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VAMPIREEYE104「仮面の襲撃者2」 「チッ……これで全員口封じしなければならないか、やるぞ!!」 かぎ爪とクナイの男が美古都と壁山に襲い掛かる。刺叉と鎖鎌の男は須原に、直刀の男は霞に襲い掛かった。 「シャー!!」 かぎ爪の攻撃を十字槍で受け止める美古都。クナイの攻撃を展開した魔力壁で弾き返す壁山。 「その爪……毒がついてるっぽいんですが」 「クククク、強力な麻痺毒だ」「こっちのクナイもだ」 「ヤベェよ周防、何だコイツら……」 素早い動きでフェイントをかけて麻痺武器で仕掛けてくる黒嘴仮面達、美古都と壁山は猛攻を防御に徹して防ぐ。 「くっ……(強い……学校に乗り込んでくるサイバネ者らとは違う!)」 「速ぇ……(ハンドボールの試合でもこんな速いのいねぇ!)」 駐車場の端へと徐々詰められていく美古都と壁山。 「マズイ!」 須原が駆け寄ろうとするも刺叉の男に行く手を阻まれる。 「おっと、行かせない」 棘の付いた電磁指叉で突いてくる。 「セエイ!」 更に横から鎖鎌男の分銅が飛んでくる。回避する須原、電磁指叉は金網を引き裂き、分銅はブロック塀を粉砕した。 「フンハッハハハハ!!」 直刀を振る黒嘴の主格。霞は全て見切り雷の魔力を込めた拳を構える。 「流石は白峰三姉妹の中でも最も才能ありと言われる娘。この俺の剣を躱すか」 「確かに速いけど間合いに入らなければ大丈夫」 霞は軽く腰を落とし膝を柔らかく半円の動きで後退を繰り返し男の剣を回避する。 「(この年齢でこの域にまで体術を……それにあの両拳の雷【いかずち】)」 男は直刀を振って追うのを止めゆっくりと前で構え霞の出方を伺う。 「……」 霞の周囲の車や鉄柱から電撃の青い閃光が瞬いて見えた。 「あなたたち全員、電気対策は万全なのね」 「無論。貴様を相手に防電の装備を怠るなど自殺行為」 霞は回避を続けながら周囲の金属を利用して男らに電撃を浴びせかけていた。 「有象無象の輩など貴様の雷にかかればものの数秒で制圧されてしまうだろう」 「あたしとしては電撃で全員昏倒してくれてたほうが良かったなー」 「フウン!」 隙ありと判断した男は石粉と樹脂で成形した直刀で霞に斬りかかる。 「風迅剣!」 「うっ……」 回避したはずの霞の体に無数の切り傷が刻まれる。 「魔力を風の如く操り刃へと変える剣。間合い範囲自由自在の剣」 「わざわざ説明してくれてありがと」 「真偽を疑わないのか?俺の発言は虚偽のものやもしれんぞ?」 「説明するって事はあたしを殺す気はないんじゃないかなって。あくまで誘拐が目的」 「……フン!」 飛来した金網を両断する男。霞は会話しながら外れていた金網を電磁力で操作、男に向けて投げつけていた。霞は両断された金網を操り男に纏わりつかせにかかる。 「ええい、ならばこうだ!!」 金網を風迅剣で弾き飛ばし、懐から玉を取り出す男。地面に叩きつけ煙を発生させる。 「あ……これは……げほげほっ」 霞の目鼻喉に強烈な痛みが走る。 「退魔催涙煙。周囲の人間どもに騒がれる可能性があるこれを使いたくはなかったがな」 風迅剣で退魔催涙煙を誘導し須原と美古都、壁山にも浴びせかける。 「グム……」「ぐげええ……」「えっくしょん!」 目を抑える須原、悶える壁山、くしゃみをする美古都。 動きの止まった霞と三人に麻痺毒を仕込んだ武器を打ち込む黒嘴仮面の男達。 「しまった……やっちゃっ……た……」 糸の切れた操り人形のように倒れる霞。 「ぐふ……」 壁山はうつ伏せに昏倒。