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VAMPIREEYE114「解析」 「アハハハハ!口では何とでも言えますよ。彼らは既にアクションをおこしてますよ?数十年前から流行り出した新型悪性腫瘍。あれのきっかけは一人の魔術師が起こした虹色の光事件です。虹色の光とは彼らの力です。それによって生まれた異能者やサイバネら、人類は殺し合いを加速させて人口を急激に減らし続けてます。新型悪性腫瘍の治療を受けられない、サイバネに慣れない異能者になりそこなった者は衰弱死。それとここ十年で流行り病が増え平均寿命が20歳も下がってる事知ってますかね?」 「そんな……」 「彼らの事その力少しは理解できました?彼らの使徒であるグレイマンに従う事が救いだと理解できました?」 「く……」 二郎は混乱し目の前が真っ暗になる感覚に陥る。 「と言っても人類側も黙って見てる訳じゃないんですよね。白魔団などというグレイマンに対抗できる組織があるんです。実際これまでの歴史でグレイマンは白魔団に何度か敗北しています。どうします?白魔団が助けに来てくれる事を祈って待ちますか?」 神名L咲夜は二郎の義手を見つめる。 「その右手の義手。本当に不思議なものです。手に入れて調べたい、もしくは君がどうなっていくのか知りたい」 「はぁはぁ……咲夜さま……」 壁際に立っていた長身の女性は息を荒くする。 「ん~?どうしたのです亀姫?やけに衰弱してますが?」 咲夜は札を投げ亀姫と呼んだ女性に張り付ける。 「おやおやおや?」 張り付けた札は二郎の右腕に吸い寄せられ電撃が迸る。 「うぐっ……」 「木城二郎君の右腕の仕業ですか……無意識かな?それとも……」 電撃を浴びて転がってる二郎。瞬時に全身を黒い靄が包み込み外骨格と変形。赤く目を輝かせた鎧武者の姿へと変身した。 「へぇ……面白いですね。亀姫、相手をしなさい」 「わ、わかりました咲夜さま『モスグレイパワー』」 緑灰色の煙に包まれる長身の亀姫。全身を苔のような体毛に覆われた人型のニホンアナグマに変身する。 「木城二郎君、君が生きてたらまた会いましょう。亀姫、遠慮はいりません」 和室に戻る咲夜。煙のように咲夜と和室は姿を消す。残されたのは漆黒鎧姿の二郎とモスグレイパワー・アナグマ形体の亀姫。 「亀姫さん俺は君と戦う理由がない」 「わ、私はありますっ!咲夜さまの命令ですからっ!!」 長刀(なぎなた)を構える亀姫。 「ヤァ!」 長刀を振る亀姫。飛ぶ斬撃が二郎のバックル刀に命中した。 「重い斬撃だ……」 「ヤァヤァヤァ!!」 斬撃は重さをさらに増していく。 「(何だ……何かが纏わりつくように……重くなっていく)」 「ヤァーーーー!!」 体を回転させての大振り横薙ぎの一撃。二郎はしゃがんで飛ぶ斬撃を回避。壁に激突した斬撃は緑灰色の蒸気を発生して消える。 「逃がしませんよ……このビルに閉じ込めますっ!」 斬撃を連続で放つ亀姫。二郎は重くなった剣を下に向けて体を左右に捻って回避。 「(考えるんだ、灰色の軍勢はそれぞれ何か特殊能力を持っていた)」 バックル剣を離し斬撃をかいくぐって亀姫にショルダータックルを決める二郎。 「ぎゃあっ!」 コンクリートの壁に激突する亀姫。二郎はその隙にバックル剣を拾い窓ガラスのまだない窓から飛び降りる。 「ああっ!待ってー!!」 「ぐふっ」 義手のパワーを使って軽減したとはいえ9階からの落下はかなりの衝撃を受けた。 亀姫は追ってこない。 「剣が軽くなっている……距離限定の能力かな?」 二郎は変身を解除しながらバックルを戻し建設現場から出ていく。亀姫はあたふたと足踏みしながらその様子を眺めていた。 「ああ……逃がしちゃった……咲夜さまに叱られる……」 急いでバス停に向かう二郎。丁度バスが来ていた。 「痛てて……(9階から飛び降りたのはやっぱり無茶だったかな。瞬間的に足腰を強化すれば良かったかな?)」 二郎は気が付いていなかった。落下の衝撃で全身痛むのではなく、義手の影響で負担をかけていた体に落下の衝撃が響いたのだと。 傷ついた体を義手は修復を開始する。義手で作られた細胞は人間のものとは比べ物にならないほど強靭。二郎の体の五割は既に義手からの細胞に変わっていた。 *** ―梅小路公園会合前 都メタル 都メタルのシェルターにたどり着いた二郎は疲労ですぐにベッドで気絶してしまった。 「何があったのかなぁ……まぁー今は寝かせとくかなぁ」 勝田は頭を掻きながら言った。 時刻は20時を過ぎた頃。他のメンバーは食事をとった後自由に過ごしていた。 「うーん……霄ちゃん吹雪ちゃん霞ちゃんも帰ってくるなり爆睡だし何があったんだか」 勝田は首をかしげる。 「勝田!」 華月が奥の部屋から出てくる。黒いゴシックドレス姿であった。 「あの長門顕彰から接触があったらしい。白峰家宛に手紙が届いた。斎藤が確保してここにある。見に来い」 「はい!かづたん!」 