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2013.01.05
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カテゴリ: 気になる本
日本推理作家協会賞の小説だけあって、読みでがあるけど・・・
こんなマッチョな小説を紡ぎ出す女性作家の作家魂はどこから湧いて来るんでしょうね♪
この本の三分の一あたりから、CIAとか文化大革命とかキッシンジャーの名前も登場してきて、俄然、背景が大きくなるわけです。もちろん、のちほどに中華のハニートラップも登場します。


【リヴィエラを撃て】
リビエラ
高村薫著、新潮社、1992年刊

<「BOOK」データベースより>
国際政治の楽屋裏を発狂させた男〈リヴィエラ〉。夥しい諜報戦士たちの血を吸込んだこのコードネームは、一人の天才ピアニストに死を賭した東京公演を決意させる。顔のない東洋人スパイをめぐって、東京・ロンドン・ベルファストに繰り広げる、流血の頭脳ゲーム。

<読む前の大使寸評>
タイトルがかっこいいので気になっていた本です。
ぶ厚い本なので躊躇していたけど、年末スペシャルということで、この本を借りたわけです。

Amazon リヴィエラを撃て


この本を三分の一ほど読むと中国が徐々に関わってきます。真打登場と言う感じですね。概要を知らないまま借りた本だが、思いのほか大使のツボに当っていました。
著者の語り口を味わう意味もあるので、一部を転記して紹介します。


p162~164
 ジャックは少し間を置いた。冷静に応えた。
「僕には今ひとつ分からないんだが。そんなことが、なんで今ごろ重要なんだ?文化大革命は76年に終わったし、当時の路線は誤りだったと新しい指導部ははっきり言っている。ウー・リャンの時代は過去の話だ。あんたも、さっきそう言った」
「一応は、過去の話だ。死んだ者は生き返らねえという意味でな」
 そう応えながら《伝書鳩》は口を尖らせた。
「だが、革命の旗は下ろしたが、共産党も人民解放軍も、官僚も封建遺制も独裁も腐敗もみな残った。現に今、改革開放路線は座礁しかけている。もう半年もすりゃ、また強硬派の出番だ。賭けてもいいぜ」
 あらためて言うまでもなく、この男はアメリカ人だ、アメリカ式民主主義の申し子なのだと、ジャックは冷めた思いで《伝書鳩》の厳しい顔を眺めた。北アイルランドで、イギリスの民主主義の下で虐げられてきた自分たちの感じ方とは合わなくて当然だった。
 だが、過去の話を掘り返すアメリカの真意は、民主主義の大儀ですらないというのが真相だろう。政府と議会の微妙なバランスの中で、対中国政策を左右する政治家たちの皮算用が働いているだけなのだ。
(中略)

《リヴィエラ》を撃つ。茫々と高鳴る胸で、ジャックは無言のままグラスを掲げた。《伝書鳩》は、絶品の笑みを見せてそれに応えた。
 ロマネコンティを空けてしまい、空のボトルを窓から空高く投げ上げた。ラジオのボリュームをいっぱいに上げて、すでに4楽章のロンドにかかっている変ロ長調のブラームスを流した。シンクレアの指が、魔物のように軽く飛翔していく。


中国のスパイが登場するあたりから、米中覇権にからんで《リヴィエラ》の重要さがクローズアップされるが・・・・
著者のパワーポリティクスに関する博識とか、中国嫌いが垣間見えてくるわけです。
CIA最大の不祥事にたいして《伝書鳩》とCIAの《大使館参事官》の会話です。

p233
「ケリー。頭を冷やしてよく聞けよ。本来ならこれは、君の言うように、不祥事を起こした本人を処分した上で、スパイを何人か釈放してやったらそれで済む話だ。だが、今回のケースは特別だ。事件の一報はうちより早く、ワシントンの中国大使館からホワイトハウスのある男に伝えられたんだ。これはどういうことか分かるか?」
「ロンドンにスパイがいるんだ。CIA不信を、ワシントンに植えつけているやつが」
「そうだ。72年に台湾切捨て問題でもめて以来、中国関係については政府のCIAに対する心証はすこぶる悪い。中国情勢が読めてないと決めつけられている。台湾と中国の双方から不信を食らっている。実際、敵はそれをよく読んでいる。何者かがワシントンの中国大使館に内通した背景は、間違いなく《リヴィエラ》だ。うちが《リヴィエラ》を探り始めたことが漏れてるんだ。今回の調査では、中国は関係国に過ぎないが、中国はこれを利用できる。これこそ彼らのお得意のカードだ。《リヴィエラ》の調査は、そういう意味で絶対に公になっていい話ではなかった。公になったら、こういうカードを切られているのが分かっていたから、何よりも用心していた。君がそう言ったんだ。その君が、一番最初にボロを出した。全く理解に苦しむ事態だ」

「俺も・・・・分からねえよ。誰を撃ったかは分かっていたし、撃ったらまずい相手だということも分かっていた。だのに撃ったんだからな」
「いったい、なぜだ?君は相手を即死させるよう頭を撃ったんだぞ」
「理由はいくつも重なっている。一つは、向こうが先にピストルを抜いていたから。一つは、相手が俺をCIAだと知っている奴だったから。お互い、出会うべきでないところで出会ったら最後というパニックだな。一種の・・・・」
「ほかには?」
「相手が、ジャックの顔を見ていたから」
「あの若者の顔なら、何十人もの人間に見られてる」
「不特定多数の目撃者はいい。あの男に見られたというのが、俺にはパニックになった。俺は彼をあくまで傭兵として雇っただけだ。それ以上のことには巻き込まないと決めていた。それなのに・・・・危険の中でも一番危険な相手に顔を見られた。中国の情報部に睨まれたら、ジャックは世界中のどこにも逃げ場はなくなる」
「たかがテロリスト崩れの若造ひとり・・・。あの騒動は全部ジャックが起こしたんだ。どんな結果になっても同情の余地はない」

ともに《リヴィエラ》を探るジャックと《伝書鳩》は、中国の国家安全部を敵に回したようですね。

お後は、この本を読んでください。

この本でも、東京のイギリス領事館が出てくるが・・・・
尖閣問題で揺れる日中関係にイギリスが絡んできても荒唐無稽とは言えない現況が怖いといえば怖いですね(ミステリー小説の読みすぎか、笑)


amazon高村薫
1953(昭和28)年、大阪市生れ。
1990(平成2)年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1993年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞する。1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リア王』で親鸞賞を受賞。2010年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞する。他の著作に『神の火』『照柿』『晴子情歌』などがある。


『リヴィエラを撃て』1





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Last updated  2013.01.05 00:02:47
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