須原と美古都は耐えている。 「二人はまだ耐えるか。毒の効きが鈍いホムンクルスと……そっちの女は何だ?」 膝つき状態から立ち上がろうとする須原、十字槍を杖代わりにして体を起こす美古都。 「大蝦蟇なので……毒は結構耐性あるんですよね」 汗を噴き出している美古都、見る見るうちに顔色が戻っていく。 「退散した方が良いんじゃないですか?そろそろ警察来るかも?」 十字槍を構える美古都。後ろでは首を振って立ち上がる須原。 「サイレンの音はまだ聞こえない。早く見積もっても3分は余裕がある。5対2となった今こちらが圧倒的有利、退散する必要はないな」 「(まずい……まずいです……一人一人がめちゃくちゃ強いのに壁山君と女の子やられちゃったし……)」 「あきらめろ、この状況で我々を斃し、倒れている二人を抱えて脱出など不可能だ。我々が用があるのはそこの白峰霞、お前たちは見逃してやっても良い」 「ここでその女の子を見捨てたら私は後悔します、一生自分を責める事でしょう」 「つまらん正義感で命を落とすことになるぞ」 「命を捨てるつもりはありません、警察が来るまでの時間稼ぎくらいはして見せます」 「下がって……貴女は霞お嬢様とあちらの倒れている男の子を車に乗せてくだサイ」 車のトランクから大剣アスカロンを取り出す須原。 「なん……だと!?何故それを持っている……」 「早速この剣を使う時が来るとは」 「デエエエエエエイ!!」 鎖分銅を投げる黒嘴仮面、須原はそれをアスカロンの側面で弾き返す。 「グエアッ!」 高速で弾き返された分銅はかぎ爪の黒嘴仮面の胸に命中。そのままうずくまった。 「一人減ったナ」 「ふん、未熟者め」 主格の男が言い捨てる。倒れた者に誰も駆け寄らずに須原を見ている。 「男よ、どこで手に入れたか知らんがその大剣貴様が使いこなせるとは思えんが?」 「そうか、このアスカロンの事を知っているという事は。エクレシアの手の者ダナ」 「……察しが良いな。それが知られたとてアスカロンを回収すれば済む事だ」 美古都は霞に駆け寄り抱き上げる。黒嘴仮面の動きは須原がアスカロンを構え圧で牽制して阻む。鎖分銅を打ち返した須原の動きを見た黒嘴仮面は迂闊に動く事が出来なくなっていた。 「貴様、白峰家に仕えているだけはあるという事か、部下どもは完全に気圧されている……ならば貴様の相手は俺がする。他の者は大蝦蟇の小娘を始末して白峰霞を奪え」 「御意」 鎖鎌、クナイ、刺叉の三人が車の裏にいる美古都に迫る。 「サセナイ!」「風迅剣!」 動く須原に風迅剣で斬りつける主格の男。アスカロンに風迅剣の魔力渦が衝突する。 「退ケ!」「退けさせてみろ!」 アスカロンと風迅剣がぶつかり合う。魔力渦が須原の腕を傷つけていく。 「攻防一体の風迅剣。アスカロンを使いこなせぬ貴様が倒れるのも時間の問題だ」 「ヌン!」 大剣アスカロンを小枝のように振り回す須原、空気を切り裂く音が響き渡る。剛剣の連撃を全て風迅剣で受け止める男。その度須原の体は風迅剣で傷ついていく。 「頑丈な男だ!まだ耐えるか、並の者ならとうに腕は千切れ飛び胴体は肉片へと変わっているだろう」 「ヌウウウウ」 車の横では美古都が十字槍を振るい必死に耐えていた。黒嘴仮面の男らの猛攻に削られ傷を増やしながらも十字槍を止める事無く。 「ハァ、ハァ……」 汗と血でドロドロに濡れている美古都、体温が上がり蒸気を発している。 「さっさとくたばれ!」 鎖鎌男が踏み込んで鎌で斬りつけてくる。美古都はそれを見逃さなかった、大きな動作の攻撃をずっと待っていた。汗を流しながら血を流しながら。 鎌にあわせて十字槍を突き出す。