華月の発言を聞いていたメンバーは各々思いをはせる。 ―冬華、茉白、谷川克政。 「茉白、私たちは動くべきかしら?」 「待機がベストだと思われます。ここ、都メタルの防衛を固めるのも大事なことです」 「ここが私たちのお城、守らなくてはならない!」 「そうです冬華。私たちの愛のお城を守りましょう」 「き、君たち……」 ―都メタル社長・木戸剛照、元陰陽師・沖田実満。 「僕はどっちかと言うと防衛戦に向いてる能力だからねぇ~」 「御謙遜を、木戸さんの能力は万能ですよ。私こそ中途半端な事しかできない能力」 「いやいやいやいや……沖田さんは器用です。何でもそつなくこなし華月様のお世話も完ぺきにこなされている。細かい気使いと器用な立ち回り。僕にはとても無理です」 「やり手社長の木戸さんに褒められると照れますな、お互い頑張りましょう」 「はい」 「あちらの冬華さん、茉白さん、谷川さんと打ち合わせをしましょう」 ―京都府警警部・斎藤勇雷、都タクシー社長・佐久間瓢介・平安新聞社主・河上起央。 「近藤さんの敵は俺が必ず取ります!」 「斎藤さん、その時は自分も呼んで下さいよ?近藤さんの敵、取りたいんで」 「斎藤さん、出来る事があるなら言ってください。協力は惜しみませんよ」 「佐久間さん、河上さん、かたじけない……」 *** ―梅小路公園会合前 センジョー社長室 「社長、長門顕彰から接触がありました」 茨木童子・真柴樹里は入念に調べた手紙を持って酒呑童子・仙丈隼磨の前に立つ。 「ハッ!ついに向こうから来やがったか、内容は?」 「今夜0時、梅小路公園にて会合を行う。2名までの参加。とのこと」 「あ~~~……茨木、星熊を連れていけ。会合の様子は動画に取っておけよ。俺は俺で色々やっておくからよ」 「承知致しました」 「ヤバくなったら逃げろよ。長門顕彰なんて奴とまともにぶつかるな。もし奴とやりあおうとする別のが現れたらそいつも敵に回すな」 「心得ました」 「虎熊にも色々探らせてるがよぉー……どうやら来週、再来週がかなりの山場のようだ」 葉巻に火をつける酒呑童子・仙丈隼磨。 「各位に連絡して準備はしておく。未曽有の災害が起きた時どう動くかで人間社会は判断する。センジョーは最適の行動を取る。いいな?」 「虎熊の他に熊にも連絡しておきます。社長、明日の知事との会合は……」 「予定を少し早める。なあに8時30分なら問題ない、あっちの職員にも優秀なセンジョーの者が入り込んでいるからな」 「では8時30分で予定しておきます」 「神名の動きはどうだ?」 仙丈隼磨の発言後、超高速スワイプでタブレットを操作する茨木童子。 「杉田幻赫氏に代わり美濃セレスティア白夜氏がアイスクラーピウス業に就任との事です。株価の変化はありません」 「この時期に交代か……何かあったな?だが美濃セレスティア白夜はアメリカでも実績を積んで将来ノーベル賞を取ると言われている人物。剛腕で知られていた杉田幻赫よりも期待は高いか」 「社長、気になるのはもう一名……アデル・ホワイトと言う人物でして」 「サイエンス誌にも載っていた遺伝子工学の分野で注目されている者だな」 「既にご存じでしたか。このアデル・ホワイト、過去に人間のクローン実験していたとの噂が流れています。シミュレーターを使っての事だと当時は弁明を出しました。彼女はアイスクラーピウス業に関わっている者の一人です」 「……茨木、お前の想像していることはわかるぞ。アイスクラーピウスで既にクローンが作られているのではないか?だろ?」 「はい」 「細胞劣化によるクローンの短命説は随分と昔、2016年12月に有名なサイエンス誌で否定しているにも関わず、今だにクローン短命説は根強い。これは意図的に世間にそう思わせていると考える」 「私も同じ考えです。人間のクローンが作られているとすれば既に要人との入れ替わり、異能者兵士の量産、人口妖にミュータントの誕生と進んでいる可能性もあります。それを隠す為に今更クローン短命説を広めているのでしょう」 「気になるところだな……センジョーは神名と繋がりを持っているとはいえ、アイスクラーピウスに搭乗するのは簡単じゃない。アデル・ホワイトに会うにはどうするか……」 *** ―現在―梅小路公園での会合後 深夜、都メタルのシェルターのベッドで目を覚ます二郎。体のダルさは消えていたが義手の黒い部分は大幅に広がり右腕を完全に漆黒化、肩から胸、首の一部までに達していた。 「起きたか二郎君」 「勝田さん」 「お腹すいてる?大丈夫なら僕の部屋に来て欲しいんだ」 「あ、はい……」 勝田の研究室に移動する二郎。部屋の中央には義手のレプリカが置いてあった。 「説明するためにレプリカを用意したんだ。ちょっとややこしい話になるけどいいかな?」 「はい」 勝田はレプリカの義手を持ってプロジェクターの3D画像を映し出す。 「この義手はVエナジーと名付けられた特殊なエネルギーを発生させるというのは前に話した事あったよね?」 