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VAMPIREEYE111「梅小路公園会合2」 「おやおや、自慢の装甲でしたか。それは残念。そうそう、その外套早くとった方がいいですよ?ドンドン捕食していきますから」 「貴様……!!」 「呪の装備も魔女の粘液生物(ウィッチ・ウーズ)には効果なしですかねぇ?」 「貴様ぁーっ!!」 剣を手に黒谷へ突進する青鈍。黒谷は地面から突起物を出現させ青鈍を突き上げる。黒谷は蝙蝠型の羽を展開して空中へ追いかける。 「貴方には同士が随分と世話になったようで……」 青鈍の周囲360度に無数の剣を出現させて一斉に突き刺す。 「ヌギャアアアアッ!!」 「フム……ウィザードとして私もまだまだ未熟か。魔法剣でこの程度の威力しか出せないとは。一流のウィザード、ウィッチなら今頃ミンチにしている事でしょう」 その様子を眺めている長門顕彰。 「あの男、黒谷の者にして魔法使いとは。忍の術は捨てたというのか」 「勝負ありましたかね?おやっさん」 「いや、まだだ」 墜落する青鈍。全身から血が噴き出している。 「ス、スカイグレイパワー全開だぁ!!」 青灰色の煙を上げ一回り大きな鳥人へと変身する青鈍。左腕から離れる黒谷のウィッチ・ウーズの外套。青鈍の左腕はミイラのように干からび呪の盾は消失していた。 「この俺がこんな……うらなりの魔術師程度に!!」 「ははぁ今まで三流の術師としか戦ってこなかったんですね?あなたの大将は何も指導してくれなかったようだ」 「黙れぇ!!」 「月光剣」 青鈍が振るよりも速く黒谷は手刀から迸る青白い魔法剣で迎撃。青鈍の剣を弾き、右腕切断の深手を負わせる。 「ギイイヤアアアアアアアッ!!」 「とどめです」 月光剣を上段に構える。 「勝負ありっ!!」 黒谷が振り下ろす前に長門顕彰の突風と咆哮めいた声が終了の合図となった。 「クソがクソがクソがあああああ……」 大流血しながら叫ぶ青鈍。黒谷は一瞥してふわりとバックジャンプ、自陣へと戻る。 「勝てました(三人の中では青鈍は私と相性抜群でしたからね)」 「お見事です黒谷さん、指一本触れさせないとは」 斎藤は一礼して黒谷の健闘をたたえた。 「よくやった。呪の装備を無効化、回収。完全勝利だったな」 「恐縮です。相性が良かったのもあります」 ―その様子を見ていた連合勢。 「強いな……あの黒谷という男」 「あんな術師連合には中々いねえな」 「黒谷ジークベルトか。戦う事になったら厄介な奴だ」 ―エクレシア勢。 「青鈍の奴瀕死だぞ……再起不能もありえるぞ」 「俺か皀が相手すればあんな事にはならなかったはずだ」 「ち、奴は剣と速度と装甲で圧倒し呪の装備で嵌めるスタイルだったからな。あっちのサイバネ野郎の八瀬と言ったか?ああいうのが得意な相手だった」 長門顕彰が手を上げるとどこからともなく現れた烏天狗が青鈍を担架に乗せ飛び去る。 「安心せい!生きてるのならどうにかしてやる。エクレシアの治療技術は世界最高峰。言っておくが今回の闘争に限り連合も白峰家側も最善はつくしてやる平等にな」 長門顕彰は取り出したひょうたんから酒を口に運ぶ。 「次鋒、連合から出せい!」 「それじゃ、俺だろう?この八瀬童子仕事をしてくるぜ」 ジャージの上着を脱ぐ八瀬童子。サイバネの両腕が剥き出しとなる。 「俺が行こう……」 エクレシア勢からは橡が立ち上がる。既に魔猿姿でブーメラン型の刃物を2本背負っている。 