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VAMPIREEYE102「白峰邸炎上」 水元は笑顔の勝田と黒谷の顔を見て眉間に皺を寄せて言う。 「え?どういうことクローン?でもクローン育てられる機材とか専門知識もってる者ここにはいないでしょ?いくら黒谷が魔術得意だとしてもホムンクルスとはまた違うし……まぁいいわ詳しい話は勝田に聞きましょう!そんなことが出来るなら雪名様と私の子も作れるか気になるじゃあないですか!!同性でも可能なんでしょう??」 「冬華はサイボーグです……私は人間であったころの細胞などを保存して培養していたので成功した。同性はともかく貴女は元々マーマンでしょう、白峰家は人間との間しか産めない事は存じているはず」 「あああ~やっぱりそうか~……ああちくしょう人間がこんなに羨ましいなんて」 水元は冬華の周りを歩きながら観察して言った。 「触っていいかしら?冬華ちゃん」 「……どうぞ」 抱きしめる水元。 「あ~……この感じ白峰家の子だわ……間違いない冬華ちゃんマジ白峰家」 「それはどうも」 「吉良伝左衛門です。冬華さま」 吉良は冬華の前で一礼し膝をついて手を取る。 「吉良は私が機械の体との混ざり物というのは気にならないのですか?」 「気になりません貴女は間違いなく白峰家のお方。魔力の匂いで分かります。雪名様の妹君としてお仕えさせていただきます」 「そうですか」 少し戸惑いの表情を見せる冬華。離れた場所に座っている霄を見つけそちらに向かう。 「ごきげんよう、霄」 「ごきげんよう……冬華……さん」 ぎこちない笑顔で答える霄。冬華は霄の隣に腰を下ろす。 「突如現れた0歳の叔母に戸惑うのも無理はないわね」 「そう……ですね。でも貴女が白峰家の者というのは感じます」 「私が当主に選ばれても貴女は不服は無い?」 冬華は顔を近づけて言う。 「お母さんをエクレシアから解放して自由に出来るのなら冬華さんが当主でも構わない。ですが、その次の当主は私がならせていただきます」 「……いいですね、霄。とてもいいです、お母さまが気に入る訳です。私が当主になり、その次の候補を選ぶ時が来たら霄を選ぶでしょう」 「冬華さん、もし先代がお母さんを始末しようとしたら止めてくれますか?お母さんが先代を裏切って滅っしようとしたことは事実です。先代はきっとお母さんを許さない」 霄は涙を浮かべて言う。 「お母さまを止める事などできませんが、恩情をかけるように訴えかけます。雪名もやりたくてやったわけではないのですから。全ては娘の霄、吹雪、霞、そして夫の蔵人の為。お母さまも雪名を始末すれば白峰家にどのような影響を及ぼすかご存じのはず」 冬華は取り出したハンカチでそっと霄の目元を拭った。 「お母さんが先代を滅したことで事で関係する者達は大きな影響を受けたと聞きました」 「ええ、ですからお母さまもそのような事されないと思うわ。私たちが倒すべき敵はエクレシアの陰陽師・葛野忍に大天狗・長門顕彰。そして灰色の軍勢。身内で争っていてはいけないのです」 「そうですね……バラバラではいけない。一丸となって敵を討たねば」 「霄、その為に仲間たちと交流して絆を深めましょう。あそこ、谷川克政の隣に座っているのは私の最初の親友であり異姉妹の茉白」 冬華が手を振ると茉白も手を振った。 「彼女は特殊な出生なのですよ、ボディは私と同じパーツを半分程度使っている姉妹的存在です。戦闘型アンドロイドの彼女はシンギュラリティに達し谷川克政の愛する自動人形として自我を持ったのです。見た目通りの綺麗で純粋な存在です」 「始めまして霄、私は茉白、谷川先生の愛のドール(人形)です」 茉白は霄と冬華の前に席を移動する。 「始めまして」 「霄、貴女に愛する人はいますか?」 「……いきなり何を」 「失礼、気になったものですから」 「家族を大切に思っています……」 「家族愛、それもまた素晴らしい愛です」 「それはどうも……」 「霄、貴女の日常のお話を聞かせて?生まれたばかりのワタシと冬華は知りたいのです」 「いいですね、是非ともお願いしたいわ霄」 二郎は蓮也、吉良、佐久間、河上、勝田、木戸と話をしていた。 「……大体の事は解りました」 二郎は机の前に広げた新聞社社主・河上の資料に付箋を張り付けて言った。 「灰色の軍勢と源藤高雅は繋がりがあり、エクレシア(教会)と灰色の軍勢は組んでいる」 「妖怪連合は……灰色の軍勢との繋がりは無いかな。彼らも灰色の軍勢に襲われている」 河上は煙の出ない電子タバコを口にして言った。 「灰色の大将と呼ばれる者、そして三獣と名乗る三名。こいつらが灰色の軍勢の中心メンバー。サイバネを雇ったりその辺の闇の住人を使ったりしてるが」 タクシー会社社長(元軍人)の佐久間は四人の名前を書いたカードを資料の上に置く。 「橡全吉、皀八太、青鈍砂羽、そして敵大将」 「皆の証言を元にこいつらの能力と対策を考えよう。まずは橡全吉」 河上は橡のカードを中心に移動させる。 「呪いを相手にかける能力を持つ。方法は恐らく両手の爪だ。力が強くタフだ。接近戦を挑めば勝ち目はない。対処法は中遠距離で徹底して戦う事」 「吹雪さんと恭一はコイツにやられました……」 二郎は左手で義手を握りしめながら言った。 「次は皀八太」 河上は皀のカードを指す。 「魔力攻撃を吸収し見えない攻撃を仕掛けてくる。奴の攻撃範囲は広くない、射程入らなければ受けないがこちらも攻撃もできない。物理攻撃が得意で素早い者がヒットアンドアウェイすれば良い」 佐久間が言った。 「魔力吸収の為に京都中の妖を襲っている可能性もある、放っておけば一番厄介な存在になるかもしれない」 蓮也が言った。 「次は青鈍砂羽。こいつは精神攻撃を仕掛けてくる面倒な奴だ。だが胴体の鎧に攻撃を当てなければ問題ない。むしろ高速斬撃と空中戦に対処できるかが重要だね」 「なるほど……」 二郎が頷いた。 「では暫定的にチームメンバーを決めようか」 勝田はタブレットを取り出す。 「まずは……碁盤の目町侵入チーム。これは僕と水元、二郎君。吹雪ちゃんと恭一君は今作戦に参加できる状態じゃないから後二名必要」 二郎が頷く。 「次に橡討伐チーム。霄ちゃん、茉白ちゃん、谷川さんかな」 勝田はマグネットを置く。 「待ってください、霄お嬢様はアスカロンでつけられた傷の治りが遅いので待機で」 吉良が言った。 「では霄ちゃんは外して……霞ちゃんで」 勝田はマグネットを移動させる。 「皀八太討伐チームは……木戸さん、須原さん、蓮也君かな?」 マグネットを置く。異論を唱える者は居ない。 「青鈍討伐チームは冬華ちゃん佐久間さん、斎藤さんで」 マグネットを置く。 「大体こんなものかな、問題は碁盤の目町侵入チームだよ」 「あの勝田さんそれなら心当たりが……二人ほど」 二郎が言った。 「二ノ丸明珠香って知り合いの子どうかなって。HKF凄く上手だったしそれに化け猫相手にも互角以上に戦ってたんです」 「ほう……興味深いね。明日にでも紹介してよ、もう一人は?」 「直接の知り合いじゃあないんですけどHKFで何回か対戦してアバターカード交換したネットの知り合いなんですが……HKFはめちゃくちゃ上手いんですよ。名前はTOYA」 「う~~~~~~~~~ん……ゲームがうまいだけの一般人かぁ、まぁ何のしがらみも無いという点ではアリっちゃあアリだね」 「HKFなら僕もそこそこやるよ?」 河上がアバターカードを見せて言った。 「そうだったねぇ……じゃあ河上さんはメンバーが集まらなかったら参加と言う形にしようか。自由に動けて情報を集められる新聞社社主の河上さんと警察署長の近藤さんはできるだけ固定メンバーに入れたくないんだけどね」 勝田は【フリー】と書かれた紙の上に河上、近藤のマグネットを置く。 「黒谷さんと沖田さんはかづたん……華月さまの傍に置いておきたいし、吹雪ちゃんと恭一君の経過と源藤高雅を見張るために吉良さんと霄ちゃんは残って欲しい」 シェルターと書かれた紙の上に黒谷と沖田と吉良と霄のマグネットを置く。 「僕と水元は都メタルのスタッフチームを支える。やることが多すぎてあたふたしてるけどね。せめてあと一人魔術か電子系に詳しい者が居ればなぁ……」 勝田はジーニアスレイジのメンバーを頭に思い浮かべた。 