「そうですね」 「素材が不明でどう調べても二郎君、君自身の腕と結果が出てたんだ。訳が分かんなくてねーそれでジーニアスレイジのデータを漁っていたら関係ありそうなのが出てきてね。マーリンのレポートなんだけど……神話・伝説に登場するアイテムの再現てもので」 勝田はひげを蓄えた筋骨隆々の騎士と光り輝く剣の映像を出現させる。 「霊体召喚からの存在証明、具現化、固定。なんだけどまぁここは魔法の分野で僕は詳しくないけどえっと……この画像のアーサー王の剣を再現するためにマーリンは残滓を辿って集め霊体を呼び出し剣の記憶を具現化、それをこの世界で固定させる。固定させるためには霊体の記憶から正確な情報を読み取り魔術で分子レベルの構築が必要……と」 「全然分かりません……」 「うーーーーん……例えばだけど3Dソフトをプログラムからつくってそのソフトで3Dデータを作って分子レベルの3Dプリンターで再現……とかになるのかなぁ」 「物凄く大変そうですね……」 「だねぇ~それでこのレポートが関係ありそうって思ったのは君のデータで義手が作られてると言った点だ。マーリンの魔法を利用して作ったものなら君自身が素材の義手を……未来で完成させて過去に送り込み未来でマーリンの魔法で召喚形成固定。こう考えればあまりにも頑丈過ぎるその義手にも説明がつくんだよね」 勝田はレプリカを触りながら説明する。 「え?え??」 「その義手は未来にあるべきもの送られてきた時代まで経つか、未来で壊れるかしない限り壊れる事はない……はず。あとは同時代に違う時代のものが存在した場合、二つが触れた場合どうなるか。想像だけで僕にはわからない。それと元々の義手の作り方がまだ不明だ。それに過去に干渉する方法なんて……無いわけじゃないけどまだ不可能だ」 「じゃあ勝田さんこの義手の変化は??」 二郎はシャツを脱いで見せる。義手の黒の浸食が広がり肩にまでかかっている。 「スゴイ事になってるね……その現状の仮説を立てるのなら……義手完成に向かって進んでいるからこそ変化している、かな。解析が進む事と二郎君が様々な経験を積むことが関係している気がするね。この義手の作成者は未来の僕と二郎君っぽいんだが……ジーニアスレイジのメンバーの力を借りなければとても出来そうにない」 「俺が未来でこんな高度なものを……?」 「そもそもだ、君が僕に義手を触らせ物凄い情報を入れたからここまで進んだんだ。未来で何かあってそっちの僕らが何か細工したんじゃないか?義手の完成を急がせている」 「……勝田さん、最初に義手を作ったのは俺で、いつか分からない未来から送りつけて何をしようとしてるんでしょうか?」 「さぁねぇ……未来で何か大変なことが起きて過去を変えたいのかな?……いや、でもそれは並行世界の枝が増えるだけで本人がいる世界に変化はないはずなんだけど……」 勝田はフォトンペンタブで空中に図と計算式を書き込んでいく。 「未来の僕たちは義手で過去の枝分かれを観測できているのなら……意味はある……か」 話してる最中に二郎の義手が変化を始める。漆黒部分が更に広がる。 「勝田さんの解析が進んだから?」 「そうなる……よねぇ。二郎君義手じゃない体に変化はあるかい?」 「全身とても軽くて……力が漲る感じですね」 二郎は軽く連続ジャンプをして見せる。 「今日の所はここまでにしておこうか。一応ジーニアスレイジのサーバーにはアップしておくよバックアップの為にね」 空中に現れたページにアクセスして勝田個人ファイルに解析データを保存する。 「これでよしと、僕かジーニアスレイジのメンバーしか見れない」 「はい」 「これさぁ将来君がジーニアスレイジのメンバーになるって事なんだろうなぁ……」 「そうなんですかね……」 「まぁ~いつか解る事だしいいか。あ、そうだ二郎君かづたんが皆を集めて話があるってさっき言ってたよ。あの方、超絶パーフェクトな姿になっててねー」 「丁度俺も華月さんに報告したいことがあったんです」 神名L咲夜の事、亀姫モスグレイパワーの事を思い出していた。 シェルターのメインホールには既にほぼ全員が集まっていた。 「あ……華月さん……何か様子が……」 「来たか。どうだ、完璧な姿を取り戻した我は」 続く
Oct 31, 2021
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VAMPIREEYE113「梅小路会合4」 「話す気になったか?それとも続けるか?長門顕彰」 華月(黒谷月)の会心の拳を受けた長門顕彰のダメージは大きい。顔面左半分は崩壊寸前、足に力は入らず膝をついたままの体勢で木にもたれかかっている。 「この私の顔を……よくも……」 「質問に答えろ」 ゆっくりと近づく華月。 「縮!」「はっ!」 縮地で移動する長門顕彰についていく華月。 「突!」「ふん!」 炎を纏わせた羽団扇剣で刺突を繰り出す長門顕彰、カウンターの赤黒い魔力拳アッパーを顎に打ち込む華月。回転しながら後方に飛んで行く。