内で作り上げた物。バケモノの恨みつらみ怨念がこもった呪いの山刀。早くテメェらも仲間に加えろと呻いてる」 「デヤァーッ!」 小さな動作で袈裟斬りからバレーボール大の炎の塊を飛ばす蓮也。踏み込んで突きを連続で放つ。皀は左手で打ち払い、続いて繰り出される突きを山刀で捌き、下から蓮也の腕を狙った斬撃。蓮也は右手を刀から離して避けた。 「ぐっ!?」 避けたはずの斬撃。蓮也の腕と胸から鮮血が迸った。 「ホラホラホラッ!!」 山刀を振り回す皀。手首を柔らかくしなやかな動きで速度を乗せた動作は確かな技術を持っている事を佐久間と蓮也に思わせた。 「蓮也!」佐久間が横からカバーに入る。声を上げ自分に皀の意識を向けた。 皀の山刀は唸り声をあげるような音を出して空気を切り裂く。佐久間は牽制しながら避けているも肩と腕、膝から出血。警戒する二人は皀から距離を取る。 「(強い……スピードとタフネス、それにあの妙なマチェットのような武器……)」 「(炎を食べるだと……それに避けたはずの攻撃が何故当たる……)」 皀は山刀を振りながら牙を剥いてジリジリと距離を詰めている。 「ククククク……いいぜいい表情だ。俺がこれまで喰ってきた奴もそういう顔をしていた。殆どの奴が強かった、だが強い奴ほどいい表情をする。『何で効かない!何で当たる!?』ってな!だが答えが解ったとしても無駄だ!!何故なら俺の方が強いからだ!!」 「お前……源藤高雅と何か繋がりがあるのか?」蓮也が聞く。 「源藤高雅……ああ、あの吸血鬼ハンターな!ただのバイトだアレは。腕がいいから大将が雇っただけの事。そこの結界も奴が張ったのさ」 言い終えると同時に山刀で襲い掛かる皀。蓮也は正面から受け止めず刀の鎬を使って受け流した。上着の肩口が少し裂ける。 「デェイッ!」 蓮也はすかさず高速の二連撃『疾風連撃』を繰り出す。皀の両腕に斬撃が入り、その箇所から炎が噴き出す。 「シッ!!」 続いて腕をゴリラの様に変形させた佐久間が殴りつける。皀はクロスガードで受ける。さらに追撃でゴリラアームストレートを放って皀をブロック塀まで吹き飛ばした。 「腕だけじゃあないぞ、色々変えれるんだ」 首は分厚い鎧のような皮膚と筋肉に覆われ頭部はサイを思わせる角が額と頭部に生える。上半身は屈強なゴリラ、下半身は頑強なゾウに変わっていく。 「ククッ!いいぞ!!」 皀は山刀の峰で燃える傷を撫でてゆっくりと構える。傷の炎は消え山刀の刀身に炎が移る。皀はその炎を大きく開けた口で飲み込んだ。 「ぬうううう!」 皀に反撃の隙を与えない為に佐久間はラッシュを仕掛ける。ゴリラアームで打撃を放ちゾウレッグでしっかりと地面を踏みしめる。皀の山刀はサイヘッドの角で突き上げる。砲丸めいた重い拳の連打が皀の顔面胴体に叩き込まれる。 「ぬううん!」 山刀を持った右手を掴んで引き寄せゾウレッグで渾身のトラースキックを放つ佐久間。仰け反った皀の足を狩り一緒に倒れこみながら首に肘を押し付け地面に叩きつけた。そしてマウントポジションからカランビットナイフを持った両腕でハンマーパンチを振り下ろす。皀の両眼を刃が貫いた。 「ンガアアアアッ!!」 咆哮と同時に炎を噴き出す皀。佐久間は十字受けでガードして飛び退いた。 「強い……!」 佐久間の能力と戦闘技術に驚嘆する蓮也。 「今ので仕留めたと思ったが……しぶといな」 佐久間の両腕両足から鮮血が噴き出す。 「佐久間さん!」 「ちっ……どういう仕掛けか知らんが厄介だな。長引けば奴の方が有利」 膝を突く佐久間、蓮也が駆け寄ろうとすると「奴から目を離すな」と制した。 「クソが!俺の目を潰しやがって……!!だがこの鼻と耳、肌で感じる空気の流れを読めばどうという事はない。全力だ!!」 口内からもう一振りの山刀を取り出す。そして手首を柔らかく山刀を振り回し獣の唸り声のような風切り音を響かせる。 「あれだ……あの動きに何か仕掛けの秘密がある。