「武器はアリって事でいいんだよな?こっちは大層なもんじゃないけどよ」 八瀬童子がポケットから取り出したのは地下闘技場の通貨でありセンジョーの施設で使えるメダルであった。 「オイオイオイオイ!まさかそれをおはじきするんじゃねぇだろうな?」 橡は嘲笑しながら言った。 「ああ、おはじきだぜ」 「勘違いサイバネ野郎が!!原型を留め位ほどぶっ壊してやるぜ!!」 構える橡、メダルを手に持つ八瀬童子。 「始めい!!」 長門顕彰の声と同時に橡はブーメランを構えて間合いを詰める。金属を打ち付ける音が鳴り橡の額にメダルが突き刺さる。 「グッ!?」 橡はバックステップで八瀬童子から離れる。 「痛ぇだろ俺のおはじきはよ?コンクリートブロック程度なら粉々にするぜ」 「フン、皮膚を貫いただけだどうという事はない」 抜いたメダルを投げ捨てる。 「だろうな。師匠の指弾なら内部破壊の衝撃が入ってた。妹弟子のは俺の数倍はある」 「何だ?劣等感の自分語りか??」 「ああそうだ。師匠に認められずに腐って辞め、下らないプライドが邪魔して妹弟子を手伝う事も出来ず挙句の果てに流行りの新型腫瘍に侵され両手足を失う始末。武道しかやってこなかった俺はロクに仕事も出来ねぇ根気もねぇ。だけどな、俺は受けた恩は返す主義なんだ。師匠は返す前に死んじまったが、拾ってくれたセンジョーの社長に恩は返す。その為にテメェはぶちのめす」 一瞬で32連射のメダル指弾を打つ八瀬童子。 「クッ……」 両腕をクロスして受ける橡。メダルが突き刺さっていく。 「こんなのが何だってんだ!来いよ!!(近くに来い!爪で呪をかけてやる!!)」 「ネタはバレてんだよ糞猿。連合の情報収集力舐めんじゃねぇぞ」 「ホギャアアアアアッ!!」 ブーメランを投げつける橡。超低空のダッキングで回避する八瀬童子。一瞬で打撃の間合いに入る。 「このっ!」「フン!!」 橡が殴りつけるよりも速く股間を蹴り上げる。 「ガハッ……」 舌を出しながら苦悶の表情を浮かべる橡。八瀬童子は飛び上がり肘と膝で脳天と顎を挟み込むように打撃を打つ。橡の舌は自らの牙で切断される事になった。 「オゲゲゲェ……」 顔面を抑えてたたらを踏む橡。八瀬童子はメダル指弾を橡の指全てに命中させる。黒い瘴気を発しながら橡の爪は粉砕された。 「テ、テメェ……」 「へっ思ったより脆い爪だな!これでもう呪の爪とやらは使えんな。ここまで来る途中に社長から送られてきた資料に目を通してたんでね。お前たち灰色三人の対策は考えてきた訳だ」 「爪が無くてもなぁ!……その辺の妖やサイバネを蹂躙するだけの力はあるんだぜ!」 ブーメランを手に八瀬童子に襲い掛かる橡。八瀬童子は円を描くバックステップで回避。 「パワーとタフさと子分の猿でゴリ押して呪の爪で弱らせるのがお前の戦闘スタイルだろう?今のお前は子分もいなければ爪も使えない。その程度の速さとタフさを超える者などこの街にはゴロゴロいる、通じないぜ!」 「黙れサイバネ!!この俺は土蜘蛛、牛鬼を圧倒した!!」 「クックック……寝ぼけたことを。あの二人が今の生活を捨てる気で本性あらわにしていたのならお前はここに居ないとっくに肉片だ。それと……奇襲でヴァルキリーの連中に呪をばら撒いた烏天狗ども、もう逃げられねえぞ」 橡の攻撃を回避しながら飯田を睨みつける八瀬童子。 「ケジメはとらせる、エクレシアだろうが大天狗長門組だろうが関係ねぇ。社長の大事なヴァルキリーだからな」 「フ……空手が出来るだけのサイバネが大天狗長門組を相手にデカい口を叩きよる。