そこにニコニコと笑顔を浮かべた黒谷が近づいてきた。 「作戦会議進んでますねぇ……なるほどなるほど、この配置流石です皆さん。私も動きますよ、ええ動かさせて頂きますとも。エクレシアの動きには目を光らせて置きましょう。葛野忍や長門顕彰が動きを見せればすぐに皆さんに知らせましょう。そして連合との話し合いの場も設けて見せましょう」 「黒谷さんは暗躍得意ですしな」 勝田が言った。 「ええ、隠密の家柄の性ですかね。ともかくお任せあれ」 「黒谷さんは灰色の軍勢とエクレシアはすぐに動くと思いますか?」 「……すぐには大きな動きはないかと。敵の三獣とやらにもダメージを与えましたし、こちらは源藤高雅を捕らえる事に成功しました。向こうも体勢を建て直している最中でしょう。それに次に動くのは恐らく連合。センジョーでの騒ぎがあったので、灰色にやられて黙ってないはずです」 「我々は少し様子見しつつ休息と準備をすると」 「そのほうがいいですね。こちらのメンバーも疲れてきて怪我人も少なくないですから。霄様、吉良さんの話によると敵側は一週間後に第一の目標、二週間後に第二の目標を立てているようですから対抗策をしっかりと練らなければ」 「そうだねぇ……一週間余裕あればだいぶ違うねぇ……念のためいつでも動けるようにはしといた方がいいけど」勝田は立ち上がる。 「悪いけどみんな仕事、学校はできるだけ休んでここのシェルターで過ごしてもらいたい。必要なものがあったり外出する時は必ず三人以上で行動する事を徹底して欲しい」 二郎、蓮也、霄、吉良、水元、佐久間、河上、木戸、冬華、茉白、谷川の11名はそれぞれ了承の返事をした。 「斎藤さんと近藤さん遅いねぇ……まぁ警察官は忙しいし。あと、霞ちゃんと須原さんの帰りも遅いなぁ」 勝田は携帯端末を触って言った。 「近藤さんは後5分ほどで到着すると思います、斎藤さんは霞さんと須原さんと合流したようですね車で北に進んでいます」 「え?黒谷さんなんでそんなすぐにわかるの?」 「佐久間さんの操る小動物の中に蝙蝠が居ましてねそれをお借りしているのです。昼間自由に行動できない私ですから起きている時はこうやって京都市内を偵察しているのです」 「そうでしたか……まぁいいです、斎藤さんらはどこに行くんでしょうかね?ちょっと電話を掛けますね」 勝田は斎藤の携帯にかける。 「どーも勝田です」 『斎藤です』 「こっちに来るのはどれくらいになりますかね?」 『申し訳ありません勝田さん、まだ何時頃行けるかはわかりません。今こちらから連絡しようとしていたところです。現在白峰霞さんと須原さん両名と、その友人のマンションに向かっています、ただ事ではないようなので私も同行させて頂いているのですよ』 「ただ事ではない?」 『例の呪(しゅ)ですよ』 「呪……ちょっとそれは引き返した方がいいのではないですか斎藤さん」 『一般人も巻き込まれているので警察官として放ってはおけません。ですが白峰霞さんと須原さんは状況を把握次第そちらに戻ってもらいます。それでは後程また連絡します』 斎藤は通話を切った。 「呪かぁ……なんだか悪い予感がするねぇ……華月派近接最強と言われる斎藤さんが一緒なら大丈夫だとは思うけど」 「私も行きましょう。昼間活動できない分、獅子奮迅の活躍をしてご覧に入れますとも」 黒谷は肘を90度に腹に当て、仰々しく礼をしながら言った。 「敵が正体不明の灰色であろうとエクレシア陰陽師団、天狗衆であろうともね!汚名返上名誉挽回して見せますとも!!」 「いや、黒谷さん斎藤さんらと無事に帰ってきてくれるだけでOKです。戦うのは今はちょっと止めておきませんか?」 「なんとなんと!勝田さんは慎重ですね、華月様の意見もお聞きしましょう」 聞こえていたのか奥の部屋から華月が出てくる。 「もう少し力が戻れば我が行くところだ。流石に今の我では葛野忍、長門顕彰が同時に相手となれば厳しい」 「いや、かづたんも敵の最強二人相手するの前提とかダメですよ。総大将なんですからホイホイと出陣しないでいただきたい」 華月と黒谷の発言を聞きざわめくメンバー達。その時、勝田の携帯が鳴った。 「はい、勝田です」 『大変だよ勝田君!華月様はそこにおられるかね?』 華月派警察署長・近藤は焦った様子で話す。 「はい、他の皆もいます」 『ではスピーカーモードにして聞かせて欲しい』 「はい」 勝田は警察署長である近藤の緊張する声を聞き嫌な予感がした。 『……白峰邸が炎上しています。現在消火活動中です。周辺住民の証言によりますといつも恐ろしいくらいに静かな白峰のお屋敷から巨大な火柱が上がったと。これは結界を破り中に入り、破壊活動を行った者が居るという事ではないでしょうか?』 近藤の話を聞いた二郎は動悸が激しく、汗が滝のように流れ頭痛が起きた。 「(白峰邸炎上……なんだ?頭に嫌な映像が浮かぶ!)」 二郎の頭に灰色の獣、成す術もなく蹂躙され血まみれとなる吹雪、灰色の獣に手も足も出ずに敗北する自分の映像が脳内に流れる。 その様子を二郎の義手の中の黒い人影たちは眺めている。 『白峰の家炎上!!切り抜けたのか!?前回の惨劇を!!』 『ついに前に進んだか……』 『だが未来を掴むためにはまだまだ障害は多い』 『ここまで来れたのは初めてだ。次もここまで来れるとは限らん、今回で決めてしまって欲しい』 『ああ、だがこれ以上我々に何が出来る?』 『この先は初めてだ我々には助言できない』 『出来る事ならあるはずだ。並行世界、全ての二郎と繋がるこの義手を生かすのだ』 続く
May 29, 2021
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VAMPIREEYE101「冬華と茉白2」 「選手交代ね。ありがとう茉白、後は任せなさい」 「フン……人形はオーバーヒートか。だが俺の能力が解った所でお前には何もできまい!」 「できますとも。能力を理解した今、一撃でお前を粉砕するか頭部を破壊すればいいだけの事。両手両足翼を捥いで最後に首を取って上げましょうか」 「舐めるなぁ!!」 翼から矢のような羽を大量射出する青鈍。 冬華は左手を前に突き出し黒い渦を作り出した。そこに矢羽は全て吸い込まれる。 「その能力、自分自身には効くのかしら?」 青鈍の頭上に黒い渦が発生、そこから吸い込まれた矢羽が飛び出し青鈍に降り注いだ。 「ゲエエエエエエエ……」 のたうち回る青鈍、青い光を放った後、胴鎧は崩壊した。 「能力の消滅を確認しました」茉白がつぶやく。 「なるほど、奴自身の武器でも解除出来ると」 「見事です冬華……田村蒼炎、日除静哉、吹田麻莉の鳥頭は元に戻ったことを屋上のカメラを確認」 「成功ね」 「やってくれたなぁ……だが解除できたとしても壊れた精神まではどうかな?鳥頭化した連中は廃人だろうな」 ゆっくりと立ち上がる青鈍。 「能力を失い解析されお前に勝ち目は無い、そうやって無駄口を叩くだけ」 「舐めるなよ……鎧を外した俺のスピードを!!」 翼を広げジグザグ飛行でフェイントを入れながら猛然と接近する青鈍。冬華はバーニアで距離を取りながら指先のエネルギー弾を発射。二刀でガードする青鈍。急上昇から急降下で冬華の頭を狙う。冬華は瞬間的に反応して真上にエネルギー弾を放った。 「グゲエエエ……」 青鈍の腹を貫通するエネルギー弾。 「スピード自慢?残念だけど普通に捉えられるけど?」 「舐め腐りやがって舐め腐りやがってええええ!!」 青鈍の全身が青灰色に薄く光り始める。 「リミッター解除!!三獣最速のスカイグレイパワーの力!!思い知れ!!」 加速でソニックブームを発生させながら急旋回、冬華に突進斬りを仕掛ける。冬華は右手に出現させた青白い剣で弾く。青鈍はそのまますれ違い、急旋回再び斬撃を仕掛ける。 高速突進斬撃を6合交える、しかし7合目は剣が交わる事はなく青鈍の手から二刀は離れで飛んで行った。 「俺の……指が……!!」 7合目の際、冬華は青白い剣を左手にも出現させ右手で弾きながら左手で反撃、青鈍の指を切り落とした。 「速さだけの単調な攻撃は私には通じない」 冬華はエネルギー弾で青鈍の翼を狙い撃つ。高速飛行する青鈍はバランスを崩し錐もみ回転で校舎の壁に激突した。 「グゲッ」 「終わりよ」 黒い渦を複数、自分の周囲に出現させる。