さっきの攻防で気が付いたが奴の正体不明の斬撃は飛んでは来ない。俺がCQCを仕掛ける為に接近したから発動したのだ」 「射程範囲はそれほど長くない……」 「そのかわり奴は口から飛び道具を吐き出す。これまでに飲み込んだ物なんだろう」 「佐久間さんその傷は大丈夫なんですか?」 「浅くは無いがまぁ何とか吸血鬼の力で動ける。もう一度同じ攻撃を受けたら不味いが」 「俺が前に出て正体不明斬撃の射程を探ります!」 平正眼の構えで皀を見据える蓮也。佐久間はゆっくりと立ち上がり変身を解除、バッグの中から止血スプレーを取り出し傷に当てた。 「ガオン!」 飛び込んでくる皀は連続攻撃、蓮也は剣先を山刀の鎬に合わせ弾いて受け流す。 「器用な真似を!」 相手の剣筋を見切ってなおかつ自分の剣を正確に振るえなければ出来ない『巻き枝』に似た防御術『火乃神流・風巻』力加減見極めを誤れば自身の腕や指を斬られることになる。 「ガオオオン!」 上下左右から二振りの山刀で更に速度を上げて連続攻撃を仕掛ける皀。対する蓮也は風巻で防御していく。本来であれば『風巻』から連続で仕掛けるカウンター技『火突』を繋げていくが、皀の正体不明の仕掛けを見破る為に仕掛けずに粘っている。 「ガオオオン!」 口から炎の塊を吐き出す皀。蓮也は刀身から炎を吹き相殺する。 「(この距離を保てば斬撃は当たらない!だがこの距離から奴に有効打を叩き込む攻撃手段も無い……!)」 二振りの山刀を大きく振りかぶる皀、蓮也はその隙を見逃さない。 「デヤァー!」 刀身を地面すれすれ走らせ一気に跳ね上げる『天昇炎撃』を放つ。皀の左手に深々と刀身が食い込む。山刀を弾き飛ばし大きく体勢を崩れさせた。 「(ここで深追いはしない……)」平正眼の構えに戻る蓮也。 刀の鍔に傷が入ってる事に気が付いた。 「(奴の仕掛けの間合い……これで大体解った)」 「グルルルル……チッ踏み混んでこねえか。それにこの太刀筋……お前らを舐めすぎてたようだ、出直す……」 口から灰色の煙を吐く皀。大きく後ろに飛び結界の中に飛び込んだ。蓮也は炎で煙を吹き飛ばしたがそこに皀の姿は既になかった。 「逃げたか……」 「蓮也、無事か?」 「はい、あと一歩踏み込んでいたら危なかったですが」 「奴を仕留めるには中距離遠距離で攻撃する必要があるな。あの固い皮膚、並の武器では通じない。かと言って迂闊に術を放てば奴の口に飲み込まれる」 「それか奴の仕掛けが発動する前に一撃必殺で仕留めるかですね」 「そんなパワーがあるのは……同胞の斎藤勇雷さんの北辰雷刀流かな、頭部を粉砕できるかもしれない。または河上起央君の最大エネルギーを込めた弾丸なら心臓をぶち抜くことが出来るかもしれないがね」 「佐久間さんの戦闘技術はあの化け犬を圧倒してたのに……」 「はは……俺には仕留めるパワーが足りなかったな。だが蓮也お前ならいける。その刀と剣術と炎の力があればな。最後の一撃は奴の手を切断しかけていた」 「ですが俺は奴の攻撃を受け止めるだけで精一杯で傷を負わせる程度しか」 「俺が奴を足止めする、お前が奴の急所を狙え」 「それではまた佐久間さんが奴の仕掛けの中に飛び込むことに!」 「防御特化に変身すればもう一回くらいならギリ耐えれるはずだ。だからチャンスは一回だ、研ぎ澄ました全力の一撃を放て」 「そんな……」 「だが今は結界の解除が先だ、我々の目的は源藤高雅を捕らえる事だからな」 「そう……ですね」 蓮也は佐久間から止血スプレーを借り腕の傷を塞ぐ。敵に備えて二人は武器を手に持ったまま結界の柱の捜索を再開する。 ―結界の東に向かった白峰霄と吉良伝左衛門は屍人に囲まれていた。 続く
Apr 10, 2021
