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VAMPIREEYE118「JFKA」 四人のぬうりひょんが同時に斬りかかる。咲夜はバック宙返りで回避。バスローブの袖、肩口の四カ所が斬れている事に気づく。 「どうだ?存在感を消すことが出来るのなら増やすことも出来る。お前の感覚とは関係ないこの世界に認識させるのだ」 四人のぬうりひょんは一人に戻る。 「へぇ世界に認識、面白いですね……私もそんな呪(しゅ)はできません」 「面白いだと?すぐに恐怖に変わる、妖ども人間どもは俺を恐れるのだ、最強の俺にな!」 突如背後に現れたぬうりひょんの分身、咲夜に斬りかかる。黒い尾で弾き飛ばし前方のぬうりひょんは指から弾丸めいて発射された呪弾で壁まで吹き飛ばした。 「ぐぼっ……」 「遅いです、いくら素晴らしい能力でも圧倒的な基本性能の前では戦力の差は埋められないんですよ」 「この……!」 連続分身からの斬撃、咲夜はそれらすべてにカウンターを入れる。 「ほら、分かりました?」 「クソが!対応しやがる!!仕方ない、こんなものに頼りたくはなかったがコイツは想像以上の化け物だ、負けるよりはいい」 ぬうりひょんは千丈隼磨に持たされたカプセルの酒を口に放り込む。 「さて……何か口にしたようですが」 「ふおおおおおおおお……体が熱い……力が漲る!!」 ぬうりひょんは大きく息を吐く。千丈隼磨の酒により魔力は増大され全身を駆け巡る。 「酒気……ああ、そういう事ですか。酒呑童子の……それならば」 ぬうりひょんが動くと同時に風のように突進する咲夜。 「うおおおお!!」 腕が10本に増えフォトンブレードを振るぬうりひょん。咲夜はその隙間を縫って拳と蹴りと尻尾の打撃を打ち込んでいく。 「受けて、見なさい、私の呪を、ほら!!」 「ぐはっ」 打撃の衝撃でコンクリートの壁に激突するぬうりひょん。打撃の痕から黒いエネルギーが噴き出し強化スーツの装甲が弾け飛ぶ。 「ぐあ……体から力が……抜けていく」 「貴方の魔力の流れを変え外に噴出するようにしました。穴の開いた水風船のようにしぼんでいきますよ」 「ぐうううおおおおお……この俺が……こんな……」 壁から体を起こしフォトンブレードを拾うぬうりひょん。 「まだ動けるとは、でももう終わりです、さようなら。退魔専門家の私に挑んでくる時点で殆ど負けていましたよ。来るなら、最新鋭の神名製コンバットマシン数機かカテゴリー4以上の異能者を複数用意すべきでしたね(もしくは白魔団……)」 「……梨花、使えそうな部品だけ確保しておきなさい」 「承知致しました咲夜さま」 神名L咲夜は干からびたぬうりひょんの体からフォトンブレードを手に取る。クローゼットに隠れていた式神アンドロイドの梨花はアーモンド形の目を青く輝かせぬうりひょんのスーツを取り外しにかかる。 「咲夜さま、葛野忍様からメッセージが届いています」 ドアの隙間から入り込んだ人型の紙切れが立ち上がって歩き出す。 『やぁ、咲夜。無事のようで何よりだ』 「白々しいですよ。あの妖が来た時から見てたのでしょう?」 『ははは……小生はこれでも気にかけているのですよ』 「で、何の用です?レディの部屋に突然来るなと前にも言ったはずですが」 『長門顕彰がやられました』 「……やっぱりね」 『あまり驚かないのですね?彼は最強と謳われる大天狗なのですよ?』 「一々そんな事言わなくても分かってますよ、自身が最強だと驕り慢心し油断し招いた結果でしょうね。長門顕彰をやったのは黒谷月を名乗る吸血鬼でしょう?」 『そこまで知っているのなら話は早い。黒谷月は最大の障害となりえます、もし妖怪連合と組んだりすれば……分かりますね?』 「探し出して始末すればいいのでしょう?やりますよ。こちらも気になっているいる事があるのですが」 咲夜は梨花から水を受け取り飲み干しソファに掛けてタブレットを手に取る。 「式神、ドローン、屍人が不自然な動きをするエリアがありましてね。陰陽師団を動かして調査してくれませんかね?」 『貴女が調査すればいいのでは?小生に並ぶ天才陰陽師でしょう?』 「違うわ、今の私は道摩法師。それに私は他にやることがあります、センジョーの事でね」 『ふむ……長門顕彰が斃されてしまった今、地上の事は貴女に任せるしかない。いいでしょう、陰陽師団を動かし調査しましょう』 「後四日足らずで決まる、それまでにやるべきことはやっておかないと面倒ですから」 『そうですね……ではまた』 人型の紙切れから葛野忍の気配が消える。 咲夜の持つタブレットには純白の左腕が表示されていた。 *** センジョーに到着した二郎と吹雪と吉良。蓮也からのメッセージで無事だと解りため息をついた。 「兄貴たちは無事だよ良かった……」 「ええ」 「1時間後、車に戻ってきてください」 吉良はそう言って駐車場に車を走らせる。 「あ、メッセージだ。明珠香は明日、日本を出るんだって、だから今日が最後の訓練だよ」 「そう……恭一君は残念だったわね。まだ体調が戻ってないから明珠香さんと訓練できなくて……」 「無理はして欲しくない、今は万全にして欲しい。何かあった時動けなきゃ恭一もくやしいだろうしさ」 「そうね」 センジョーのHKFの筐体の前に明珠香は立っていた。 「よっお二人さん。じゃあ最後の特訓やりますかー!」 合流してから1時間、みっちりとHKFをやりこむ三人。フードコートに移動してドリンクでのどを潤す。 「それだけ動ければ後は出たとこ勝負じゃない?完全に基礎は見に付いたし。実戦経験は足りないけどこればかりは仕方ないね」 「コツは掴んだから行けると思う。ありがとう明珠香」「ありがとう明珠香さん」 「えへへ……でもゴメンね、突然明日出国するなんて……」 「仕方ないよ、チケットとか向こうの都合とかあるんだろうから」 「ギリギリまで居たかったけど仕方ない。永遠の別れって事じゃないし……」 明珠香はドリンクを口に運びながら言った。そして携帯を取り出し二郎と吹雪の肩を寄せてカメラで自撮りをする。 「恭一君と写真とれなかったのは残念だけどまた今度送ってね。さて……名残惜しいけど準備があるから今日はこの辺でバイバイかな。明日の京都駅始発のバスで空港に向かうよ」 「うん、見送りにいくよ」「わたしも」 三人はハグをする。明珠香は照れ笑いをしながらうれし涙を目に浮かべていた。心を許せる親友と呼べる友人が出来た事が嬉しかった。 明珠香と別れる二郎と吹雪。二郎は携帯の通知が入った事に気が付く。HKFのメッセージ、TOYAからであった。 「『バトル数見たぜ、かなりやりこんでるな。会うのが楽しみだ』」 予定ではTOYAが京都に来るのは三日後。碁盤の目町突撃作戦の日だ。二郎は内心TOYAの予定が早まればいいのになと期待していた。 ―翌日 京都駅のバスターミナルに二ノ丸明珠香はバッグを一つだけ持ち立っていた。空港行きのバスが来るまであと30分。京都駅の方を見ると二郎たちの姿が見えた。 「明珠香ー!」 手を振る二郎。後ろに吹雪と恭一が続いている。 「お、恭一君も来てくれたんだね?実際に会うのは始めてだ」 「どうも、明珠香ちゃん。やっぱりライブ電話じゃなくて実際に会ってみたくなったのさ」 「ありがと、思ったより元気そうで何よりだ」 握手をする二人。 「明珠香、渡したいものがあるんだ。三人で用意したんだけど」 二郎は吹雪と恭一の顔を見て頷き、カバンから小さな紙袋を取り出した。 「明珠香さん、開けてみて」 吹雪がそういうと明珠香は紙袋の包装テープを丁寧にはがして開ける。 「わぁ~ブレスレット!!」 樹脂と金属で出来た明珠香のメッシュの紫色に合わせたブレスレット。JFKAと小さく刻印されている。 「JFKA……JIRO、FUBUKI、KYOICHI、ASUKAだね!」 「そう!イニシャルの順番悩んだけど並びが綺麗に見えるようにと三人で決めたんだ」 二郎は嬉しそうに答えた。 明珠香は早速左腕にブレスレットを身に着ける。 「えへへ……ありがとうみんな!大事にする!!」 「気に入ってくれたようで何よりだぜ」 恭一は照れくさそうに鼻先を親指で触りながら言った。 二郎と吹雪も照れくさそうに笑顔を浮かべる。 四人はバスが到着まで他愛もない会話で盛り上がり30分はあっという間に過ぎる。 「それじゃまたね」 「また会おう明珠香」「元気で明珠香さん」「達者でな!明珠香ちゃん!」 明珠香はバスに乗り込む。二郎たちはバスが見えなくなるまで見送った。 三人は京都駅に向かって歩き出す。二郎の右手義手に反応があった。 「ん?」 突如脳内に情報が流れ込んでくる。黒い人影が現れた時と同じように。 「(オーグル・オリジン……)」 明珠香の暗い緑色の義足を思い浮かべる。 「(形状変化する粘菌にも似た古来から生息する生物……)」 会ったことも無い男の顔が頭に浮かんでくる。 「(ヴォルフガング・フォン・ホフ……オーグル研究者……ジーニアスレイジの一人)」 ジーニアスレイジという組織の名前で勝田を思い浮かべた。 「(どうして突然こんな情報が?未来へつながる重要な事なのか?)」 例の黒い人影からの声はない。 「(……これは黒い人影らの持っている情報かな?勝田さんの義手解析がまた進んでいるのかもしれない)」 未来からの二郎と勝田の情報はこの時代の義手完成に近づき解放されていく。 「二郎くん?」「どした二郎?」 「いや、大丈夫。義手がちょっと反応しただけだよ」 「そう」「そっか」 歩きはじめる三人、勝田から携帯にメッセージが入った。 『吹雪ちゃんと恭一君は戻ってきてくれるかな?二郎君は頼んでいる仕事ヨロシク!』 「勝田さんからだ。じゃあ俺は頼まれている事があるから後で」 「そうなのか、じゃあ吹雪ちゃんと先に戻ってるぜ」 「気を付けて」 二郎は二人と別れた後、勝田にTV電話をかける。 「勝田さん、これから例の人を探しに行きます」 『ああ、よろしく頼むよ。調べて欲しいエリアはこちらから送る。話は変わるけど……義手について進展があったよ。君の方でも感じたんじゃないか?』 「あ、そうなんです。それで勝田さんに聞きたいことがあって……」 二郎はヴォルフガング・フォン・ホフやオーグル・オリジンの事を話した。 『ふーむ……ホフが生きていれば僕が気になっていることも聞けたんだがね……彼は少し前にオーグルの研究の事で魔女の弟子と揉めてね。最終的に命を落としたのさ』 「既に亡くなっている人なんですね……」 『こればかりはどうしようもないね。それで僕が気になった事と言うのはね、二郎君と明珠香君の関してなんだ』 「??」 『まずはヴォルフガング・フォン・ホフのオーグルのデータと、明珠香君についてなんだが……実際に明珠香君を調べてないから憶測になるんだけど、彼女の脚部からオーグルによく似た反応が見えた。これは魔女の弟子がホフの開発した人工オーグルの暴走を止めるために探知する物を開発したレンズなんだけど』 勝田はドローンのカメラに赤いレンズを装着したものを見せる。 『面白い事に義手にも反応するんだこれが。それで僕は他にも反応する物がないかドローンを飛ばして調べていたら……明珠香君の脚部に反応があった』 「それって……どういう事なんですか?」 『オーグル、義手、明珠香君の脚部には共通するものがあると考えられる。だからホフにオーグルに関して詳しい事を聞きたかったのさ。明珠香君の脚部と義手が似たような物ならそれを作った人物がいるはず。ホフはそういう知り合いが居たのかもしれない。レンズの開発者の魔女の弟子にもこのことを聞いてみるつもりだけどね』 「そのレンズはどうしたのです?」 『例の魔女の弟子がちょっと前に作成方法をジーニアスレイジのラボに上げててね。興味本位で作っておいたのを思い出したのさ』 「そうでしたか」 『ドローンでレンズを君に届けるからそれを使いながら魔女探しをしてみてくれないかな?魔女の他にも何か見つかるかもしれない』 「わかりました」 二郎は近くのコンビニエンスストアの荷物受け取り機器の前でドローンを待つ。 以前はドローンに襲撃をかけ荷物を奪う輩がいたが今はカメラだけでなくショックガンを装備しすぐさま通報するシステムに変わっている。勝田は宅配便業者の知り合いを伝手にドローンを一台利用していた。 コンビニの屋上に着陸するドローン。荷物受け取り口に投入された荷物は赤外線探知された後、コンビニ横の機器に移動。二郎は受け取りナンバーを機器のタッチパネルに入力しレンズを受け取った。 「これかぁ」 レンズは眼鏡のフレームに取りつけられ、一見赤いサングラスにしか見えない。二郎は早速レンズをかけ義手を見つめる。 「……なるほど、こう見えるのか」 レンズ越しに見る義手はサーモグラフィのようにグラデーションを描いて見えた。周囲の人や機械を見てみるがそのような状態には見えなかった。 二郎は特殊サングラスを額に上げ歩きはじめる。 その様子を物陰から観察している者がいた。スーツ姿で手ぶら、片耳にイヤホンをつけ両手にサイバーグローブ、両足にはサイバーシューズのガタイのいい中年男。 「追跡開始します」 『慎重に。決して気付かれないように』 「了解」 イヤホンの先の声の主は葛野忍。部下の陰陽師に指示を与えていた。 京都の地下都市・碁盤の目町の中心にある塔から葛野忍は地上の様子を部下と人型を通じて観察していた。 葛野忍にとって地上の事はさほど興味はなく、邪魔さえ入らなければ三日後には目的が達成できる。イレギュラーの発生で碁盤の目町を完成封鎖した事も功を奏していた。 「鍵は完成した。後は発動させる為のエネルギーを溜めるのみ……」 葛野忍の目の前には結界、その中央で浮いているのは光り輝く純白の左腕。背後では無数のモニター画像が浮かんでいる。 続く