槍の穂先は男の仮面に命中、仮面を弾き飛ばした。 「……惜しかったな」 「いえ、決まりました……」 「なにっ……」 眩暈がしたかと思った男、気が付くと頬を地面に着けていた。 「……!?」 倒れた男を見て離れるクナイと刺叉の男。 「私は大蝦蟇ですよ、毒を持ってるんです。致死性では無いですけど体の力が抜けて動けなくなる毒なんです」 敵が退魔催涙弾の中、平気で動いている姿を見た美古都は仮面が防毒マスクを兼ねていると判断、毒を吸わせるために仮面を狙い隙を待っていた。 「(でも……もうここまでかも血を流しすぎちゃった……女の子、壁山君ゴメン……)」 膝をつく美古都、なんとか十字槍の穂先だけは仮面の男らに向けている。 「ウラ!」「トリャ!」 クナイと刺叉の男が美古都に攻撃を仕掛ける。 しかし男らの攻撃はあと数センチのところで停止していた。 「グヌヌヌヌ!?」「グウウウウ!?」 「??一体なにが?」 美古都の体が宙に浮いた。空中に放り投げられた後、次々と傷口を塞ぐ粘着物が体にくっついていく。そして柔かなハンモックのようなものに包まれ駐車場の端に寝かされた。 「まったく……何か物音がするからって来てみれば」 「あ……ああ……!舞子さん……!!」 「しばらくじっとしてなさい、コイツらには借りがあるのよ。マンションの襲撃犯と同じ格好しているの」 舞子は非常階段から飛ぶ。落下しながら糸を射出して壁面に着けスイング。駐車場に着地した。 「グヌヌヌ!」「グウウウ!」 車の前の黒嘴仮面は極細の蜘蛛糸で拘束されている。舞子が目の前の糸を弾くと男二人は射出されビルの壁に激突、そのまま貼り付けになった。 「クソ……」「動けん……」 「今度はこっちが不意を突いてやったわよ。そしてセンジョーからの情報でお前たちの正体は分かったわ」 主犯格の男を指さす舞子。 「ほう……死にぞこないの土蜘蛛が出てきたか。魔猿の呪と我が部隊の襲撃を受け満身創痍の貴様がノコノコと」 須原への攻撃を中止し離れる主格の男。 「お前は大天狗・長門顕彰の長門組傘下、カラス天狗組の【飯田迦楼羅】ね」 「如何にも」 「聞きたいことが山ほどある」 「お前と話をする気など無い!」 風迅剣を放つ飯田、舞子は横っ飛びの跳躍で回避。 「フン!」 舞子を狙う飯田、その隙を見逃さずアスカロンで斬りつける須原。風迅剣の第二撃を放つ前に阻止する。 「邪魔だ!ホムンクルス!」 「土蜘蛛サン、この敵は自分が相手します霞お嬢様たちを頼みます」 「はぁ?アンタ一人が盾になるって?冗談はやめて」 糸弾を射出する舞子、飯田の足を狙う。飛び跳ねて回避したところにアスカロンを叩き込む須原、衝撃を逃がしつつ下がる飯田。 「フゥ……ふがいない部下は斃され目の前には白峰家仕えのホムンクルスに連合の土蜘蛛……そろそろ本気を出さなければならんようだ」 漆黒のカラスの翼を広げる飯田。ゆっくりと上段に剣を構えると風迅剣は巨大化する。 強大な魔力の奔流に周囲の大気は唸りを上げ、つむじ風と化し、駐車場は飯田を中心とする竜巻となった。 「一気に決める!風迅剣・轟嵐峨!!」 空高く伸びた巨大な風迅剣が振り下ろされる。暴力的な魔力の渦は触れた物を木端微塵に粉砕する。アスファルトはめくれ上がり車は吹き飛ばされ土ぼこりが撒きあがる。 「フッハハハハハハハハ!!塵となったか!!」 「おあいにく様!」 飯田の背後から声がする。スイングで舞子が飛んでくる。振り返るよりも早く後頭部に飛び蹴りが命中。前のめりに倒れる所にアスカロンをフルスイングする須原。咄嗟に胸の前に剣を構える。 「ヌウオオオオッ!」 