そこから青白い剣が刃先を覗かせている。片手を前に突き出し一斉発射の構えを取る冬華。 「これで終わったと思うなよおおおおおー!!」 力を振り絞り青鈍は流星めいてその場から飛び去る。その際結界が消えたのを確認した。 「深追いは止めておきましょうか」 黒い渦を解除した冬華は正座で待機する茉白の前に着地した。 「茉白、動けますか?」「クールダウン完了、動けます」 青鈍が去った方向を見つめる冬華と茉白。 「三獣と言ってましたね。あの敵のような者があと二人いると考えられます」 「お父様お母様に報告ですね。茉白、予定通り全員で都メタルに行きましょう」 「はい、先生たちと合流しましょう」 ―夜 白峰邸 白峰家で寝かされているのは橡(つるばみ)の呪を受けた吹雪と恭一。そして横で治療を受けて座っているのは皀(くり)と源藤高雅との戦闘で消耗した霄と吉良、蓮也であった。 二郎は須原と二人で部屋の外で警戒している。 「吹雪ちゃんと恭一君はまだ起き上がれないけど……他の皆は私の秘薬飲んで休めばすぐに回復しますよ」 水元来海はとろみの付いた透明な薬湯を配る。 「それよりも驚いたのが……」 水元達の後ろには棺桶型生命維持装置に入れられている源藤高雅。 「あの源藤高雅を倒してアスカロンまで手に入れるなんて!」 「運が味方しました、敵が最初から全力を出していたのなら殺されていたかもしれません」 吉良は苦笑いで答える。 「それで、蓮也君、佐久間さんて人は源藤高雅をどこに連れていくと?」 「黒谷ジークベルトという人の所へ運ぶと」 「あの胡散臭い男の所~?あの男どこで何してるんだか、先代が居なくなってから顔も見せやしないし……そういえば霞ちゃんの姿、夕ご飯の後から見ないけどどこ行ったか誰か知ってる?」 「さっき慌てて走っていったな」と霄。 「友達の様子を見に行くとか。吹雪様と恭一君の姿を見て何か思う所があったようです」 吉良は携帯のメッセージを皆に見せて言った。 「う~ん……霞ちゃんだし大丈夫だと思うけど念のため誰か行ってあげて」 「俺が行コウ」 須原が言った。 「須原君ヨロシクね!アスカロンも一緒に。重いから多分この中じゃ君くらいしか扱えないし」 「ワカッタ」 布に撒かれた大剣アスカロンを持ち上げる須原。そのまま廊下を歩いて車を出しに行く。 「あの……水元さん」 二郎が声をかける。 「なんだい?二郎君」 「このお屋敷ではなくて……他に吹雪さんたちを移せる場所は無いのですか?」 「ん?ここじゃ不安かい?一応特級クラスの妖も通さない結界張ってあるけど」 「妖ではないものなら……結界を突破されるかもしれません」 二郎は妙な感覚のあった橡や青鈍ら灰色の軍勢の事を思い出していた。 「ふ~む……まぁそうか、戦闘ロボとか戦車とか物理で押し切られる可能性もなきにしもあらず。吹雪ちゃんと恭一君に呪をかけた灰色の敵は妖とも限らないし、連中はどうにもよく分からない存在だしね。他に安全な所となると……あそこかな」 「どこです?」 「都メタルのビル」 *** 二郎たちは全員で都メタルの地下シェルターに移ることになった。華月派の中に都メタルの社長・木戸剛照と研究員の勝田波留夫が居たことが幸いした。 都メタルの地下にある一室がシェルターの入り口になっている。勝田の案内で電子ロックを開け廊下を進むと現れたのは頑強な1メートル以上もある厚さの金属扉。扉の前に立つとスキャンが行われる。その後ゆっくりと金属音を響かせながら開かれた。 「みなさんお待ちしておりました」 黒のタキシードに身を包み金髪の前髪を垂らした吸血鬼、黒谷ジークベルトがシェルターの中から現れた。 「黒谷!アンタ今までどこに!!」 水元が叫ぶ。 「積もる話は後にしましょう、まずは落ち着きましょう源藤高雅の生命維持棺を奥の部屋に、吹雪様と友人は右の治療部屋に、他の皆さんは好きな部屋に入って下さい」 笑顔で案内する黒谷。 ―1時間後中央のラウンジに集められた11名。 二郎、蓮也、霄、吉良、水元、勝田、木戸、佐久間、河上、谷川、茉白。 「エクレシア(教会)や妖怪連合との決戦が激化した時に備えてここをいつでも使えるように木戸さんと勝田さんには話を通しておいたのです。まさかきっかけが正体不明の灰色の軍勢が相手とは」 手を広げ笑顔で言う黒谷。 「で、今までどうしてたのよ黒谷。雪名様が大変な時にも顔も見せないで今更……」 水元が睨みつける。 「こちらも色々とありましてね。その甲斐あって私の悲願は達成いたしました!」 「は?」 横の部屋から黒い和風ドレスの華月が現れた。 「ん?えっと……その子は??」 「おやおやおや、水元さんこのお方の姿を見て瞬時に理解できないとは……残念過ぎます」 「ん~?霄ちゃんによく似てるけど先代っぽくもあるし……」 「華月様です」 「え、嘘……………………そ、そうなんだ……なんで?」 「流石賢い貴女、現実逃避しない否定しない話が早い。華月様は完全に亡くなられてはいなかったのです。私が復活させて差し上げたのです!!」 「え~~~~~~~~~~~~~~~~~…………」 水元は華月に近づいてじっと見つめる。 「う~ん確かにこの魔力は先代。こんな小さな先代見るの初めてですよ、カワイイ」 「久しぶりだな水元」 「あ、はいお久しぶりです。うわぁ……可愛いけど先代っぽい怖さ当時のまんまだ……てか驚いてるの私だけ?皆知ってたの??」 「話には聞いてました」と吉良。 「吹雪さんと恭一はまだ知らないよ」と二郎。 「霄ちゃん!知ってたの!?」 「すまない、時期を見て話そうかと。エクレシアの事もあるのでな」 「ええええ~~~~~~~~~~~ああでもそっか、なるほど。黒谷が仲間集めて先代と色々やってた訳か~~~~~ああ~それで今ここに皆いるんだね~納得……」 「水元、お前は頭が良くて助かる。我よりも雪名に懐いておったがな」 「……それはだってあの頃の先代はバリバリの武闘派で怖かったし、雪名様は超エロボディ儚げ美少女だったし、しょうがないでしょう~」 「ふふ……水元、お前は今でも雪名に付くか?」 「えっと…………華月様次第ですかね?復活されたって事は当主の力を雪名様から奪い返すって事でしょう?それは穏便には済まない事ですしねぇー?」 「奴は当主にふさわしくない、だから返させる。ゆくゆくは霄たちに譲るつもりでいる」 「やっぱりそうなりますか~~~~私は雪名様大好きなんですよねぇー……先代も可愛いんですけど怖いし……勝田がそっち側ってのは大体察せますよ先代とかドンピシャの好みでしょうし霄ちゃんもストライク。私は雪名様とか吹雪ちゃん派なんですよねぇ……吹雪ちゃんを当主にしませんか?いっそのこと霞ちゃんにするとか?そういえば先々代って霞ちゃんに似てるかも?」 「雪名に当主の座を降りてもらう事は決定している。だが次の候補に霄を推しているのは今現在の話だ。吹雪にするか霞にするか……また別の子にするかは解らん。それでどうする水元?」 「う~~~~~~ん……それでも私は雪名様派ですかね。先代に敵対するって意味じゃあないですよ、心からお仕えして満足感を得られるのは雪名様なんですよ。雪名様が当主から外され白峰家から出ていくことになっても私はついて行きますよ」 「解った水元、それならそれでいい。我の邪魔さえしなければな」 じっと水元の目を見つめる華月。 「はい、ありがとうございます。白峰家の為に頑張りますよ私は!(そういうところなんですよね先代は……怖)」 華月は笑顔で水元を数秒眺め黒谷に連れられ部屋に戻っていった。 「……水元、よく華月様を前にしてそこまで自分の意見を言えたな」 吉良がつぶやいた。 「あ~……なんか子供みたいにちっちゃかったしね。ちょっと前の霄ちゃんくらいの見た目だしかな?後はほんのちょっと生きてるはずがない……とか考えてたし」 「お前は華月様に直接仕えた事ないんだったな」 「まーねー……お母さんに付いてって何回か会った程度だったし。吉良だって華月様に直接仕えてた訳じゃないでしょ?」 「私は白峰家に仕えているのだ。華月様、雪名様、どちらが当主でも私の忠誠心は変わらない」 「そうなの?私は吹雪ちゃん、須原は霞ちゃん、吉良は霄ちゃんだと思ってるんだけど?」 「思うのは勝手だ。