意識が飛びそうになりながら羽を広げ空中で体勢を整え着地するも足がもつれ尻もちを付く。 「長い間全力で戦っていなかったようだな長門顕彰。最初から全力を出していればもう少し均衡しただろうに」 「ハァハァ……貴様何者だ……白峰家にお前のような者など分家にもいるはずが無い」 「ふふふ……わからんのならそれでいい我は黒谷月を名乗るまで。何を言ってあの雪名を言いくるめて閉じ込めたか知らんがお前たちは白峰家を舐めすぎた」 「おやっさん!!」「よそ見などしてる余裕はないぞ!!」 飯田が叫ぶ。猛烈な斎藤勇雷の北辰雷刀流のラッシュに手も足も出ない。 「お前の風迅剣とやら、発動させる隙など与えん。発動できてもその隙に一閃叩き込んでやるぞ」 「クソが……(コイツ……強い!)」 上空では黒谷ジークベルトが24人目の烏天狗を撃墜していた。 「さて……あと16人。まだ来ますか?」 「あり得ん……我ら精鋭が……」 「ふ……(いくら個々の能力が高くても連携が出来ていませんね。ここまで大人数の戦闘に慣れていない……)」 黒谷ジークベルトの周りに浮遊する黒い無数の光弾。烏天狗の動きに反応し閃光を放つ。 「グァ……」 「動くと反応しますよ?大人しく長門顕彰VS黒谷月の対決を見守りませんか?」 「長門様が……」「馬鹿な……!」「大天狗だぞ?神にも等しい存在だぞ?それを……」 烏天狗たちは気が付いていない。撃墜された烏天狗全員が干からびていることを。黒谷ジークベルトの魔術により全て華月の燃料となっていることを。 「……白峰家をなめるな、か。この私をここまで追い詰めた事は見事だと誉めてやろう。だが、次があると思うなよ?」 ゆっくりと立ち上がる長門顕彰。 「次だと?次があるなど考えているのか?まだお前はこの状況でどうにかなると考えているのか?我は微塵も油断などせぬぞ」 爆発的な魔力ジェット噴射で肉迫する華月。長門顕彰の首を掴み上昇していく。 「ぬぐううううおおおおおお……」 「まだまだ速度を上げるぞ」 音速を突破する。華月の黒谷月の変装が剝がれていく。 「お前は……!?馬鹿な……!!消滅したはずだ……!!!」 「ふふふふ……気が付いたか!」 「白峰……華月……!!」 「さっきは我を誉めてくれたな?今度は我がお前を誉めてやろう……状況にもよるが単騎の強さとしては山ン本五郎左衛門や神野悪五郎よりも上だったぞ」 「ぬかせ!たかが妖と比べるな!!」 「お前を斃した後、久しぶりにあやつ等の顔を拝みに行ってやるのもいいかもな」 さらに加速する華月、成層圏に到達する。 「ここから急降下だ!」 「うおおおおおおおおっ!!」 超高速Uターンを決める華月。赤黒い流星と化す。 「最後の機会だぞ?話す気になったか?」 「ふざ……ける……な……」 華月の力とGにより抵抗もままならない長門顕彰。 「ならば死ねい!!」 地面に激突する寸前に手を放し水平飛行する華月。長門顕彰は赤黒い魔力に包まれ音速の3倍の速度で地面に激突した。 赤黒い爆炎のキノコ雲が上がる。その場にいた全員の動きが止まった。 空中旋回して静かに着地する輝く銀髪に真紅の目、透き通るような白い肌の華月。超高速爆炎流星落下撃を仕掛けながら長門顕彰の生気を思う存分に吸収し更に力を増していた。 「ふふふふふ……感謝するぞ長門顕彰。完全復活だ!いや、それ以上!全盛期を上回る!」 爆炎のキノコ雲を見つめていた全員が今度は圧倒的存在感の華月に目が釘付けになった。 「おお!おおおおお!!素晴らしい!!」「なんと……美しい!」 黒谷と斎藤は思わず声を漏らす。 「黒谷!斎藤!!この場にいる大天狗長門組は一人も逃がすな!全員餌にするぞ!!」 「はい!」「承知!」 華月の声を聞き目を合わせてしまった烏天狗達はその場に硬直する。 「ああああああ……なななななななんだあれは……おやっさんはどうなって……」 飯田迦楼羅だけは辛うじて体を震わせながら動けている。 「長門顕彰はあそこに転がっておるわ」 指をさす華月。爆炎の晴れた場所にはクレーターができ、その中心には手足の欠損した黒焦げの長門顕彰が倒れている。 「うあああああああっ!!おやっさあああああん!!」 「ほう……即死と思ったが虫の息でまだ生きておるわ、良かったな?」 「ななななんだ!!なんなんだお前はっ!!!」 「白峰家の者だと言わなかったか?理解したか、お前たちが敵に回したものの力を」 「白峰家……そんな今更……没落しかけの家が……」 「たかが十数年程度で白峰家も軽く見られたものだ。あの死にぞこないの長門顕彰は貰っていく」 一瞬で接近した華月は飯田の剣を掴み指でへし折った。 「ひぃっ!」 飯田の両腕を掴み関節を逆に折り曲げ生気を限界ギリギリまで吸う華月。 「あががががが……」 白目を向いて膝をつく飯田。 「お前だけ生き残らせよう……残りは……」 戦意を喪失している烏天狗に指先から発した赤黒い閃光で頭を貫いていく華月。 「黒谷、斎藤、こやつらが完全に絶命する前に生気を吸い取っておけ」 「はい」「承知」 二人は手をかざす。