剣が体に近すぎるため風迅剣は発動できない。飯田はアスカロンを通常状態の剣で受け止める。須原のパワーにアスカロンは耐えれるが飯田の剣はそうはいかなかった。 「折れ……」 須原のアスカロンのフルスイングを受け転がる飯田。折れた刀身が滑っていく。 「おのれ……風迅剣・轟嵐峨をどうやって耐えた……」 須原は大剣アスカロンを突き立て盾に、舞子はビルの壁につけてあった糸を引いて張力で回避していた。 「どうだ……まだやれるゾ」 破れたビジネススーツの上着を脱ぎ捨てる須原。筋骨隆々で2メートルを超える巨体が強調される。風迅剣につけられた傷は思いのほか浅く出血も既に止まっている。 「グッ……」 舞子の弾丸めいた糸弾が飯田の体に三発命中。 「退くなら今だと思うけど?それともここから泥沼の生死を掛けた戦闘を再開する?」 「……ここは退いてやろう」 サイレンの音が聞こえる。飯田は折れた剣を拾い翼を広げて飛び去って行った。 「助かった、感謝シマス土蜘蛛」 「まぁ、なりゆきでやった事よ」 「舞子さぁ~ん……ありがとうございます~……」 蜘蛛糸ハンモックから体を起こす美古都。 続く
Jun 19, 2021
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VAMPIREEYE103「仮面の襲撃者」 「二郎どうした?顔色が悪いぞ?」 蓮也は二郎の顔を覗き込む。 「いや、なんでもないよ兄貴。吹雪さんの家が火事だって聞いて驚いたんだ」 少し離れた席にいる霄がシェルターから飛び出して白峰邸に行こうとするのを吉良と冬華か止めに入っていた。 「霄お嬢様お待ちを」「霄、一旦落ち着いて」 「家には!皆との思い出が!!お父さん、お母さん、吹雪、霞との大切な思い出の品が!!」 吉良と冬華を振り切る霄、その様子を見た華月が霄の前に立つ。 「行くな霄、何が待ち受けてるか分からんのだぞ」 「先代!このままじっとなんてしてられません!!」 「今は近藤に任せよ。奴は気配遮断に透視、探知、透明化の能力がある。家には消火活動が終わってから行けばよい、我も一緒について行く。それでいいな?」 霄は数秒間華月を見つめた後諦めたように頷いた。 「……わかりました」 「白峰家の結界を破れる者などそうは居ない。考えられるのは教会最強の陰陽師・葛野忍もしくはそれに近しい術師だな……」 「華月様、灰色の軍勢の仕業では?葛野忍は追い詰められない限り表立って直接白峰家と対立する形は取らないでしょう」 黒谷が言った。 「……追い詰められたのではなく、時期が来たのかもしれん。霄の話では源藤高雅と灰色の軍勢は繋がっていた。そして灰色の軍勢は一週間で京都を滅ぼし二週間で世界の崩壊を企てているらしい。教会と灰色の軍勢の目的は繋がっていると考える」 「それはつまり……封鎖中の碁盤の目町に捕らえられている雪名様も危ういという事」 「そんな……お母さんが!!」 叫ぶ霄。フロアーの全員に動揺が走る。 「皆さん!敵は華月様復活を知らない!!だからこそこのような大胆な行動に出てきたでのです!!華月様が完全に力を取り戻せば従者である我々も更なる力を得ることが出来る、それは敵にとって予想外でしょう!!今日から一週間、華月様に力を取り戻していただく為の期間と私はします!!」 黒谷は両手を広げ大きな声で言い放った。 「策はあるのか?黒谷」 華月が言う。 「ええ、勿論ですとも。沖田さんと二郎くんの行っていた華月様への力らの譲渡。それを参考により大規模な術式を準備しています。術式の準備は妖怪連合とも揉めることなく進んで順調です。彼らの縄張りギリギリの所に設置していますので。