Nov 28, 2021
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VAMPIREEYE117「魔獣太郎」 メンバーは二郎、蓮也、白峰霄、吹雪、吉良。吉良の運転で今日もセンジョーへと向かう。訓練の感触は良く、四人は翌日からは都メタルのシミュレーターでの訓練に切り替えようかと話していた。恭一は都メタルのジムで少しずつ体を動かし始め、補欠要員としていつでも参加できるように準備をしていた。 センジョーに向かう途中、異常なまでのあおり運転の車に出会った。吉良は素早く携帯から警察(斎藤勇雷)に連絡。あおり運転の車は二郎たちの乗る車に衝突、前に出て強制的に停車させに来た。 「……黙らせてきます」 吉良が車から出る。あおり運転の車からは全身の皮膚ツギハギ縫いでタンクトップの男が出てきた。異常に大きな刀を手にしている。 「クヒヒ!クヒヒヒヒヒヒ!!化け物退治、化け物退治!!【ローズグレイパワー】」 ツギハギ男は口から薄紅灰色の煙を発生させ全身に纏わせる。その姿は使い古されたようにくたびれた薄紅灰色の大具足鎧に変わった。 「フウウウウウウウ~魔獣太郎見参……!!」 大太刀を担ぐように構え、魔獣太郎を名乗る薄紅灰色の男。 「灰色の軍勢か!!」 吉良が構える。車から二郎たち四人飛び出した。 「二郎、吹雪、ここは俺と霄に任せろ。お前たちは吉良さんと先に行け!」 最初に飛び出した蓮也が叫ぶ。 「兄貴!そういう訳には!!」 「心配するな、斎藤さんもじきに来る。お前たちはここで怪我をしてもダメだ、戦うな」 刀を構える蓮也、霄もナイフ状の爪を伸ばす。 「蓮也さんのいう通りだ、二人とも先に行け。吉良、二人を頼む!!」 「承知致しました霄お嬢様」 蓮也と霄が前に出る。ゆっくりと近づいてくる魔獣太郎。 「フン!この魔獣太郎、全力を持って化け物を殲滅するのみ!!その為には手段を選ばない……!!」 飛び上がる魔獣太郎。霄と蓮也に向かってではなく、ハイウェイに停車中のバスに飛び込んだ。そして中に居る乗客に襲い掛かる。 「やめろー!!」 「クヒヒヒヒー!!」 バスの中の乗客は次々と魔獣太郎に首を刎ねられ車内は血の海となっていった。 「力がいる、力だ。クビを食し力を得る。クビ団子だ」 「この野郎おおおおおっ!!」 突進刺突でバスに飛び込む蓮也。魔獣太郎は左腕の手甲で受け流す。 「やああああああっ!!」 蓮也の後方から飛び込んで炎の矢を放つ霄。魔獣太郎を爆風で吹き飛ばしバスから降ろした 「熱いじゃねえか……」 口の中の肉塊を租借しながら睨みつける魔獣太郎。バスの中は阿鼻叫喚の様相を呈していた。 「こんな事をよくも……許さん……!」 バスから飛び降り正眼に構える蓮也。 「クヒヒヒヒヒ……クビ団子は俺が力を得るだけじゃあねえぜ?食ってやった連中を見てみな?」 首の無くなった骸から薄紅灰色の毛むくじゃらの獣の頭部が生えてくる。そして獣化した骸はほかの乗客に襲い掛かる。 「クビ団子、俺は食えば食うほど力を得る。そしてクビ獣は増えれば増えるほど力を得る」 「これ以上好き勝手にさせるものかっ!!」 電撃のような鋭い小手を打ち込む蓮也。魔獣太郎の指を切断したが空中で毛で繋がり瞬時に再生した。 「無駄だ!そんなナマッチョロいただの斬撃はこの魔獣太郎に通じない!!」 「だったら……再生できないようにするまで」 刀身に炎を宿す蓮也。霄はバスに飛び込みクビ獣の足を攻撃して転倒させている。 「皆さん、速く逃げて!」 霄はクビ獣化した敵を遮り叫ぶ。 「パパー!やだよう!!」「お母さーん!!」「プリンスちゃん!!」 「KIKIKIKIKI!!」「GURRRRRRRRR!!」「BAOOOOOOONN!!」 容赦なく襲い掛かって来るクビ獣。霄は爆炎でそれらをバスのフロントガラスごと吹き飛ばした。 「ひどい!」「お母さんをいじめないで!!」「なんてことをするの!!」 霄の後ろの乗客は睨みつけながら叫んだ。 「……っ」 霄の胸に痛みが走る。目の前の惨状、人々の悪意により強烈なストレスが霄を襲う。 「霄!そっちはもういい!!」 蓮也が大きな声を発した。ハッと我に返った霄はバスから飛び降り魔獣太郎の前に立つ。 「魔獣太郎とやらの相手はお前に頼む。俺はクビ獣に対処する」 「蓮也さん……」 「思いっきりやれ、魔獣太郎に一切の慈悲など必要ない」 「わかった……」 「クヒヒヒヒヒヒヒヒ!!来いよ!来いよおお!!」 腰に下げた首を次々に口に運ぶ魔獣太郎。 「お前のクビも食ってヤル……ぜ!!」 突進から横一文字に大太刀を振る魔獣太郎。霄は柔かなブリッジで回避、直後爆炎のサマーソルトキックで魔獣太郎の顎を蹴り上げる。 「グッ……」 「やあああッ!」 仰け反った魔獣太郎、着地と同時に爆炎ダッシュで飛び蹴りを決める霄。炎に包まれた魔獣太郎はアスファルトを転がっていく。 「クヒヒヒーッ……熱い痛え……クビが足らん、足らんぞぅ……!!」 煙を上げながら立ち上がった魔獣太郎は大太刀を振りかぶりブーメランのように投げる。高速回転した大太刀は遊歩道の野次馬、通行人に襲い掛かった。驚き逃げまわる人々を次々と切断し魔獣太郎の手に戻る。 「はぁはぁはぁ……」 霄はここまで無差別に周囲を気にせず殺戮を繰り返す存在を見たことが無かった。あまりの光景に目を見開き呼吸が荒くなっていく。 「まだまだーッ!」 遊歩道の肉塊を拾い上げハイウェイの下に飛び降りる魔獣太郎。公園で遊ぶ子供たちの悲鳴が上がる。 「やめろ!!やめろおおおおっ!!」 背中から炎の羽を出現させ爆炎加速で魔獣太郎に接近する霄。魔獣太郎は振り向きざまに肉塊クビ団子を霄に投げつけた。 「ぁ……」 「クヒヒヒヒヒヒー!!」 思わず受け止めた霄、魔獣太郎はクビ団子ごと大太刀で霄を突き刺した。 「うあっ……」 霄は爆炎で後方に下がって膝をつく。腹部からは血がにじみ出ている。 「脆い脆い!弱者を守りながら戦う者のなんと脆いことよ!!タイマンならこの魔獣太郎と良い勝負をするだろうになぁ……クヒヒヒヒヒヒヒー!」 大太刀を高速回転で公園に投げつける魔獣太郎、悲鳴と血しぶきが上がっていく。 「あ……あああ……」 「ヤルぞ、もっともっとヤルぞこの魔獣太郎は力をつけるためにな!屍人作戦などまどろっこしいのは中止だこれからはクビ獣!!殺して食って強くなって群れを作って敵を殲滅!!獣として自然なあり方だろう?食物連鎖の頂点が変わっただけの事」 肉塊をクビ団子に変えて口に運んでいく。倒れた骸はゆっくりと起き上がり毛むくじゃらのクビ獣となって唸り声をあげる。