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VAMPIREEYE95「対決猫田ガイム」 二郎は入り組んだ路地を駆ける。男と女の声がする方へ向かう。入り口で襲い掛かってきたサイバネのようなものはいない。周囲からうめき声が聞こえるだけであった。 「義手が反応してる……何に対してだ?」 黒い靄が義手から発生し消滅した。二郎は体がほんの少し軽くなった気がした。 「何だったんだ……?それより明珠香さんだ」 目の前にある壊れかけた鉄のドアを開くと鉄工所を思わせる金属の資材や廃材が並ぶ場所に出た。二階部分に鋭いネコ目の男と一階の鉄骨が並んでいる所に明珠香が立っていた。 「ニャンだ?部外者が迷い込んできたのか?」 「アンタは……何で追って来たのさ!」 「放っておけなかったんだ」 それを聞いて明珠香は目を丸くし、ネコ目の男は口角を上げて歯を剥いた。 「ヒーローの登場かニャ!見た所その辺のサイバネとは違う……上品な学生だろう?サイバネ集団SSSがどういう存在か知らないわけじゃニャいだろ?他にも連れてきてるんだろ一人で来るアホはいないニャ!!」 「喧嘩とかしに来たんじゃない!」 「ほ~う?人の縄張りに勝手に入ってきてただで済む分けないだろう。慰謝料寄こすニャ、学生証出せ、お前の親から財産全てむしり取ってやる、嫌なら死体ニャ!!」 「猫田!この男の子は関係ない!!アタシの問題だよ!!」 「は~?明珠香、お前SSS抜けるつもりだろ?お見通しだニャ、だから代わりにこの小僧に財布になってもらうんニャー!」 「携帯返してよ猫田!手切れ金も払うからさ!!」 「アホかニャ!!デカい金を下ろせるならこんな事してないニャ!!お前らは一生SSSの財布として生きていくんだよ!!」 軽い身のこなしで音もなく着地する猫田。小瓶を取り出す。 「ニャハハハハ!!どうしてもいう事が聞けないならこれを飲んでもらうニャ~」 中身は黒いミミズのようなものが蠢いている。 「ニャハハハハハNAYAHAHAHA!!」 猫田は突然上を向いて笑い出す。皮膚がどす黒い灰色に変わっていく。 「……?」 「何だ急に!」 「気持ちいいニャ~どんなヤクをキメた時よりも!!さぁお前らもこれをヤルにゃ!!難しい事を考えずに済むしストレスなんかなくなるニャー!携帯なんか取り戻す為に戻って来るなんてアホ過ぎて笑えるニャー!!」 猫田は突如飛び上がり前方回転で明珠香に襲い掛かる。 「うわっ……っと」 「ニャハハハ!今のよく避けたな?だけどお前はどの道俺には逆らえないニャ、その義足、いつでも爆発させることが出来るんだニャ~」 邪悪な笑みを浮かべる猫田。 「どういう事!?」 「クソダサイ量産型の義足からSSS特性の義足に変えた時に爆破装置を組み込んでおいたニャ!SSSはサイバネ技師もいるからニャ~金づるは逃がさないようにしてる訳だ」 「そんな!」 『その心配は無用だぜ明珠香!』 「レグス?」 『そんなもん俺がとりついた時に解除してる、安心しろ』 「分かった信じるよ」 独り言をつぶやく明珠香に猫田は首をかしげる。 「ん~?誰かと連絡してるのかニャ?まぁ無駄なんだが」 爪で襲い掛かる猫田。亜珠香は状態を反らして回避、それと同時に右足を跳ね上げサマーソルトキックで猫田の顎を蹴り上げた。 「ギニャアッ」 空中回転して着地する猫田。 「猫田の動きが見える……体が動く……!これがレグスの力?」 『そうだぜ!オーグルは宿主の能力を何倍も引き上げる。相性が良ければ特にな!!』 「ヌガアアアアアア……明珠香!お前はもう殺す!!決定ニャ!!」 前方高速回転で突進する猫田。 「はぁっ!」 横っ飛びで回避する明珠香。猫田の鋭い爪は廃材を切り裂いて火花を上げる。方向転換して今度は錐もみ回転で襲い掛かる。 「速い……それにあの爪!!」 猫田と明珠香の速さに圧倒され動けないでいる二郎はバックルを刀に変え構えて待機。 「ニャハハハ!ニャハハハハ!!」 様々な回転を加え爪で襲い掛かる猫田。明珠香は完全に見切って回避を続ける。 