特に五月蠅い鬼の結界術師も灰色の軍勢の事があってか衝突することはありませんでした」 「解った」 「……」 二郎はそれを聞き頭の中に大熊我們(熊童子)の顔が浮かんだ。 「(あの時行動して良かったんだ……そうじゃなかったら華月派と連合は揉めていた可能性が高い……)」 「それと源藤高雅の口を割らせます。意識不明の重体ですが直接脳に働き掛けます。灰色の軍勢と葛野忍らは何を企てているのかを。これらを一週間でやり遂げて見せますとも!!」 黒谷が言い放った後、メンバーはそれぞれ気の合う者同士、一週間の行動について話しを始める。二郎はノートPCの前で虚ろな表情で天井辺りを見ている勝田に声をかける。 「勝田さん?」 「……おお、二郎君。どうしたのかね?」 「今のはどうしたんですか?」 「ああ、ビックリしただろう?ジーニアスレイジの集会所にログインしてたんだ。前に話した魔女レヴィもしくはその弟子が居ないかって見に行ってたんだよ。集会所にログインするのは精神体だからね傍から見ると気絶しているみたいになるのさ」 「そうだったんですか、それで何か手掛かりは?」 「あったね。近いうちに京都に行くとメッセージが。でもそれだけさ、あの魔女レヴィは会うだけでも大変だ。でも君なら見つけられるかもしれないよ?」 「それはどうしてですか?」 「その前に……君の義手の解析が進んでいくつか解った事があってね。谷川さんと茉白ちゃんがここにきてすぐ手伝ってくれて捗ったんだ」 「解った事とはなんです?勝田さん」 「この義手はVエネジーを発生させるだけでなくて、バックルと連動してデータの記録をしているんだよ。そしてVエナジーを使い再現させることができるんだ」 「つまり?」 「対象の能力を記録して再現できる、劣化コピーになるだろうけどそういうことが出来る。それを利用して僕の魔女レヴィの記憶を義手&バックルに書き込む。そして探知に優れた近藤さんの能力をコピーすれば魔女レヴィの魔力を感じるくらいの事はできる」 「なるほど……」 「だから一週間、二郎君には碁盤の目町突破の訓練と魔女レヴィ探しをお願いする」 「吹雪さんと恭一の容体は……」 「水元が診てるから心配ないよ。君の義手が敵の呪を吸収してデータを取ってくれたおかげで水元は症状を緩和させる薬を新しく調合する事が出来た。取り除くことは出来なかったけど状態は安定している、しばらくは大丈夫だよ」 「良かった……」 「呪いを解く方法は……呪い返しか術師に解除させるもしくは始末するかだ。元を断つしかない」 「じゃあ早く見つけて解除させないと!」 「無茶はいけないよ二郎君。少なくとも一週間は与えられた仕事をこなしてくれ」 「はい……」 ―京都市北区 霞、須原、斎藤の三人は霞の友人の住むマンションの前に着いた。既に警察関係者の車両が停止している。 「マンション住民の集団昏倒……と報告が入っている」 斎藤はそう言って車から出る。 「一般人には見えぬだろうがマンション全体に黒い蛇のように蠢くススのようなものが覆い尽くしている」 「アレは……呪ですネ」 「妃羅莉ちゃんたちどうなってしまったの……」 須原と霞も車から降りる。 「発生源を辿る必要がある……誰か運ばれて来たな」 担架で運ばれてきたのは全身を真っ黒な黒い蛇状の呪に覆い尽くされた緋川燿子、野村萌絵であった。その後ろから弱った様子の奥寺舞子と山根妃羅莉の姿が見えた。 「あの者達は……連合所属のアイドルグループ・ヴァルキリーのメンバーか」 斎藤は携帯端末の画像と照らし合わせながら言った。 「鉄鼠、牛鬼、土蜘蛛、妖狐と強力な妖たちデス。