魔獣太郎が現れてから既に死者は50人を超え全てがクビ獣へと変わっていた。 「圧倒的ッ!この調子で三日後には獣の街になってるだろう!!クヒヒヒヒー!!」 クビ獣に囲まれる霄。刺された腹部を抑えながら立ち上がる。 「霄ー!!」 蓮也が飛び降りてくる。 「蓮也さん……」 蓮也の服は血に染まっていた。ハイウェイのクビ獣を全て斬り伏せて来た。 「しっかりしろ霄……傷は大丈夫か?」 「私はいい、血はもう止まった。それよりも……沢山人が……」 「ああ……許せん、あの敵は絶対に野放しにはできん」 ジリジリと二人を囲むクビ獣。その後ろでは魔獣太郎が肉塊を次々口に運んでいる。 蓮也は刀の切っ先を向け跳躍。クビ獣たちを飛び越え刺突を魔獣太郎に仕掛ける。 受け流された刀を炎で加速、軌跡を残しながら螺旋の動きで魔獣太郎の大太刀を弾き首筋を狙う。皮膚を切り裂き傷口から炎が上がった。 「ヌグウオオオ……」 「(傷口を焼いて広げればば再生はすぐにできないようだな)」 魔獣太郎に体勢を建て直す暇を与えず最小限の動きで斬撃を加え炎上させていく蓮也。 「クヒヒヒ……速いな……そしてこの炎……」 「お前たち灰色の軍勢は何がしたい!こんな虐殺何の意味がある!!」 燃えながら離れる魔獣太郎、蓮也は構えなおす。 「世界は終わるのだ、終わった後の新世界で灰色の軍勢は支配者側となるのだ!これはその為の兵隊作りであり害虫駆除だ!!」 「世界が終わるを止めようとしないのか、終わらせようとする奴らと戦わないのか!」 「クヒヒヒヒヒヒー!俺たちは知った、どうにもならない存在の事を。俺たちも元は妖。しかし妖は人間社会あってこその存在。光が人間なら妖は闇、闇の住人は光の人間社会が無ければ力を失いやがて消える定め。だから鞍替えするのだ、灰色の軍勢として光でも闇でもない灰色としてなぁ!!」 「世界を終わらせなどしない!お前らに好き勝手などさせるものか!!」 「クヒヒー!お前らごときに何ができる!!既に世界各国にグレイマンは配置されている、ウチの大将のようなグレイマンが世界中で猛威を振るっているはずだ」 「なんだと!?」 「世界各国で起きている事件を知らねえか?」 「まさか……合衆国で起きている異形の集団テロ事件も……」 「クヒヒヒヒヒ……そうだ。大将とは違う別のグレイマンの仕掛けたものだろうなぁ」 「英国の謎の霧事件も……」 「ああ、そうだ。あの霧はグレイマンの仕業……グレイマンは世界中で活動している。さぁどうする?あと数日で止められるか??クヒヒヒヒヒー!!」 「それなら今は目の前の惨劇だけでも……止める!!」 「出来るかなぁー!?」 左手でクビ団子を投げつける。それは空中で鋭い牙を持つ獣となり不規則な動きで蓮也に襲い掛かる。 「チッ……」 「ホラホラァ!!」 魔獣太郎はクビを連続投擲しながら体毛を毛針として発射。蓮也は転がって回避。追尾する飛行頭の獣が蓮也の足に食いついた。 「邪魔だ!」 炎で足の飛行頭を弾き飛ばし黒焦げにする蓮也。立ち上がって上段に構え瞬間的に魔力を全開にして刀身に巨大な炎を纏わせる。 「これでも、喰らえ!!」 巨大な炎の塊が振り下ろされ地面を走る灼熱の炎波。飛行首を燃やし尽くし魔獣太郎の回避は間に合わず炎は左腕と左足を飲み込んだ。 「グウウウウウ……」 「チッ今ので仕留められなかったか」 魔力消費が激しい蓮也の大技。外せば大きな隙が生まれ連発など到底不可能、ここぞという時に放つものだが蓮也はこれ以上戦いを長引かせたくなかった。 魔獣太郎の左手と左足は黒焦げとなり今にも崩れ落ちそうになっていた。 「これでは分が悪いようだ、もっと力をつける必要があるか……」 魔獣太郎はクビ団子を地面に投げつけ爆発させる。血煙が立ち込め辺りを覆い尽くす。 「逃がすか……!」 炎を纏った刀を振り血煙を払っていく蓮也、魔獣太郎の姿は既になかった。 クビ獣に囲まれていた霄は爆炎で敵と煙を薙ぎ払い蓮也の元に駆け寄る。 「蓮也さん……無事か」 「ああ、問題ない。だが魔獣太郎とやらを逃がしてしまった……」 「仕方ない……相手が一枚上手だった」 「すぐに警察が来る。斎藤さんに事情を話そう」 「ええ」 パトカーのサイレンが遠くから聞こえてくる。 *** ―京都サクラホテルスイートルーム 神名L咲夜の居るシャワー室から水の音が聞こえる。センジョーの命を受けたぬうりひょんはゆっくりとオートロックのドアを開け部屋に侵入する。フォトンブレードと強化スーツを装備。自らの存在感を消す能力を発動し神名製の強化スーツの光学迷彩により視覚的にも気配も消えている今のぬうりひょんを捕らえることが出来るのは非常に困難である。 「……」 音を立てずにシャワー室の戸を開ける。目の前にカーテンが見える。神名L咲夜はカーテンの向こう側にいる。 「シャッ!!」 鉄板を貫く威力のフォトンブレードの刺突を繰り出すぬうりひょん。カーテン越しに神名L咲夜を貫いた……かに思われたが、カーテンの奥にはアンドロイド。咲夜の世話係である梨花の予備ボディがあった。 「なにっ!?」 次の瞬間強烈な衝撃を頭に受けシャワー室から転がり出るぬうりひょん。後転から逆立ちジャンプで立ち上がる。 「それで隠れたつもり?だとしたら、私を甘く見過ぎですよ」 いつの間にかバスローブ姿の神名L咲夜が目の前に立っていた。 「……お前も俺を甘く見るなよ」 フォトンブレードを振るぬうりひょん。能力を発動させながら刀身の存在感を消す。だが、咲夜は避けようともせず正面からぬうりひょんを意外な角度から撥ね飛ばした。 「なっ……左から……!?」 転倒するぬうりひょんが見たのは咲夜の後ろから生える黒い尾。これで予測できない打撃を加えていた。 「今のはかなり強く打ったのですが流石は神名のパワースーツ、頑丈だ事。でもそれは所詮弱者がハンデを埋めるための物。圧倒的な力の差の前には意味を成さない」 「なんだと?この俺が弱者だと?……最強のこの俺が!?」 「貴方は自称最強の妖、ぬうりひょん。まぁ確かに大した力を持ってますよ、やりようによっては大妖怪も斃せるでしょうね。でも、私には通じません」 「通じんだと?こんなおもちゃ(パワースーツ)は俺の力に何ら関係ないただの道具よ。みせてやる、最強の妖の力をなぁ!!」 ぬうりひょんの姿が四人に増える。 「幻術だと思うか?ただの分身じゃないぞ……」 続く
Nov 21, 2021