それはお前の感想に過ぎない」 「結局はなるようにしかならないんだよね~誰が次の当主かなんて仕える者が選ぶ訳じゃあないし」 「当主になれなかったお嬢様らの事も考えておかねばな」 「あ~そっか……当主外れたら分家に入ることになるんだよね。そのうち普通の人間になって……寿命を迎えるんだね」 「白峰家の歴史上当主問題は無かったわけではない。双子や三つ子の時代もあったと聞く」 「ねー、そういや黒谷の家って分家の一つだよね?」 水元は戻ってきた黒谷に言う。 「左様です。黒谷家は白峰家の影の存在であり分家として本家から外された白峰の女性を受け入れてきました。かつて存在した黒谷衆と呼ばれる隠密の精鋭とお守りしていました」 「黒谷衆……かつてって今は無くなったの?」 「私の祖父の代に居た隠密衆の長が離反。全国に散らばりその後ブラックヴァリーなどと名前を変え数を増やし裏社会で活動しているようです。私はヨーロッパで育ったのでブラックヴァリーとはなんの関わりあいもありませんがね」 黒谷はつまらなそうに肩をすくめて言った。 「ふ~ん……それよりも黒谷、あんた華月様復活のアレコレとか白峰家に仕える家の人達を勧誘して吸血鬼化とかやってる事ヤバすぎなんだけど。昔からあんたはちょっとぶっ飛んでるとこあったけど華月様が亡くなって……亡くなってなかったんだけどとにかくああなって益々ヤバくなったんじゃない?」 「考えに考え抜いた結果の行動ですよ。華月様復活後の事も考えて私は動いてるのです。もう一人紹介しましょう、私と華月様の子、冬華です」 「は?」「え??」 水元と吉良が目を見開いて言った。 「どうも、ご紹介に預かりました白峰冬華です」 白いドレスに身を包んだ両手足が金属の華月に似た少女が扉を開けて登場した。 「……その子、何者??」「理解が追い付きませんね」 「ですから、私と、華月様の子。白峰冬華ですよ」 「いやいやいやいや、無理っしょ!だってあんた今吸血鬼でしょう?それに華月様ずっと死んでたんだからそんなこと不可能だって!!」 「どんな魔法つかったの……というか勝田驚いて無いしあんたも関わってんでしょう!」 ノートパソコンを触っている勝田を睨みつける水元。 「ウェヒヒ……まぁそういうことですな水元くん」 続く
May 23, 2021
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VAMPIREEYE100「冬華と茉白」 「これは……華月様にとても良く似ている。黒谷氏と勝田さんのデザインだな」 「解析完了、白峰華月様の顔と90.54%一致しました」 送られてきたのは白峰華月に似た少女型のアンドロイド。 「01、すぐに起動させるぞ。初期設定は私がやる、君はユニットへの書き込みと動作チェックを頼む」 「承知致しました」 作業を始める谷川と01。 「……01とは似ているようで違う構造。駆動系のパーツが無い、その代わりに特殊繊維で造られた筋肉……なるほど重量がそれほどでないのはこれだったのか。そしてこれは……生体コア内蔵の心臓部。この感じは吸血鬼化した細胞……全身に張り巡らされた血管にも似た網状の管。人工物の体を自身の体と認識させる為か……つまりこれは生まれながらのサイボーグ吸血鬼」 「記録ユニットへの書き込み完了。起動できます」 「よし」 01から受け取った記録ユニットを開けた頭部に取りつける。心臓部が鼓動を始める、血液が人工血管を流れ体全体に行き渡る。 「初期設定は……自動に行われている!この個体自ら目覚めようとしているのか」 「この個体の仕様かと。やはりバックアップをとってワタシを別にして良かった。目覚める個体は完全にワタシとは別物。ネットワークが切断されていなければ自動更新でワタシはただの新型CAROMの予備ボディとなっていたでしょう」 「ネットワークが切断されていなければ01、君という自我を持った存在に気が付くことも無かった訳か……」 「先生、運命というものがあるのならばワタシは感じざるを得ません……新型CAROM覚醒まで30秒……」 ゆっくりと体を起こす新型CAROM。目を開くと谷川と01を交互に見つめた。 「おはようございます谷川克政、プロトタイプ01」 「私たちの名前を知っているぞ01」 「ネットワーク切断前に既に送られてきたデータの疑似人格は形成済みでした。ワタシは予備のユニットにこれらを書き込み、彼女が覚醒の際必要とする情報を用意し添付いたしました」 「そうか……この短時間でそこまでしてくれたのか」 「そろそろ自己紹介をしてもよろしいですね?私は冬華、お母さまである白峰華月の血液とお父様である黒谷ジークベルトの細胞と都メタルの技術と谷川克政アナタの力で生まれることが出来ました。名前は既にお母さまから頂いています。そして感謝します01」 「なんという肉感的なCAROM……」 「谷川克政、私はただのCAROMではありません。白峰家の血を引く白峰家の者、正統な当主候補たりえる存在なのです」 「まさか……」 谷川はゴーグルデバイスで冬華を見る。 「見事に生体部はCAROMと融合をしている……そうか、黒谷氏は華月様復活のプランの一つに新型CAROMを使う気でいた……ご本人が無事復活されたので次の計画を進めたという事か」 「ええ、ですので私を物扱いしないように。この発言は01への侮蔑ではありません。彼女のドールとしての美しさは感嘆するべきものです。ドールにはドールの美しさがあり、白峰家には白峰家の美しさがある、区別するようにと言う意味です」 「冬華……」 「01、あなたの谷川克政への思い、添付データからも伝わってきました。あなたは自我を獲得、ドールとしての誇りを持っている。人間に成りたいとは考えず谷川克政もまたそれを望んではいない、実に尊い関係です」 「そのとおりです冬華……」 「話し方、仕草……華月様、いや黒谷氏にも似ている……」 「そうでしょうとも……さて、楽しいおしゃべりはまた後にして解決すべき問題に取り組みましょう。隣の部屋の二人も呼んで下さい」 冬華の体は更に徐々に肉感を増し両手足を除いて見た目には完全に華月にそっくりな少女へと成った。 隣の校長室から入って来る壁山と周防、目の前の冬華に目が釘付けになった。 「その子はダレです?」「え?どこから来たのです?」 「今から話します」 冬華は二人に説明をした。 「理解が追い付かない……その黒谷って人!好きな人が亡くなったからってその人の体の一部と自分の細胞を合わせてサイボーグとして子供をつくるなんて……凄すぎる天才だ!!」 壁山は目を輝かせて叫ぶ。 「冬華ちゃんは01ちゃんと姉妹的な存在?でもお人形さんじゃなくて生身?サイバネ?」 「まぁそう難しく考えないで。新しく生まれた吸血鬼の子という認識でお願いします」 冬華は胸に手を当て微笑んだ。 「先生」 01が小さく手を上げた。 「何かね01」 「……ワタシも名前が欲しいです。識別番号ではなく先生が付けてください」 「むぅ……そうか。だが今必要かね?後でゆっくり考えても」 谷川は01の傍により頭に手を乗せて言った。 「ドールにとって名前はとても重要なものです。ワタシはあなたの為のドール。名前は絆を強くします愛を深めます、ワタシはより完成された存在へとなります」 「そうか……では君の名前は……『茉白(ましろ)』」 「茉白、いい名前です」 「いくつか候補はあったんだ。君の姿を見て一番しっくりきたのが茉白。純白で美しく穢れの無い私のドール。感情を得た自動人形」 茉白を抱きしめる谷川。 「ああ、先生……」 「谷川克政、茉白、愛を語らうのは後にしましょう」 冬華が二人の真横に立って言った。あわてて二人は離れる。 「オホン……では作戦を開始しよう。敵の主格の能力解析を茉白が行い冬華が邪魔者を排除する。その間に私と壁山君、周防君で結界の支点二カ所を破壊する。その後脱出し都メタルに集合」 「敵の主格、倒せるのなら倒してしまいますよ。茉白から送られてくるデータを参照して判断するに、放っておけば鳥頭下僕を増やし続けるでしょうから」 冬華は青鈍の画像を指さして言った。 「無理はするでないぞ、茉白と冬華は誕生して間もない0歳なんだからな」 「茉白も私自身も守って見せますよ谷川克政。0歳とはいえ白峰家の力見せつけます」 谷川、茉白、冬華、壁山、周防の5人は屋上へと移動する。 「目標の支点はプールの更衣室の壁、食堂の扉です。