「これじゃキリが無いよ」 『かなり速いが付いてこれないほどじゃあない、次の奴のタイミングで仕掛けるぞ!』 前方縦回転で回転鋸を思わせる猫田の攻撃。明珠香は横に回避しながら体を捻り最小限の動きで猫田の横っ面にソバットを叩き込んだ。 「イギャアアアッ!」 「やった!レグスのやりたいことが頭の中に流れてくるから出来た!!」 『明珠香、もう少しだけ俺の力を使いこなしてくれ、サイバネ部分に頼りすぎるとお前の体がもたないからな。行くぞ!』 レグスの要求に頷いて答える明珠香。すると全身を緑黒のスーツを思わせるものに包まれ頭部はフード状のものが覆った。額には親指ほどの角が生える。 「レグスが全身を包んでる!?すっごいパワーが溢れてくるけど大丈夫なのこれ?」 『消費エネルギーが激しいから後でたらふくメシを食べるんだぜ』 「ニャーハハハハ!楽しくなってきたニャ!全力でやるにゃ!!」 猫田は立ち上がり両手両足の爪を更に伸ばしてナイフを思わせる形状に変化させる。 「こうやって目の前で変化させて見られたりしても今の世の中なんでもサイバネで通せるから楽だよニャ~」 「??まるで猫田はサイバネじゃあないみたいな言い方だよね?」 明珠香は自分の両脚の脛と踵、爪先がキラキラと光る鋭い刃に変化しているのを見た。 『まぁあれだ、あの猫田って男も俺と同じ人外の存在って奴だ』 「そうなんだ……」 『それは置いといて……デカい一撃を入れるチャンスがあったら両掌に力を集めるイメージを持て。それで破壊エネルギーを放出できる』 「オッケー!」 「ニャガガガガガ!!」 回転鋸と化した猫田が襲い掛かって来る。寸前で回避した明珠香。猫田はそれを見て足の爪を地面に突き刺して急ブレーキ、バック転で斬りかかる。 「あっ……」 爪が明珠香の腕を掠めた。鋼鉄を切り裂く一撃であったがレグスのスーツでダメージを押さえ浅い切り傷程度で済んだ。 「にゃに~!?今ので切断いったかと思ったのになぁ!!」 「痛った……」 「なら串刺しだニャ!」 明珠香はその攻撃を開脚伏せで回避。そして体を捻ってブレイクダンスめいた動きで猫田の足を払って宙に浮かせる。 「ここだ!」 起き上がりながら明珠香は掌を猫田に向ける。爆発音と共に赤い閃光が放たれ猫田は吹き飛び廃材の山に突っ込んだ。 『いいぞ!』 「凄い……」 それを眺める二郎。明珠香の強さに唯々驚いている。 『元々運動神経良いんだな』 「まぁ足無くすまでバレエやってたしね……それより今がチャンスだよ、おねんねしてる間に携帯取り戻さなきゃ」 明珠香は二階部分に上がって猫田のスペースにある机の上から携帯を手に取った。 『思ったんだが紛失届とやらを出せばよかったんじゃないのか?』 「駄目なんだって!大事なメモとか写真が入ってるんだから。携帯会社の光ネットデータバックアップサービスにコピーしてないのがいっぱいあるんだよ」 『そのサービスやっとけばこんな面倒無かったんじゃないのか?』 「だね……反省。未成年だから保護者にデータ見られるの嫌だったんだよ」 『なるほどな』 立ち去ろうとする明珠香、背後で猫田が立ち上がった。 「完全にキレた……獲物を弄んで嬲り殺しにするのが癖なんだがもう終わりニャ」 「え!あの攻撃でピンピンしてる!」 これまでとはうって変わりじりじりと距離を詰める猫田。軽く前傾姿勢で膝をばねの様に柔らかく上下に揺れている。 「やりにくい……」『アイツ戦い慣れてやがるな』 両者の間は10メートル程。 「明珠香さん逃げて!」 そこに二郎が割って入ってきた。 「は!?何やってんの!?」「早く今のうちに!!」 「邪魔だお前!死ね!」 緩やかな動きから突如飛び出す猫田。喉に目掛けて繰り出された爪攻撃を寸前でバックル剣で受け止めた。 「ニャアア!」 その場で回転爪攻撃を繰り出す猫田、二郎は右手の義手で受け止める。 「(速いけど恭一ほどじゃない。