今日生きて帰れるかもわからんと言うのに」 飯田は鏡のように磨かれた剣を手にしながら言った。 「死ぬことなんざ怖くねぇ。外道の相手は外道がふさわしい、輝く生き方を選んだ連中や甘ちゃん善人の妹弟子のような奴はお前らの相手なんかしては駄目なんだ」 「八瀬!」 星熊童子が叫ぶ。 「……おしゃべりが過ぎるぞ。さっさと決めろ」 ブーメランを振り回す橡の指を狙って貫手、爪先蹴りを入れる八瀬童子。指は折れ曲がりブーメランを握っていられなくなる。 「ホギャアアッ!」 反撃のハイキックを放つ橡、八瀬童子しゃがんで躱しながら股間に突き上げ拳を叩き込んだ。 「ああ、金的が通じないタイプの妖か」 「グゥゥゥゥ……」 橡の手数は減り徐々に八瀬童子の一方的なラッシュになっていく。 「圧倒的ですね八瀬童子」 「だといいんだが……」 茨木童子とは裏腹に不安げに呟く星熊童子。 「八瀬は全力3分しか戦えない。サイバネの両手足がアイツの動きについていけない、オーバーヒートを起こす」 「なんですって……」 両手指を潰された橡は蹴りで対抗するも全て八瀬童子には回避されカウンターの打撃を浴び続けている。命中箇所の体毛、皮膚は破れ血液が飛び散っていく。 「予想以上のタフさだな」 「まだまだ……俺は牛鬼の打撃も耐えきった、スタミナ切れで動けなくなった時がお前の最後だ!!」 「それならこれでどうだ」 今までで一番速い打撃を放つ八瀬童子。何の変哲もない中段正拳突きは橡の体をくの字に曲げその場に倒れさせた。 「オゲェェェェェ……」 「フゥ~……あと何発サイバネが持つかな」 「舐め……てんじゃあねええええ!!」 立ち上がった橡の顔面に正拳突きを撃つ八瀬童子。鼻血と牙が飛び散り仰向けに倒れる。八瀬童子の両手足のサイバネから煙が上がり始める。 「こんな突きじゃあ師匠にも認められない、妹弟子の突きにも及ばない……」 倒れている橡の頭の前に立ち拳を構える。 「セイ!」 「ゲボァ……」 下段突きを打ち込む八瀬童子。橡の顔面は陥没、そのまま八瀬童子のサイバネはショートを起こして機能を停止。 「ここまでか……もう動けねぇ……」 倒れる八瀬童子。 「そこまでっ!」 長門顕彰が突風を起こす。 「この勝負引き分けとするっ!!」 「なんだとッ!?」 星熊童子が叫ぶ。終始押していた八瀬童子を目の前にして引き分けの判定に納得がいかない。 「両者同時に戦闘不能となった。この勝負に判定など無い、途中経過の有利不利など関係ないのだ」 「貴様……」 「納得できなければ相手になってやろうか?最初にそう言ったはずだが?」 長門顕彰の言葉で場に緊張が走る一瞬即発の空気。 「この場は仕方が無いだろう。この場ではな」 黒谷月(華月)が通る声で緊張を破った。 「フン、いいよるわ小娘が」 「……ち、あの娘の言う通りか。この場は貴様にしたがってやろう」 あっさりと引き下がる星熊童子に違和感を感じる茨木童子。 「星熊、あなたらしくも無いあんな娘の一言で落ち着いて」 「ああ?……そうか、そうだよな。でもな、あの小娘は軽く扱っていい存在じゃねえぞ。茨木、しっかりと観察してみろ」 「……なるほど。薄々感じてはいましたよ、あれは並の妖じゃないと」 「しっかり警戒しとけよ。長門顕彰と同じくらいによー」 「ええ、気を引き締めます」 ―エクレシア陣営。 「フン……あの小娘、あの空気の中覇気のこもった声を発しおったわ」 「おやっさん、あの娘……素性がまるで知れません。