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2021.03.24
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カテゴリ: 気になる本
図書館で予約していた『夢見る帝国図書館』という本を待つこと1週間でゲットしたのです。
冒頭をちょっと読むと・・・
年上の友人・喜和子さんの、常識人とはかけ離れた、気ままで圧倒的な迫力に引き込まれるのです。






中島京子著、文藝春秋、2019年刊

<出版社>より
「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったならーー資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たち(のちに永井荷風の父となる久一郎もその一人)の悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。

<読む前の大使寸評>
冒頭をちょっと読むと・・・
年上の友人・喜和子さんの、常識人とはかけ離れた、気ままで圧倒的な迫力に引き込まれるのです。

<図書館予約:(3/09予約、副本15、予約0)>

rakuten 夢見る帝国図書館



喜和子さんの遺灰の海上散骨あたりを、見てみましょう。
p390~394
 散骨は午後の4時からで集合場所は晴海埠頭だったので、私と紗都さん、雄之助くんは銀座の老舗喫茶店で待ち合わせ、少し遅れて古尾野先生が、キャメルのウールコートに暖かそうなマフラーをして現れた。喪服でなくてもいいと言ったのに、コートの下は黒いスーツ、ネクタイも黒だった。紗都さんが白いニットの、雄之助くんはモスグリーンのワンピースを着ていた。

 「はじめまして」
 紗都さんは、興味深そうに、元大学教授に挨拶した。
  「こちらが、この間話した、喜和子さんの親友の古尾野放哉先生」
 雄之助くんが言い、古尾野先生は何を思ったかはじかれたように背を伸ばして、
  「親友?」
 空に向かって一言放ってから、一拍置いて心を落ち着けてから紗都さんの方を見て、
  「ソウルメイトというところです」
 という奇妙な自己紹介をした。

 古尾野先生が喜和子さんのソウルメイトだったことにもびっくりいたが、いつのまにか雄之助くんが紗都さんと「話し」たりしていたことにも驚いた。
 「あれ? いつ?」
  「あ、いま、仙台にある会社と仕事してて。それで出張したときに会ったんだよね」
  「暮れ、かな。最初は。ね」

 雄之助くんと紗都さんはお互い確認し合ったが、「話し」ただけではなく、出張の度に会っているらしいことも、わたしはまったく知らなかったのだった。
 「お母さんは、どこ?」
 たずねると、紗都さんはニコニコして、
  「お買い物。三越の前で待ち合わせます」
 と、言った。

 古尾野先生は、喜和子さんとの関係を孫娘に説明する気はまったくないようだったので、話題はかなりの割合で、瓜生平吉に偏り、例のなぞなぞの葉書の答えを発表すると、雄之助くんは眉根にしわを寄せて少し口を開け、遠くを見つめるような変な顔をして、ほお、ほお、とうなずき、古尾野先生は、
  「そんなところじゃないだろうかと思ってはいた」
 と負け惜しみを言い、紗都さんは笑い出した。
  「『いつか、図書館で会おう』って、それ、喜和子さんがわたしにくれた葉書とおんなじだ!」
 そして、紗都さんがひとしきり、家出話を披露した。
(中略)

  「それで、こう答えたんです。だいじだったのは、戦後のどさくさ紛れの生活ではなくて、自分で決断して家を出てきて始めた、40代からの生活だったんじゃないかって。思うようにならなかったのは、小さいころからずっとそうだったわけでしょう? うんと小さいときのことはわからないけど、物心ついたときは親戚の家にいて、そこは居心地がいいとは言えなかったわけでしょう? 宮崎に行っても、きっと喜和子さんのお母さんごと、肩身の狭い思いは消えなかったわけでしょ。そして結婚生活も」

 紗都さんの隣で、すっかり小さいお爺さんになってしまった古尾野先生がハンカチを出して鼻をかんだ。じつのところ、紗都さんが喜和子さんの幼少時代、ことにお母さんと二人で親戚の家を転々とし、そのお母さんにも去られて、親戚の家から家出して上野にたどり着いたくだりから、古尾野先生は泣き通しだった。

ウーム 親戚縁者から喜和子さんの一生が語られているが・・・C'est la vie(セラビ)ではあるなあ。

帝国図書館の最後のエピソードを、見てみましょう。
p404
夢見る帝国図書館・25 国立図書館支部上野図書館前
 復員兵が図書館の前に立った。その図書館は、彼が以前に通ったときとは、名前を変えていた。少し傾斜した入口から入ろうとして、彼は木陰に何かが動いたのに気づいた。目をやるとそこには子どもが一人、うずくまっていた。

 そのままにして中に入り、調べものをしていて外に出ると、何時間か前に見かけた子どもがまだそこにいる。
  「どっから来た? 何してんの?」
 復員兵は話しかけた。子どもは何も言わなかった。

 「なんて名前?」
 こんどは、小さな声でその子が答えた。

 「きわこ」


『夢見る帝国図書館』2 :24 ピアニストの娘
『夢見る帝国図書館』1 :喜和子さんの気質





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Last updated  2021.03.24 07:08:22
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