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2021.01.27
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『文豪と食』という本を手にしたのです。
漱石は蕎麦、芙美子はうどんというのが、いかにもというか、東西の対比が表れているでえ。
文豪の食道楽や偏愛的味覚が載っているうようで・・・面白そうである。






長山靖生著、中央公論新社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
子規が柿を食した時、聞こえたのは東大寺の鐘?潔癖症の鏡花は豆腐を豆府に!鴎外は肉食を弱肉強食の闘争に譬え、独歩は和洋折衷・官民融和の理想を重ねた。江戸っ子の漱石は蕎麦、西国出の芙美子はうどんと好みは生まれも反映、美食の追求かと思えば偏食に拘る者も。露伴、荷風、谷崎、芥川、久作、太宰など食道楽に収まらない偏愛的味覚を探る。

<読む前の大使寸評>
漱石は蕎麦、芙美子はうどんというのが、いかにもというか、東西の対比が表れているでえ。

rakuten 文豪と食


大使の好物でもあるうどんが出てくるあたりを、見てみましょう。
p57~60
<うどん「小さい花」2:林芙美子>
 由の仕事は、家中の誰より早く起き出て、表戸や裏口を開けはなち、うどんのだしを煮る事でありました。朝早く船へ乗るひとや、船から降りるひとが、「うどん出来るかア」と云って入って来ますので、その客人を当てこんで早くから戸口を開けておくのです。

 昆布や煮干を大きな木綿袋に入れ、五右衛門釜のような鉄釜にひたして、とろ火でいっときだしを摂るのですが、その間、土間へ水を打って、バンコ(腰掛)や台の上を拭いておくのが仕事なのでありました。

 台の上には、箸たてが置いてあるのですが、ここのお神さんは客なので割箸は使わずに、洗って何時までも使える青竹色に塗った箸をつかっていました。薬味のわけぎを小さく刻んで、山盛り皿に入れて出しておいて、戸口に椅子を持ち出し、だしの煮こぼれるまで、由は此椅子に呆んやりかけているのです。

 椅子に腰をかけていますと、町が谷間のように卑屈なので、海辺でありながら、何時も暗い山の町の感じでした。両方から軒が低く重なりあっているせいか、眉に煤でもついているようなうっとうしさを感じるのです。

 由が此様な町を見ながら、朝々椅子に呆んやりしていると、軒下を縫うようにして、ラムネを抜いてくれた娘が学校にへ行きます。名前をひな子と云いました。由の思ったとおりやっぱり置屋の娘でありましたが、このひな子にはもうひとつ名前があって、それがあんまり変な名前なので、由は何時も気の毒に思っていました。その変な方の名前を、土方や車夫たちが面白そうに呼んでも、ひな子は別に恥ずかしがりもせずに、「」と可愛い返事をするのです。

「ひなちゃん、今日は裁縫があるんな?」
 由は朝の挨拶に、ひな子の学課を訊くのが愉しみでありました。ひな子は、暫らく由の椅子のところにしゃがんで、
「しんどいがア」と荷物を由のひざの上にどかりと置くのです。

「今日は理科でのウ。春の草花を習うんじゃけど、およっしゃん、すみれの花の数ウ沢山知っとるな?」
「角力取草の事かの? わしゃ知らんが…」
「ふん、沢山あるんぞな、云おうかア、あのなあ、ふもとすみれじゃんで、それから、こすみれ、しろばすみれ、けまるばすみれ、あおいすみれ、やぶすみれ、それあらひなすみれ、ひかげすみれ、まるばすみれ、ながばのすみれさいしん、えいざんすみれ、ひめすみれ、たちつぼすみれ、つぼすみれ、こみやますみれ、どうな、ほら、沢山あろウがの」

 四ツ切りの黒ずんだ洋紙を赤い木綿糸でとじた雑記帳を開いて、ひな子は、自分の描いたこれらのすみれの絵を見せるのでありましたが、どれもこれも兎の耳のようで満足なすみれの花は一ツも描いてありませんでした。

 只、そのあやし気なすみれの絵に説明がつけてあるので、やっと、まるばすみれだとか、ひなすみれなぞと判るのでした。
(中略)

「うちの先生、本にないのばア教えてむつかしいけエのう」
 何時もの癖のように八つ口からむき出しの両碗を出して、「おおけに」と由のひざの荷物を持って立ち上がります。
「おい、おかめ、何よウしよる、学校おくれてしまうぞ」

 床屋の男の子が同級生のくせにえらぶって云うのを、ひな子は、ニコニコ笑いながら、「わしと並んで行きたいのじゃろウ」と、少女のなかにありようもない嬌笑で云いかえすのでした。おおかた、父親達が置屋へ行って呼び馴れているその名前を、自分達も何時とはなく覚えて呼びよくなるのでしょう。町の男の子達は、ひな子のもうひとつの名を呼んで、「おかめおかめ」と云っておりました。

ウーム 関西風うどんの旨さが出てくるかと思いきや、うどん作りや林芙美子の奉公暮らしや学校での子ども仲間が描かれていますね。





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Last updated  2021.01.27 00:02:02
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