烏天狗達に先ほどから調べさせてるのですが何も掴めません」 「エクレシアのデータベースにも存在しないぽっと出の妖か……面白い」 「面白い?面白いだとオッサン!あの小娘俺が食いちぎってやるぜ!!」 皀が吠える。 「口を慎め駄犬!おやっさんに舐めた口きいてんじゃねえぞ!!」 直剣を構える飯田迦楼羅。 「飯田、こいつがデカイ口叩くのなら見てやろうじゃないか。おい皀、下手打ちすりゃあどうなるか解ってんだろうな?ええ?」 圧をかける長門顕彰。 「凄んでも無駄だぞ、俺は大将にのみ従う」 「そうだろうよ。だがその大将はこんな大事な時に姿も見せやしない、ちったぁ口の聞き方に気を付けた方がいいんじゃねえか?ええオイ!」 「正直アンタが俺たちの大将より上とは思ってねぇ」 「ふ……」 「アンタだとコラ!誰に言ってんだ駄犬がぁ!!」 飯田が剣を皀に付きつける。 「飯田、今の皀の発言は聞かなかったことにする。結果が全てだ、あの黒谷月に勝てれば許してやれ。いいな?」 「はい!おやっさんがそう言うなら」 動けなくなった八瀬童子を星熊童子が回収、瀕死の橡は烏天狗が回収した。 「さて、次は白峰側の……黒谷月。出てきてもらおうか、皀がやりたいそうだ」 飯田は黒谷月に言い放つ。それを聞いて黒谷月の目は燃えるように赤く輝き始める。 「いいだろう。我も見ているだけではつまらんと思っていたところだ」 赤黒い魔力が全身から迸る。 続く
Sep 19, 2021
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VAMPIREEYE110「梅小路公園会合」 二郎は明珠香と夕方まで過ごした後別れてセンジョーを出る。 「兄貴はまだしばらくセンジョーの地下に残る……か」 二郎は兄・蓮也のことを話し自分は交通機関で都メタルのシェルターに戻る事にした。 「そういや……奥寺達入院してるんだっけか。様子見に行ってくるかな」 バスで病院に向かう二郎。降りたバス停の目の前に病院はあった。 「しまった……何号室か聞いて無かった。教えてくれるかな病院の人……」 「あれ?木城君じゃない」 声をかけたのは奥寺舞子、その横には山根妃羅莉、周防美古都、壁山颯真。 「あ、奥寺……さん」 「具合でも悪いの?」 舞子はパックのベリージュースを吸いながら言った。 「いや、別に大丈夫なんだけど。奥寺さん達が入院してるって聞いたから様子を見に……」 「ふーん……まぁ万全とはいえないけどそれなりに元気かな。妃羅莉も美古都も壁山くんもここに入院してるけど明後日には退院だし。燿子と萌絵はもうちょっとかかるかも」 「そうなんだ……」 「そっちはどうなの?大分ややこしい事になってるみたいだけど?」 「俺も全部は理解しきれてないよ……出来る事をやるだけで精一杯な感じでさ」 「ふーん……で、何やってんの?」 「白峰吹雪さんの家を助けようと思って……頑張ってるんだ」 「白峰家に関わるんだ~その口ぶりだとどっぷり足を踏み入れてる感じかな?」 「そう……かもしれない」 「そっか、どういう家か知ってそれで助けようとするなんて変人通り越してるわ」 「それでも……助けたいんだ」 「あーらら。ま、そういう木城君みたいな人達を引き付けるのも白峰家の宿命なのかも。私はわかんないけど昔っから白峰家はそういう人や妖をそばに置いてたって聞くし。エクレシアの飼い犬になるよりかはまだマシかもね」 「……」 「エクレシアは本当に邪魔。