烏天狗たちの血液が手の前に集まりそれを飲み干す。 「ふぅ、疲れが飛びますねぇ」「疲労回復しました力が漲ります」 「長門顕彰は隠れ家の方に持っていく」 *** ―華月たちが梅小路公園での戦いに参加する少し前。 二郎が奥寺舞子達の見舞いを終え病院外に出る頃にはすっかり日は落ちていた。携帯電話が鳴った、勝田からであった。 「もしもし」 『やぁ二郎君、そろそろ戻ってきてくれる?義手のデータ解析もいくらか進んでね』 「わかりました、すぐそちらに行きます」 『待ってるよー』 その様子を黒い思念体たちは見つめていた。 『勝田博士の解析が進んだことにより義手に変化が現れたのか』 『どうやら他の並行世界でも義手の変化が起きたようだ』 『世界の終わりまでに義手の解析が終われば……』 『この時代に新たな義手が誕生する。そうすれば破滅へと収束していた未来を変えられる』 『そこから20年……義手を送り込んだ時代に追いついた時どうなるかだな』 『この時代に義手が誕生するという世界が確定すれば、そこからまたいくらでもやり直せるはずだ』 思念体は全員頷いて消えていく。 二郎はバスに乗り都メタルを目指す。 乗り換えの為に京都駅で降りた二郎は妙な視線を送っているワンピース姿の長身女性に気が付いた。 「(誰だろう?それにしても大きいな2mはあるかな)」 「もしそこの少年」 「俺ですか?」 「君です、ちょっとこちらへ。お話があります……」 妙だなと思いながらついていく二郎。京都駅隣の建設中のビルの敷地内に入って行く。 「鍵でゲート開けてたけど入っていいものなのかな……」 「階段を上がっていきます」 ついていく二郎。壁紙も無くコンクリートむき出しの建物。階段を上がるにつれて恐ろしいまでに静かになっていく。 「これは……結界?」 9階の開けたフロアには資材が並べてあり中央には6畳の畳が敷かれまるでドラマのセットのようにそこだけ和室になっていた。 「お連れしました」 長身の女性は立ち止まり和室にいる人物に声をかけた。 「やぁ来たね木城二郎君」 「……??」 座布団から立ち上がり振り向いたのは灰色のスーツを来た細身の女性。整った顔立ちであったが目が濁っている。 「……貴女は?」 「神名L咲夜だよ」 「……」 初めて見るはずの神名L咲夜。二郎は自身の動悸が激しくなるのに動揺する。全身が目の前の存在に警戒しているかのような。 「用事と言うのは大した事じゃ無いんだ。その義手を譲ってくれないかな?お金なら1億ぐらい現金ですぐ用意できるけどどうかな?」 「いきなり言われても困ります」 「そりゃまぁそうですよね。突然現れた者にいきなりくれと言われてもね。じゃあ言い方を変えよう、なにがなんでもその義手が欲しいんです」 「どうしてですか?」 「言えない、でも欲しい。拒否してくれても構わないですよ?力づくでも奪う気だから」 「……一体何者ですか?」 瞬時に戦闘態勢に入る二郎。 「今話題の【灰色の軍勢】の者。私のまたの名は【グレイビースト】」 「!!!??」 「アハハハハハ!驚いたでしょう?でもまぁ少し落ち着いて下さい木城二郎君。話をしましょうよ、いきなり殺して奪う気ならわざわざこんな所に呼んだりしない。という事で、灰色の軍勢に入ってくれませんかね?」 「意味が分からない……」 バックル剣を握りしめる二郎。 「灰色の軍勢とは、グレイマンとは何か?知りたくないかい?知ればこちらに付きたくなるかもしれませんよ?」 「え?」 二郎は神名L咲夜の話に興味を示す。 「ほら、武器を納めて。あそこの客室に座って下さい。そんなに時間はとらせないですよ」 先に座布団に正座する神名L咲夜。 「私はいつも突然でいきなりなんです。この京都に馬鹿な部下を送り込んだのも突然だったしね。まぁそんな話はどうでもいいですか。灰色の軍勢とは何かでしたね」 「ええ……」 「灰色の軍勢とはつまり、グレイマンの率いる軍団て事。ではグレイマンとは何か?簡単に言えば【世界を調和する者】です」 「世界を調和する者……」 「人間達が白とするのなら魔の者達は黒。本来ならば住む世界が違いバランスは保たれていたんですが……文明の発展により魔は人間に染まり始めた。それによりバランスは崩れ始めたんです。するとどうなると思います?息つく先は破滅。白に染まり切ればこの地球は持ちません。人間がどれだけこの地球環境を破壊しているか知っているでしょう?じゃあどうすればいいか?」 「バランスを保つために黒を増やす……とか?」 「それは無理です。一度バランスが崩れれば簡単に元には戻らない、戻るまでにとてもとても長い時間がかかる。逆もそうです、黒に染まっても同じ事。それを正すことが出来るのはグレイマンだけなのです」 「何故グレイマンだけなんですか?」 「白黒の外にいる存在だからですね。グレイマンになるには【グレイマンの意思】に選ばれる必要がある。私は2年前にグレイマンに選ばれました」 神名L咲夜は思い出す。