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2021.05.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『民族世界地図』という細長い装丁の本を、手にしたのです。
1993年刊行とやや古いが、国際政治経済情報誌「Foresight」で連載した記事をもとに単行本にしたとのことであるが・・・
とにかく、洋書のような装丁がお洒落なわけで、これがチョイスした決め手でした。(ややミーハーだったかも)





浅井信雄著、新潮社、1993年刊

<「BOOK」データベース>より
国境が変わり、民族が移動し、至る所で硝煙のあがるこの二十世紀末―。複雑をきわめる民族対立の歴史をふまえつつ、世界の緊張空間を地図三十枚に集約。

<読む前の大使寸評>
1993年刊行とやや古いが、国際政治経済情報誌「Foresight」で連載した記事をもとに単行本にしたとのことであるが・・・
とにかく、洋書のような装丁がお洒落なわけで、これがチョイスした決め手でした。(ややミーハーだったかも)

amazon 民族世界地図


漢族の次は日本人を、見てみましょう。
p166~170
<日本人―多様性と均質化の間>
 第二次世界大戦後の日本には「日本民族」を議論しにくい空気がある。たぶん戦前・戦時中、大和魂や対外拡張主義とからめて「日本民族」の優秀性が議論されたことへの反動であろう。

「日本民族」はおろか日本や日本人を淡々と議論するのも、むずかしい。明治の有力な雑誌『日本人』『日本及日本人』、新聞『日本』が国粋的であったように、日本や日本人にこだわること自体、右翼的思想の反映とみられやすい。「伝統的日本」に関する学術研究にも、そんなレッテルをはられることがある。

 にもかかわらず「日本人とは何か」の議論は活発であり、外国人による日本人論も好んで紹介される。古い遺跡や人骨の発掘が異常に大きなニュースになるのも、日本人のルーツやアイデンティティへの関心に他ならない。

 そうした現象が起こるのは、明治維新や第二次大戦中と同様に、日本が外国ときびしく対峙するときだ。ユダヤ人が異邦人を強く意識しながら自己の優越的アイデンティティを確立し、またパレスチナ人が第二次世界大戦後に建国のイスラエルと対決する中で民族的アイデンティティを強化していった事実と、似ている。

 今日の日本と外国の対峙は、外圧と外国人労働者に象徴される。湾岸戦争とバブル経済的繁栄とともに展開した現象だが、ドイツやフランスと違って日本では外国や外国人への反発が右翼の台頭を招くにはまだ至っていない。排外主義をバネとした政治集団「風の会」も、92年の参院選で支持されなかった。特別のナショナリズムを煽るほど、日本人は事態を自分の問題として深刻視していないからだろう。

 一部の日本人による「単一民族」論は、日本社会の高い効率の源泉か、閉鎖性の反映かで評価が二分される。厳密にいえば日本は複数民族と複数文化の複合体とされるものの、同質性ないし均質性が高いことも否定できない。

 日本人の起源には不明な点も少なくないが、アジア大陸の諸民族と共通要素が多いため、大陸渡来者の影響が大と考えられる。その日本人も本州住民と北方アイヌと南西諸島住民の三者の間には、かなり明瞭な相違が認められる。アイヌを「原日本人」とする説もあるが、数波にわたる大陸渡来者の影響が北と南の両端地方に異なる陰影を残し、さらに自然・地理的条件の差や長年月の独自の文化活動によって、外見上も死活文化上も差異が生じたとも指摘される。
アイヌ民族

 明治以来の中央集権と強力な公的教育による同一文字と標準語の普及で、日本人を「一色に塗りつぶす」ような均質化が進んだ。かつて国勢調査でアイヌ人口を調べたこともあるが、いまではやめている。米国など多民族国家の文献が「日本の少数民族」の動態を詳述いているのと対照的であり、かれらの民族問題意識が日本人より格段に強いせいだろう。

 93年を「国際先住民年」と決めた国連が、その開幕記念行事にアイヌ代表を日本の先住民族として招き演説の機会を与えた出来事は、多くの日本人を驚かせたが、これも日本人と国際社会の民族問題意識のギャップを物語る。

 均質化政策にもかかわらず、地域的なアイデンティティも厳然と存在する。アイヌ系住民は「アイヌ民族法」制定をめざしてアイヌ民族復権運動に着手、92年の参議院選でも「アイヌ代表」を立候補させた(結果は落選)。沖縄でも本土への同化願望と独自文化保存という相反する感情がつねに認められるようだ。

 南北の両端地方だけでなく、関西独立論や道州制導入論など中央権力から距離を求める声もある。標準語が奨励される一方で、方言の維持保存の期待も強い。意思疎通が不可能なほど方言差は大きくかつ多彩であり、実質的には地域別の二言語政策がとられているに等しい。

 経済自立力があるのに中央からの干渉が強すぎると地方が意識する時、離反傾向が出てくるが、それが離脱や独立という極端に進まないのは、干渉が抑制されており、また日本の国家的枠組みの内部に留まる利益の方が大きいとの打算による。ちょうどロシアとの分離と結合の間で揺れる独立国家共同体(CIS)の内実と程度の差はあれ似た面がある。

『民族世界地図』1 漢族





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Last updated  2021.05.16 11:49:54
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