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2018.04.03
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『身体のいいなり』という本を手にしたのです。
内澤旬子さんの闘病記であるが・・・
胃の無い大使にとって、がんには切実な関心があるのです。



身体

内澤旬子著、朝日新聞出版、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
腰痛、アトピー性皮膚炎、ナゾの微熱、冷え性、むくみ…著者がずっと付きあってきた「病気といえない病気」の数々。ところが、癒治療の副作用を和らげるために始めたヨガがきっかけで、すっかり体質が変化し、嗜好まで変わってしまった。不思議に仕事も舞い込むようになり、いまさらながら化粧の楽しさに目覚めてしまう。そして乳腺全摘出を決断。乳房再建手術の過程で日頃考えたこともなかった自分の「女性性」に向き合わざるを得なくなりー。ベストセラー『世界屠畜紀行』の著者が、オンナのカラダとココロの不条理を綴った新境地エッセイ。

<読む前の大使寸評>
胃の無い大使にとって、がんには切実な関心があるのです。

rakuten 身体のいいなり


いかにも内澤さんというべき強気の闘病方針を、見てみましょう。
p44~47
<貧すれば病みつき、病みつけば貧する>
 癌に伴う切除手術やらなにやらは、決してたのしい話ではなかったけれど、切って塊を切除し、中の細胞を精密検査にかけたいという申し出に、逡巡も戸惑いもまったくなかった。

 あ、はいどーぞ、なんでもやってください。乳房を温存したいなどという考えも浮かばなかった。温存を検討するほど乳房にも自分の今後の生活にもまったく愛着がなかった。心の底からどうでもよかった。

 幸いにして先生の説明はとてもわかりやすかった。切除手術のときに、腋下のリンパ節細胞を三ヶ所ほど採取して、リンパ節にまで癌が転移していないか、その場で病理診断する。術中迅速病理診断というそうだ。通常の病理診断に使う標本は、ホルマリンなどの薬剤を浸透させ、腐敗しないように固定してから染色し、観察しやすいよう切片つまり薄切りにする。完成までに数日かかる。ところが迅速病理診断は、とった細胞を急速凍結によって固定するので、よそ20分で結果が出る。そのあいだ身体は全身麻酔をかけられ、切ったところを開けっぱなしで待機だ。

 この方法をセンチネルリンパ節生検と呼ぶそうだ。この検査法ができてから転移もしていないのに無駄に腋下のリンパ節をがっさり取らずに済むようになったのだという。検査によって転移の可能性が見つかったら腋下のリンパ節を含め、脂肪組織もすべて取り除く。てことは、この方法ができる以前はみんな有無を言わさずリンパ節を取られていたのか・・・。うわああ。そりゃあ癌なんだから、しかたがないけど、ハードだわ。ありがとう、医療の進歩。

 検査結果と手術方法の説明を受けてすぐにその場で手術日を5月半ばに決めた。誰かに相談してからという考えはまったくなかった。だが、全身麻酔をかけるので、身内の立ち会いが必用と言われた。鎌倉の山奥に住む両親にわざわざ東京まで来てもらうのは気が引けるし、なにより癌だと知らせて動揺されるのも面倒くさい。

 しかたなく連絡を絶っていた配偶者に電話をかけた。混乱され、とりあえず家に戻ってきてほしいと言われた。配偶者への気持ちにしこりは残っていたが、今後の仕事と生活を案じなくて済むのならばどこにいても同じなので家に戻った。手術日までの十日間は、受けていた仕事をできるだけ進めた。

 入院する直前の自分の暮らしが真に貧困といえるのかどうか。
 身体に関するエッセイにもかかわらず、金銭の話ばかり頻出してお恥ずかしい。しかし病と貧困とは切っても切れない関係にあると思う。貧困が病を呼び、病が貧困を増長させる。
 条件的に考えれば当時の私の状態は真の貧困とは言いにくい。言いにくいにもかかわらず貧困と書くことに、いまも相当逡巡している。

 まず配偶者が2005年7月まで契約編集者として人並み以上の年収を得ていたため、身体が栄養的に飢餓状態になるということはなかった。ただし独立採算制をとっていたためそれ以上のサポートをしてもらえたわけではない。交通費の捻出に頭を悩ませ、食物以外の生活必需品が買えない程度には苦しかった。

 それになにをやっても一人前の収入が得られないために、イラスト、装丁デザイン、ルポルタージュ、製本と、どんどん職域を広げたことから、部屋に仕事道具や資料が膨れ上がり、配偶者の蔵書と合わせて布団二組を敷く場所以外、歩くのもままならないほど本やモノが溢れていた。

 金銭的には楽ではなかったけれど、そういう暮らしを楽しんではじめたのも事実だし、実際に楽しかった時期もあるのだから後悔はしていない。ただ、気がついたら増えすぎて身動きがとれなくなっていたのだ。住居は山手線の内側にある。もっと家賃の安い郊外の広い部屋を借りれば済むのに、引っ越しを断行する気力も時間もないまま目の前の仕事に追われ、収入に見合わない家賃を払うことに苦しめられていた。
(中略)

 20代のころはそれでもまだ好きな仕事をしているという、どこか晴れがましい気持ちがあり、だるい身体を引きずり困窮しながらも仕事を続けていく気力があった。それも30半ばになるころから身体も心も急速にすり減って疲れていき、このまま年老いてもっと体力がなくなったら、いまの暮らしすら続けられなくなるのではという不安にとりつかれていった。

 そんなわけで、私は癌という致死性の病名を、この膠着状態を断ち切るものとして歓迎したのだった。そしてこれが人生の終りの訪れであるのなら、つまりはもうこのさき半世紀くらいの生活費を得る手段を講じなくて済むかもしれないのだ。そうなれば、こんなに清々することはない。


ウン 気丈な内澤さんである。
年金生活者に癌が見つかり、それを切除したら転移もなかった・・・てのは楽勝もいいとこで、祝勝会でも開くべきかも♪





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Last updated  2018.04.03 00:28:35
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