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「どこに行こうとしてた?」 ウェイ・ブー が庇った 「嘘つき少年 カイ 」 がピストルを持ってあらわれ、すべてを告白し、 ユー・チャン を撃ちます。撃たれた ユー・チャン が言います。
「満州里」
「何をしに行く?」
「象を見る」
「おまえらはゴミだ」 カイ はそう答えると銃口を自分に向けます。
「この世界、ヘドがでる」
「どこへ行く?」 そう答えると、孫の手を引いて駅から出ていこうとする 老人ワン・ジン を追った少年が一言叫びます。
「人は行ける、どこへでもな。そしてわかる、どこも同じだと。その繰り返しだ。だから行く前に自分まで騙すんだ。今度こそ違うと。わかわるか?お前はまだ期待している。一番いい方法は、ここにいて向う側を見ることだ。そこがより良い場所だと思え、だが、行くな。行かないからここで生きることを学ぶ。」
「行こう!」 「『希望』はどこにあるのか?」
パゥオー! ぼくのなかで 2019年ベスト1 の映画が決定した瞬間でした。
監督 フー・ボー 胡波
脚本 フー・ボー
撮影 ファン・チャオ 范超
美術 シェ・リージャ 謝萌佳
編集 フー・ボー
音楽 ホァ・ルン
キャスト
チャン・ユー 章于(ユー・チェン 街のチンピラ)
パン・ユーチャン彭昱暢 (ウェイ・ブー 高校生)
ワン・ユーウェン 王玉雯(ファン・リン 女子高生)
リー・ツォンシー李双喜(ワン・ジン 老人)
2018
年製作/ 234
分/中国
原題「大象席地而坐」英題「 An Elephant Sitting Still」
2019
・ 12
・ 20
元町映画館no33
追記2020・01・01
全く偶然なのですが、 「満州里」
という場所について、ぼくには思い出があります。四十代の半ば、神戸で大きな地震があった、その数年後のことです。転勤した郊外の職場の近くには、まだ、たくさんの仮設住宅が立ち並んでいました。
どこか遠くに行ってみたい
という願望があったのでしょうか。長期休業の期間、何度か、休みを取って中国の 内モンゴル自治区
の首都、 呼和浩特(フフホト)
という町の日本語学校に日本語を教えに出かけたことがあります。
その学校で学んでいたのは、十代の終わりか二十歳過ぎの若い人たちだったのですが、それぞれ専門学校や高等学校を出て 「日本に行きたい」
という夢を持っていました。その中に遊牧で暮らすモンゴル族の少女がいました。
「故郷はどこですか?」
そう尋ねたぼくに、彼女は教室の後ろに貼ってあった世界地図を指さしながら答えてくれました。
「家族は、今、このあたりにいると思います。」
彼女の指は中国とロシアの国境近く、バイカル湖の少し南のあたりを押さえていました。家族に会うには二泊三日の列車とバスの旅をするそうです。その故郷の駅が 「満州里」
でした。 石家荘
からであれば、おそらく2000キロを超える彼方の町です。
あれから、二十年の歳月がすぎました。名前も忘れてしまった彼女が、念願の日本留学を果たしたのかどうか、本当に、この国で 「希望」
を見つけたのかどうか、今となっては、もう、わかりません。
中国も日本も 「希望」
を見つけにくい国になっていることは間違いないでしょう。 28歳
で、この映画を作った 監督フー・ボー
は、 29歳
で自ら命を絶ったそうです。まったく、言葉がありません。哀しいだけです。
追記2021・07・28
東京オリンピック2020
が開催されています。この国のコロナの感染者数は最多数を更新し始めていますが、メディアは金メダルに驚喜しています。 SNSの投稿に若い人たちの
「金メダル・イイネ!」
が氾濫しています。
1936年
、 ヒトラー
が強行し、 レ二・リーフェンシュタール
が 「オリンピア」
という映画で宣伝した 「ファシズム」の祭典
を思い浮かべています。中止された 1940年
の 東京オリンピック
のために建設された国立競技場、 「明治神宮外苑競技場」
では、 1943年
、 2万5千人
の学徒兵士が行進し、歓喜の拍手で戦場に送られた 「学徒出陣式」
が行われたそうです。
「ゴミだめ」
化しつつある世界から、 「希望」
を見つけるために 「出発」
することは可能なのでしょうか。少なくとも、歴史を振り返ることを忘れているこの国に明るい未来が待っているとは思えません。
古い投稿を修繕しながら、 監督フー・ボー
が生きていたら、今、どんな映画を撮るのだろう、そんな思いがふと湧きました。
追記2022・08・20
コロナの蔓延の中で強行されたオリンピックが終わって一年経ちました。 強行した権力者は狙撃され、取り巻きの権力者たちとインチキ宗教との結託が暴露され始めています。
インチキな記録映画は不発に終わりましたが、一方で、庇い手がいなくなったのでしょうか、お金にまみれた関係者が逮捕され始めました。コロナの蔓延は、もはや警報状態ですが、有効な対策として打つ手もなければ、打つ気もない様相です。いよいよ ゴミだめ
がぶちまけられ始めたのでしょうか。
今や 「希望」
という言葉が死語になりつつある予感、いや、実感さえし始めましたが、それでも、 希望
にかけたい今日この頃です。どこかに、 静かに座っている象
がいるのではないでしょうか。
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