山にこもり修行をしていた。ある夜、流れ星を見た。虹色に輝く変わった流星。それは咲夜の近くに落下した。落ちてきたのは卵型の隕石で虹色に輝いていた。吸い寄せられるように咲夜はそれに手を触れ流れ込む膨大な情報とエネルギー。グレイビーストへと成った。 「グレイマンの意思って宇宙からの……」 「そう。彼らにとってもこの地球は大事なものですから。やがてくる彼らの為にグレイマンは活動をする。白に染まった者を減らす、邪魔な者を排除する。彼らの到着後すぐに活動開始できるようにするなどです。一週間後、彼らはこの街に到着する。そして一週間で世界を灰色に染めるんです」 「灰色に染める?それは一体……どういう……」 「あれ?分からないです?灰色の軍勢になるってことです。群れの一部となる。君は面白いから私、グレイビーストの群れに入れようと思ってまして。他のグレイマンに取られたくないですからね」 「……」 「おや?険しい表情ですね。不満かな?グレイマンの群れになるって事は安心安全で平等に生きられるって事なのに。自由は減るけど普通に生きるよりずっとストレスは少ないはず。私グレイビーストの群れは飼われているペットのように快適になるはずですが?」 「……世界を灰色に染めるってどうするんです」 「文明を徹底的に破壊する。白に染まりすぎた原因はそれですから。それが終わったら君たちは寿命まで生きられます。繁殖はできないけど、仕方ないですね」 「それなら何故、今人々を襲って屍人化なんてしてるんです」 「屍人は後で群れに加えればいいだけです。意味も無く戦いで死ぬよりいいでしょう?」 「……」 二郎は歯を食いしばる。 「言っておきますが、彼らの到着はずっと前から決まっていましたよ。君が生まれる前からね。それが一週間後なのです。止められないですよ?」 「地球の人類は、妖は、そんな宇宙からの訳の分からないものに一方的に負けたりしない」 続く
Oct 17, 2021
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VAMPIREEYE112「梅小路会合3」 「無礼者め!許せぬ、身の程知らずが!!」 斎藤勇雷は特殊合金で出来た竹刀型警棒を握りしめて言った。 「斎藤、お前の相手はあの飯田だ。剣士同士存分にやりあうがいいぞ。我は復活後の機能回復訓練が必要なのだ、あの灰色の軍勢相手に一切の遠慮も慈悲もかけん。お前の主がどのような者かしっかりと見ておけ」 黒谷月(華月)はゆっくりと歩いて中央に立つ。その姿を場にいる全員が見つめていた。 「さあ来い」 「カッコつけやがって!そういう演出をすればするほど負けた時の無様さが際立つ!」 灰色の二足歩行の魔犬姿の皀は山刀を手に前に出る。 「始め!!」 長門が叫ぶ。合図と同時に皀は黒谷月に襲い掛かる。 「阿呆が!」 赤黒い魔力の波動が皀を吹き飛ばす。 「出し惜しみなどせず魔力喰らいを発動するが良い」 「へ……後悔するなよ!!」 皀の能力は間合いに入った者の魔力を喰らい自身の力に変える。術を得意とするものには相性最悪。黒谷月は歩いて間合いを詰めていく。 「死ねええい!!」 山刀を振る皀。黒谷月はそれを片手で掴んで受け止める。 「何っ!?」 「遅い!」 前蹴りを入れる黒谷月。赤黒い魔力は皀の腹部に張り付き渦を巻いて抉っていく。 「グアアアアアア」 「どうだ?ほれ、喰ろうてみよ」 黒谷月は山刀を取り上げ手首を掴む。 「お前はここで終わる。灰色の軍勢は我を怒らせた」 「ガオオオン!!」 間合いに入った者の生気、魔力を食い尽くす能力を全力発動する皀。 「ウメーウメー!!食えば食うほど力が漲る!!こんな手などすぐにねじ切って……」 「どうした?もっと喰らえ。そんな進度では喰いきれんぞ?」 「ウギギギギギッギギギギギー!!」 皀の全身の血管が盛り上がっていく。 「……グギイイイイイイイ!!離せぇえええ!!」 足爪の蹴りを放つ皀。黒谷月は初動を見切り膝関節を蹴り赤黒い渦を発生させる。 「ガアッ……」 「何だ進んでおらぬぞ?もう満腹か?なら今度は我が喰ろうてやる」 見る見るうちに皀の体がしぼんでいく。剛毛の魔犬はくたびれた野良犬の印象へと変わっていく。 「離せ……離せぇえええ!!」 大きく口を開けエネルギー弾を放出。それは黒谷月の目の前で停止、霧散して赤黒いオーラに吸われていった。 「どうした我は全然もの足りんぞ?もっと寄こすがいい」 それまで薄笑いを浮かべながら観戦していた長門顕彰と飯田迦楼羅の表情が変わった。 「あれは……戦いにすらなっていない」 「あの小娘……やはり白峰に通じる吸血の鬼か……勝負あり!!」 勝負ありの声と突風は黒谷月に聞こえていたがエナジードレインを停止させない。 「勝負ありだ!!」 より鋭い突風を放つ長門顕彰。赤黒いオーラはそれを受け止める。 「まだだ長門顕彰、我は止める気など無い。止められるものなら止めてみるがいい」 「フン」 一瞬で接近する長門顕彰。瞬間移動を思わせた。