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VAMPIREEYE116「魔女探し」 二ノ丸明珠香の足元には呻きながら転げるサイバネ達数人。 「明珠香テメェ……このままで済むと思うなよ……SSS抜けるには死ぬしかないぞ!」 「猫田にビビッて何もできなかったアンタらが今度は集団で武器もってこんなアタシに襲い掛かって来るんだ。ダサイにもほどがあるっしょ」 「黙れ!!」 「止めときな、その子はお前たちが敵う相手じゃないよ」 明珠香と足のオーグルであるレグスも気が付かなかった。木の影からヌっと現れたのは金髪に顔中ピアスだらけ、体は無駄の一切ない細くてしなやかな体つきのパンクファッションの女性だった。 「とととと虎居さんっ!!」 虎居華音留(とらいかおる)酒呑童子配下の虎熊童子である。 「テメーら勝手にルール作ってんじゃないよ。SSSは自由なんだよ抜けるも入るも自由、行き場のない若者のチームって作ったのに今のSSSは半グレに成り下がったなぁ~」 虎居がサイバネ達に疾風を思わせる動きで接近、爪でサイバネ接合部分を破壊して回る。サイバネ達は反応すらできない。 「うあああ!」「ひいいいい!」 「猫田に任せたのが間違いだったわ。お前ら次SSS名乗ったら始末するからな?」 「すすすんませんっ!」 サイバネ部分を火花散らせながら去っていく男達。 「あんた、ウチの所に来ない?SSSって意味じゃなくてウチの店さ」 虎居は名刺を明珠香に見せる。 「バーのオーナーなんですね……SSSとはどんな関係で?チラッと聞こえてましたけど」 「昔、サイバネの友達とつくったサークルなんだ。最初はボロいガレージに集まって住んでただけのチーム。センジョーに所属する事になってしてウチはSSS離れて他の奴に任せたんだけどそれがダメだったね」 「は、はぁ……」 「良かったらいつでもウチの店に来てよ。一応昼間は普通のライブ喫茶として営業してるから未成年でも大丈夫」 「なんでアタシにそこまで?」 「さっき言ったSSS創設時の友人にあんたが似てるから何となくね。それだけさ」 「そうですか。あの、アタシ用事があるんでそろそろ……」 「引き留めて悪かったね、じゃあまた会えることを期待してるよ」 虎居と別れた明珠香は走ってセンジョーを目指す。 「(明珠香、あのピアスの女つえーぞ)」 レグスがテレパシーを送る。 「うん、解る。猫田はヤバイって感じだったけどあの虎居って人は怖いって感じ」 「(ひっかかるのはSSSってクソ集団を散々放置してたくせに今更粛清とか。何を考えてるんだか……)」 「何でかな?事情があってもう邪魔になったとか??」 「(それはそれで酷い話だぜ……)」 *** 「社長、やはりそうでした。SSSには既に陰陽師団と灰色の軍勢が仕込んだ『呪』の薬物が蔓延してます。兵隊として使い物になりません」 虎居華音留は耳に装着した携帯デバイスで会話する。 『回収はできたか?』 「はい、少量ですが」 『よし、こちらで預かろう。お前はそのまま薬物関係の調査を続けろ』 「わかりました」 酒呑童子・仙丈隼磨は虎居華音留との通信を斬り椅子に腰を掛ける。 「陰陽師団を扇動してた烏天狗・飯田迦楼羅は拘束したんだな茨木?」 「はい」 タブレットを片手にメガネを上げる茨木童子・真柴樹里。 「ほぼ廃人状態ですが会話は何とか。社長の『酒』を使うまでも無いかと」 「知っていることは全て口を割らせろ。それと映像で見た長門顕彰と戦闘してた女だが」 「黒谷月ですね」 「ああ……そいつの映像を見たがどうみても白峰華月にしか見えんのよな。何らかの方法で復活したかあるいは双子が存在したか」 「白峰華月……」 「敵に回せば厄介この上ない存在だが味方に付ければこれ程心強い奴もいない。奴らが何の目的で動いてるのか知る必要がある。星熊にこの前接触した二人の子供と大男と話すように伝えろ」 「承知致しました」 「熊の調査によると……陰陽師団、白峰関係者が京都に結界の準備をしている。MAPを表示するぞ」 千丈隼磨はペンライト型のプロジェクターから壁に映像を映し出す。そこには京都市を覆うように赤い五芒星と反対の青い逆五芒星が描かれている。 「赤が陰陽師団、青が白峰関係者のものだ」 「お互いまだ発動させてないようですが」 「そしてお互い結界を崩そうとはしていない。陰陽師団側は飯田から聞き出す、白峰側は……黒谷ジークベルトに聞くのが手っ取り早いが」 「黒谷ジークベルトとの接触を試みましょう」 「後はグレイビーストの行方だが……」 「京都サクラホテルに今は居るようです」 「ヴァルキリーが世話になった事だしな、今度はこちらから仕掛けてやろうじゃないか」 「誰を向かわせますか?」 「ぬうりひょんを送れ。神名の最新装備と俺の酒を与えてな」 「ではそのように」 *** 二郎と吹雪は明珠香と合流した。 「ふ~ん……なるほど、この子が二郎の彼女か」 「そ、そういう関係じゃないよ」 「え、ええ……」 「へぇーそうなんだ~……まぁ野暮なことはこれ以上聞かないよ、HKFやろ!」 「うん」「はい」 HKFプレイを開始して明珠香は驚いた。二郎が驚くほど上達していた。 「うっそ!何でそんなに上手くなってんの??」 「上手い人の動きとか自分の出来る動きを考えて実際に動いてイメトレしてたんだ」 「イメトレでそんなに~?」 実戦を重ね更に強烈にイメージしたトレーニングは義手の力と合わさり、これまでの別世界過去の戦闘経験、そして無意識の内に夢の中でもトレーニングをプラスし、二郎は父親の紫蓮にも匹敵するほどの経験を得ていた。HKFの操作は苦手だったが既に上級プレイヤーの域に達していた。 「今ならTOYAともいい勝負できるかも。次は吹雪ちゃんね」 「よろしくお願いします」 続く吹雪。明珠香の攻撃に合わせ全て弾きとカウンターを入れる。 「どんな反応~!?HKFの動きはぎこちないけど反応速度凄すぎ……」 「明珠香さんこそ、はじめて数日なのに上級者に引けを取らない動き驚かされます」 「あはは~(レグスの協力があるからちょっとインチキなんだけどねー……)」 「恭一も昨日やっと動けるようになったから明日から参加するかも」 二郎は嬉しそうに言った。 「おお、スポーツマンの恭一君ね!彼はセンスいいからすぐ上手くなるよ」 二郎たちがHKFの練習をしている頃、蓮也と霄は地下闘技場のVIP観客席に居た。 「こんな場所が京都にあったなんて……」 「ここの闘技場のバトルは見る稽古になる。しっかりと目に焼き付けてイメージトレーニングをするんだ」 「そう……」 霄と蓮也は闘技場の戦士たちのバトルを見ながら自分はどう動くかイメージをする。 「気に入ったようだな!まさか会員登録してくれるなんて思わなかったぜ」 星熊童子が声をかけた。 「そっちのお嬢ちゃんも特別招待客として入れてやったのは聞きたいことがあるからなんだが……」 「ああ、そのくらいの事想定してた。話せるギリギリまで話そう」 「蓮也さん!」 霄は思わず立ち上がる。 「いいんだ霄、彼は俺を信用してくれている。こちらも誠意を見せなければならない」 「話が早くて助かるぜ。