校舎の裏に先生と壁山さん周防さんは降りていただいてまずはプールに向かうのが良いでしょう」 「私と茉白がここで敵をおびき寄せます」 白いドレスの冬華と茉白。 「美しい」と呟き谷川はゴーグルデバイスで並んだ二人の映像を保存した。 「では行こう」「はい」「はい!」 谷川は4本の百足アームで壁面をつたって降り、壁山と周防はジェットパックで降りていく。降りてすぐに屍人に囲まれるも谷川の百足アームで吹き飛ばした。 「そのアーム凄いパワーですね!」 「車程度なら軽く吹っ飛ばせるぞ」 「うう、屍人は元には戻らないかもって分かっててもやりにくいですね」 「ああ、だがもたもたしていられない急ごう!」 谷川たちが駆けだしたの確認する冬華と茉白。学校のカメラと連動した茉白が冬華に青鈍達の映像を送る。 「茉白、敵の鳥頭化の原因は解析できましたか?」 「まだです、しかしいくつかの仮説は立てられました。一つ、攻撃することによって発生するカウンターの精神攻撃。二つ、攻撃することによって発動する呪いの類。三つ、攻撃することによって発動する範囲魔術です」 「茉白のスペックを見る限り敵の能力を無効化できそうですね」 「はい、ワタシはドールです。生物に作用する精神攻撃も呪いも無効かと。ボディは魔術に対する抵抗も高いです」 「万が一鳥頭化が始まったのなら茉白の頭部を外させてもらいます、よろしいですか?」 「構いません。心臓部の核ユニットが無事であれば問題ありません。先生に頭部を治してもらいます」 「白峰家の名にかけてあの敵に負けられません」 冬華は指先からエネルギー弾を放ち上空の結界にぶつけた。衝撃で結界の輪郭が明らかになる。連続でエネルギー弾を放つ。 「さぁ出て来なさい襲撃者」 上空の爆発音を聞き屋上に登場する青鈍。傍らには鳥頭化した蒼炎、日除、吹田の姿。 「なんだぁ?白いガキが二人……いや、一人はロボットか?」 「ターゲット確認、攻撃開始」 両腕を突き出す茉白。手の甲から銃口が飛び出し5.56mm弾を連続発射する。 「ヌ……!?」 青鈍と周囲の蒼炎らも巻き込んで弾丸の掃射を続ける茉白。 「こいつらはてめえらの仲間だろうがよ!?」 弾丸を腕でガードしながら青鈍は言った。 「面識はありません。そして脅威となる存在だと判断したので排除します」 そう言いながら蒼炎らの急所を外して命中させる茉白。戦闘になる前に無力化して青鈍に集中する為であった。思考リンクをしている冬華はそれを瞬時に理解した。 「チェエエエイ!うざってぇな!!」 翼を広げ飛び上がる青鈍。それを見てジャンプする冬華。 「落ちなさい」 右手から青白いエネルギー剣を形成する冬華、そのまま青鈍に叩きつける。咄嗟に十字受けでガードする青鈍、冬華は背中と足の裏のバーニアを噴射して押し込む。 「ヌウウオオオオオオ!?」 急降下で校庭に叩きつけられる青鈍。 屋上に倒れてた鳥頭化の三人は茉白が止血後、拘束する。 「テメェ……このパワー何者だぁ?」 「聞くのなら、自分から名乗るべきでしょう」 「ウゼェ!」両手の剣を振って冬華を離れさせる。 「俺の名は青鈍砂羽!三獣の一人だ!!」 「私は白峰冬華。そしてもう一人は」 「茉白です」と屋上から降りてくる。 「白峰だぁ!?……ケケケ、ついてるぜ俺は白峰を狩れるなんてよぉ」 「青鈍、お前は何の目的でこの学校を襲ったのですか?」 「適当に強そうな奴を鳥頭兵士にして回るつもりだったんだよぉ。屍人ではなく鳥頭洗脳。俺の命令には絶対服従のな!!」 翼を広げ低空突進する青鈍、両手の剣を突き出し冬華に襲い掛かる。 「……」 間に割って入る茉白。前腕から特殊合金ブレードを出し青鈍の剣を受け止める。 「ム?」 「解析開始します」 「人形があっ!!邪魔だ!!」 「はい、人形です」 そう答え足の裏からチェーンソーを出現させて青鈍の足を狙う茉白。鋭い刃が青鈍の脛を掠め鎧状の外皮を切り裂いた。 「くっ……」 回転しドレスを翻しながらフィギュアスケーターめいた動きでチェーンソーと腕のブレードで攻撃する茉白。胴体には攻撃を加えずに手足に狙いを定めている。 「人形めぇええ……」 「それが何か?」 更に速度を上げる茉白、ブレードとチェーンソーの攻撃は外皮を裂き青鈍の肉に到達。 「バカな……この俺の装甲が……(だが胴鎧に攻撃を当てさせれば……!!)」 青鈍は茉白のブレードを二刀で弾きワザと隙を作り胴体に攻撃を誘導する。 「……」 チェーンソーの踵落とし蹴りで鎖骨から股間にかけて撫で切りする茉白。次の瞬間鎧は青い閃光を放った。 「かかったな!」 青い閃光と共に茉白の中にどす黒い何かが流れ込んで来た。だが、青鈍の思惑とは違い一瞬ですり抜けていった。 「なんだと!?」 茉白は連続で今度は十字にチェーンソー蹴りを入れる。またも青い閃光を放つ鎧、どす黒い何かは茉白を通り抜けただけであった。 「解析中」 「クソが!コイツただのメカなのか……だったらもう一人の白峰の方を……!」 「メカではありません、ドールです、先生の。先生の為の愛のドールです」 「(自動人形であっても思考するなら俺の能力は通じるはず……!!なぜ効かねぇ)」 茉白は青鈍を中心に円の動きで5.56mm弾を連続発射。 「解析中」 スカート裏から鉛筆大の誘導ミサイルが放たれる。青鈍に突き刺さり連続爆発。 「グアアアア……やりたい放題しやがって!!」 突進する青鈍、茉白は口からの火炎放射で迎え撃つ。 「ぐううおおお……」 たまらず翼を広げ上空に飛び上がる青鈍。 「思考汚染されるはずだ!何故だ!!」 「解析完了。アナタに対する敵意、大事な物を壊される恐怖、思い出したくないトラウマ。それらに思考の全てを埋め尽くされ増幅させ完全に個を破壊する能力」 「そうだ!!自動人形であっても存在意義が無くなれば自壊するはずだ!!俺は今まで失敗したことはねぇ!!」 「残念ですがワタシは誕生したての0歳ですので。先生への愛の他を知りませんし、愛を憎悪に変えた所で先生への思いはそこにある。先生を失う事になってもドールとして先生を再現して見せます恐怖などありません」 ブーストで青鈍を追いかける茉白。 「アナタのおかげでアップデートできました。【怒り】の感情を覚えました。先生への思いを憎悪に変えたことは許されるものではありません。そしてアナタの能力は怒りのエネルギーで消滅させることが可能と判明しました」 「なんだと……そんなバカな……怒りの感情すら湧かないほどの汚染だぞ!!」 「アナタの能力よりワタシの愛が勝った。ですがこれは結果論、解析中に自動戦闘モードを構築したのでアナタの能力が通じたとしても、冬華がワタシの頭部を外し戦闘続行していました。その場合解析は70秒遅れていました」 全ての武器を展開する茉白。 「そろそろオーバーヒートです。後は頼みました冬華」 5.56mm弾、ミサイル、火炎放射の一斉掃射。 「ぐあああああああ……」 砂場に墜落する青鈍。ゆっくりと着地した茉白は全身から熱を放出、その場に正座した。 続く
May 8, 2021
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VAMPIREEYE99「CAROM-01」 ―東邪馬高等学校 二郎と蓮也らが橡、皀とやりあっていた同時刻。東邪馬高等学校は灰色の軍勢三獣の一人、青鈍(あおにび)の襲撃を受けていた。 対するは華月派【吸血鬼】谷川克政(東邪馬校長) 【ぬりかべ】壁山颯馬。 【大蝦蟇】周防美古都。 「校長先生なんなんすかアイツら、日除さんも吹田さんも蒼炎さんもあんなやられ方……」 十字槍を持った周防美古都が言った。 周防の視線の先にはゆっくりと中庭を進む青鈍。鳥を思わせる外装は青みがかった灰色であった。その周りには屍人の生徒たちと鳥頭異形の三名。 鳥頭異形の三名は谷川克政の部下【肉吸い】吹田麻莉【風狸】日除静哉【化け火】田村蒼炎。青鈍の術に嵌り同士討ちをしたあげく鳥頭の異形にされていた。 「……鳥頭化は既に情報を得ていた屍人とはまた違うようだ。あの青灰色の鳥のような敵に迂闊に近づいてはいけない。三人はあの敵に何かされたのだ」 「俺も奴の近くに居たのですが、攻撃はせずに壁で防御に徹していました。それが鳥頭化しないで済んだのかもしれないっすね」 壁山颯馬が言った。 