白峰家時代のほうが断然マシって妖は殆どが言ってる人間的にはエクレシアの方が都合が良いんでしょうけどね」 「連合は……白峰家と敵対してないんだよね?」 「部分的には……じゃない?旧白峰家派の妖は連合にとって扱いにくいし現白峰派の妖はエクレシア所属らしいしね」 「もし……エクレシアが撤退してまた白峰家が復活したら連合どうするのかな?」 「さぁ?私の考える事じゃないし……でも社長は考えてるはず。どう転んでもいいように……そろそろ病室に戻らなきゃ。見に来る?差し入れのアイス位なら分けてあげるけど」 「うん……」 二郎と舞子のやり取りを睨みつけるように見ていた美古都。妃羅莉と壁山は携帯でスポーツニュースをチェックしていた。 病院の大部屋に燿子、萌絵、舞子、妃羅莉、美古都。となりの部屋に壁山のベッドがあった。 「燿子と萌絵は今日の朝から一般病棟。傷はもう塞がってるから呪の毒素を出来るだけ抜く治療中かな。私と妃羅莉は昨日敵に受けたダメージがちょっと残ってる。壁山君も」 「思ったより皆元気そうでなにより……」 燿子は浴衣姿で体を起こして携帯でロックミュージックを聞き、萌絵はタンクトップ姿で胡坐をかいて電子雑誌を眺めている。 「おやおや、木城二郎君やないですの」 「あ、やぁだ~こんな恰好……舞子ちゃん男の子来るなら言ってよね~」 「あ、ども……近くに来たのでお見舞いに……」 燿子は二郎の右手に視線を移す。 「右手、なんかしはったん?」 「え?……いや別に何も。何かおかしいですかね?」 「気付いてはらへんの?この病院に漂ってる色んなもん吸い込んでように見えるんです」 「ええ~……!?」 華月にエネルギーを渡す為の癖かと二郎は考える。 「(今は集める気とか無いのに勝手に吸い取ってるのか?どうして?)」 「何やってんのよ木城君」 舞子は二郎の右腕を掴んだ。その瞬間舞子は眩暈がして膝をつく。 「だ、大丈夫!?ごめん……」 「……ちょっと!自分の右手くらい制御しなさいって……!軽く眩暈しただけなんだけど気をつけてよね」 「吸い込み……止まってますねぇ」 燿子が言った。 「え?……なんでですかね……」 二郎はセンジョーの地下で乗った特殊HKFの疲労がすっかり消えている事に気が付いた。 「(あれ?なんか急にめちゃくちゃ耳が聞こえるし視力も良くなったし……匂いも……空気の流れも何となく感じれる) 指を広げたり伸ばしたりしていると指の先から糸が飛び出て来た。 「うわっ……糸?」 「え?」舞子が二郎の右手を見つめる。 「これ蜘蛛糸じゃない!なんで木城君が?しかもこの射出パターン私の糸と似てるし」 その二人の間に割って入ってきたのは飲み物を買って戻ってきた美古都。 「舞子さんに何かしたんですね!!眩暈起こしてるように見えましたけど!!」 右腕を掴む美古都。体の力が抜けるような感覚に襲われる。 「……っ!なんですかその右手は!危険です!!」 腰に手を回し折り畳み式の十字槍を瞬時に組み上げて構える美古都。 「ごめん、わざとじゃないんだ」 「美古都、それしまって」舞子は美古都を下がらせる。「はい……」 「本当にその右手、手袋か何かした方がいいと思う。前からそんなだったの?」 「そんな事なかったんだけど……手袋考えてみるよ」 *** ―深夜・梅小路公園 大天狗・長門顕彰に烏天狗・飯田迦楼羅。 茨木童子・真柴樹里に星熊童子・星崎佳亮。 吸血鬼・黒谷ジークベルトに吸血鬼・斎藤勇雷。 三組が対峙していた。 「今のこの状況下で直に会いたいとは、驚きましたよ」 真柴樹里が言った。 「直に会わなければ信用できんと言う奴だ。