動きも雑だ)」 「アニャニャニャニャニャニャニャニャニャーッ!!」 さらに速度を上げ回転爪ラッシュを仕掛ける猫田。二郎は後ろに下がりながらバックル剣と義手で弾く。 「お前なんかに!お前なんかに邪魔されてたまるかニャアアアアアアアア!!」 速度を上げる爪ラッシュ、猫田の全身から滝のような汗が噴き出してくる。 「おかしいニャ……体が重くなってきた……蟲効果が切れてきたのかニャ?」 それに対し二郎の動きはキレを増し、ラッシュの合間に反撃を仕掛ける。 「(上手くいってる。華月さんの為の生命エネルギーを扱かってるうちに何となくコツを掴んだエナジードレイン。直接触れなきゃできないけど)」 精彩さを欠いた爪攻撃を見切るのは容易く、二郎は猫田の左手を義手で掴んだ。 「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」 「アンギャニアアアアアアアアアアッ!!」 エナジードレインを喰らった猫田は白目を剥き痙攣してその場に崩れ落ちた。 「やった……ん?」 二郎は自分の体の中で何かが脈打った気がした。全身の血管に熱い何かが流れる感覚、義手に繋がっている腕が黒ずんでいる。 「え?なんだこれ??」 上着を脱ぐ二郎。Tシャツを肩までまくりあげると首筋近くまで黒ずみは広がりやがてゆっくりと薄くなり消えていった。 「なんだったんだ……」 「え?なにどうしたの??」 全身スーツ姿から元に戻った明珠香が駆け寄る。 「大丈夫何でもないさ。それより明珠香さん爪で引っかかれたんじゃ?」 「スーツのおかげで全然平気だったよ。もう血も止まってるし絆創膏でも張っとけば大丈夫。それよりこれだけの騒ぎだし警察が来て根掘り葉掘り聞かれるの面倒だし速く行こ!」 上着を羽織った二郎の左手を引いて歩き出す明珠香。 「その義手すごいね?どうやって掴むだけで猫田やっつけたの?電気か何か?」 「どう説明したらいいかな……体力を吸い取れるというかそんな感じなんだ」 「最新のサイバネはそういうのもあるんだ?」 「えっと……多分そう、自分でもよく分かってないんだ」 「ふ~ん……アタシの足と同じようなもんかな?」 細い路地を抜け来た道を戻る二人。広場に吹雪と恭一の姿は無かった。 「誰も居ない……外まで行ってみよう」 外には車の傍に立って電話をかけているいる須原の姿だった。吹雪と恭一は後部座席でぐったりとしている。 「須原さん!」 「木城二郎君、無事でしたかヨカッタ……今、水元来海に連絡していたのデスすぐに白峰家来るようにと」 「吹雪さんと恭一に何が?」 「呪(しゅ)をかけられたようです。今は蔵人様の札の力で何とか押さえてマス」 「……あの灰色の男の仕業か……」 「二人をこのまま白峰家に連れて行きマス。君たちはどうしますか?」 須原は二郎と明珠香を見て言った。 「この人、明珠香さんを安全な場所まで送ってそれから白峰家に行きます。サイバネ連中がまだいるかもしれないし」 「では後ほど」 須原の運転する車が走り去る。見届けた後、二郎は義手をじっと眺めている。 「えっと……木城二郎くん?大丈夫?友達ヤバイいんじゃ?」 「うん、でも……もしかしたらこの義手で呪(しゅ)とやらを吸いだせるかもしれない」 「そうなの?じゃあすぐに行ってあげた方がいいんじゃない?アタシは平気だよ」 明珠香は軽く飛んで言った。 「明珠香さん、またセンジョーに来るよね?」 「う~ん……どうかな。出来るだけ早くアメリカに行きたいからなー。じゃあさ、携帯のメッセージ交換しとこうよ」 「わかったじゃあまた連絡するよ明珠香さん」 「いいよ明珠香で。あたしも君の事二郎って呼ぶし。なんでだろ会ったばっかりなのに全然そんな感じがしない不思議」 「俺もだよ」 続く
Apr 3, 2021
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