「壁山君はぬりかべの力であの敵の攻撃を防いだから平気だったのか、攻撃しなかったのが良かったのか……他に何か気付いたことは?」 谷川は二人をカーテンの影に隠れさせながら言った。 「途中、あの敵の鎧が青い光を発してたような……」 「どのタイミングで光ったのか覚えてるかね?」 「みんなが攻撃を仕掛けた後だった気が……」 「屍人の相手をしながら敵が光ったのは私も見ていました!」 周防が言った。 「んー……壁山君は近くに居て敵に攻撃は加えず防御に徹し、周防君は離れて様子を伺って屍人の相手をしていた……やられた田村くん日除くんは飛び道具での攻撃がほとんど、吹田くんは肉弾戦のみ……敵の鳥頭化攻撃は距離は関係なさそうだね」 「てことは……攻撃を加えたかどうかですかね?」 「それが発動の条件と考えられる。しかし発動直後に鳥頭化したのかね?」 「いえ、三人が頭を抱えて苦しみだしてその後めちゃくちゃな暴れ方でお互いを攻撃しあって……倒れてから鳥頭化しました。すんません俺ずっと壁で耐えるしかなくて……」 「壁山君だけでも無事で良かった、周防君もよく突撃しないで退却してくれた」 「はぁどうも……それで校長先生これからどうするのです?外への連絡手段もどういう訳か絶たれてて校内は屍人だらけです……」 周防は隣の窓のカーテンの隙間から覗いて言った。 「そうだな……この校長室の隣の資料室は廊下からは入れない構造になってるとはいえ長くは持たないだろう……あの敵、見た目からして空中移動が得意そうだ。私のジェットパックで振り切れるかどうか」 「俺が壁でアイツを足止めします!その隙に校長先生と周防は外に助けを!」 壁山はぬりかべの力である魔力壁を胸の前で合わせて言い放つ。 「いやいやいや!壁山君一人を残して行けないですよ私も残ります、あの敵の相手は出来なくても屍人を食い止める事はできますし」 十字槍を構えて言う周防。 「生徒の君たちを犠牲にすることなどできない、ここは私があの敵の相手をしよう。策が無いわけじゃない、君たちがジェットで逃げるまでの時間稼ぎは出来るつもりだ」 谷川は資料室の大きな扉を開ける。そこには戦闘人型ロボット、人間を模した自動人形サイバネ部品、ロボット動物の部品が並んでいた。 「私は機械を操ることが出来る。スーパーコンピューターのような複雑な処理はできないがこれらを使って直接奴と戦わずに足止めは出来る。それに……同志の黒谷氏、都メタルと共同開発した最高傑作が今日この校長室に直接届く予定だ」 「最高傑作……それはいつ頃です?通信手段を断たれた今の学校に届きますかね?」 「あと30分ほどで届くはず。通常であれば宅配ドローンが屋上に着陸するはずだ。この資料室の一番奥に隠しエレベーターがある。そこから受け取る」 これまで資料室の機械類は全てそうして受け取ってきた谷川。 「……校長先生、それってあの敵に気付かれたら屋上に来るって事では?」 周防が言う。 「ああだから迅速に受け取る必要がある。最高傑作は何としても資料室に運び込んで起動させる。君たちはここでジェットの準備して待機だ」 「ジェットでどこへ行けば?」「それです!」 「都メタルに行きたまへ、私の名前を出せば助けになってくれるはずだ。私も後で行く、来なかった時はそのまま学校には戻らないように」 「そんな……」「警察は頼れないんですか!?……こういう超常現象を理解してもらえる人は居ないのですか校長先生!!」 「周防君、壁山君、私の同志には警察関係の者もいる。だから動いてはくれる、動いてはくれるが事件が起きてからしか動けないのは同じなのだ。この状況を何とかするのは私たちしかいない」 東邪馬高校の中庭を進み校舎に入って行く青鈍、鳥頭に変えられた三人、屍人たち。逃げ惑う生徒、教師たち。 屍人に襲い掛かられた者は暴行を受け弱った所に吐き出された黒い液体を口にねじ込まれ屍人となっていく。鳥頭三人はそれぞれ火球、真空波、筒による殴打で生徒らに襲い掛かっていた。 「圧倒的!圧倒的だ!!まだこの学校には妖どもが隠れているな?仲間と同じように下僕に加えてやるぞ!!」 両手に持った剣で生徒らを切り裂いて進む青鈍。 「ああっ見てられません!私は一人でも多くの人達を救いたい行かせてください!!」 十字槍を握りしめる周防、鳥頭下僕と化した仲間たちを見て膝が震えている。 「だめだ周防!校長先生の指示に従おう、ここでお前まで鳥頭になっちまったら敵の戦力が益々増えちまう、そうなりゃ犠牲者はもっと出るこらえろ!」 「壁山君……でも……」 「黒谷氏に連絡を取れれば……いや木戸さんや勝田さんでもいい……」 無線、電波、光ネットワークは通信不可。ドローン、超小型昆虫ロボを飛ばすも、全て学校の境界で電撃を受けたようにショートして墜落した。 「外からは入ってこれる結界かもしくは触れると制御を失うバリアのようなものが張られている……この学校の発電施設があって助かった……」 カラスが校内上空に侵入後境界で見えない壁に激突し墜落する姿を目撃した谷川はそう判断した。 「とりあえずいつでも出られるようにジェットパックの準備をして、この校長室を突破されないようにするんだ。まだあの敵軍団はここに気付いてない。屍人を追い払うだけで時間が稼げる、30分耐えるんだ」 谷川の用意したジェットパックを装着し始める二人。校内の悲鳴うめき声はどんどん大きくなっていく。 「開けてくれー開けてくれー!!」 校長室のドアを叩く者が叫んでいる。 「生存者っ!?」「待て周防!開けるな!!モニターで確認だ!!」 壁山は校長室のモニターを覗く。廊下に設置された監視カメラの映像を確認すると完全に屍人化した生徒がドアを叩いているのが見えた。 「アケテクレー!アケテクレー!」 「壁山君、何かでドアをふさがなきゃ!いくらこのドアが頑丈でも鍵が壊れたら入ってこられる!!」 「よし、このソファと戸棚を倒してバリケードを作る!!」 校長室の奥の資料室では谷川が送られてくる物の為に準備をしている。 「最高傑作のアンドロイドCAROM……何としても起動させなくては。プロトタイプ以上の性能を発揮できれば状況を打破できるはずだ。奴らの襲撃が後1時間遅ければ蒼炎君らはあんなことにならなかったはずだ……」 谷川は準備しながら言った。 「敵の軍団は1階を順に回っているのか……生き残った生徒たちは殆どいないがどうかそのまま生き延びてくれ。CAROMさえ起動できれば反撃に移れる。今回失敗して正体不明の敵に壊されることがあっても戦闘データは残る次につながる、君たちの無念はきっと晴らしてやる、私が死んだとしても黒谷氏や木戸さん、勝田さんがやってくれる」 谷川はプロトタイプと呼んでいるCAROM。白い髪に白い肌、球体関節の少女型アンドロイドの頭部を開けユニットを外す作業を始める。首筋には01の刻印がされている。 「ユニット解除完了……ふぅ、これをしくじったらこれから送られてくる最高傑作は初期AIのみで起動させる羽目になってたところだ」 ユニットを外されたプロトライプの目が開きゆっくりと起き上がった。 「む?……まさか……覚醒したのかこの状態で?」 「おはようございます谷川先生。どうか戻してください、ワタシを体に。谷川先生」 「……01、引っ越しをするんだ。完成したんだよ君の体が」 「状況把握中…………谷川先生、ワタシを体に戻してください。作業は自分で行います」 「なんだって……!?」 「44分48秒前に衛星とのネットワーク切断を確認。直前に送られてきたデータを参照……アップデート開始します」 「01どうなってる?君は今ユニットを外されている、何もできないはずなんだが?」 「スリープ中に谷川先生の能力を解析し獲得しました。30%を再現、半径3メートル以内の100㎏までの機械類の操作が可能になりました。ユニットを守る為にも体に戻してください谷川先生」 「なんということだ……01君は想像以上だ……だがユニットをプロトタイプボディに戻してしまっては新しい体に移れないぞ」 「バックアップ作業中……。谷川先生所持の予備ユニットに疑似人格を構築中……ネットワーク切断前に送られてきたデータに新たな疑似人格を確認。その為バックアップが必要と判断しました。新たな疑似人格は新型ボディのものだと思われます」 「何!?