社長の酒呑は来なかったようだな茨木」 長門顕彰はキセルを口にくわえて言った。 「社長はお忙しい方なので」 「ふん、用心深い男だ酒吞童子め……で、そっちの金髪が旧白峰派の代表……黒谷ジークベルトか。黒谷……黒谷は薄汚い忍の一族だな。それと警察官の吸血の鬼」 「お目にかかれて光栄です長門顕彰殿、して会うだけが目的ですか?」 張り付けたような笑顔で答える黒谷。 「とぼけおって……茨木は星熊を。お前も腕が立ちそうな警察官を連れてきてる。何かあると察してるんだろ?まあいい、あんまりじらすのも好きじゃない」 右手を上げる長門顕彰。公園の後ろの林から橡、皀、青鈍の三人が出てくる。 「何っ!」「あいつ等は!!」 「!!」「奴らは……!!」 「今、京都で話題の灰色の軍勢の連中だ。三人はエクレシアのエージェントとなった。その挨拶だ」 「……長門顕彰、何を言ってるか解っているのですか?」 真柴樹里は睨みつける 「あまりにも大胆……そのような事、ここの皆が納得するとでも?」 黒谷は呆れた口調で問う。 「お前たちの反応はもっとも、そうなることは想定済み。だからこの場で一度闘争で決めようじゃないか。エクレシアVS連合&吸血鬼の団体戦、どうだ?ルールは簡単。4対4で先に3人戦闘不能になるか、この公園を覆った結界の外に出れば終了」 「勢いあまって殺してしまっても文句はでないんだろうねぇ?長門のダンナ?」 星熊童子・星崎が拳を握って指を鳴らしながら言った。 「一向にかまわん。審判は私がする。納得できなければ私が相手になるがそれで文句はないかな?」 「いいぜそれで、灰色野郎どもはぶちのめしてやりたかったんだ」 「星熊!なにを勝手に!!」 「こんなもん引けねえだろうが!」 「ああ、付け加えておくと……ここで拒否するのもありだ。残った方と同じ人数で対決する。その場合エクレシアはどうするか想像できるだろうがね?」 長門顕彰は笑みを浮かべながら一同を眺める。 「一ついいですかな?」 黒谷が手を上げる。 「そこの三人がエクレシアに入った事が全く理解できません。三人にはまとめ役のボスが居ると情報を掴んでいます。なぜ長門顕彰貴方が引き連れているのです?」 「簡単な事。こいつらのボスがエクレシアに所属している者だからだ。三人はエクレシアに入れば支援を受けられる、私が自由に動かせる。こいつらのボスよりも私の方が立場が上だからな。私は面倒が嫌いなんだ、シンプルにいきたい」 「では、この者達の上司を引き渡してもらう事は?京都混乱の元凶ですので」 「黒谷よ、そういった交渉は勝負で勝ってから言うのだな。茨木側も何か要求したいことがあれば考えておけ、酒呑がいなくてもそのくらいの判断はできるだろう?」 「……(長門顕彰食えない男。この場に来た時点で奴のペースだった)」 茨木童子・真柴樹里は唇を噛みしめる。 「黒谷、お前が担ぎ上げようとしているのは白峰家三人の小娘か?それとも碁盤の目町に軟禁されている雪名の奪還か?なぜ今になって急に動き出した、エクレシアに捻り潰されると思わなかったのか?」 「それこそ、話は勝負に勝ってからでしょう?長門顕彰殿」 「フン、それもそうだな。どうだ茨木、何か言いたいことはあるか?」 「4対4とのことですが引き分けになった場合は?」 「残った者同士の一対一の勝負となる」 「リザーバーを呼ぶことは可能ですか?」 「いいとも、私の目の前で不審な動きが無いかチェックさせてもらうがな」 茨木童子は星熊童子の携帯を手に取る。 