薄緑の魔力で覆われた拳を放つ長門顕彰。黒谷月は骨と皮だけになった皀を離して飛びのく。 「こんなに不味い生気は初めてだ。それなりに量はあったがな」 「私を挑発するとどういう事になるのか解っていないのか小娘?」 「解っていて挑発しているのだ」 長門顕彰は違和感を覚えた。先ほどまでは明らかに違う。少女っぽさを残しつつも大人へと成長していた。 「おやっさん!」 飯田迦楼羅と烏天狗達がぞろぞろと近寄ってきた。 「月ちゃん」「月様」 黒谷ジークベルト、斎藤勇雷が駆け寄る。 「それでどうする長門顕彰?」 「お前を見ていると忌々しい白峰の女を思い出す」 「ほう」 「あの女のようなものが再び現れるとは。白峰家はやはり解体すべきだ。葛野は取り込む気だが私に言わせれば必要のない存在」 「お前と教会(エクレシア)にそっくりそのまま言葉を返してやる」 「フン、ここで私と明確に敵対するということは全国のエクレシアの者もお前たちをターゲットにするのだがそれで良いと考えているんだろうな?」 「眠たい事を言いよるわ。灰色の軍勢と組み、この街を制圧するつもりなんだろう?」 「どこまで知っている……と問いたいがまぁどうでもよい。お前たちが何をしようが二週間で全て決着する。エクレシアに服従するか死か。白峰雪名はお前らより賢い、内に秘めた激しい感情を抑え服従を選んだ」 「それで白峰家が終わりと考えたのが間違いだったな」 「フン、何も解っておらん。力があれば何でも解決できると信じていたあの白峰華月のようなものは不要なのだ。この国を安定させるために私と葛野は灰色の軍勢を受け入れた」 「未来視ができるのであったな。だからお前と葛野は海外から進出してきたエクレシアに所属、灰色の軍勢とも手を組んだ。どんな犠牲が出るとしてもそれを選んだ」 「長い目で見る事が大事なのだ。必要な犠牲だ、仕方が無いのだ」 「お前と葛野忍こそ不要な存在だ」 「果たしてそうかな?私と葛野忍、エクレシア無くして二週間後の世界を生き延びられる訳がない。この計画は100年ほど前から立てているものだ」 「お前たちは情報を開示せず都合のいい者同士で固まり、未来を支配しようとしているだけだ」 「愚者は知らぬ方が良い事も多くある。情報は使い方次第、賢者に任せておけばいいのだ。愚者どもと比べ酒呑童子はいくらか賢いようだ。奴は勘が良い、未来視にも似た感覚を持っている。だから備えている、15年ほど前からな」 「ならば……お前はなぜ白峰華月と交渉しなかった?やがて訪れる災厄について話さなかった理由は何だ?」 「邪魔だったのだ。白峰華月はやり過ぎた、いち妖が東西の妖を治め統一を図るなど。……だから消えてもらった、厄介な白面金毛九尾と共にな」 黒谷月はそれを聞き眉間に皺をよせる。 「二週間後何が起きるか話せ」 「何故お前のような者に話す必要がある?この情報はトップシークレットだ」 「どうあっても話さぬと?」 「フ……脅しか?『力づくでも話させてみせる』とでも言うつもりか?あの女がいれば言いそうなことだ、つくづく似ているな」 「そう言って欲しいのか?」 「身の程知らずが、後悔するのはお前だぞ?」 黒谷月と長門顕彰の間の空気が陽炎めいて歪み始める。 「(華月様はやる気ですね、斎藤さん準備を)」 「(承知……始まれば俺は飯田を抑えます。周りの烏天狗は黒谷殿にお任せします)」 エクレシア勢と白峰華月勢がにらみ合ってる中、連合勢は会話と映像を拾い記録していた。茨木童子は驚異的なタイピング速度でデータを編集して酒呑童子に送信。 「退散しましょう、星熊、八瀬」 「スッキリしねぇが今が引きどころか。八瀬、行けるか?」 「ああクールダウンは終わった、もう動ける。いつでも退散できるぜ」 それを見ていた飯田。 「おやっさん、連合の奴ら尻尾撒いて逃げますぜ!」 「放っておけ、連合は近いうち向こうから接して来る。酒呑童子と直接会う機会もそのうち訪れるだろう」 長門顕彰は黒谷月から一瞬たりとも目を離さずに答えた。 「さてこの状態をどうする?連合は逃げた、もう戦も中止だ。私らとお前たちがにらみ合ってる訳だが?」 「時間稼ぎのつもりか?さっさとグレイビーストでも何でも呼ぶがいい、我は一向に構わんが?」 「あんな獣の手など借りん。お前らなどこの私一人で十分だからな。お前こそいくらでも応援を呼ぶがいい一網打尽にしてやるぞ」 次の瞬間お互いが繰り出した拳がぶつかり合い赤黒い光と薄緑の光が周囲を照らした。 「ぬっ……!」 「ふふふ……」 両者大きく後ろに飛んで離れる。痺れた拳を振る長門顕彰。それを見て笑みを浮かべる黒谷月。 「始まった!野郎ども!一人も生きて返すなよ!!」 「了解!!」 飯田迦楼羅が叫ぶ。40人ほどの烏天狗が飛び上がる。それをみた黒谷ジークベルトは背中から羽を生やして飛び上がって迎える。 「飯田、貴様の相手はこの斎藤勇雷がする!」 「クソが!」 竹刀型特殊合金警棒で面を仕掛ける斎藤、飯田はそれを直剣で受け止める。 