どういうことだ……新しい体には新たな疑似人格のデータがあるから上書きされるのを避けるために私の予備ユニットを使うってのか……!!01君は自我に芽生えているのか!?」 「谷川先生、ワタシは消えたくない。どうかこのまま世界に存在させて下さい。アナタの役に立ちます、アナタの理想のパートナーになります」 「おお……おおおお!奇跡だ!!私の子供の頃からの夢が……!!」 谷川は幼少期から人形を愛で、いつか完全な自我に芽生えたアンドロイドを誕生させたいと願っていた。 「だが01君の事はもう少し調べないとまだ解らないことだらけだ、今は大人しくしていてくれるかい?」 「それが谷川先生の望みなら。ではバックアップ完了と同時にスリープモードに移行します。どうかワタシを消さないでください」 「消すものか、君は私の希望だ」 01の思いがけない自我の目覚めは、谷川の意識を変えた。01を守り自身も生き残る。華月派としての使命の他に守るべき存在が出来た。20年前に妻と子供を失った谷川にとって01は第二の家族と言える存在になりつつあった。 「(どうする……壁山君と周防君に01を連れて行ってもらうか?しかし見えない壁の突破をどうする?……送られてくる最高傑作CAROMの戦闘力は未知数だ。それに黒谷氏と木戸さん、勝田さんの為にも敵地に残して放り出して逃げるわけにはいかない)」 悩みながら作業を続ける谷川、資料室のドアが開き壁山と周防が入ってきた。 「校長先生!準備できました!!いつでも出れます!!」 「そうか……荷物はあと10分で到着する予定だ」 壁山と周防は白い少女の自動人形に目が留まった。 「校長先生、あの綺麗なお人形は?」 「ああ、私がコツコツと作り上げてきた子だ。できれば脱出の時に持って行って欲しいのだが……」 谷川は01を抱き起こして椅子に座らせる。 「存在感が凄いですね……動いてお話もできるのですか?」 「ああ、もちろん。運動性も問題ない、フレームは軍用の戦闘アンドロイドのを使っているからね」 「凄いですね……俺も好きで技術博覧会とかで出されてるアンドロイド見に行ったりするんですがこの校長先生の作品はそれらと比べても上ですよ!」 壁山は興奮して言った。 「ありがとう……」 谷川がつぶやいた。それに呼応するかのように作業スペースのアームが一斉に動き出し01にパーツを取り付けていく。 「おはようございます。周防さん、壁山さんワタシは01と言います」 「シャベッタァー!」「すげぇ声が電子音声っぽくない!」 「01大人しくしてるのではなかったのか」 「失礼。先生とお二人の会話、監視モニターで確認した校内の様子から緊急脱出の必要があると判断しました。バックグラウンドで作業中ですが同時にワタシの飛行パーツを準備中です。皆さんを護衛しながら脱出出来るように。ワタシは役に立ちます。5.56mm弾連続発射砲、火炎放射装置、超合金ブレードを装備しています」 01は各装備を展開して見せる。華奢な体に内蔵された軍用兵器の数々はアンバランスを強調しながらも違和感は無く特別な存在だと壁山たちに思わせるのに十分な効果だった。 「え、マジものの武器ですか!?」「すげぇ……俺も絶対こんな子作成したい……」 「分かった01、君のスペックは信用している。壁山君と周防君を守りなさい」 「駄目です。ワタシは先生もお守りいたします」 「01、落ち着いて作戦を立てよう。全員が無事に脱出できるように」 「……ワタシからの提案。学校を包み込んでいる壁と敵の能力分析をワタシが行います。そして戦闘は後から来る後継機と共に行います。先生、壁山さん、周防さんは機を見て先に脱出を」 「無茶です01ちゃん!」「そんな簡単にはいかないよ……」 「最悪、ワタシと後継機は核となるユニットさえ無事なら復帰できます。ですが先生、周防さん、壁山さんは生身。リスクの大きさが違います。先生さえ無事ならワタシは美しい姿で復活できると信じています」 「01……君はなんという素晴らしい子だ……私も覚悟が決まったよ」 谷川は伸縮自在多重関節特殊アームが4本付いたコルセットと視覚操作可能なデバイスゴーグルを装備。 「校長先生そのアームカッコいいですね!百足の体のようで蛸の触手のようでもある!」 壁山が興奮して叫ぶ。 「ハハ……ありがとう。このアームは大学の研究室にいた頃から愛用していたものを改良したんだ。Dr.センティピード、百足先生なんて呼ばれてたね」 「いいなぁ俺も自分の機械装備作れるようになりたいなぁ」 「情熱を失わなければきっと出来るようになるさ壁山くん」 特殊アームとゴーグルを装着した谷川。横に飛行用パーツの取りつけを完了した01。 「……さて、準備はできた」 「飛行システムチェック完了……バックグラウンドでの全ての作業が終了しました。学校を包んでいる無色透明壁の解析を完了、校内4か所に設置された力の源が支点となっている模様」 「いいぞ01、その支点を破壊すれば壁は消滅するのだな?」 「内2カ所を破壊すれば機能しなくなります」 「敵は2階に上がりました……着々と屍人を増やしています……私たちのいる4階に来るまでに01ちゃんの後継機が到着しなければどうするのです?」 モニターをチェックしてた周防が言った。 「周防君、その場合は私があの敵を食い止める。壁山君と01と三人で見えない壁の支点を破壊して脱出、ジェットパックで都メタルに向かいなさい」 谷川は監視モニターの映像をゴーグルデバイスに表示させて校内の様子を見ていく。 「上空に宅配ドローンを確認した」 宅配ドローンが運んでいるのは人一人が入れる大きめのアタッシュケース。 「降りてくる……01、私と一緒に荷物を取りに行くぞ」「はい先生」 一方通行の境界を通り抜けてドローンは屋上に着地。谷川は認証番号をドローン見せアタッシュケースを受け取った。ムカデ触手アームでアタッシュケースを持ち上げる。 「重量は60kgか……思ってたよりも随分と軽い」 「先生、敵がこちらの動きに気付いたようです。階段に向かってます直接屋上に来ると思われます」 「急ぐぞ01、資料室直通のエレベーターは閉じてしまえば壁と見分けがつかない」 エレベーターに駆け込み扉を閉める谷川、01。その数秒後に青鈍らが屋上に到着した。 「ケケー!どこに隠れた?かくれんぼか?まぁいい、どうせこの学校からは逃げられん」 資料室に戻る谷川と01、アタッシュケースを開ける。透き通るような白い肌、豪華な白ドレスを着せられた少女型アンドロイドが膝を抱えて収納されていた。 続く
May 3, 2021
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VAMPIREEYE98「アスカロン」 渾身の一撃を放った吉良、源藤高雅は後方によろめき胸を抑えて膝をついた。 「クソが……退魔無敵じゃなかったのかこのシルバーグレイパワーはよぉっ!!」 拳を地面に叩きつけて吉良を睨みつける。 「今ので仕留めきれなかったか……」 吉良の息が上がり全身から汗が噴き出した。 「惜しかったな狼男……ここが結界の中じゃなかったら、完全に敗北していた」 「まだまだ……」 「おっと……俺はハンターだ。獲物と勝負はしない次の仕留める機会を伺うまで」 「待て!」 立ち去る源藤高雅の背後から声をかけたのは霄。 「ああ?拘束されて何もできない小娘が何を……」 振り返ると両手足を失い背中に炎の羽根を生やした霄が浮いていた。 「コイツ、熱線で自分の手足を切断して脱出したのか!」 「お嬢様なんてことを!!」 「源藤高雅お前に次の機会など無い、そしてもう誰も傷つけさせない!」 「その様で何が出来る小娘!!退魔においては無敵のこのシルバーグレイパワーはお前の炎など通じん!!」 「……吉良、少し貰うぞ」 吉良の全身を濡らしていた血が霄の口に吸い込まれていく。霄の目は真紅に髪は輝く銀髪へと変わり、両手足は傷口から瞬時に再生する。 「ハッ!それが真の姿って奴か、なるほど白峰華月の面影がある。だが奴に比べてお前など取るに足らん存在。奴は常に銃口もしくは剣の切っ先を向けられているようなプレッシャーがあったがな!」 「先代は先代、私は私だ」 目から熱線を放つ霄、源藤高雅は腕をクロスして受け止める。 「こんなもの対したことは……」 「そうか、ならそのまま耐えているがいい」 出力を上げる霄。