単刀直入に聞く、白峰家側は一体何をしようとしているんだ?社長も内容によっちゃあ協力もありえると言ってた」 「……この国のエクレシア本拠地に乗り込もうとしている」 「ほう……あれか、地下都市・碁盤の目町か」 「ああ、それだ。そして侵入作戦の邪魔になっているのが灰色とエクレシアの連中だ」 「そういうことか……えげつない結界と防壁に覆われた碁盤の目町に……カチコミか。それは近いうちにできそうなのか?」 「侵入の為の準備は進んでいる、後は時間との勝負なんだ。灰色の奴らが言うには後五日で世界に影響する何かが起きる、それまでに碁盤の目町を制圧し備えたい。今言えるのはここまでだ」 「いや、十分だ。これだけ知れれば社長なら何か考えてくれる。連合側としても白峰側と協力したい所なんだ。京都を守りたいという気持ちは連合も同じだからな」 「星熊童子、この事は俺も同志たちに話さなくてはならないが大丈夫か?」 「ああ、問題ない。黒谷ジークベルト、斎藤勇雷、黒谷月によろしくな!」 *** ―翌日。グレイマン予言の日まで後四日。 都メタルの研究室で勝田と水元は眉間に皺をよせていた。 「隔壁は何とかなりそうだけど結界の解除に間に合わない……計算だと1日足りない」 「コイツは参ったね。僕と君の知り合いの魔術師や呪術師20人を以てしても間に合わないとはねぇ……」 「これ以上人数を増やしても速度を上げなければ意味がないから……貴方の知り合いのスゴイ魔女は手を貸してくれないの?」 「困ったことに連絡がとれないんだ。メッセージは送っておいたから見てるはずさ!」 「じゃあなんで来てくれないの?お節介好きで最高の魔法使いなんでしょ?」 「その通りなんだけど、あの魔女はむやみやたらに世間と関わらないんだ。彼女にしか解決できないと判断したら、あるいは彼女の心を動かせばやってくれる」 「そもそもメッセージ見てないのでは?」 「見てるはずさ、京都にも来てるはず。気になった事は調べたくなる性格だから」 「じれったい……こちらから探してすぐにかかってもらいたいんですけど」 「そう簡単に見つからない、世界中の魔術に関わる者が彼女を探してる。敵意を持つ者、すり寄ろうとする者、利用しようとする者、その他大勢がね」 「京都にいるというのならこちらの魔術師や呪術師20人でローラー作戦で探し出せばどうかしら?」 「君はあの魔女をナメ過ぎだよ。そんな事をしてもたまたま見つけた者の記憶を消されて終わりさ。彼女に会うには……運命力が必要かな。あの魔女は関わりあう運命にあるものにしか会えないものなのさ」 「運命力って……そんなあいまいな」 「言い方はアレなんだけど、魔女にとって良い結果を出せそうな者しか会えない。魔女も水晶玉とやらで常に未来を探っているんだからね」 「そんなのどうやって……この都メタルのメンバーに会えそうな者いるかな?」 水元はタブレットを操作してメンバーのデータを眺める。 「あの魔女を警戒させない尚且つ信用してくれそうなのは……」 「う~ん?」 「木城二郎君しかいない気がする(彼が動いたことで様々な事が動いた。運命力を持つ少年だよ)」 勝田は二郎と義手の事を思い出しながら呟いた。 「二郎君はセキュリティ突破の訓練中じゃない。出来るの?」 「僕たち華月派が別の案件で準備している術式の中に魔女がいるはずがない。かと言って街から離れすぎてもいないだろうからかなり範囲を絞れるよ。二郎君は訓練の後でも三日あれば全部回れるはずさ」 「もし三日もかけて見つからなかったら?最後の結界突破できないですよ!?」 「最終手段は思考並列接続法かな……ニューロンが焼ききれる可能性がかなり高いけど……そうなった場合は水元、君に全て託す。僕はまだまだやり残したことがあるからね」 思考並列接続法はジーニアスレイジのサーバーにアップされていたもの。 「勝田……わかった、約束します。だから何としても三日で魔女を見つけましょう、後は少しでも最終結界解除を間に合わせる努力をします」 勝田は信じていた。魔女・立花冥珂が最後には必ず来てくれると。未曽有の危機が訪れようとする時に彼女が動かないわけないと。 勝田は二郎を呼び出し立花冥珂の捜索を依頼した。 「タチバナメイカさんって人をさがせばいいのですね?それが碁盤の目町の隔壁攻略に繋がると?雪名さんを吹雪さん達のところに連れ出せるという訳ですね」 「まぁ、そうだね。白峰雪名ちゃんを解放して葛野忍を排除、碁盤の目町を制圧する、とう流れだね」 「雪名様待っててくださいこの水元が何としても解放します!勝田、二郎君!碁盤の目町に入ってからは私にお任せを!メンバーの中で一番あそこに詳しいですから!」 水元は体を反らせデバイスメガネを指で上げながら言った。 「雪名ちゃん今は大人しくしてるけど怒ったらかづたんでも手を焼くからねぇ。葛野忍は上手い事雪名ちゃんのご機嫌取ってるんだなぁ……その辺どうだったの水元?」 勝田は片眼鏡ゴーグルを上げてタブレットを操作しながら言った。 「口が上手いんですよあの男は。一度雪名様が外に出るといって隔壁をドンドン壁ドンパンチして大騒ぎになった事があるんですけど上手い事説得して収めましたね。私としては雪名様に隔壁の一枚でもぶち抜いて欲しかったですけど」 嬉しそうに語る水元。 「何で雪名さんはそんな大暴れを?」 「夫の蔵人さまをイギリスに飛ばしてその後、源藤高雅が霄ちゃんを襲ったとか聞いたからですよ。葛野忍が碁盤の目町をシャットダウンしたのは雪名様に外の状況を知らせたく無いのもあるんでしょうね」 「そうでしたか」 「正直、葛野忍は詰んでるよ。長門顕彰は斃され、外からはかづたん、内からは雪名ちゃんだからね」 勝田は半笑いで言った。 「普通に考えればそうなんだけど……葛野忍の雪名様に対する余裕が何か引っかかるのよねー『貴女が本気で暴れても何とかできますが?』的な態度が……」 水元は忌々し気に呟いた。 「それが四日後に起きる何かに関係してるんだろうね。全てひっくり返せると考えてる、後四日碁盤の目町を攻略されなければ勝てると考えてるんだ」 「俺は……近藤さんを襲った神名L咲夜ことグレイビーストの動きが気になります。あの人を何とかしない限り灰色の軍勢は止まらない気がするんです」 二郎は神名L咲夜と話した時の事を思い出していた、あの濁った目は忘れられない。「二郎君が神名L咲夜と会って以降向こうの動きが見られないよね。神名L咲夜の事調べてみたんだけど……どうやら彼女は葛野忍の弟子だったみたいだね。今は離れて道摩法師を名乗ってるとか」 「神名L咲夜は結界の事も連合の事も我々の事も全て把握して待ちに徹しているのでは?最強の陰陽師の弟子でグレイビーストであるなら考えられるわ」 「静観しているのかなぁ。立花冥珂のように手を打ちながらじっくりと見極めるタイプか?これまでの事からそんな風じゃないと思うけど」 「うーん……」 「まぁー僕たちは出来る事をやるしかないね」 「そうね」 続く