黒谷月に対し長門顕彰は左手で術の発動を準備しながら右手の羽団扇で魔力風刃を放って距離を取る。 「先ほどの一撃で我の力を理解したようだな」 「戦闘は力のみに非ず。【天狗拳】の一撃を跳ね返した程度で調子に乗るな」 魔力風刃に対し黒谷月は魔力でアサルトライフルを形成。赤黒い魔力の弾丸をばら撒いて応戦する。 「炎!!」 長門顕彰は左手で発動させた火球を羽団扇で凪ぐ。放射状に広がる豪炎、黒谷月は左手を前に赤黒い盾を出現させて防御する。 「縮!!」 瞬間移動めいた【縮地】で黒谷月の背後に回る長門顕彰。即座に反応する黒谷月は赤黒い魔力で加速した逆サマーソルトを放つ。薄緑に光る天狗拳と赤黒い足先が衝突。衝撃を利用し空中回転する黒谷月はアサルトライフルをショットガンに変形させて近距離発射。長門顕彰は連続縮地で回避の後、大きな羽を背から出現させて空中旋回。羽団扇で炎を操り大蛇のように黒谷月を狙う。 「はっ!!」 背中と両足から爆発的な赤黒い魔力を放出して加速する黒谷月、急上昇から急降下で一気に肉迫。ショットガンを魔力の太刀に変形させ斬りつける。羽団扇を直剣に変え受け止める長門顕彰。 「ぬううう……」 「どうした?余裕の表情が消えたな」 残像によって前方が赤黒い半円に見える速度で太刀の連続攻撃を繰り出す黒谷月。感覚を鋭敏にして全て受け止める長門顕彰。 「縮!!」「そこだ!!」 縮地で移動した先に太刀を投げつける黒谷月。長門顕彰の肩を掠めた。 「……炎!爆!!」 羽団扇剣から爆炎の閃光が発射、黒谷月は両手から赤黒い閃光を放って打ち消す。 「何だお前は……これ程の力を持つ者が突然現れたのはどういうことだ」 「ふふ……予定よりも早く動けるようになっただけの事。結果それが功を奏した、お前と戦えるようになるまで予定では後一週間はかかっていたはずだからな」 「何だと……?」 「一週間遅ければこの機会は無かった。我は何もできぬままで、お前は碁盤の目町にでも閉じこもっていただろう」 「未来視ではお前のようなものなど存在してなかった……」 「長門顕彰、お前の未来視は一度しかその場面を見る事は出来ないと聞いている。見た後、流れを変える者がいれば当然未来も変わる」 「あり得ん!他に未来視を持つ者がいれば可能だが!!」 「我がこの場に立っている事こそ未来が変わったことの証明だ(未来視……なるほど……二郎はもしかして……)」 黒谷月は二郎が勝田と妙な話をしているのを聞いたことがあった。まるで見てきたような体験してきたかのように『これから起きるかもしれない』と話し勝田も頷いていた。 「(二郎が我に嘘をついてる様子はない、勝田もだ。詳細を言えぬ事情があるのか)」 「黒谷月……お前は生かしてはおけん!ここで始末しなければならん!」 長門顕彰は炎大蛇の数を四体に増やし襲い掛かる。 「それはもう見切った」 魔力をジェット噴射して連続バレルロール回避しながら接近。赤黒い魔力に覆われた蹴りを長門顕彰に叩き込んだ。 「ぬぐっ」 流星めいて公園の地面に叩きつけられる長門顕彰、上では黒谷月が魔力形成機関砲を構える。赤黒い弾丸が嵐のように撃ち込まれる。 「ここで始末されるのは貴様の方だ」 「ぬううううううう……」 羽を硬化させ体を包み耐える長門顕彰。全身が赤く変色し筋肉が盛り上がっていく。 「私を本気にさせるか……!!」 「来い、我も手加減などしてやらんぞ」 羽団扇剣で弾丸を受け止め四方に流していく。急降下して魔力槍の刺突を仕掛ける黒谷月、先ほどまでとうって変わり長門顕彰は力負けしていない。 「大天狗の私を本気にさせるとは大したものだ」 魔力槍の連続刺突を受けながら徐々に押し返していく。 「流石に力だけでは押しきれんようだ」 黒谷月の目が輝く。刺突の槍に螺旋回転が加えられ穂先が不規則なブレを生む。破壊力は増し、長門顕彰の羽団扇剣を弾き押し返す。 「更に!こうだ!!」 槍の穂先の赤黒い魔力は衝突の度に爆発。長門顕彰の体勢が崩れる。 「縮!」 背後に回る長門顕彰、振り替えらずに穂先を背後に突く黒谷月。突きながら手を放し振り向き様に魔力鎖分銅を投げる。槍の穂先を躱した長門顕彰、続く鎖分銅の回避は間に合わず左手に巻き付いた。 「ぬっ……!?」「はぁっ!!」 一気に引き寄せる黒谷月。赤黒い魔力に覆われた拳を全力で長門顕彰の顔面に叩き込む。 インパクトの瞬間爆発が発生、長門顕彰は公園の地面を抉りながら吹き飛んでいく。 「手ごたえは合った、だが流石だなあの一瞬で体を硬化させたか」 地面を抉りながら吹き飛びバウンドを繰り返し公園の木に激突して長門顕彰の体は止まった。左顔面は陥没し歯は折れ大量の出血をしている。 「私をここまで損傷させるだと、馬鹿な……存在するはずがない……そのような妖、今の日ノ本には……」 「話す気になったか?それとも続けるか?長門顕彰」 続く
Oct 3, 2021
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