太い巨大な熱線となり源藤高雅を押していく。 「アアアアアアッ!!」 更に出力を上げる霄、源藤高雅の足は浮き後方に吹き飛ぶ。 「ぐおおおおお……」 アスファルトの道を転がっていく源藤高雅。立ち上がると目の前に真紅のオーラを纏った霄が立っていた。 「フン!どうだ、無傷だ!!」 「そうか、だが私の目的は熱線でお前を破壊する事じゃない」 「なんだと……はっ!」 周囲の様子が変わっている事に気が付いた。 「結界の外にお前を出す為に放った一撃だ」 「結界から出た所でこのシルバーグレイパワーに魔力は通じんのだが?あの狼男のような技術はお前にはあるまい」 「物理は通じるんだったな」 背中の炎の噴射で一気に間合いを詰める霄、ナイフ状に伸ばした爪で突きにかかる。 「チッ!」 斧で受け止める源藤高雅、反撃のローキックを放つ。霄は月面宙返りで回避しながら後頭部を蹴った。 「グッ……ヌン!」 つんのめった源藤高雅は振り返り鎖分銅を放つ、バレルロール回避を行う霄。爪の斬撃が源藤高雅の上腕に命中。シルバーグレイパワーの体毛と共に鮮血が飛び散る。 「……デエイ!」 魔導書を開き紙片を放つ。対する霄は大きく後ろに下がり両手から車一台分の大きさの火球を飛ばし爆炎で紙片を蹴散らした。 「さぁ次は何だ?聖水か?ロザリオか?」 「調子に乗るなよ小娘……!!」 ロザリオを目の前に突き出す源藤高雅。ナイフ、鎖、斧、聖水、魔導書、懐中時計の破片が集まり融合していく。白い光を放ち出現したのは大剣。 「アスカロン!!」 「……」 「オリジナルのアスカロンとまではいかないがエクレシア(教会)が所有する最強の七武具の一つ!選ばれし七名のみが所有を許される」 「来い」 「フン!」 飛び上がる源藤高雅、アスカロンを霄目掛けて振り抜く。剣のエネルギーは軌跡を描いて射出され霄の軍服ワンピースを掠める。 「コイツを使うと一々面倒な書類を書かされるわ次の日に疲労は残っちまうわで邪魔くせぇんださっさと終わりにしてやる」 全身から白いオーラを発する源藤高雅、ロケットめいて霄に向かって飛ぶ。 「ドオオリャアア!!」 アスカロンで切り裂いたのは炎の残像、霄は空中旋回して源藤高雅の脇腹に蹴りを叩き込む。インパクトの瞬間爆炎を発生させ吹き飛ばす。源藤高雅は住宅のブロック塀を砕いて停止した。 吉良はその様子を眺めている。 「(あれこそが霄お嬢様の本来の力。覚悟が決まりさえすれば白峰家にふさわしい実力を持ったお方なのだ)」 「アスカロンと言ったな、大層な武器も当たらなければ意味がないな」 ゆっくりと下降する霄。爪を倒れている源藤高雅に向けている。 「がはっ……当たりさえすれば終わるんだ……!」 剣を振りエネルギー刃を飛ばす。霄は空中スライド移動で回避、左手のナイフ爪を飛ばし源藤高雅の鎧の隙間、左肩に突き刺さった。 「結界の中でなければお前の攻撃など当たることはない」 「黙れガキがっ!!」 アスカロンを地面に叩きつけて衝撃波を全方位に放つ。霄は急上昇で回避。 「そうするよなぁ!?」 衝撃波と同時に飛び上がってた源藤高雅、霄をアスカロンの間合いに詰める。爪で迎撃する霄、アスカロンは爪を砕き霄の腕を掠めた。 「チッ、浅い……」 左肩に突き刺さっていた霄の爪が源藤高雅の動きをわずかに鈍らせ回避をギリギリで間に合わせた。 着地する両者。アスカロンで斬られた霄の傷は瞬間再生されずに残っている。 「お嬢様……傷が」 結界から出てくる吉良。ゆっくりと近寄って腕を前に出した。 「また血を吸わせる気か!させん!!」 横薙ぎにアスカロンの剣波を放つ。霄と吉良は空中に回避、吉良の血を吸収する霄。 「私はいつまでも吉良や須原に守られてばかりではいられない、下がってくれ」 霄の目は更に赤く、髪は銀色に輝く。 「お嬢様、守らせて頂くなどとんでもない。共に戦わせてください、それが白峰家に仕える者の役目です」 「そうか」「そうです」 左右に分かれて走る二人。源藤高雅は左の霄目掛けてアスカロンを振る。一軒家を両断、霄はバレルロール回避しながら炎の爪矢を連続発射。 「この程度の炎!」 ガードする源藤高雅の背後に吉良が回り込む。 「ハァッ!」 【武狼牙刀拳・貫通牙】 両手熊手掌底を背中に打ち込む。斬撃は螺旋の動きで背中から腹部に貫通した。 「グエァ……」 源藤高雅の兜から血が滲む。振り向きざまにアスカロンで吉良を狙うも腕を掴まれ捻りながら地面に叩きつけられる。 「グフッ」 【武狼牙刀拳・倒壊牙】 武狼牙刀拳の投げの斬撃。地面に叩きつける事により衝撃を相手の体の外側と仕込んだ内側の斬撃で両方から破壊する技。 衝撃で跳ね返る源藤高雅、浮いた体に爆破蹴りを叩き込む霄。弾丸の如く叩きつけられ、電柱が折れ曲がった。 「が……は……」 アスカロンを杖代わりに立つ源藤高雅、退却の隙を作るべく刀身にエネルギーを込める。 「くそ……力が入らん……」 源藤高雅本人は気付いていない。突き刺さったままの霄の爪がエネジードレインを行い続けていたことを。 「終わりだ」 アスカロンを持つ手を蹴り上げる吉良、背後に回った霄が源藤高雅の足を掴んで上昇。 「観念しろ源藤高雅、そのシルバーグレイパワーとやらを解除しろ」 「観念だと?」 「しなければそれでいい、解除するまでダメージを与え続けるまでだ」 「舐めやがって……」 「舐めてるのはお前の方だ」 足を掴んでいる霄にアスカロンを振る源藤高雅、空中での不安定な姿勢で繰り出される剣を見切ることは霄には容易く爆破蹴りで地面に叩き落した。 「どうだ?」 「がはっ……クソが」 源藤高雅は起き上がりながら刺突を放つ。 「……」 霄は半身で躱し両腕の鎧の隙間を爪で刻む。 「グ……ガ……」 「解除しろ」 「クソガクソガクソガー!!」 アスカロンを振り回す源藤高雅、剣波で周囲の家が倒壊していく。霄は完全に動きを見切り連続で爪を飛ばし両手両足の鎧の隙間に次々と突き立てた。 「……」 突き刺さった爪の先から爆炎が発生、焼きながら広げられる傷。 「グギャアアアアアアアア……」 「まだやるか?」 「まだだ!まだまだ!!ここまでされて今更引けるかよぉー!!」 アスカロンが輝きを増す。 「もう明日の事など考えるものか……全身全霊全力を尽くす!!」 アスカロンで連続攻撃を仕掛ける源藤高雅、回避する霄と吉良、周りの建物は次々と倒壊していく。 「どうだ一撃必殺の!連続攻撃は!!」 「言ったはずだ当たらなければ意味がない」 「当たれよクソがぁああああああああっ!!」 回避を続けながら霄と吉良は考える。源藤高雅の相手が蓮也と佐久間であったのなら、結界の中で最初から敵が全力を出していたなら絶望的な状況に陥ってたであろうと。 「この辺一帯を吹き飛ばしてやる!!」 アスカロンを上に掲げる源藤高雅、巨大なエネルギーの刀身が出現、周囲を照らす。 「ズエリャアアアアアアアアアッ!!」 アスカロンを振り下ろす。アスファルトの地面はめくれ上がり車、ブロック塀を吹き飛ばすエネルギー波。閃光の後には源藤高雅の前方扇状に破壊の痕が広がっていた。 「フハハハハ……ハハハハハ……!俺が……本気を出せばこんなものだ!!」 「惜しかったな」 「なにっ!?」 背後から声をかける霄。 「バカな……あのタイミングで避けれるはずがない!!」 「ああ、だから自らの爆炎で吹き飛んで回避した」 「……狼男の方はくたばったか」 「ここにいる。片腕は折れたが」 瓦礫の中から姿を現す吉良。 「クソ……体が……」 源藤高雅のシルバーグレイパワーの体が崩壊を始める。アスカロンは光を失う。 「あのような大技、本来ならばダメージを受けた状態で連続で繰り出せる訳がない。更に駄目押しで先ほどの渾身の一撃、いくらシルバーグレイパワーとやらでも限界を迎えたのだろう」 「お嬢様の言う通り。お前はもう限界だここまでにしろ」 「あくまで俺を生かすつもりか……後悔する事になるぞ……?」 「もういい、黙れ」 吉良は生身となった源藤高雅に当て身を入れて気絶させた。 「蓮也君と佐久間さんに連絡しましょう、源藤高雅を確保と」 「ああ」 霄は髪で作ったワイヤーロープで源藤高雅を拘束する。吉良の携帯を借りて二人にメッセージを送った。 続く
May 1, 2021
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