あのような者に呪をかければ普通呪い返しを受けるもの……相当強力な呪デスヨ」 「舞子ちゃん、妃羅莉ちゃん!なにがあったの!?」 駆け寄る霞。 「……かすみ、三日後のリハーサル中止になるかも。灰色の連中だけじゃなかった……あんたらも気を着けなさいよ」 いつもクールな舞子の目には怒りの表情が浮かんでいる。 「いきなり来たんだよお面被った連中が……撃退したけどまともに黒いの浴びた燿子さんと萌絵ちゃんが倒れて……」 いつもニコニコしている妃羅莉から笑顔が消えていた。 「また連絡するわ、かすみ」 「気を付けてね霞ちゃん」 救急車に乗り込む舞子と妃羅莉。四人を乗せた二台の救急車は去って行った。 「表向きの捜査に警察官として参加する必要があるから私はここで。皆の所には後で行く」 斎藤は近くにいた警察官に手で合図しながら言った。 「斎藤さん……一人になるのは危険デス」 「大丈夫だ、ここまで騒ぎになれば敵はもう移動しているだろう。それに須原さん、貴方は霞さんと無事、都メタルに行って欲しい」 「……分かりました」 「斎藤さん、このマンションに友達がいたんだけど確認してくれる?」 霞は携帯のメッセージに返事が無いのを何度も確認しながら言った。 *** ―病院 奥寺舞子と山根妃羅莉は野村萌絵と緋川燿子がICU(集中治療室)に運び込まれたのをただ見ているだけしか出来なかった。 「この病院は闇の住人に対応しているって聞いてるけど……」 「社長さん(千丈隼磨=酒呑童子)がここなら大丈夫だって言ってたよね」 「妃羅莉は平気なの?」 「ちょっと危なかったよ?ネズミボールを身代わりにして何とか。舞子は?」 「呪の毒は体の外に出せるからこのまま保てるわ。毒に強い体で良かったけど呪を解除しない限りずっと毒を排出し続けなければならないし結構しんどいかな」 奥寺舞子は口から黒紫の粘液を吐いて小蜘蛛に渡して言った。 「舞子ちゃん、仕返しに行くんでしょ?社長とかマネージャーの指示関係なしに」 妃羅莉は魔力鼠ボールを指で回して言った。 「ええ、燿子と萌絵をこんな目にあわされて黙ってる訳ないし」 舞子の目に殺気が宿る。 「マジ、なんだねーあたしもちょっとムカついてるし邪魔じゃなかったら手伝うケド」 「妃羅莉は燿子と萌絵と様子を見てて。万が一私に何かあった時、妃羅莉が最後の頼みの綱だから。ヴァルキリーの事、頼んだわよ」 「わかった、なんかあったらすぐに言って、ネズミちゃんたちをついていかせるから」 「うん」 立ち上がる舞子、廊下を挟んで隣の椅子に東邪馬高校の生徒男女二人居るのが見えた。 「あ、あの……」 声をかけたのは女生徒の方だった。 「ヴァルキリーのMAIKOさんでは?」 「そうだけどあなたは?」 「私、周防美古都といいます。あの、悪いとは思ったんですけど話聞こえちゃって……」 美古都は折りたたんだ十字槍を抱えてもじもじと体をゆすっている。 「なに?手短に話してくれる?」 普段ならクールながらも笑顔でファン対応をする舞子だったがこの時は笑顔はなかった。 「似ているんです……私たちの学校を襲った者とMAIKOさんらが話していた敵と」 「その話……そこの男子も一緒に来て……妃羅莉、ちょっと向こうで話するわよ」 舞子、妃羅莉、美古都、壁山の四名は自動販売機のあるフロアーに移動する。 「東邪馬高校も灰色の連中の襲撃を受けたのね……」 舞子は炭酸水を飲みながら言った。 「そうなんです。東邪馬高校を脱出した後、都メタルでしばらく休んで、蒼炎さん、日除さん、吹田さんの様子を見に病院に来たんです」 「怪我は対した事ないんだけど何か精神的にやられちまった感じっすわ……皆、魂が抜けたようにボーっとしちまうようになって……」 美古都と壁山はリンゴジュースとコーヒーを飲みながら言った。 