「八瀬を呼べ星熊」 「なるほど……それでアンタがリザーバー枠ってか茨木」 頷く茨木。それを見た黒谷は斎藤に話しかける。 「こちらも一人呼びましょう斎藤さん」 「……誰がよろしいか?」 「黒谷月(華月)さまで」 「馬鹿な!正気か貴方は!!」 斎藤は思わず声を張った。 「正気ですとも。こんな集会、呼ばなかったと知ればどうなることか。それに灰色の首領を引きずり出すチャンスですよ」 「そうか……うむ……近藤さんの敵をとるチャンスと思えば」 「話はまとまったか?では誰を呼ぶ?」 キセルから吸った煙を吐く長門顕彰。 「八瀬童子」「黒谷月」 「ん~?二人とも知らんなあ。隠し玉って奴かな?良いだろう呼べ」 ―数十分後 ジャージ姿の八瀬童子。黒いドレスに黒髪眼帯の黒谷月(華月)が到着する。 「外で戦うのは久しぶりだな……で、どいつとヤレばいい?星熊さんよ」 「まぁ待て、ふさわしい相手とぶつけてやる」 反対側に黒谷月(華月) 「面白い事になってるではないか。で、我が四人抜きすればいいのか?」 「いえ、月ちゃん。貴女はもしもの時の為のお方。それまでは観戦を」 「そうです月様。貴女の手を煩わす事などできませんここで見ていてください」 「なんだつまらん。あの偉そうにしている男は出てこんのか?」 長門顕彰を指をさす月。 「それは……場合にもよりましょう。その時こそ……」 「成程な、ここはしばらく大人しく観戦しててやろう」 月は長門顕彰に目を合わせる。 「あの小娘……私の圧で引かんとはな。何者か知らんが黒谷の特別な存在らしい」 長門顕彰は足を組んで座る月を見て言った。 「おやっさん、あの小娘もしや白峰分家の……」 飯田迦楼羅が耳打ちをする。 「ありえるな。分家に引き取られた白峰家の小娘を育て外法を使い妖へと戻したか。黒谷自身も元は人間。あの小娘を次代の白峰家当主に据えるつもりかもしれんな」 「どうします……あの小娘が白峰家当主に匹敵する力を持っていたのなら……」 「心配するな、その為に私がいるんだろうが。お前は白峰家を恐れすぎなんだよ飯田」 「はい……」 飯田の脳裏には先日戦った霞の姿がよぎる。まだまだ伸びしろのある霞に脅威を感じていた。 「そのくらいの方がいいのかもしれん飯田、お前は一か八かの博打を打たない男。あの黒谷月なる小娘は軽く見て良い雑魚ではないようだ」 長門顕彰側の先鋒は青鈍砂羽。既に変身している。 「先鋒は私が行きましょう。奴のデータは谷川さんと茉白、冬華から得ていますので」 黒谷が手を上げ手前に出る。 「連合の皆さん、私が先鋒でよろしいかな?」 「構いません」「おう!」「どうぞ」 「では、青鈍砂羽対黒谷ジークベルト……始め!!」 長門顕彰は羽団扇を振って合図。 青鈍は翼を広げ突進。青く輝く小盾を前に黒谷に迫る。対する黒谷は外套を広げ闘牛のような動きで青鈍の突進を回避。盾に外套を纏わせてすれ違いざまに光の剣を肩に突き刺した。 「ちいっ!」 絡みついた外套に手を掛けると触手が伸び青鈍の喉鼻口に纏わりつく。 「ングググググググ……!!」 「ハッハッハッハ……!」 光の剣を連続で投げつける黒谷。転がって回避するも青鈍の腕と大腿には避けきれなかった数本の剣が突き刺さっている。青鈍はどうにか喉鼻口から触手を引きちぎる事に成功。 「クソ……この俺の装甲を易々と貫く剣だと……!?」 続く
Sep 11, 2021
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