Nov 14, 2021
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VAMPIREEYE115「炎のエージェント」 ―華月は集まった全員に梅小路公園でのことを話す。ざわつく一同。 「前の隠れ家に奴は封印した。黒焦げの頭部と胴体だけの状態でな。心配するな、近いうちに完全に始末する」 「これでエクレシアの戦力は半減と考えて良いのですか?」 水元来海が言った。 「ああ、大天狗長門組は壊滅状態。碁盤の目町攻略に集中できるだろう」 「華月さん、俺言わなければならない事が」 二郎が手を上げる。 「ほう、申せ」 「実は……」 二郎は神名L咲夜と遭遇した事、グレイマンの事、目的など知ったことを話した。 「でかしたぞ二郎」 二郎の話を聞き更にざわつく一同。 「先代、先ほどの話で気になった点があるのですが」 霄が立ち上がる。吹雪と霞は疲労が激しいため参加せずに部屋で就寝している。 「灰色の三獣は……どうなったのでしょうか」 「む、そういえば亡骸を確認していなかったな。黒谷、斎藤どうであった?」 「華月様と長門顕彰の戦闘が終わった時には既に姿はありませんでした」 「俺も退場した所は見ていません」 「一人動ける奴が残っておったな、回収したのだろう……だがあのダメージすぐには動けまい」 「ええ、少なくとも1日は」 黒谷が答えた。 「二郎君が言っていたモスグレイパワーの亀姫の存在。グレイビーストはあと何人部下を持ってるのかわかりません。特に二郎君と勝田さんは気を付けるべきです」 霄は通る声で言った。 「それは我も考えていた。碁盤の目町攻略の要である二郎、勝田に大事があってはならん。勝田はここにいる限り我が付いている。勝田、外出する時は木戸か黒谷を連れていけ。二郎は蓮也と吹雪、霄の四人で行動しろ。運転は須原、もしくは吉良がするように」 「イエス!かづたん!イエス!!」 立ち上がって直立、上を向いて敬礼する勝田。 「はい!」 力強く応える霄。 「変わったな霄、白峰の記憶の楼は良い影響をもたらしたようだな」 「はい、もう迷いはありません」 深夜の作戦会議は1時間ほどで終了。各々の部屋に戻っていく。 「二郎待て、義手を我に見せて見ろ」 華月は神名L咲夜が興味を示した二郎の義手が気になり手を触れた。 「……」 「華月さん?」 「確かに妙なものだなそれは」 「大丈夫でしたか?昨日からちょっと制御しにくくて勝手にエネルギー吸収とか……」 「問題ない。不思議と我はそれに触れると落ち着く。二郎、義手の事で我に話す事はないか?」 「俺自身もこの義手の事よく分かってなくて……もう少しで報告できるようになります」 「そうか、勝田も同じような事を言ってたな。報告を待ってるいるぞ」 二郎は少しでも分かった事を話そうとしたが、勝田からきちんとした報告書を書くまで待ってほしいと言われていた。 *** ―京都タワー近くのホテル。スイートルーム。 ガウン姿で立っている神名L咲夜、従者の梨花。その正面に干からびた皀、全身打撲で破壊された橡、片腕を失った青鈍が膝をついていた。 「がっかりしましたよお前達には。伝説の神獣、猿、犬、雉になぞらえて力を与えてやったと言うのに。あれですか?桃太郎さんを用意しなかった私がいけなかったと?」 「そういう訳では……予想外の敵と戦闘になり先の戦闘の傷も残っていて……」 唯一話が出来る青鈍が震えながら言った。 「あーあーあー……そういう言い訳は良いんですよ。いくらでもやりようはあったでしょう?長門顕彰に従ったのは仕方ないとして馬鹿みたいにタイマン勝負受けてボロ負けとか、お前たち何が目的か忘れてるのですか?」 「いえ、ですがこの街の妖は異常に強くて……特にあの長門顕彰と戦ってた女は……」 「ふむふむ……それでどうしました?見届けもせず逃げ帰ってきたと。長門顕彰から連絡がないって事は負けたって事でしょうね」 「……大将、あの女は自分たちにはどうしようもない強さでしたよ」 「違うんですよ。その他大勢もいたのですからそいつらに呪をかけるなりなんなり出来たはず。何一つ成果を上げずにこのざまで戻ってきているのが、問題なんです。この私に全部やれと?プチプチ1匹づつ潰してる間、お前たちは遊んで待っていればいいと?」 「ち、違います」 「世界が変わった後、私の下僕として、灰色の軍勢を任せるつもりでいたのですが、こんなに弱いと任せられないじゃないですか。他のグレイマンとの競争に負けるじゃないですか。言ってて益々怒りが込み上がってきますよ」 ダークグレイの煙が咲夜から立ち昇る。 「ひ、ひいいい……」 「おまえたち、もう伸びしろないんじゃないですか?……でも三人合わせれば可能性出てきますかね?」 手をかざす咲夜。皀、橡、青鈍の体が宙に浮く。 「た、大将何を……」 「皀も橡も壊れて使い物にならない、青鈍、お前は呪の装備を失くして役立たず。だから三人合身させます。三体の妖、三種のグレイパワーを合わせれば、この私グレイビーストの下僕にふさわしい獣になれる可能性があるかもしれません」 咲夜の口から薄紅灰色の煙が出てくる。そしてそれは宙に浮いた三人を包み込む。 「うあああああああ……た、大将……」 骨が折れ肉が裂ける音が響く。やがて青鈍の叫び声は聞こえなくなり、薄紅灰色の煙は青鈍に吸収されていく。 「ローズグレイパワー……桃太郎じゃなくて……魔獣太郎とでも名乗ればどうです?」 肉塊は徐々に人型に変わり薄紅灰色の煙を纏いながらゆっくりと立ち上がる。 「ゴッフォ~……大将……ありがとうございます……皀、橡の力に加え新たなローズグレイパワーまで……この魔獣太郎、命を賭けて今度こそ遂行いたします」 現れたのは一本角を生やし般若めいた顔立ち、盛り上がった強靭な肉体の獣。 「いいですねぇ、そしたら武器も渡しておきましょうか。私が昔使用していた大太刀です」 巻物を広げると大太刀が飛び出してくる。2m以上の長さ、20㎏を超えるもの。 「私が折れずの呪(しゅ)をかけた祢々切丸です。とてもよく切れて頑丈な一振りです」 「頂戴致します」 大太刀・祢々切丸を手に取る魔獣太郎。体毛が変化し大具足へと変わる。 「良いですね、期待していますよ魔獣太郎」 *** ―翌日 二郎、蓮也、霄、吹雪の四人でセンジョーへ向かう。運転は須原。 「吹雪さん、本当に元気になったんだね」 「ええ、ご先祖様に感謝しなきゃ」 吹雪の顔色は良く目にも輝きが見える。 「霄、少し変わったな」 「そ、そうかな……どこが変わったかな蓮也さん」 「うまく言えないが……少し大人びたかな」 「そうなんだ、そう見えるんだ……ありがと」 数十分後、センジョーに到着。