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2010.12.09
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昨日とりあげた歴史認識の続きですが、今も続くアフガンでの戦争を内田先生はどう見ているのでしょうね。
そのあたりを「街場のアメリカ論(2005年刊)」より引用します。

最近起きた尖閣諸島事件や北朝鮮の砲撃事件で日米安保も新しい局面を迎えているにしても、アメリカの戦争体質に関する内田先生の洞察は明晰であると思うわけです。


「街場のアメリカ論」P128~132

 つまり、歴史はアメリカ人に「戦争で打ち負かした相手は進んで同盟者になる」という経験則を教えているのです。戦争しないことよりも戦争に勝つことの方が同盟者を増やすうえでは効率的であるというロジックはアメリカ人にとってはそれこそが「歴史の教訓」なのです。ですから、アメリカが「とりあえず戦争に勝つ」ということを世界戦略の基本にするのは(はた迷惑な話ではありますが)ごく自然なことです。

 イラク戦争もこの成功体験から抜け出せないまま始めてしまいました。負け戦争からの撤退はベトナム戦争で経験しているはずなのですが、あのときも「止め方」がわからなくて、アメリカはたいへん苦労しました。
 ベトナム戦争も戦略的には大失敗でしたが、あのときはまだ東西冷戦構造という巨大な「物語」があって、共産主義と資本主義勢力の現地政権の「代理戦争」という言い訳が通りました。しかし、イラク戦争ではアメリカが肩入れする現地戦争が存在しません。
 ソ連が崩壊したことによって見た目にはアメリカの一人勝ちなんですけど、実際には貿易赤字も累積して、世界最大の債務国になっていますし、生産力も落ちています。依然として世界第一の国ではあるんですけど、総合的な国力や、国際社会での威信は低下している。そういう下降局面の中で、アメリカの存在感を訴えるためには、格下の国に対して軍事的攻撃を加えるということはたしかに有効な政策です。エマニュエル・トッドはこれを「演劇型戦争」と呼んで、アメリカはアフガニスタン、イラクの後もイランやキューバなどの小国に対して演劇型の戦争を仕掛け続けるのではないかという不安を語っています。

 9.11から後のアメリカは依然として圧倒的な軍事的優位を背景にして、「敵対国を同盟者にする」という路線を進んでいます。でも、所期の効果を上げていません。理由はもうおわかりですね。それは、今アメリカが敵対している勢力が古典的な意味での「国民国家」ではないからです。国家は地理的に固定された存在ですから、国土を捨てて逃げ隠れすることはできません。でも、今の敵は地理的に存在を特定できず、ただ機能的にのみ存在する、アモルファスな「テロリスト・ネットワーク」です。

 アメリカで次のテロがあったときに、その犯人たちが「アメリカ市民」であった場合、アメリカは深い混乱のうちに沈むでしょう。そのときにはじめて建国以来の「戦争の有効性」に対する信頼が揺らぐことになるからです。国民国家と国民国家が領土や権益をゼロサム的に奪い合うという古典的な「ウェストファリア・システム」で世界戦略を語ること自体がすでに困難になりつつあるという状況にアメリカはうまく対応できていません。これは統治者たちの政治的知性の問題でもありますけど、それ以上にアメリカ国民が「国民国家以外の政治単位が主体であるような政治」というようなフレームワークを受け入れることを拒否していることに理由があるように思われます。
 今アメリカ合衆国と敵対しているのは領土も国境も国民も中枢的なセンターさえ持たないリゾーム的なテロリスト・ネットワークです。彼らがそのようなアモルファスな政治単位を選んだのは、そのような不定形的なものだけがアメリカのような超大国の支配と拮抗しうるということに気づいたからです。


このあと内田先生はアメリカの没落について、次のように述べるのですが、当時(2005年)の中国と今とでは様変わりしているので、今論じるなら中国ファクターを加味して少しは違ってくると思います。


 アメリカは遠からず「没落」するでしょう。これは避けがたい流れです。ですから、戦略的な考え方をするならば、私たちの優先的な課題は、「アメリカが滅びていくことがもたらす被害をどうやって最小化するか」ということに集約されます。アメリカが急激に没落してゆくことで世界が受ける衝撃は巨大です。それがどれくらいの混乱をもたらすかは測定不能です。ですから、アメリカにはできるだけゆっくりと没落していってもらいたい。いかに周囲を巻き込まないで、静かに滅びてもらうかということを、ヨーロッパとかアジアの諸国が考えて、政策的に提言してゆかないといけないんじゃないかと思います。


そこまで言うか・・・
内田先生も、そんな「猫の首に鈴をつける」ような政策的提言を誰がやってくれるのかわかりませんがと言っていて・・・
反米の思いは伝わるけど、言った責任を取ってほしいものです(笑)

とにかく、領土や権益をゼロサム的に奪い合うという古典的なパッションを持ち続ける中国に対しては、対抗勢力としてのアメリカには、もうしばらく居てもらう必要がありますネ。







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Last updated  2010.12.09 14:28:37
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