「撃退出来てよかったね……ニュースではテロリストの仕業になってるねぇ」 妃羅莉は抹茶黒蜜レモンジュースを飲みながら言った。 「他のニュースは……超大型台風消えたんだって……上陸してたら日本ヤバかったんだってさ。東京都と大阪でもテロリスト事件起きてるね……このところ世界中でこういうの起きてるし日本もいよいよ危ないのかなぁ……はぁ、サッカーの全国大会開催できるのかなぁ」 妃羅莉は鼠ボールを頭でリフティングしながら言った。 「俺のハンドボールの大会も危ういかもだぜ」 「壁山君はハンドボールやってんだ、ポジションは?」 「キーパーだ!小中学校の時はサッカーでキーパーやってたんだけど蹴るのが下手すぎてなー防ぐのと投げるのは得意だったから東邪馬に入ってからはハンドボール始めたんだ」 「あたしはFWなんだー本当は司令塔として皆を引っ張りたいんだけど前でバチバチ点取りやる方が向いてるみたいでさ……あはは」 妃羅莉は鼠ボールを壁山にパスして言った。 「色々話聞かせてくれてありがと。メッセージグループ作ったからそれで連絡とりあいましょ。あなたたちが連合に所属してなくても私は気にしないから」 「い、いいのですか!ヴァルキリーの人とメッセージ交換できるなんて!!」 「今は気にしてる状況じゃないから。灰色と関わったんだから」 舞子は素早くグループを作り二人に招待を送る。 「で、二人はこの後どうするの?私と妃羅莉は近くのセンジョーのホテルに泊まるけど」 「私と壁山君は寮に帰ります。明日から学校どうなるかも分からないですけど……」 「もうすぐ夏休みだしそのまま休校もありえるかもね。じゃあ周防さん壁山くん、今日はこのへんで解散しましょ」 「あ、はいおやすみなさい」「じゃあな奥寺さんに山根さん」 去っていく美古都と壁山。その姿を見つめる舞子と妃羅莉。 *** 斎藤と警察に呪に覆われたマンションの調査を任せて須原と霞は病院に向かっていた。 「舞子ちゃんからメッセージだ。ヴァルキリーの二人は助かったって」 「そうですか」 「でも呪って根本的な解決をしないと治療できないんでしょ?」 「ハイ……そのように聞いておりマス」 病院の裏にある駐車場に車を止める。降りたところで物陰から黒い嘴の面をかぶった男ら五人に囲まれた。 「ム、人間ではないですネ」 「魔力を感じるね」 男らの手にはかぎ爪、クナイ、鎖鎌、直刀、刺叉。 「白峰霞、大人しく拘束されるなら危害は加えない。だが抵抗するなら仲間を殺す。病院に運ばれた奴らの止めもさしてやろうぞ」 直刀を構えた男が言った。 「誰なの?どこの誰かも分かんない人にいきなりそんなこと言われて聞けないよ」 「ついてくれば分かる」 「武器で脅して素性も明かさない人についていく訳ないよ」 「これでも穏便に済ませようと譲歩しているのだが?いきなり襲い掛かって半殺しにしても良かったのだ」 「へぇ……でもここで大声出せば誰かが警察呼ぶかもね?」 「妨害電波を発している、この周囲の携帯は使えん。固定電話で通報しても5分の猶予があるそれまでにお前を拉致すればいい事だ」 五人の黒嘴仮面が間合いを詰めてくる。 「ちょっとちょっと!!なにやってんですかー!!」「犯罪の匂いがするなぁ!!」 後ろから声をかけたのは周防美古都と壁山颯真。 続く
Jun 13, 2021
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