須原に車で待機してもらい、車を降りて蓮也は総合施設ではなく非常階段へと向かった。霄は慌てて付いていく。 「(……兄貴は地下闘技場にいくつもりか。でも霄さん大丈夫かな)」 「二郎くん、どうしたの?蓮也さんと姉さんがどうかした?」 「えっと……詳しくは言えないんだけど、特別な施設があってそこに兄貴と霄さん行くんじゃないかなーと……」 「??わたし達は行かなくていいのかしら?」 「うーん……明珠香さんと待ち合わせもしてるしHKFの筐体前で」 「そうね……」 「どうしたの吹雪さん?」 少し暗い表情になった吹雪。 「二郎くん、昨日の先代の話を聞いてどう思った?わたしは……正直怖かった」 「……わかるよ」 「あれで丸くなったとか黒谷ジークベルトは言っていた。当時、やりすぎたという話、そういう事だったのかと思ったわ」 「華月さんを止めることが出来たのは吹雪さんのお祖父さんだけだったらしいし、そのお祖父さんが亡くなってからは……」 「今よりずっと酷い時代だったと聞くし、先代がいなければ平安時代よりももっと怖い歴史上最大最悪の暗黒時代が訪れてた可能性もあるってお母さんから聞いたことあるわ」 「ヤバイのが一杯いた時は華月さんを頼り利用してた連中が平和になった途端裏切って……白峰家まで巻き込んで華月さんを滅しようとした。俺なんかが言うのもおかしいけど華月さんは平和になったらなったで無茶しないでちゃんとしそうだけど。九尾を追い詰めた後罠になんかかけて滅しようとしないでそのまま任せていれば……」 「陰陽師・葛野忍と大天狗・長門顕彰は次は自分らの番じゃないかと恐れたのよ。プライドも恐れも捨て、先代と話合えば手を取ってグレイマンらと戦う未来もあったかもしれないのに」 「それも考えたのかも。更にその先グレイマンが居なくなった後の事を考えて怖くなったとかありえる」 「そうね、生物は理解できないものを怖がるもの。先代の事を理解せずに只々恐れていてはダメ……ダメなんだけどわたしもちょっと怖い」 「大丈夫だよ吹雪さん、華月さんは真っすぐな人だよ。嘘や裏切り不誠実は絶対に許さないけど」 「ええ、姉さんのように純粋で真っすぐな人。いえ、先代に似たのね姉さんは」 「吹雪さんがお姉さんの霄さんと上手くやっていけるのならきっと華月さんとも大丈夫」 「わたしは……お母さんに似てるって言われ続けたの。お母さんと先代はあまり合わなかったようだけど……」 「ちゃんと話合えば分かり合えると俺は思うよ。本音で理解しあおうとお互いが考えれば」 二郎は真っすぐな目で吹雪を見つめて言い放った。 「……二郎くんがそう言うとそんな気がしてきた」 数秒間目を合わせてハッと気が付き照れてお互い目を反らす。 「あ、明珠香さんが待ってるかもしれないし行こう」 「そ、そうね」 「さぁ行こう……あれ?」 二郎は施設の中から異様な気配を感じた。人間でも妖でも無い気配。 「なんだろう……?灰色の軍勢かな……まさか」 「二郎くん?」 二郎は警戒しながらセンジョーの施設へと入る。相変わらず神名製のパワードスーツ警備員が制圧銃を構えて巡回している。 「あの人から……妙な気配を感じる」 二郎の視線の先にはハンバーガーをかじりながらHKFの画面を見つめる赤髪の少年。 「あの男の子?確かに何か感じるけど……」 「や、どーも」 二人を見つけるや否や手を上げて話しかけてくる少年。 「おっと警戒しなくても大丈夫。不安ならこの距離で話そう、俺はイグネイシャス・ファイマン。世界的な組織のエージェントかもしれない男さ」 イグネイシャスと名乗った少年は指先に炎を灯し警備員に見つかる前にすぐに消す。 「イグネイシャス……さん?」 「歳はそんなに俺と変わらないか。まぁなんでもいいや、なんでもいいから変わったことが起きてたら教えてくれる?」 おちゃらけた少年の言動とは裏腹に一切の隙を見せない。二郎と吹雪はすぐにただ者じゃないと身構える。 「お?その反応、俺の事少しは理解できてるのかな?じゃあちょっとだけチラッと手帳見せちゃおうかな?」 イグネイシャスはTalent's secret military institutions(TMI)と書かれた手帳を見せる。 「こんなの普通は頭のおかしい奴と思うかもしれないよね?一般的には知られてない組織だし変に目立っても良くないから見せびらかしたりしないんだけど。ああ、話が脱線した俺が聞きたいのはブラックヴァリーの事。突然何を言ってんのか分かんないか、黒装束の忍者のような集団知らない?」 「忍者……!?」 二郎は吹雪の顔を見ると左右に振って否定のゼスチャーを繰り出した。 「そっか知らないか……それじゃあ『神名』と関わってる?」 二郎はドキッとした。昨日神名L咲夜と会った事を思い出していた。 「ここの施設の整備員の装備は神名製だ。一般には出回らないし高額で買えない」 「えっと……神名って名乗る人にはあった事ありますが」 「おお、それはいつ?どこで?」 イグネイシャスの目が輝いた。 「昨日です……京都駅近くの建設現場で」 「ふ~ん……で、そこには神名と名乗る人物だけ?」 「いえ、長身のなぎなたを持った女性もいました亀姫とか呼ばれてた気がします」 「神名のアジトかなぁ……ちょっと調べてみるかな、ありがとう。君、名前は?」 「木城二郎です」 イグネイシャスはハンバーガーの包み紙に12桁の数字を焼き印で刻み込む。 「これ、俺の仕事用番号。何かあったら連絡くれるかな?携帯に登録してくれ」 二郎は焼き印の番号を携帯写真で撮る。 「黒装束とか忍者っぽい奴がいたら気を付けるんだ。消音銃や黒塗りの刃物なんか持ってたら特に怪しい。そういうの見つけたらすぐに連絡して欲しい、戦おうなんて考えずにね」 イグネイシャスは二郎たちの間を驚くほど滑らかにすり抜けて店を出ていく。 「……」 「ただ者じゃない……魔力は感じなかったけど妙な気配はあったわ。あの身のこなし相当な訓練を積んでいる素人じゃない。エージェントというのも嘘じゃなさそうよ」 吹雪はイグネイシャスを目で追って言った。一瞬イグネイシャスが振りむき手を振った。 「魔力でも無いのに火を使ってた、サイバネかな」 「どうかしら、妙な感じが何かわからないけどそれが関係してるのかも」 二郎と吹雪はイグネイシャスが見えなくなると店の奥に進む。まだ二ノ丸明珠香は来ていなかった。 その時メッセージが入った。明珠香からであった。 『ゴメン、ちょっとだけ遅れる。例のサイバネ者らのゴタゴタ関係』 「『今どこにいるの?』」 『蛸薬師通の公園だけど来なくても大丈夫、もう終わるから』 続く
Nov 7, 2021
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